世界のお金の避難先!?のユーロを国債で持つ

投資情報部 土居 雅紹
2025/10/15
世界の通貨シェア 米ドル不安でお金はどこに動く?
トランプ関税、再び世界を揺らす
4月2日の「解放の日」以降、トランプ関税が世界経済を揺さぶっています。いったんは沈静化したかに見えた米中対立も、ここにきて再燃。米国はまるで自らドルの覇権を手放すかのような振る舞いを繰り返しています。 では、円高に向かうかといえば、そう簡単にはいきません。日本国内も政治的混乱が続いており、高市トレードにせよ、野党連合政権にせよ、円安を予想する声が多く聞かれます。 こうした不透明な状況下では、世界の投資家の視点に立って「資金の避難先」を考えることが、ひとつの有効なアプローチとなるでしょう。
米ドルの圧倒的な存在感——ユーロ・円が続く
下の図表1は、BIS(国際決済銀行)が公表した2025年4月時点の外国為替取引(スポットおよび為替・金利デリバティブ)における通貨別シェアを示したものです。トランプショックの真っただ中で米ドルの取引量が増加した面もありますが、それでも米ドルは44.6%という圧倒的なシェアを誇っています。これに続くのがユーロの14.4%、そして日本円の8.4%。人民元は国際化を着実に進めているものの、4.3%にとどまっています。
図表1 2025年4月の外国為替市場での取引シェア

米ドル/円の動きが少なかったのは...一緒に下がっていたから
「解放の日」——米国から世界へのメッセージ
トランプ政権は「解放の日」以降、世界に向けて次のような明確なメッセージを発信しています。
・「相互関税」によって貿易赤字を削減する
・他国の安全保障への関与を縮小する
・米ドルの無尽蔵な供給は行わない
・政策金利は低水準に据え置き、景気を下支えする
・将来的には米ドル安を誘導し、米国企業の輸出競争力を高める
この方針を、米ドル建て資産を大量に保有する米国外の投資家はどう受け止めるでしょうか?さらに、米国内の超巨大企業や超富裕層の視点で考えれば、もし米ドルの信認が今後低下する可能性があるとすれば、当然ながら「手持ちの米ドル資産の一部を他通貨に振り分けておこう」と考えるのが自然な流れです。
米ドル離れの動き——ただし日本円と人民元は除く
図表2は、主要通貨の対米ドルレートの推移を示しています。2025年4月1日を基準(100)として、数値が上昇すればその通貨が米ドルに対して強く、下落すれば弱くなっていることを意味します。
米ドル資産を減らしたいと考える投資家が増えても、米ドル市場の巨大さがその動きを制限します。外国為替取引は通貨の交換なので、米ドルを売るには別の通貨を買う必要があります。しかし、相手通貨の市場規模が小さいと為替レートが急騰してしまい、また信用力の高い通貨でなければ米ドルの代替にはなりえません。
「解放の日」以降、米ドルの代替として選ばれたのは明らかにスイスフラン(青線)とユーロ(水色線)です。両通貨とも対ドルで大きく上昇しました。スイスフランはゼロ金利にもかかわらず急騰しましたが、ユーロに比べて市場規模が小さいため、値動きが大きくなっている面もあります。英ポンドと豪ドルは「解放の日」直後に一時的な波乱があったものの、現在は堅調に推移しています。 一方、人民元は完全な変動相場ではなく、資本取引が管理されており、実質的には米ドルに緩やかにペッグ(連動)する独特の値動きとなっています。
異彩を放つ日本円——なぜ円高にならないのか?
主要通貨の中で、際立って異様なのが日本円です。本来ならユーロに次ぐ取引量を誇る通貨であり、米ドル売りの受け皿となって円高が進んでも不思議ではない局面です。 しかし、現実には4月こそ米ドル安・円高に動いたものの、その後9月までは米ドルとともに円も下落し、米ドル/円は不思議な安定を見せていました。そして現在は、財政支出の拡大と政局不安によって円安米ドル高が進行しています。このとき、米ドル/円相場だけに目を奪われがちですが、実は米ドルそのものがじりじりと安くなっている点に注意が必要です。
資産防衛の選択肢——ユーロ建国債に注目
実際、米国株以外の株式、純金やプラチナ、暗号資産など、米ドルからの避難先を探す動きは続いています。 このような状況下では、米ドルに次ぐ取引市場規模を持ち、金利がついて信用力も高いユーロ建国債に資産の一部を振り向けることは、有効な資産防衛戦略といえるでしょう。
図表2 「解放の日」以降の主要通貨の対米ドルレートの推移

SBI証券でユーロ建の国債を探す
SBI証券でユーロ建国債を買いたいと思ったら、まずは銘柄を探すところから始めましょう。
1.SBI証券のトップページにアクセスし、PCの場合は「債券トップ」の左横のメニューから「外貨建」の「+(プラス)」でメニューを広げて、「既発債券」をクリックします(スマホの場合は「債券トップ」から上段メニューの「外貨建債券」を選び、ページ中央に表示される「既発債券」をクリックします)。
2.次に、検索条件の「絞り込み条件」で通貨「ユーロ」を選んで「検索」をクリックします。
→この操作で、対象の銘柄が5件に絞り込まれます(2025年10月14日時点、図表3参照)。
ここでユーロ国債ならすべて同じと考えてはいけません。年限やクーポン(またはゼロクーポン)という以前にどの国が発行しているかということが極めて重要です。必ず、「詳細」確認して発行者の格付けを判断してから注文を出すことが必要です。 この時点で、フランスの発行体格付は信用リスクが低い(安全性が高い)とされるAA-(S&P)/Aa3(Moody's)であるのに対し、イタリアはBBB+(S&P)/Baa3(Moody's)で投資適格ではあるものの、一定の信用リスクを伴う投資対象となっています。米ドル資産の一部を避難先通貨に移すという目的に照らすなら、あまり先の国際情勢は予想できないので3年から7年程度の年限が適当といえます。その意味では、イタリア国債(残存約4年5カ月)とフランス国債(残存6年6カ月)のどちらかとなります。イタリア大好きで楽観的に考えるなら前者のイタリア国債、現在は政治情勢が安定していなくともAA-の高格付を持つ安定感を好むなら後者のフランス国債になるでしょう。
便利な機能も活用しましょう
気になる銘柄は「登録」しておくと、いつでもまとめて確認することができます。 「試算」機能を使えば、為替変動の影響を含め、購入後の損益をシミュレーションすることもできます。 SBI証券での債券取引の流れやお役立ち機能については、債券取引ガイドをご覧ください。
最後にひとこと
SBI証券で取り扱っている債券の銘柄や条件は、日々変わります。購入前には、必ず最新情報をWEBサイトで確認してください。
図表3 ユーロ債(既発債)検索結果

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