≪新興株ウィークリー特選≫年後半に復活が予想される銘柄

≪新興株ウィークリー特選≫年後半に復活が予想される銘柄

投資情報部 鈴木 英之

2022/07/06

内外株式市場は、インフレ・金利上昇を背景とする景気減速・悪化懸念を背景に、いまだ不安定な動きとなっています。ただ、米長期金利が一時に比べ低下してきたため、グロース銘柄の株価は底固さを増してきたように思われます。

そうした中、株式市場では年後半相場が始まりました。今回の「新興株ウィークリー」では、年前半に大きく下げたものの、後半には挽回可能な銘柄はないのか、吟味してみることにしました。

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米金利低下が東証マザーズ指数を下支え

6/29(水)~7/5(火)の東証マザーズ指数は、6/29(水)~7/1(金)に下落し、残り2日間は反発する展開でした。日経平均株価の騰落パターンも同様でした。インフレ・金利上昇が景気減速につながるとの見方から米国株が下げた影響を受けましたが、米国市場が7/4(月)に休場だったこともあり、週明けは買い戻しが先行しました。

6/14(火)をピークに、米10年国債利回りが低下傾向であり、グロース銘柄が多い東証マザーズ指数はその分、下支えられている状況になっています。

個別には、建設図面・現場管理アプリのスパイダープラス(4192)が大きく上昇しました。6/29(水)にDX事業を営むチェンジ(3962)と共同で自治体のDX推進に向けた取り組みを始めると発表し、翌日から7/5(火)まで4営業日続伸しました。また、健保組合等に医療関連情報等を提供するデータホライゾン(3628)も上昇しました。6/29(水)にディー・エヌ・エー(2432)によるTOB(上場は維持される予定)が発表され、TOB価格を意識した買いが増えました。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

  • ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※2022/3/31終値を1として指数化。 期間:2022/3/31~2022/7/5

図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き

コード 銘柄名 株価(7/5) 週間 年初来
4194 ビジョナル 6,540 2.5% -32.6%
4478 フリー 3,410 0.3% -46.4%
4485 JTOWER 6,930 8.3% -28.2%
4180 Appier Group 925 3.6% -30.6%
4565 そーせいグループ 1,165 0.3% -38.8%
6027 弁護士ドットコム 4,085 3.8% -32.9%
4480 メドレー 2,843 3.6% 19.9%
4071 プラスアルファ・コンサルティング 2,166 -4.0% -31.9%
7342 ウェルスナビ 1,837 0.4% -10.1%
3479 ティーケーピー 1,752 -0.9% 27.1%
【ご参考】 日経平均株価 26,423.47 -2.3% -8.2%
  TOPIX 1,879.12 -1.5% -5.7%
  東証マザーズ指数 666.69 -1.6% -32.5%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※東証プライム市場に上場市場区分を変更したメルカリ(4385)は除外。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位10銘柄について、7/5時点での各種騰落率を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/6/28~2022/7/5の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と7/5時点の株価比較。
  • ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表3 6/28(火)~7/5(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄

コード 銘柄名 株価(7/5) 週間 年初来
4192 スパイダープラス 491 30.6% -63.0%
3628 データホライゾン 2,008 19.1% 8.6%
2934 ジェイフロンティア 2,475 17.3% 17.7%
4263 サスメド 899 15.9% -57.5%
6613 QDレーザ 625 14.7% -15.3%
3498 霞ヶ関キャピタル 2,466 14.5% -6.8%
4056 ニューラルポケット 1,385 13.5% -6.6%
2195 アミタホールディングス 1,760 13.5% 3.6%
9522 リニューアブル・ジャパン 839 13.2% -50.9%
3773 アドバンスト・メディア 736 9.4% 14.5%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※東証プライム市場に上場市場区分を変更したメルカリ(4385)は除外。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄(前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/6/28~2022/7/5の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と7/5時点の株価比較。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

≪新興株ウィークリー特選≫年後半に復活が予想される銘柄

7/4(月)現在、昨年末終値からの騰落率でみると、日経平均株価が9.2%下落したのに対し、東証マザーズ指数は33.8%も下落しました。前年末に1.51%だった米10年国債利回りが、7/1(金)現在は2.89%まで上昇していました。東証マザーズ市場をおもに構成するグロース銘柄は金利上昇に弱いため、大きな下落率となりました。

ただ、米10年国債利回りは6/14(火)の3.47%をピークに、この半月ほどは低下傾向です。インフレ動向に大きく影響する原油先物価格についても、WTI先物が7/5(火)に約3ヵ月ぶりに1バレル100ドル割れまで下落となりました。市場の関心は景気減速・悪化懸念へとシフトしてきました。インフレ・金利上昇懸念が落ち着けば、東証マザーズ市場をおもに構成するグロース銘柄の反発が本格化してくるかもしれません。

仮に、東証マザーズ指数の反発が本格化する場合、その主役は、リターン・リバーサルの考え方から、下落過程で大きく下げた銘柄が中心になると予想されます。そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、年前半に大きく下げたものの、後半には挽回可能な銘柄はないのか、吟味してみることにしました。

まず、以下の条件で銘柄を絞り込んでみました。

(1)東証マザーズ指数構成銘柄。
(2)時価総額50億円超。
(3)2021年末~2022/7/4(月)に株価が40%超下落。
(4)業種は、「情報・通信」、または「サービス」に属している。

上記のすべての条件を満たす銘柄は、38銘柄でした。そこから、四半期営業利益の進捗率等を勘案し、会社予想営業利益の達成が難しそうな銘柄や、減益予想の銘柄等を除き、

・業績面で当面は増益継続が見込めそうな銘柄
・会社予想営業利益が減益予想ながら、投資強化等が理由の銘柄

等、下期に反発を予想できる銘柄に絞った銘柄が、図表4で、(3)の株価下落率が大きい順に並べられています。

AI(人工知能)を活用したデータ解析を行うFRONTEO(2158)、中小企業向け業務支援システムを手掛けるココペリ(4167)はともに、今期(2023年3月期)会社予想営業利益が減益の見込みとなり、株価急落となりました。ただし、減益の理由はともに投資の強化によるコスト増となっています。売上成長が続き、投資の成果が出てくれば、株価回復が可能となりそうです。また、フォースタートアップス(7089)も人材投資の強化により、今期(2023年3月期)会社予想営業利益が減益の見込みです。

これらに対し、以下の銘柄は、基本的に業績は堅調であると考えられます。

HENNGE(4475)・・・企業向けクラウドセキュリティサービス。2022年9月期・上期の営業利益は通期計画比進捗率80.6%。
エクサウィザーズ(4259)・・・デジタル化やAI(人工知能)の活用を支援。2022年1~3月期に営業損益が黒字転換。
ポート(7047)・・・就職情報提供、住宅リフォーム分野のマッチングサイト運営。営業利益は今期もほぼ倍増の会社予想。
グッドパッチ(7351)・・・デジタルサービスのデザインを支援。2022年8月期・上期の営業利益は通期計画比進捗率66.0%。
ユーザベース(3966)・・・企業向けデータサービス。2022年12月期・第1四半期の営業利益は通期計画比進捗率79.5%。
ライトアップ(6580)・・・中小企業をIT化で支援。2023年3月期は売上高44.0%増、営業利益19.8%増が会社計画。
エスユーエス(6554)・・・IT分野を中心に技術者を派遣。2022年9月期・上期の営業利益は通期計画比進捗率65.9%。
サーキュレーション(7379)・・・プロ人材紹介サービス。2022年7月期・第3四半期累計営業利益は通期計画比進捗率99.2%。

※ユーザーベースの進捗率計算では、会社予想通期予想は「4~9億円」であるため、中間値の6.5億円を使用。

図表4 年後半「大復活」予想銘柄

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄 株価(7/4) 年初来騰落
2158 2158 2158 2158 FRONTEO 910 -72.5%
4167 4167 4167 4167 ココペリ 741 -65.6%
4475 4475 4475 4475 HENNGE 826 -57.4%
7089 7089 7089 7089 フォースタートアップス 1,925 -55.7%
4259 4259 4259 4259 エクサウィザーズ 460 -54.3%
7047 7047 7047 7047 ポート 686 -51.8%
7351 7351 7351 7351 グッドパッチ 1,315 -51.4%
3966 3966 3966 3966 ユーザベース 758 -48.4%
6580 6580 6580 6580 ライトアップ 1,555 -48.1%
6554 6554 6554 6554 エスユーエス 684 -46.5%
7379 7379 7379 7379 サーキュレーション 2,148 -41.6%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。年初来騰落は、2021/12/30~2022/7/4の株価騰落を示しています。

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

HENNGE(4475)~高水準の出来高が続くサイバーセキュリティ関連銘柄

★日足チャート(過去1年)

  • ※データは2022/7/6(日足) 10:50 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■単一ID・パスワードでログインできるサービスを提供

当社は「HENNGE One」を主要サービスとしています。このサービスは、企業が利用する複数のクラウドサービスに対して、単一のIDとパスワードで横断的なログインが可能になるサービスです。ID統合機能のほか、特定の場所や端末以外からのログインを制限するアクセス制限機能、メールの暗号化や保管、大容量ファイルの送受信といった情報漏洩対策機能などを備えています。

このサービスは、企業に対して利便性と安全性のバランスのとれたSaaS(クラウド事業者が提供するソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス)を提供しています。収益はサービス料を年額で定額課金するサブスクリプション型が中心で、安定的な収益源です。

■市場は今期予想営業利益の上振れに期待

当社は5/12(木)に2022年9月期・第2四半期決算を発表し、売上高は27.0億円(前年同期比17.3%増)、営業利益3.5億円(前年同期は0.23億円の赤字)となりました。同四半期末の契約企業数は2,056社と、前年同期末の1,813社から順調に拡大しています。
2022年9月期・通期では、営業利益4.34億円(前期比14.2%増)が会社計画となっています、第2四半期末における営業利益進捗率は80.6%に達しており、その達成は比較的容易であると考えられます。

営業利益の市場コンセンサスは2022年9月期5.1億円、2023年9月期は9.4億円と順調な拡大が見込まれています。株価は落ち着きを取り戻し始めており、サイバーセキュリティ関連銘柄の一角として人気が続く可能性もありそうです。

ライトアップ(6580)~中小企業をIT化で支援

★日足チャート(過去1年)

  • ※データは2022/7/6(日足) 10:00 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■中小企業をIT化で支援。ブルーオーシャンで成長。

当社は中小零細赤字企業を主要顧客とし、その業務をIT化させ、経常利益率の向上を実現していけるような、サービスを開発・提供しています。

サイバーエージェントのコンテンツ部門出身のメンバーを中心に設立され、“全国、すべての中小企業を黒字化する”という目標を掲げています。特に、補助金・助成金の自動診断システム及びオンライン申請ができる「Jシステム」の成長が継続しています。

DX等のITサービス会社の多くは、大企業向けに事業展開をしているため、主要な競合他社が少ないのが強みになっています。さらに、顧客の持つITやDX化の悩みに対して、診断から相談(コンサル)、問題解消の為の製品提供まで各サービスごとの連携により、一元的にカバーが可能な点も強みと考えられます。また、主力であるDXソリューション事業では、顧客と代理店(フランチャイズ)の双方から収益を得られる構造である点も強みのひとつと言えそうです。

■前期の売上・営業利益、会社予想は未達。

前期(2022年3月期)の売上・営業利益は会社予想を達成できず、株価も右肩下がりの状態が続いてきました。7/5(火)時点の株価は年初来高値の半値水準です。
 
前期決算発表前の2/14(月)に通期業績予想の上方修正をし、株価は一旦上昇基調に転じていました。上方修正の期待感が株価に織り込まれていたこともあり、前期決算の会社予想未達によるインパクトが大きく、失望売りに繋がりました。

一方、前期においても売上・営業利益自体はともに増加し、上場後過去最高となりました。そうした中、「事業計画及び 成長可能性に関する事項」を6/30(木)に発表。中小企業に特化した、スモールBPO(業務の外部委託)サービスの積極展開を打ち出しています。
当社は地方の中小企業に大きな潜在市場が存在していると見込んでおり、当該サービスに関しては新たな市場の開拓としての側面も期待されています。サービス単体における今期(2023年3月期)の会社予想売上高は4.8億円です。なお、「BPO新規申込者数」は6月分データからKPI(目標達成の為の中間指標)として公表予定となっています。

今期業績予想は、会社予想、市場予想ともに増収増益となっています。前期業績予想で市場に失望を与えただけに、今期会社予想を達成し、主力事業であるDXソリューションシステムの堅調な推移、スモールBPOサービスの拡大等を実現できれば株価上振れ余地があると筆者は考えます。

2023年3月期第1四半期決算発表は8月中旬を予定しています。注意が必要な点として、当社の利益は下期偏重となりやすいことです。要因として、公的支援制度(補助金・助成金)の〆切が年度末に集中することが挙げられています。よって、次回決算において進捗率を確認する際に留意していただければと存じます。

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