外国株式ブラジル、ロシアに加え、インドにも注目

2019年の外国株式を振り返る

米国のS&P500指数は年初来27.3%上昇、MSCIワールドインデックスは同じく23.9%上昇、ドル/円はほぼ横ばいで、外国株式の投資パフォーマンスは良好でした。米中通商摩擦による貿易の減少や設備投資の抑制などから世界景気の回復はほぼ1年先送りとなったものの、FRBの金融政策が緩和に転じたことが株価を押し上げました。

S&P500指数の業種指数(11業種)では、トップが情報技術の44.9%上昇、2位が通信サービスの30.2%上昇、3位が金融の28.8%上昇の一方、5.8%上昇にとどまったエネルギーが最下位でした。情報技術のサブセクターは、テクノジー・ハード・機器が53.4%、ソフトウェア・サービスが40.7%、半導体・同製造装置が45.3%と、3分野とも市場平均を大きく上回る上昇でした。

国別株価指数で上昇率が大きかったのは、為替の動きも含むベースでロシアの41.1%上昇(現地通貨では27.6%上昇)、ブラジルの24.2%上昇(現地通貨では30.1%上昇)が目立っています。米中摩擦で中国株が買いにくい中、BRICsの大国に資金が回ったということでしょうか。

2020年の外国株式の展望

米国株式については、S&P500指数の予想PER(20年予想EPS基準)が17倍台後半に達しているため、PER拡大による株価上昇は見込めず、株価上昇はEPSの増加に沿うものになると想定されます。

仮にS&P500指数採用企業の20年EPSが前年比10%増、21年が同8%伸びて194ポイントに拡大、予想PER17.5倍まで買うとする場合、3,400ポイント前後が計算できます。12/18(水)の3,191.14ポイントに対して6.5%の上昇余地になります。

ただし、足もとの企業業績は19年7-9月期、10-12月期とも減益見込みですので、増益に転じるためのハードルは低くありません。ドル安への転換や世界景気の回復を受けてグローバル企業の利益回復が必要です。

市場の期待通りに世界景気の回復が実現する場合には、改善の幅は米国経済よりも他の海外経済のほうが大きくなり、また、リスクを取る動きも積極化すると考えられ、日本株や新興国株にもお金が流れやすくなると想定できるでしょう。

相場のリスク要因として、(1)米中通商協議がこじれる、(2)大統領選挙で急進左派が民主党候補となる、などが考えられます。特に(2)は緊縮的な財政、大企業や富裕層への増税などの政策が想定されるため、候補となっただけで相場が動揺する可能性には注意が必要でしょう。

2020年の注目の投資テーマ、新興国市場

5G(第5世代移動通信システム)の立ち上がりで活躍が期待される通信関連の半導体企業、5Gを契機に本格化が期待されるIoT(モノのインターネット)や自動運転関連の半導体企業、企業ITシステムのクラウド化から恩恵を受けるインフラ提供企業などが注目できるでしょう。また、世界景気の回復期待から、長期金利上昇の恩恵が期待される銀行、需要回復が期待される運輸関連が注目できそうです。

新興国市場では、米中対立の構図が継続することを前提とすると、中国経済とのつながりが比較的小さい、あるいは、中国を代替することで恩恵を受ける市場が注目できるでしょう。19年にパフォーマンスを出したブラジル、ロシアに加え、法人税減税の効果が期待されるインドにも注目できそうです。

榮 聡
SBI証券投資情報部(日本証券アナリスト協会検定会員)

1986年一橋大学商学部卒業、1991年カーネギーメロン大学テッパー・スクール・オブ・ビジネス卒業。
大和証券、大和証券投資信託委託、野村證券を経て15年4月よりSBI証券投資調査部に所属。国内外株式のファンド運用、ファンド運用助言、調査業務に長年携わる。欧州株式、アセアン株式について現地での調査経験があり、企業をグローバルな視点から評価できることに強み。

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