投資戦略2020年の日本株は過少投資の反動もありアウトパフォームを期待

世界から見た日本の2019年と2020年の展望

世界からみた日本株は、戦後最低水準にあったといえよう。2019年6月、TOPIXをS&P500で割ることによって求められる日米相対株価は2012年10月に記録した戦後最低水準に面合わせしてきた。当時の六重苦に代わる悪材料は、米利上げに伴う世界経済後退懸念であった。

日本への見方は、景気循環次第で振れる。米国は2015年末から2018年末まで利上げを行った。利上げの累積的な効果を受け、世界経済は2018年後半から減速傾向を強め、事実上の景気後退に陥った。そこに米中貿易摩擦の激化というショックが加わったものだから底割れ懸念が急速に強まった。もっとも、大恐慌の再来まで意識した市場の悲観論は行き過ぎであった。景気底入れの期待が台頭するにつれ日本株は値を戻しつつある。
2020年の日本株は、これまでの過少投資の反動もありアウトパフォームを期待できる。平均的な予想をすれば2020年に日本株は7%程度の上昇となろう。ただし、米国の利下げが終わるというタイミングを勘案すると、平均をかなり上回る20%程度のリターンを期待できそうだ。景気・業績回復の恩恵を受けることに加え、バリュエーションも拡大しよう。

景気循環から離れ、長期の政治サイクルをみても日本株を取り巻く環境は好転している。ROEからESGへと関心が移りつつあるのはポジティブだ。ROEの特徴は、部分最適・短期志向・高株主資本コストだ。ESGの特徴は、全体最適・長期志向・低株主資本コストである。ROE重視の結果、高株主資本コストによる事実上の金融引き締めに呻吟してきた日本にとって、ESG重視は福音である。

2020年の注目のテーマ、キーワード

米大統領選挙は、政治サイクルの変化を再確認するイベントになろう。先進国の中間層を誰が救えるのかが焦点だ。教育・インフラ・研究開発投資の増加を期待できる。こうした投資を実現させるためには全体最適の視点が不可欠だ。結果が出るまで時間もかかるであろう。短期志向を助長しがちな高株主資本コスト(高い割引率)は敬遠される。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」という「トリクルダウン」は否定されるであろう。その結果、株主資本コストが低下すれば、金融政策の正常化も進むのではないか。金利(負債コスト)は上昇するであろう。失われたバランスの回復、格差の是正がテーマでありキーワードである。

北野 一
SBI証券 金融調査部長(チーフストラテジスト)

1982年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。債券ディーラー、為替アナリストを経て、金融ビックバン後、東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)で株式ストラテジスト。2006年からJPモルガン証券、2013年からはバークレイズ証券にて日本株ストラテジーを担当。2016年からは、みずほ証券でエクイティ調査部長。2019年7月にSBI証券入社。日本株ストラテジストとして再スタート。

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