投資信託良質なアクティブファンドの復活を期待する

2019年の振り返りと2020年の展望は?

2019年の市場の不透明要因であった米中貿易摩擦と英国のEU離脱問題が12月になって進展し、米国株価は史上最高値を更新するなど、いわゆるリスクオンの状態で年末年始を迎える。

ただ、2019年の不透明要因が完全に払拭されたわけではない。米中貿易摩擦は「第一段階」の合意に達しただけで依然として貿易交渉は継続中だ。英国のEU離脱後の貿易ルールづくりはこれからだし、香港の混乱は年越しとなる。また、北朝鮮問題や中東の地政学リスクもくすぶり続けている。何より、11年目を迎えた米国経済の拡大が、いつ息切れするのかという点は、引き続き注意深くチェックする必要がある。

一方、2019年は米国株式を中心とした主要な先進国株式に対して、ASEAN諸国などの新興国株式のパフォーマンスに出遅れ感があった。新興国の経済成長率は先進国を上回っており、中長期的には引き続き新興国株式は魅力がある。

2020年の注目のテーマ、キーワードは?

米国では2019年に株高が進む一方、MMFに資金が殺到するなどリスク回避の動きも根強い。2020年は米大統領選挙の結果をめぐり株式市場が不安定な値動きとなる可能性もある。民主党の候補の中には、大きくなり過ぎたGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)の分割を主張する候補もおり、民主党の候補が誰になるのかも含めて、選挙結果が株式市場に影響を与える可能性がある。より慎重に、国・地域、資産、そして時間の分散を図るべきだ。

基本的には世界的な低金利の中、利回りを求める動きが続くだろう。もはや先進国の国債のみでは十分な利回りは得られない。社債、ハイ・イールド債など比較的利回りの高い債券を組み入れ、金利変動に柔軟に対応できるアクティブの債券ファンドに投資するのも一考。また、バリュー投資で配当利回りの高い株式も注目されるだろう。

2020年の有望な投資信託のアセットクラス(種類)は?

米国籍投信では2019年にESGファンドへの資金流入が加速しており、日本でも同様の動きが今後進む可能性が高い。つみたてNISAやiDeCoの利用が広がっているが、これらの投資ニーズは、20年、30年といった長期・積立(資産形成)ニーズだ。ESGは長期の企業経営に影響を与えるファクターであり、長期投資家の拡大に合わせて、緩やかに存在感を増していくだろう。

また、ネット証券で投信やETFの購入時の手数料無料化の動きが広がる中、これまで手数料の高さ等が嫌気され人気のなかったアクティブファンドが改めて注目される可能性はある。金融緩和の下で世界経済が緩やかに拡大する中では「何を買っても値上がりする」状況だったが、これからは銘柄の選択能力の違いがパフォーマンスの差に表れやすくなる。長期でインデックスを上回る運用実績をあげ、運用スタイルや運用プロセスに特徴のあるアクティブファンドが目立って活躍する展開を期待している。

朝倉 智也
ウエルスアドバイザー 代表取締役社長

1989年慶應義塾大学卒。95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社経て、98年ウエルスアドバイザー株式会社設立に参画し、2004年より現職。 第三者の投信評価機関として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。資産運用にかかわるセミナー講師を多数務め、各種メディアにおいても、個人投資家への投資教育、啓蒙活動を行う。

著書:『一生モノのファイナンス入門』(ダイヤモンド社)、『ものぐさ投資術』(PHP研究所)、『マイナス金利にも負けない究極の分散投資術』(朝日新聞出版)『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『ETFはこの7本を買いなさい』(ダイヤモンド社)、『つみたてNISA』(ダイヤモンド社)、『ものすごく真っ当で、ありえないほど簡単な お金の増やし方』(幻冬舎)、『怖がりの人ほど成功する! 丸投げ投資生活』(ナツメ社)、『お金の未来年表』(SBクリエイティブ)等。

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