【税理士監修】相続税は他人事ではない 10人に1人が対象となる時代の備え

執筆:株式会社SBI新生銀行 (SBI新生信託銀行併営業務代理店)

監修:伊藤 博昭 税理士

更新:2026年07月22日

相続税というと、「一部の富裕層だけに関係するもの」と思われがちです。しかし近年は、相続税の課税対象となる人が増えており、もはや決して他人事とはいえない状況になっています。

国税庁の公表資料によると、令和6年分の相続税の課税割合は10.4%。つまり、被相続人のうち約10人に1人が相続税の対象となっています。相続税の仕組みを早めに知り、財産の状況を整理しておくことは、ご自身のためだけでなく、残される家族の負担を軽くすることにもつながります。

本コラムでは、相続税申告の基本、近年の申告・税務調査の傾向、そして生前に進めておきたい準備について、わかりやすく解説します。

相続税申告の基本

相続税の申告・納付期限は「10か月以内」

(図は監修者が作成) 

この図は、相続手続きの大まかな概要をご理解いただくためのものです。

実際の相続方法の選択や詳細な手続きに関しては、弁護士などの専門家にご相談ください。

相続が発生した場合、相続税の申告と納付は、原則として被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に行う必要があります。また、被相続人に所得があった場合には、所得税の準確定申告を4か月以内に行う必要があります。

相続発生後は、死亡届の提出、遺言書の有無の確認、相続人の確定、相続財産・債務の把握、遺産分割協議、申告書の作成など、短期間で多くの手続きが必要になります。特に財産の内容が複雑な場合や、相続人が複数いる場合には、準備不足が大きな負担になりかねません。

相続税がかかるかどうかの考え方

基礎控除額を超えると相続税の申告が必要になる場合があります

(図は監修者が作成) 

この図は、課税価格計算の大まかな概要をご理解いただくためのものです。

個別の取り扱いについては、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご確認ください。

相続税は、相続財産のすべてに無条件でかかるものではありません。まず、預貯金、不動産、有価証券、生命保険金などの相続財産から、借入金や未払税金、葬儀費用などの債務・費用を差し引き、課税価格を算出します。

その課税価格が、基礎控除額を超える場合に、相続税が発生する可能性があります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。たとえば法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円です。

「自宅と預貯金だけだから大丈夫」と思っていても、不動産評価や保険金、有価証券などを含めると基礎控除額を超えるケースもあります。まずは財産全体を把握することが大切です

相続税の課税割合は上昇傾向

令和6年は「100人中10人」が課税対象に

令和6年分の相続税申告実績では、被相続人数1,605,378人のうち、相続税額が発生した人は166,730人、課税割合は10.4%でした。令和元年の課税割合8.3%から見ると、相続税の対象となる人は増加傾向にあります。

また、国税局別に見ると、東京国税局では16.2%、名古屋国税局では13.0%、大阪国税局では10.5%と、都市部を中心に全国平均を上回る地域もあります。不動産価格や金融資産の保有状況によって、相続税の影響は大きく変わります。

相続財産の構成にも変化が見られます。不動産の占める割合は年々減少傾向にある一方、有価証券の割合は近年増加傾向にあります。資産の持ち方が変われば、必要な相続対策も変わってきます。

税務調査で見られやすいポイント

申告後1〜2年後に調査が行われることも

相続税は、申告・納付を終えれば必ずしも完了というわけではありません。税務調査は、申告書を提出してから12年後に行われることが多く、毎年7月から11月頃が調査のピークとされています。

令和6事務年度における相続税の実地調査では、1件当たりの申告漏れ課税価格が3,093万円、1件当たりの追徴税額が867万円とされています。実地調査に至った場合、結果として追加の納税が発生するケースも少なくありません。

税務調査が入りやすいケースとしては、相続財産が多い場合、生前に多額の預貯金の引き出しが頻繁にあり使途が不明な場合、家族名義の預貯金残高が多い場合、海外財産がある場合などが挙げられます。財産の多寡だけでなく、資金移動の経緯が明確かどうかも重要な確認ポイントです。

申告漏れが起きやすい財産

特に注意したいのは現金・預貯金

申告漏れ相続財産の内訳では、現金・預貯金等が最も多く、続いて土地、有価証券が挙げられています。なかでも、相続開始前に多額の現金が引き出されていた場合や、家族名義の口座に資金が移されていた場合には、税務調査で使途や資金移動の理由を確認されることがあります。

たとえば、生活費や医療費、贈与、家族への貸付など、資金の動きにはさまざまな理由が考えられます。しかし、記録が残っていなければ説明が難しくなります。通帳、メモ、領収書、契約書など、資金の流れを確認できる資料を整理しておくことが大切です。

生前に進めたい3つの準備

不明な財産を残さないことが第一歩

生前の準備としては、まず「財産の把握」から始めることが重要です。預貯金、有価証券、保険、不動産などを一覧化し、電子化された金融資産も含めて、家族が把握できる状態にしておきましょう。名義財産の有無や、生前贈与に関する資料も確認しておく必要があります。

次に、「財産承継・争族対策」です。遺言書の作成やエンディングノートの活用は、財産の分け方に関する意思を残し、相続人同士のトラブルを防ぐうえで有効です。特に、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、相続人以外に財産を渡したい場合、子ども同士の関係に不安がある場合などは、遺言の必要性が高まります。
*エンディングノートは法的効力をもちませんが、家族への伝達に役立ちます。

そして、「納税資金・節税対策」です。相続税は原則として現金で納付するため、納税資金をどのように確保するかを考えておく必要があります。生前贈与や相続時精算課税、住宅取得資金の一括贈与などの制度を検討する場合も、税制の要件や将来の相続全体への影響を踏まえて、専門家に相談しながら進めることが大切です。

早めの相談が将来の安心につながる

相続対策は「まだ早い」と思う時期から始める

相続対策には、短期間で完了できるものばかりではありません。財産の整理、遺言書の作成、贈与や納税資金の準備など、時間をかけて進めるべきものも多くあります。だからこそ、「相続が近づいてから」ではなく、「まだ早い」と思える段階から準備を始めることが大切です。

相続税を知ることは、税金を減らすためだけではありません。財産の所在を明確にし、家族が迷わず手続きを進められるようにすること、そして将来のトラブルを防ぐことにもつながります。

相続税の申告や生前対策について不安がある場合は、税理士などの専門家に相談し、ご自身の財産状況や家族構成に合った対策を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者

税理士法人 髙野総合会計事務所 伊藤 博昭 税理士
【略歴】
大手税理士法人の経験を経て、2007年に税理士法人髙野総合会計事務所に入所。
現在、同事務所のシニアパートナーとして、個人の資産税分野において、相続税申告および生前対策を数多く手掛け、事業承継税制などの案件にも対応している。

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