【お盆に読みたい】失敗から学ぶ相続対策 ―相続コミュニケーション学―
久しぶりに家族が顔を揃えるお盆やお正月の時期は、相続の話をするにはよい機会だといわれています。
でも、実際には特に何もしていないという方が大半ではないでしょうか。
なぜ相続の話し合いはすすまないのか
とかく日本では「お金の話をするのは美徳でない」という意識も根強く、上の世代ほどその感覚に思い当たる節が多いように思います。和を乱すことを避けたい、謙虚さを好む、死を意識したくない、さまざまな心理もあるでしょう。結果的に話し合いを先送りにして、いざ相続が始まったときに「なぜ?どうして?」「もっと早く話しておけば」という後悔や、すれ違いが生まれやすくなります。
相続には生前対策が大切ですが、それも「家族間のコミュニケーション」の土台があってのもの。
そこで、今回は失敗を分析して次に活かす「失敗学」の考え方をヒントに、相続コミュニケーション学と称して、相続の現場に立つIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の皆さまに、実際に見聞きした"相続の失敗談"を伺いました。
Q1. 相続で失敗したタイミングとシチュエーション
◆失敗しやすいタイミングやシチュエーションは「親御さまが入院してから、または認知機能が低下してから」、「お子さまの配偶者まで交えて話し合い」です。慌てて準備を始めても本人の意思を十分に確認できず、さらに良かれと思って配偶者を交えた結果、それまで表面化していなかった兄弟姉妹間の不公平感や過去の不満が一気に噴き出すケースが少なくありません。相続の話は、いざ問題が起きてからでは感情的になりがちです。「まだ元気だから早い」と思える時期こそが、落ち着いて話し合える最適なタイミングです。まずは親御さま自身が資産を整理し、「誰に、何を、なぜ残したいのか」という想いをまとめておくことが第一歩となります。
(SBIマネープラザ株式会社)
◆親御さんが自分の子どものために一生懸命、相続対策を考えられて、満期日まで保有していたら額面どおりの金額が償還されてくるからと、額面金額より低い価格の割引債を購入されました。
ですが、お子さまは親御さんの気持ちを汲まれず、相続手続きが完了した直後に遺してくれた割引債を市場価格で売却されて、せっかく親御さんが用意してくださった"満期まで待てば得られる利益"をご自分で手放されてしまいました。
(回答者:藤井嵩大 / 株式会社Stock Fine)
◆親が入院した直後に、子どもが心配のあまり相続や財産の話を切り出してしまい、「もう死ぬと思っているのか」と親が心を閉ざしてしまったケースがありました。また、長男や次男の配偶者もいる場で話したことで、親が「家族の外にまで財産の話が広がった」と感じ、その後話しづらくなってしまった例もあります。
(株式会社400F)
◆「なんで兄だけ多くもらえるの?」
兄弟2人が相続人であるにもかかわらず、非課税枠を超える生命保険金を、兄1人が100%受け取れるように指定していたことが、親の亡き後判明しました。
→このケースでは、相続税の申告時に生命保険金について申告が必要になるため、争族に発展。
「なぜこの配分にしたのか」という親の意図を、家族でしっかり共有しておくべきでした。
(回答者:森田 周平 / 株式会社Fan IFA)
Q2. 注意したほうがいい家族構成や家族環境
◆特に注意すべきなのは、「特定のお子さまに介護負担が偏っている」、「住宅資金や教育費の援助を受けたお子さまと、そうでないお子さまがいる」といった状況です。介護を担った側には「自分が親を支えてきた」という自負がある一方、離れて暮らす兄弟姉妹にはその苦労が十分に伝わっておらず、認識のズレが生じます。また、住宅資金や教育費など親御さまからの生前援助の有無も不公平感の火種となります。親御さまが数字上で考える「平等」と、お子さまがこれまでの経緯から求める「公平」は、必ずしも一致しません。それぞれの経済状況や配偶者の意向も複雑に絡むため、家族仲が良いうちからお互いの状況や考えを共有しておくことが大切です。
(SBIマネープラザ株式会社)
◆親御さんは金融資産を保有しているが、お子さまが投資や金融商品に馴染みがないケースです。わからないものを保有しているのが負担などの理由でお子さまがすぐに売却されることがありますが、最近の株高で親御さんが過去に購入した金融商品が利益を出しているケースも多いです。せっかく受け継いだ資産の価値や特性を理解して、親御さんの思いを有効に使っていただきたいと思います。
(回答者:藤井嵩大 / 株式会社Stock Fine)
◆特に気をつけたいのは、親の世話や介護を一人の子どもが中心になって担っているご家庭です。
世話をしている側には「自分の大変さをわかってほしい」という思いがありますし、ほかの兄弟姉妹には「そんな話は聞いていない」という不満が出ることもあります。まずはお金の話より、これまで誰が何を担ってきたのかを共有することが大切です。
(株式会社400F)
◆「平等に分けたはずなのに・・・」
既婚で子どものいない弟と、既婚で子どものいる兄が、マンションの所有権を50%・50%に分けて共有相続。
→この後、それぞれの配偶者へ相続され、子どもがいなければ兄弟姉妹へ相続されるなど、2次相続、3次相続と続いていきますが、一つの不動産に対してどんどん関係性の薄い者同士の持ち分に発展してしまいます。
相続人が子ども2人で不動産を相続する場合には、共有相続(50%・50%)は極力、控えることをお勧めしたいです。家族構成(子の有無や配偶者の存在)をふまえ、生前に「将来誰が住むのか・売却するのか」を話し合い、1人の単独所有にするか売却して現金で分ける方針を決めておくのがよいと思いました。
(回答者:森田 周平 / 株式会社Fan IFA)
Q3. 失敗した…と後悔していた印象的な親の言葉、子どもの言葉
◆親御さまからよく聞いていたのは「うちは家族仲が良いから、もめることはない」という言葉です。一方で、お子さまから聞くのは、「財産が欲しいわけじゃない。ただ、なぜこの分け方になったのか直接聞きたかった」という言葉です。相続トラブルの多くは、財産の多寡ではなく、「なぜ兄が自宅を継ぐのか」「なぜ自分には事前に何の説明もなかったのか」といった感情的なわだかまりから生まれます。財産を「どう分けるか」だけではなく、「なぜそう分けたのか」という理由や想いを元気なうちに伝えておくこと。これこそが、家族の絆を守るための重要な対策だと感じています。
(SBIマネープラザ株式会社)
◆お客さまが言われた言葉ではないのですが・・・お子さまには全く悪気はなかったものの、親御さんが子どもの将来のためにとせっかく購入した金融商品を、相続手続きが完了したらすぐに売却して現金化された姿をみて「親の心、子知らず」という言葉が浮かびました。相続人のご判断に意見する立場ではありませんが、傍から見ていてとても切ない気持ちになりました。
(回答者:藤井嵩大 / 株式会社Stock Fine)
◆親御さまの「うちの子どもたちは仲がいいから、何も決めなくても大丈夫だと思っていた」という言葉が印象に残っています。一方で、お子さんからは「お金が欲しかったわけではなく、親がどう考えていたのかを聞いておきたかった」という声もありました。話さないままでいることが、かえって誤解につながることがあります。
(株式会社400F)
◆「まさか私より先に逝ってしまうなんて…」
相続対策で、事前に生前贈与を繰り返して対策を練ってきたつもりだったが、贈与を受けていた子どものほうが先に亡くなってしまった。
→相続税を抑えるために、生前贈与や生命保険の非課税枠を利用してきたが子どもが先に亡くなってしまうと相続対策してきた意味がなくなる。
「順番通りに亡くなるとは限らない」というリスクを念頭に置き、贈与先を分散させたり、万が一に備えて子どもの側でも遺言書を作成してもらうなど、逆転のケース(数次相続)まで想定したプランを家族で共有しておくべきでした。
(回答者:道谷 昌弘 / 株式会社Fan IFA)
Q4. 失敗しない相続のため これだけは伝えておきたい一言
◆「資産を残すだけでなく、想いを伝えること」——この視点をぜひ大切にしていただきたいと思います。金融資産や不動産をどう引き継ぐか、税負担をどう抑えるかという実務的な対策はもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。「誰に何を残すのか」と同じくらい、「なぜそうしたいのか」という想いを整理し、伝えておくことが欠かせません。相続とは、単なる財産移転の手続きではなく、家族への感謝や願い、これまで築いてきた絆を未来へつないでいく大切な機会です。家族への想いを言葉にして伝えることが本当の相続対策であり、その時間もまた、ご家族にとってかけがえのない財産だと思います。
(回答:SBIマネープラザ株式会社)
◆金融商品という形で遺した場合は、親御さんがどういう思いで遺したのか、意図も含めて相続人も理解する必要があると思いました。親御さんの思いは受け継ぐ相手にしっかりと伝えておかないといけないことを改めて認識しました。
(回答者:藤井嵩大 / 株式会社Stock Fine)
◆相続の話は、いきなり「誰が何をもらうか」から始めないほうがうまくいきます。
まずは「これから家族として何を大切にしたいか」「親としてどんな思いがあるか」を聞くところから始めるのがおすすめです。一度で結論を出そうとせず、元気なうちに少しずつ話しておくことが、結果的には一番のトラブル予防になると思います。
(回答:株式会社400F)
◆相続は必ず発生します。そして、それは明日起こるかもしれないものです。
わからないからこそ、事前に家族同士で話し合いをして老後生活(介護、延命治療を望むか否か、認知症への対策)について意思を共有しておくことが必要です。
また、親の側でも自分の想いや資産状況を一度書いて終わりとするのではなく、毎年エンディングノートの作成と見直しをしましょう。「いつか」ではなく「今」、家族で将来について言葉を交わす時間を作ってみてください。
(回答者:道谷 昌弘 / 株式会社Fan IFA)
まとめ 相続コミュニケーション学
いかがでしたでしょうか。
4社の回答に共通していたのは「財産の多い、少ない」ではなく「聞けなかった一言」「伝えなかった本音」の後悔だったように感じました。
人間は、うまくいったという話よりも、失敗して痛い思いをした話の方がなぜか記憶に残るものです。今回の回答が「自分にも重なるケースがあるかも」と、少し立ち止まって考えるきっかけになればと思います。
「まだ元気だから、今話さなくても」と思っているうちに、話すタイミングは静かに失われていきます。今回ご協力いただいたプロのIFAの方々は、まさにタイミングを逃した後悔を数多く見てきました。
円満なコミュニケーションで相続対策を進めたい方、親子や兄弟姉妹で話ができてこれから本格的に動き出したい方も、一人で進めることは簡単ではありません。
まずはこの夏、たくさんの知恵を持っているIFAへコンタクトして、話を聞いてみませんか。きっと背中を押してもらえると思います。
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