独占企画!スペシャル対談 SESSION-01 独占企画!スペシャル対談 SESSION-01

レオス・キャピタルワークス「ひふみ」最高投資責任者である藤野英人氏とニッセイアセットマネジメント「げんせん投信」を運用する伊藤琢氏は、実は師弟の仲。二人の出会い、藤野氏から伊藤氏が学んだこととは。そして今、同じファンドマネージャーとしてそれぞれのファンドへの想いとは。

出会いから17年の月日を経て、師弟が語り合いました。第一部では対談。師弟関係を結ぶに至る経緯やこぼれ話も。 そして第二部ではブロガー参加の座談会。普段はちょっと訊きづらい質問に対して、本音で語ります!

参加ブロガー(ハンドルネーム)
rennyさん、Shimoyamaさん、お金と心の探検家 マネマネさん、
かえる_オノウ。さん、七海さん、夢見る父さん氏

独占企画!スペシャル対談 SESSION-01 独占企画!スペシャル対談 SESSION-01

伊藤 藤野さんとの出会いは2001年。僕が在籍していた明治大学で、藤野さんは社会人講師として「金融特殊講義」の講座を持っていて、毎週いろんな経営者を連れて来て話を聞かせてくれました。それまで藤野さんの存在は知りませんでしたが、藤野さんの見識を聞くのが面白く毎週授業を楽しみにしていました。その時は単なる先生と生徒という関係で、まさか後に藤野さんと一緒に働いたり、自分が運用の世界で生きることになるとは想像もしていませんでした。

藤野 投資教育の一環で大学で講義を持ち様々な学生と接しますが、多くの学生が卒業後そのまま就職するところ、伊藤さんは違いましたね。

伊藤 僕は音楽家になることを目指していたので、卒業したらボストンの音楽大学に進学するつもりでした。でも周りは就職が決まり親にも反対されていたので、さすがに少し不安になったのです。その時唯一良いアドバイスをくれそうな大人として浮かんだのが藤野さんでした。それまでそれほど個人的に話をしたことはありませんでしたが、相談のメールを送ると、わざわざ僕をオフィスまで呼んで相談に乗ってくれた。そして「絶対に行け」と僕の背中を押してくれました。

藤野 その時の彼は、某芸人さん状態。熱湯風呂にパンツ一丁で足をかけて「押すなよ、押すなよ」って言っていた(笑)。だから僕の役割は一つ、押してあげるだけ。それからボストンに旅立って行ったんだよね。

伊藤 はい、無事バークリー音楽院に入学して作曲を学び、目標だった「バークリー・パフォーマンス・センター」の舞台にも立つことができました。その間、ボストンから藤野さんに僕が作曲した曲をメールで送ったりしていました。

藤野 あれは本当にいい曲だった。メッセージ性があってとても感動しました。 

伊藤 留学資金が底をついて、資金作りのために日本に一時帰国したのが、ちょうど藤野さんがレオスを創業するタイミングでした。藤野さんのような人の下で働きたいと「お茶くみでもコピー取りでもなんでもするのでバイトさせてください」とお願いしたのです。

藤野 創業間もない時で、売上も利益もないから「君を雇うわけにはいかない」と言ったんだけど、会社の入り口に居座って「雇ってくれるまで帰りません」というから仕方なく(笑)。それで本当にお茶くみをしていたね。

伊藤 はい、お茶くみで今でも鮮明に覚えているエピソードがあります。ある日、IRに来た経営者に僕がお茶を持って行ったら、ありがとうも言わずにふんぞり返ってぞんざいな態度を取られました。ミーティング後に僕が藤野さんにそれを報告すると、「いま君は初めて投資家として素晴らしい仕事をした。それは投資調査において極めて重要な情報だ」と言ったのです。藤野さんはそういう細かいところからも“人”を見ていた。以降、ふんぞり返っている経営者は全て藤野さんに報告していました(笑)。

藤野 そういう経営者は社員に対してどういう扱いをしているか、想像がつきますよね。丁寧な態度をとっているわけがない。経営者の本質というのは、きれいに整理されたところではなく、そういう細かいところにでてくるんです。

伊藤 藤野さんは、経営者という“人”そのものに付加価値があるという考えに基づき、投資する企業を分析するときでも“人”を見ることにかなりの時間を割く独特のアプローチをとっていました。藤野さんの隣でその考え方や“人”の見方などを、メモを取りながら一つ一つ学びました。それは僕にとってはすごくスペシャルな機会でした。

藤野 当時はまだスタッフが5~6人で、みんなで営業して、みんなで運用して、みんなで請求書を書いて、みんなで植木に水をやっていた時代(笑)。小さなオフィスで肩を寄せ合って仕事するしかなかったから、伊藤さんを遠ざけようがなかったという(笑)。
僕は人を育て、伸ばしていくことがすごく重要だと考えています。でも手取り足取り教えたりしません。考え方や大事なことは伝えるけれど、やり方は自分で考えなさいというスタイルです。僕は自分のコピーを作りたいわけでなない。コピーは必ず劣化し、師匠を破ることはできないから。僕は自分を破る可能性のある人材を育てたいのです。そのためには教えることと教えないことの両方をやらなければならない。伊藤さんはどんな仕事にも価値を見出して改善を加えながら、自分で運用のやり方を学んでいったのです。

伊藤 「ひふみ」がこれだけ投資家の支持を集めている理由は、良好なパフォーマンスはもちろんですが、消費者目線で当たり前のことをちゃんとやっているからだと感じています。投信業界が消費者目線でお客様とコミュニケーションが出来ているかと言うと、必ずしもそうとは言えないと思います。その中にあって消費者のために何をすべきかを考え、それを当たり前にやっているところが、レオスの、「ひふみ」の凄さです。

藤野 日本の投資信託は100兆円の市場があります。しかし、巨大な市場には巨大な穴が開いている。それは消費者目線ではないという穴。そして6000本もの投信が存在するにも関わらず、ブランド品たる投信が存在しないという穴。ブランド品とは作り手の想いや愛着が込められていて、それが消費者にも伝わり長く愛される商品。ファンドで言えば、運用者の想いに貫かれ、少しずつ残高が積みあがり大きくなっていくのがブランドファンドと言えるでしょう。そういったブランドファンドがこれまではなかった。
「巨大な穴が開いている。でもそれを埋める人がいない。」 それなら自分で埋めようと立ち上げたのがレオスであり、「ひふみ」なのです。実は、業界の穴を発見して埋めるというのは、起業やプロジェクトの発想そのもの。僕が投資判断をする際にも、経営者がその業界のどんな穴を見つけ、埋めようとしているのかを見ています。

伊藤 僕は藤野さんの教えで育ったので、僕の名前でファンドを立ち上げるなら“消費者目線の投信を”というのは自然な想いでした。そうして立ち上げたのが「げんせん投信」です。「げんせん投信」がまだ世に出る前に藤野さんを訪ねてファンドの構想をお話すると、「ニッセイアセットの関係者を全員連れて来なさい。全部教えてあげるから」と即答してくださった。そして実際にニッセイアセットのCIO(最高運用責任者)を含む皆で、藤野さんのレクチャーを受けたのです(笑)。藤野さんはすごい度量の方です。

藤野 巨大な穴が開いているのだから、みんなで埋めなきゃ(笑)。「巨大な穴を一緒に埋めるという意味では仲間だから、僕は何でも協力する」と言いました。僕らだけでは埋められないから、ニッセイアセットさん一緒に埋めましょうねということです。他の運用会社さんから同じコンセプトの投信が出て来ても大歓迎。ノウハウは全て教えるので、投信業界を一緒に盛り上げてほしいですね。

伊藤 「げんせん投信」は徹底して消費者目線を貫くという基本理念を作り、チームで共有するところから出発しています。残高拡大を優先しない「顧客ファースト」や、「運用をわかりやすく説明する」「運用者(関係者)が見える」などはその一例です。

藤野 ニッセイアセットさんは、販売組織を持たないという点で僕ら独立系運用会社と構造的には似ています。そういった意味で消費者目線を貫きやすく、大手でありながらも先鋭的な挑戦をしやすい環境だと思います。

伊藤 運用においては、経営力や組織力などの「見えない資産」が企業の競争力の“源泉”であるという考えに基づき、公表されているデータからは分からないような情報を点数化して投資判断を行っています。この方法は藤野さんから学んだスタイルです。それを現在はニッセイアセットのリッチな人的リソースを使い、業界最大規模の人数のアナリストとともに実践しています。

藤野 仮に伊藤さんが僕から多くを学び、運用ファンドのコンセプトが同じだとしても、「げんせん投信」は彼がやっている以上彼のもの。同じ曲を弾いても、弾き手が違えば音色が全く違うように、「げんせん投信」には伊藤琢の個性、背景が滲んだ独自の音色がある。それがアクティブファンドのいいところだと思います。

藤野 伊藤さんは過去は僕の弟子だったけれど、今は弟子ではない。ライバルです。伊藤さんにも「僕、君をめちゃくちゃ打ち破るつもりでいるから。でもばんばん打ち破ってくれてもいい。そこは真剣勝負で行こうね」と言っています(笑)。伊藤さんが成果を出して、数年後にでも「『げんせん投信』という結構強烈なファンドが、『ひふみ』にチャレンジしているぜ」というような状態になってくれたら――それが僕にとってはハッピーですね。

伊藤 僕が幸運なのは、最初に藤野さんの教えを受けたということ。そして僕は運用者なので、運用面で「ひふみ」に勝ちにいかなければなりませんが、その倒すべき相手が最強であるということ。相手が最強であり、自分の元師匠であるという、これほど素晴らしいことはないと感じています。
 いつか「ひふみ」に明確にパフォーマンスで勝ち、アワードなどの評価でも「ひふみ」が2番で「げんせん投信」が1番を獲りたい。そして藤野さんに「藤野さん、勝ちましたよ」と言いたいですね(笑)。

藤野 無理無理(笑)。でもスターウォーズの最新エピソードで、ヨーダが「俺たちの存在意義は、弟子たちが超えるべき目標になること」と言っていたけれど、そんな存在になれたら嬉しいね。

伊藤 師匠が最強で在り続けるので、僕は頑張らないとならない。投信業界のジェダイを目指します(笑)。

  • ニッセイアセットマネジメント株式会社
    ファンドマネージャー
    伊藤琢(Taku Ito)

  • レオス・キャピタルワークス株式会社
    代表取締役社長
    最高投資責任者
    藤野英人(Hideto Fujino)

明治大学商学部卒業後、バークリー音楽院に留学し作曲科を専攻。日本に帰国後、アルバイトとしてレオス・キャピタルワークスで働き、後に正式入社してアナリストとなる。2007年11月ニッセイアセットマネジメント株式会社に入社。ニューヨーク出向を含むアナリストを7年務めたのち、2014年から「げんせん投信」のマザーファンドであるニッセイ国内株式GENSENマザーファンドの主担当ファンドマネージャーを務める。

野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て2003年レオス・キャピタルワークス創業。CIO(最高運用責任者)に就任。2009年取締役就任後、2015年10月より現職。「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」の運用を行う。

ニッセイアセットマネジメント株式会社
ファンドマネージャー
伊藤琢(Taku Ito)

明治大学商学部卒業後、バークリー音楽院に留学し作曲科を専攻。日本に帰国後、アルバイトとしてレオス・キャピタルワークスで働き、後に正式入社してアナリストとなる。2007年11月ニッセイアセットマネジメント株式会社に入社。ニューヨーク出向を含むアナリストを7年務めたのち、2014年から「げんせん投信」のマザーファンドであるニッセイ国内株式GENSENマザーファンドの主担当ファンドマネージャーを務める。

ニッセイ-げんせん投信
カテゴリ:国内中型グロース
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レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役社長
最高投資責任者
藤野英人(Hideto Fujino)

野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て2003年レオス・キャピタルワークス創業。CIO(最高運用責任者)に就任。2009年取締役就任後、2015年10月より現職。「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」の運用を行う。

レオス-ひふみプラス
カテゴリ:国内小型グロース
詳しくはこちら

伊藤氏作曲の楽曲~What could be(2002)~

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  • 本情報は、2018/1/17の取材時点のものです。
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