家族信託を検討する前に知っておくべき14の注意点(株式会社ファミトラ2024.12.10)

家族信託は、認知症や高齢化に伴う財産管理の問題に対する有効な解決策として注目を集めています。しかし、その利点だけでなく、潜在的な問題点や制限事項についても十分に理解しておくことが重要です。この記事では、家族信託を検討する前に知っておくべき14の重要な注意点について詳しく解説します。

委託者に関すること

認知症発症後の利用制限

家族信託を設定する際に最も重要な注意点は、認知症発症後の利用制限です。家族信託は、委託者(財産を信託する人)が判断能力を有している間に設定する必要があります。

認知症と診断された後や、判断能力が著しく低下した後では、家族信託を新たに設定することはできません。これは、信託契約が有効に成立するためには、委託者に契約を締結する能力が必要だからです。

したがって、家族信託は予防的な措置として、早めに検討し設定することが重要です。認知症の症状が現れ始めてからでは遅い場合があるため、健康なうちに将来に備えて設定しておくことをお勧めします。

身上保護機能がない

家族信託は財産管理には有効ですが、身上保護機能は有していません。身上保護とは、本人の生活、療養看護、介護などに関する法的な保護や支援のことを指します。

例えば、医療行為の同意や介護サービスの契約締結などは、家族信託の範囲外となります。これらの行為が必要な場合は、別途、成年後見制度などの利用を検討する必要があります。

受託者に関すること

受託者の負担が大きい

家族信託では、受託者(財産を管理する人)の役割が非常に重要です。しかし、その責任と負担は決して軽くありません。受託者は信託財産を適切に管理し、定期的に収支報告を行う義務があります。また、法律や税務に関する知識も必要となります。

家族の中から受託者を選ぶ場合、この負担を十分に理解し、長期的に役割を果たせる人物を選ぶ必要があります。場合によっては、専門家に受託者を依頼することも検討すべきでしょう。

家族間の信頼関係が不可欠

家族信託は、文字通り家族間の信頼関係の上に成り立つ制度です。特に、委託者と受託者、そして受益者との間に強い信頼関係がなければ、円滑な運用は困難です。

家族間に不和や対立がある場合、家族信託はかえって問題を悪化させる可能性があります。信託設定を検討する前に、家族間で十分な話し合いを行い、全員の理解と協力を得ることが重要です。

受託者の不正リスク

家族信託では、受託者に大きな権限が与えられます。そのため、受託者が不正を働くリスクも存在します。例えば、信託財産を私的に流用したり、不適切な投資判断を行ったりする可能性があります。

このリスクを軽減するためには、信託監督人を設置したり、定期的な報告義務を課したりするなどの対策が必要です。また、受託者を複数指名し、相互チェック機能を持たせることも有効です。

財産に関すること

信託財産の範囲に制限がある

全ての財産を信託財産にできるわけではありません。例えば、個人年金や生命保険の受取人指定など、一身専属的な権利は信託財産にすることができません。また、株式や債券などの有価証券を信託財産にする場合、名義変更の手続きが必要となり、手間とコストがかかる可能性があります。

信託財産の選定には慎重な検討が必要で、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

税制や税務について

損益通算ができない

家族信託を利用する際の税務上の注意点として、損益通算ができないことが挙げられます。通常、個人の確定申告では、不動産所得と他の所得(給与所得など)との損益通算が可能です。しかし、信託財産から生じる所得については、この損益通算の適用がありません。

例えば、賃貸不動産を信託財産とした場合、その不動産から生じる赤字を他の所得と相殺することができません。これにより、税負担が増加する可能性があるため、特に不動産投資を行っている方は注意が必要です。

節税効果がない

家族信託には、一般的に節税効果はありません。信託財産から生じる所得は、原則として受益者(信託の利益を受ける人)の所得として扱われ、通常の税率で課税されます。

法律や税制の変更リスク

家族信託に関する法律や税制は、将来変更される可能性があります。例えば、税制改正により信託財産に対する課税方法が変わったり、信託法の改正により信託の運用ルールが変更されたりする可能性があります。

長期的な視点で家族信託を利用する場合、これらの変更リスクを考慮に入れ、定期的に専門家のアドバイスを受けながら対応を検討する必要があります。

契約や手続きのこと

信託契約の変更が困難

一度設定した信託契約の内容を変更することは、一般的に困難です。特に、委託者の判断能力が低下した後では、契約内容の変更はほぼ不可能となります。

したがって、信託契約を設定する際には、将来起こりうる様々な状況を想定し、できるだけ柔軟性を持たせた内容にすることが重要です。また、定期的に契約内容を見直し、必要に応じて変更を加えることも検討すべきでしょう。

費用がかかる

家族信託の設定や運用には、一定の費用がかかります。主な費用としては、信託契約書の作成費用、登記費用(不動産を信託財産とする場合)、税理士や弁護士などの専門家への相談料などが挙げられます。

また、信託の運用中も、受託者への報酬や税務申告の費用などが継続的に発生します。これらの費用が信託財産の価値や収益に見合うものかどうか、事前に十分検討する必要があります。

金融機関の対応の違い

家族信託に対する金融機関の対応は、機関によって異なります。一部の金融機関では、家族信託口座の開設や運用に制限を設けている場合があります。

例えば、信託財産として預金を扱う際に、特別な手続きや書類が必要になったり、一部のサービスが利用できなかったりする可能性があります。信託設定前に、利用予定の金融機関に確認を取ることをお勧めします。

信託終了時の手続きの複雑さ

信託を終了する際の手続きは、想像以上に複雑になる可能性があります。特に、信託財産に不動産が含まれている場合、名義変更や登記手続きなど、煩雑な作業が必要となります。

また、信託終了時の税務処理も注意が必要です。場合によっては、予期せぬ税負担が発生する可能性もあるため、信託設定時から終了時までの手続きや税務について十分に検討しておくことが重要です。

専門家の選択の重要性

家族信託は複雑な制度であり、その設定や運用には専門的な知識が必要です。したがって、信頼できる専門家弁護士、司法書士、税理士など)のサポートを受けることが非常に重要です。

しかし、家族信託に精通した専門家は必ずしも多くありません。適切な専門家を見つけ、その専門家が本当に家族信託について十分な知識と経験を持っているかを確認することも、重要な注意点の一つです。

まとめ

家族信託は、認知症や高齢化に伴う財産管理の問題に対する有効な解決策の一つですが、同時に様々な注意点や制限事項があります。ここで紹介した14の注意点を十分に理解し、自身の状況や家族の事情に照らし合わせて慎重に検討することが重要です。

  1. 認知症発症後の利用制限
  2. 身上保護機能がない
  3. 受託者の負担が大きい
  4. 家族間の信頼関係が不可欠
  5. 受託者の不正リスク
  6. 信託財産の範囲に制限がある
  7. 損益通算ができない
  8. 節税効果がない
  9. 法律や税制の変更リスク
  10. 信託契約の変更が困難
  11. 費用がかかる
  12. 金融機関の対応の違い
  13. 信託終了時の手続きの複雑さ
  14. 専門家の選択の重要性

これらの注意点を踏まえた上で、家族信託が自身のニーズに合っているかどうかを判断し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら検討を進めることをお勧めします。家族信託は、適切に利用すれば非常に有効なツールとなりますが、その特性と制限を十分に理解した上で利用することが成功の鍵となるでしょう。

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