米国の金利低下が続くなら、20年超の米国国債(ストリップス債)で波乗り運用!

投資情報部 土居 雅紹
2025/09/22
米国国債(ストリップス債)とは
大方の予想通り、FOMC(米国連邦公開市場委員会)で米国の政策金利であるFFレートの誘導目標が0.25%引き下げられ、年4.00%-4.25%となりました。同日のパウエル議長の発言によれば、2025年中にさらに2回、2026年初めにはもう1回の利下げが見込まれており、そうなると2026年中には3%台前半が視野に入ってきます。
一般に、金利が下がる局面では、負債の多い企業や不動産関連株などへの株式投資が有効とされます。しかしながら、「景気が悪化しそうだから政策金利を下げる」という見方に立てば、株式市場全体にとっては手放しで歓迎できるニュースとは言い切れません。そこで、金利低下そのものを投資機会と捉えるアプローチが有効な選択肢となります。具体的には、残存期間の長い米国国債(ストリップス債)を活用し、好利回りで運用しながら、金利低下による値上がり益も狙うという手法です。
ストリップス(STRIPS)債とは、「Separate Trading of Registered Interest and Principal of Securities」の略称で、利付債の利子部分と元本部分を分離し、それぞれを独立した証券として取引可能にしたものです。これらは割引債、あるいはゼロクーポン債と呼ばれ、利子がない代わりに、購入価格と償還額の差額が利子に相当します。なかでも米国国債のストリップス債は活発に取引されています。なお、名称は「ストリップ」ではなく「ストリップス」と最後に「S」が付いている点にちょっとだけ注意が必要です。
米国国債(ストリップス債)の特徴
・1年から30年程度まで、運用期間の選択肢が豊富
・満期まで利払いがないため、期中の利払いに課税されず、複利運用が可能
・米国政府が発行体であるため、信用リスクが極めて低い
・流動性が高く、時価での中途売却が容易
30年・10年米国債利回りはどう動く?
図表1は、30年・10年・2年米国債利回りとFFレートの推移を示しています。これを見ると、2年債利回りは政策金利であるFFレートとほぼ連動していることが分かります。10年債利回りは2年債利回りほど敏感ではありませんが、それでもFFレートと同じ方向に動く傾向があります。つまり、FFレートが上がれば10年債利回りも上昇し、下がれば10年債利回りも下がるという関係です。
30年債利回りは、10年債利回りよりもさらに値動きが緩やかですが、トレンドとしてはFFレートと同じ方向に動くことが多いと言えます。ただし、直近の紫色の点線で囲った部分の値動きには注意が必要です。10年債利回りと2年債利回りはFFレートの低下とともに下がってきているのに対し、30年債利回りだけは上昇しています。
これは、30年債のような長期債になると、期待インフレ率の影響が大きくなるためです。FRBの独立性を脅かす現政権の行動や、財政赤字の拡大によってインフレ懸念が高まった結果、長期金利が上昇したと考えられます。
図表1 30年・10年・2年米国債利回りとFFレート

図表2 米国国債(ストリップス債)の残存年数と利回りによる価格変化の試算

米国金利低下が続くなら、20年超の米国ストリップス債で波乗り運用!
図表2は、利回りを4.5%、4.0%、3.5%、3.0%と仮定した場合に、残存年限によって米国国債(ストリップス債)の価格がどう変化するかを試算したものです。実際の市場では、政策金利やインフレ期待などの影響により年限ごとに利回りが異なりますが、ここでは投資効果を分かりやすくするため、短期から長期まで金利水準を一定と仮定しています。
まず、残存25年・利回り4.5%の米国債STRIPSの価格は、額面100ドルに対して32.87(図中の赤丸「S25」)となります。これを2年間保有し、利回りが4.5%のままだった場合、価格は35.93(赤丸「S23」)に上昇します。これは、2年間にわたり4.5%で半年複利運用した結果で、上昇率は約9.3%です。
ここで、もし残存23年の利回りが3%まで低下していた場合、価格は50.42(赤丸「SS23」)に跳ね上がります。この価格で売却できたとすると、2年間の投資リターンはなんと+53.4%にも達します!
リスクを抑えたいなら10年ストリップス債、ただしリターンは控えめに
20年超の長期金利は期待インフレ率の影響を強く受けるため、「金利低下は読み切れないし、予想に反して金利が上昇したら満期まで保有するかも」という慎重な投資家には、残存10年程度の米国債STRIPSが扱いやすい選択肢となります。
現在の市場実勢では、利回りはおおよそ4.0%で、価格は67.30(図中の緑の四角「S10」)です。これを2年間保有し、利回りが4.0%のままだった場合、価格は72.84(緑の四角「S8」)に上昇し、半年複利で約8.2%のリターンとなります。
さらに、残存8年の利回りが3%まで低下していた場合、価格は78.80に上昇し、2年間の騰落率は17.1%となります。控えめながらも、十分に魅力的なリターンと言えるでしょう。
※実際の債券の買取価格は市況の影響を受け、売買スプレッドが変動する可能性がありますのでご留意ください。
図表3 米国債ストリップス(残存15年超の銘柄を抜粋)

SBI証券で米国債ストリップスを探す方法(初心者向け)
SBI証券で米国債ストリップスを買いたいと思ったら、まずは銘柄を探すところから始めましょう。
1.SBI証券のトップページにアクセスし、PCの場合は「債券トップ」の左横のメニューから「外貨建」の「+(プラス)」でメニューを広げて、「既発債券」をクリックします(スマホの場合は「債券トップ」から上段メニューの「外貨建債券」を選び、ページ中央に表示される「既発債券」をクリックします)。
2.次に、検索条件入力欄の近くにある「かんたん検索」の中から「残存15年以上のストリップス債」を選びます。
→この操作で、対象の銘柄が22件に絞り込まれます(2025年9月18日時点、図表3参照)。
今回は、残りの期間が長めの債券を探したいので、③の項目で「残存期間(昇順)」を選びます。
今回の対象はすべて米国債ストリップスなので、残存期間と利回りで銘柄を選ぶことができます。残存25年前後のものでは、「約25年5カ月 4.599%」「約25年2カ月 4.598%」「約24年5カ月 4.605%」があります。概ね同様の利回りですが、少しでも利回りの高いものがよければ「約24年5カ月」の銘柄、長めのものにするなら「約25年5カ月」の詳細を確認してから注文を出すという手順となります。
なお、残存期間10年の米国債ストリップスを探す場合は、一旦検索条件をクリアしてから、絞り込み条件で「通貨:米ドル」「商品区分1:国債」「商品区分2:割引債」として検索します。
便利な機能も活用しましょう
- 気になる銘柄は「登録」しておくと、いつでもまとめて確認することができます。
- 「試算」機能を使えば、為替変動の影響を含め、購入後の損益をシミュレーションすることもできます。
SBI証券での債券取引の流れやお役立ち機能については、債券取引ガイドをご覧ください。
最後にひとこと
SBI証券で取り扱っている債券の銘柄や条件は、日々変わります。購入前には、必ず最新情報をWEBサイトで確認してください。
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