世界経済は急変動も?「トランプ時代」の資産配分を考える

投資情報部 鈴木 英之
2025/3/26
「トランプ氏が米大統領を務める現在の投資環境のもとで、各市場はどう動く?
3月もまもなく終わり、新たな会計年度を迎えようとしています。
4月以降の内外債券・株式市場はどうなるでしょうか。その際、主に考えておかなければならないのは「トランプ氏が米大統領を務める現在の投資環境のもとで、各市場はどう動くか」ということだと思います。
トランプ氏はすでに、メキシコ、カナダ、欧州からの一部輸入品、および中国からの全輸入に対し関税を課しています。4/2(水)には関税政策が強化され、より多くの国々からの対米輸入に対し関税強化が示される可能性があります。仮に、このまま米国が広く、輸入に対する関税を強化した場合、世界経済への悪影響が強まる可能性があります。
影響は、関税を賦課する米国にも表れると思います。輸入品に広く関税がかかることで、輸入品を中心に物価が上昇し、家計の負担が高まるかもしれません。輸入品の価格競争力が弱まることで、国内製造業の競争力が強化される可能性はありますが、新しい工場を短い期間に新設することは難しいでしょう。米国の高い人件費で生産される商品は結局、これまでの輸入品よりも価格が高く、消費者を苦しめるかもしれません。
そうした中、世界の株式市場が波乱となるリスクがあります。日本からみれば、日本株にも外国株にも、価格変動リスクの強まりが想定されます。
一方、海外債券市場についてはどう考えるべきでしょうか。
その中心的存在である米国債については、インフレが強まった場合は、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和姿勢は転換を迫られ、金利が上昇(債券価格は下落)に転じ、為替は円安・ドル高になる可能性があります。しかし、米国経済が予想以上に悪化した場合は、FRBはむしろ金融緩和の持続を迫られ、金利は低下(債券価格は上昇)する可能性もあります。その場合、円高・ドル安の可能性があります。そもそも、トランプ大統領は貿易赤字を減らすべく、ドル安を指向しているとの見方も根強くなっています。
このように、米国(海外)の金利や為替市場を予想することも、かなり難しいのが現状です。外債投資を検討する際「どこの国、どの企業の債券の金利が高いか」だけでなく、為替変動リスクに十分注意する必要があります。
国内債券投資にも「検討の余地」あり?
そうした中、日本の10年国債利回りが上昇基調(価格は下落基調)となっています。
足元では、2008年11月以来の1.5%台まで上昇しています。日銀は、3/19(水)まで開催の金融政策決定会合において、政策金利の据え置きを発表しました。トランプ米大統領の関税政策の内容次第では、市場が大きく変動する可能性もあるため、様子を見たということでしょう。しかし、企業の賃上げが進み、物価が上昇する中で、基本的には利上げを指向していると考えられます。
その意味で、日本国債の利回りはまだ上昇余地があるかもしれません。反面、日本株、外国株に価格変動リスクがあり、外国株に為替変動リスクの高まりが懸念される中、国内債券が見直される余地はあるとみられます。
年金基金の適切な運用を求められるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオは、国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%で、各資産の構成比は一定の範囲内で変動が許容されています。ただ、ゼロまたはマイナスの金利が長く続いた国内債券市場は、多くの個人投資家にとっては、検討しにくい資産であった可能性があります。
しかし、こうしてある程度の金利を得られるようになってきた環境下では、価格や為替変動リスクにさらされたくないという投資家にとっても、国内債券投資の「検討の余地」が出てきたように思われます。
著者プロフィール

SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
免責事項・注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、 商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。