決算発表接近!上方修正&株価上昇期待の銘柄は?

決算発表接近!上方修正&株価上昇期待の銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之

2022/07/13

東証マザーズ指数は底固い動きとなっています。米国で、グロース銘柄の多いナスダック指数が反発場面となり、その影響を受けたものと考えられます。

そうした中、7月下旬~8月中旬にかけ、決算発表シーズンが本格化します。今回の新興株ウィークリーでは、業績予想の上方修正、およびそれによる株価上昇が期待される銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

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東証マザーズ指数は底固い動き

7/5(火)~7/12(火)の東証マザーズ指数は0.5%上昇し、日経平均株価のパフォーマンス(0.3%下落)を上回りました。米10年国債利回りは7/6(水)の2.75%をボトムにやや戻しましたが、グロース銘柄の多い米ナスダック指数が7/1(金)~7/8(金)に5営業日続伸するなど、自律反発の動きがみられ、その影響もあって底固く推移しました。

東証マザーズ指数構成銘柄で、時価総額最大のビジョナル(4194)が7/7(木)~7/12(火)に4営業日続落となりました。7/7(木)の取引時間中に、多田社長(当時)の急逝が発表され、その後売りが増えた形です。同氏は「ダイレクトリクルーティングの育ての親」との評もあり、そのリーダーシップが失われたことで不透明感が強まったとみられます。

データ解析支援を手掛けるFRONTEO(2158)が7/5(火)~7/11(月)に5営業日続伸となりました。特に7/11(月)にはストップ高水準まで買われる大幅高となりました。7/8(金)夜に「医師による認知症の診断を補助するAI事業などでNTT東日本と提携する」と報じられ、それが好感されたようです。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

  • ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※2022/3/31終値を1として指数化。 期間:2022/3/31~2022/7/12

図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き

コード 銘柄名 株価(7/12) 週間 年初来
4194 ビジョナル 6,030 -7.8% -37.9%
4478 フリー 3,195 -6.3% -49.8%
4485 JTOWER 6,350 -8.4% -34.2%
4565 そーせいグループ 1,211 3.9% -36.4%
6027 弁護士ドットコム 4,125 1.0% -32.3%
4071 プラスアルファ・コンサルティング 2,281 5.3% -28.3%
4180 Appier Group 901 -2.6% -32.4%
7342 ウェルスナビ 1,845 0.4% -9.7%
4480 メドレー 2,630 -7.5% 10.9%
4880 セルソース 4,060 4.2% -25.2%
【ご参考】 日経平均株価 26,336.66 -0.3% -8.5%
  TOPIX 1,883.30 0.2% -5.5%
  東証マザーズ指数 670.06 0.5% -32.2%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位10銘柄について、7/12時点での各種騰落率を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/7/5~2022/7/12の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と7/12時点の株価比較。
  • ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表3 7/5(火)~7/12(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄

コード 銘柄名 株価(7/12) 週間 年初来
4575 キャンバス 860 43.6% 377.8%
7707 プレシジョン・システム・サイエンス 613 29.3% -71.8%
4192 スパイダープラス 622 26.7% -53.1%
4563 アンジェス 387 18.0% 0.8%
4596 窪田製薬ホールディングス 239 16.0% 60.4%
2158 FRONTEO 1,074 14.1% -67.6%
4425 Kudan 2,204 14.1% -25.0%
7095 Macbee Planet 7,030 13.9% 9.8%
4431 スマレジ 1,263 13.8% -41.1%
7777 スリー・ディー・マトリックス 342 13.2% -34.7%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄(前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/7/5~2022/7/12の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と7/12時点の株価比較。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

決算発表接近!上方修正&株価上昇期待の銘柄は?

7月下旬以降から8月中旬頃まで、東証グロース市場でも決算発表が本格化します。発表対象の会計期間は、決算期ごとに以下のようになっています。

・3月決算銘柄・・・2023/3期の第1四半期(2022/4~6期)、および2023/3期(通期)会社予想業績の見直し。
・6月決算銘柄・・・2022/6期本決算(2021/7~2022/6期)、および2023/6期(通期)会社予想業績。
・9月決算銘柄・・・2022/9期・第3四半期(2021/10~2022/6期)、および2022/9期(通期)会社予想業績の見直し。
・12月決算銘柄・・・2022/12期・第2四半期(2022/1~6期)、および2022/12期(通期)会社予想業績の見直し。

3月決算の銘柄にとっては、今回が当年度で最初の四半期決算になります。投資家は、第1四半期の業績を見た後に、2023/3期の会社予想業績に対し、達成できそうか、またはできなさそうかの感触をつかむことができます。逆に、第1四半期の業績を事前に予想することは、ヒントがとても少なく、企業アナリスト以外では相当困難なのが現実です。

6月決算の銘柄については現状で、第3四半期までの業績が既に明らかとなっています。2022/6期(通期)業績の達成水準を予想する材料も多くなっており、予想はその分容易になります。ただ、新たに発表される2023/6期について、会社側がいかなる業績予想を発表してくるかについてはヒントがとても少なく、その点がリスク要因となります。

9月決算・12月決算銘柄については、すでに発表済みの四半期業績がヒントとしてあり、通期会社予想業績の修正があれば、株価が変動する可能性があります。今回の「新興株ウィークリー」では、通期業績予想が上方修正される可能性が、相対的に大きいと考えられる銘柄を抽出すべく、以下の条件でスクリーニングを行ってみました。

(1)東証グロース市場に上場
(2)時価総額50億円以上
(3)9月決算、または12月決算
(4)四半期累計(9月決算銘柄の2021/10~2022/3期、12月決算銘柄の2022/1~3期)営業利益について、 
   ・前年同期比で20%超の営業増益
   ・前年同期比営業増益率が、通期会社予想営業増益率(前期比)を超過
   ・営業利益の通期会社計画に対する進捗率が「標準」を超過(図表4の脚注参照)
(5)通期会社予想営業利益が10%超の増益予想

図表4の銘柄は、これらの条件をすべて満たしています。また、四半期営業増益率の大きい順で掲載しています。
なお、出来高がやや少ない銘柄も含まれており、投資タイミングには注意が必要そうです。

図表4 決算発表接近!上方修正&株価上昇期待の銘柄は?

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄名(決算月) 株価(7/12) 四半期(累計)営業増益率 進捗率 通期会社予想営業増益率
6554 6554 6554 6554 エスユーエス(9) 727 302.0% 65.9% 208.4%
2122 2122 2122 2122 インタースペース(9) 1,019 297.8% 56.9% 96.7%
3993 3993 3993 3993 PKSHA Technology(9) 1,890 91.0% 91.6% 40.2%
3695 3695 3695 3695 GMOリサーチ(12) 3,835 68.8% 51.2% 16.3%
4058 4058 4058 4058 トヨクモ(12) 1,367 43.3% 39.2% 26.6%
3623 3623 3623 3623 ビリングシステム(12) 900 35.4% 35.9% 11.3%
4178 4178 4178 4178 Sharing Innovations(12) 1,907 23.9% 38.0% 22.0%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。銘柄名右横カッコ内の数字は決算月。
  • ※「収益認識による会計基準」の採用により、決算短信等で収益の増減率が記載されていない場合でも、SBI証券による計算結果による増減率を記載。
  • ※9月決算銘柄の場合“標準”は、「四半期(累計)営業増益率」は2021/10~2022/3期の営業増益率(前年同期比)で、通期(2022/9期)会社予想営業利益に対する進捗率50%超とする。
  • ※12月決算銘柄の場合“標準”は、「四半期(累計)営業増益率」は2022/1~3期の営業増益率(前年同期比)で、通期(2022/12期)会社予想営業利益に対する進捗率25%超とする。

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

PKSHA Technology(3993)~「AI Saas」が急拡大

★週足チャート(過去2年)

  • ※データは2022/7/13(週足) 13:10 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「AI Saas」が伸び、業績が急拡大

当社は、研究・開発あるいはプロダクトを通じ、顧客企業の業務の高度化、さらにはDXを実現する企業です。

人間が日常的に使っている自然言語をコンピュータに処理させる「自然言語処理」や、「機械学習技術」、「画像認識」等の技術を用いアルゴリズム(コンピュータの計算方法)を開発しています。アルゴリズムは、顧客企業のハードやソフトウェアに組み込まれる他、自社ソフトウェアとして提供されます。

2022/9期第2四半期の売上高は56.8億円(前年同期比35.7%増)、営業利益9.16億円(同91.0%増)の大幅な増収増益となりました。通期会社予想に対する進捗率は、売上高で47.4%ですが、営業利益では91.6%と順調に推移しています。

クラウドサーバー上にあるソフトウェアをインターネットを通じて顧客が利用する「AI Saas」では、毎年決まった収益が期待できるARR(年間経常収益)が拡大中です。その売上高が前年同期比で424.5%も伸び、利益拡大につながっています。

■グロース株全般の調整一巡に期待

今期(2022/9期)会社予想営業利益は10億円(前期比40.2%増)ですが、前項でご説明したように、営業利益の進捗率は91.6%を超え、年度後半に業績予想が上方修正される可能性は大きそうです。

売上・利益はこれまでも順調に伸びてきましたが、安定収益の下支えを裏付けに、今後も成長が見込まれそうです。ただ、株価はここ2年間での安値圏に近いのが現状です。

今期会社予想1株利益8円52銭に対し、時価(7/12終値・1,890円)は予想PERで約222倍の計算です。典型的なグロース銘柄であり、金利の上昇圧力が強い現状は、逆風が強いといえそうです。逆に、金利上昇傾向が一巡し、成長性が再評価されれば、本格的反発につながる可能性が大きそうです。

次回決算発表予定は、2022/8/12(金)です。

GMOリサーチ(3695)~通期で最高益更新が視野に

★週足チャート(過去2年)

  • ※データは2022/7/13(週足) 10:50 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■GMO傘下~マーケティングリサーチのテック企業

GMOインターネット(9449)傘下で、企業がマーケティング活動をする際に使用するオンラインリサーチプラットフォームを提供しています。

当社は消費者調査を行いたい会社を顧客としています。
調査依頼元企業より支払われた料金から、アンケートコンテンツ提供会社(消費者が実際にアンケート回答するサイト運営会社等)にポイント謝礼を支払うことで、差額が当社の利益となる仕組みです。
主な顧客には野村総合研究所(4307)がおり、販売実績の10%以上を占めています。(2021/12通期時点)

事業別売上高構成比は、アンケート作成から集計まで一括して請け負う「アウトソーシング」が63%、顧客自身で作成から集計まで行うことで費用を低額に抑えられる「D.I.Y」事業が35%となっています。
また、海外売上高の構成比も23%と中々存在感のある割合です。(2022/12期、第1四半期時点)

■通期業績予想は売上高・各段階利益、軒並み過去最高

会社予想の通期業績は売上高・各段階利益(営業利益、経常利益、最終利益)揃って過去最高となる見込みです。

5/9(月)に発表された2022/12期第1四半期決算での進捗率は、下記の通りでした。

① 売上高  ⇒ 30%   ② 営業利益 ⇒ 51% 
③ 経常利益 ⇒ 56%   ④ 最終利益 ⇒ 61% 

単純計算で、第1四半期時点での目安となる25%を全項目で大きく超えているのに加え、事業ごとの売上高も四半期ベースで過去最高を達成し、目を見張るような結果となりました。
通期の業績予想の上方修正に関しては、保守的な一面からかなかったものの、今後の決算発表に行われた場合は株価上昇の更なる大きな追い風となりそうです。

また、世界リサーチ市場におけるアジア市場の推定成長率は7.3%(2021年・会社調べ)で、当社は12%ものシェアを誇っています。成長市場での業績拡大にも期待です。

次回決算発表予定は、2022/8/4(木)です。

トヨクモ(4058)~簡単・低価格な法人向けクラウドサービス。全売上のほとんどがストック型

★週足チャート(過去2年)

  • ※データは2022/7/13(週足) 11:30 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■誰でも“使いやすい”クラウドサービスを“低価格”で提供


法人向けクラウドサービスの開発・販売を行う会社です。
企業理念として「ITの大衆化」を掲げ、IT初心者の方でも簡単に使用できるサービスを低価格で提供しています。

全サービスがストック型で、安定した収益をベースに業績成長をしています。

業務アプリケーション構築サービスである「kintone連携サービス」は売上高の60%を占めており、民間企業以外でも新型コロナの特別給付金申請のオンライン化や感染者情報通知システムの構築等、多くの自治体で活躍しています。

売上高の40%を占めるのは緊急時に簡単に情報共有が可能なクラウドサービス「安否確認サービス」です。他社の同様のサービスでは、実際の災害時にはシステムが稼働しないという問題がありました。しかし、2021年の大規模実証実験によって当社サービスの有用性が実証されました。よって、新規契約のみならず、他社からの乗り換え需要も見込まれています。


■サービス契約者数は右肩上がり。年間平均解約率は全体1%以下にとどまる

一過性の“ブーム”ではなく、恒常的な“企業文化”となり得るようなサービスの展開を目指しています。
その理念が実を結び、簡単・低価格な同社サービスは、同社クラウドサービス契約者数は、右肩上がりで、引き続き順調に増加が期待されます。契約者数の増加に比例し、売上高も、前年同期比1.42倍となっています。(2022/12期、第1四半期)。
解約率の低さも同社の特徴として挙げられ、サービス全体として0.68%となっています。
契約者数増と低水準の解約率から、顧客から当社サービスが高く評価されていることや企業としての成長性が見て取れます。

業績に関しては、6期連続売上高増、2期連続営業増益を達成し、今期も増収増益予想と非常に好調です。
加えて、2022/12期第1四半期時点で営業利益の進捗率は
39.2%とかなりのハイペースとなっています。
営業利益の伸びで注意が必要な点は、広告費の減少により増益となった部分もあるということです。今期の広告活動予算5億円のうち、12%しか前四半期決算時点で使用していない為、今後の増益抑制にはなりそうです。その反面、宣伝効果による成長の加速が期待されます。


前述の通り、当社はストック型収益の企業である為、第1四半期よりそれ以降の決算内容に徐々に期待が高まりやすい企業といえます。ゆえに、上方修正期待も第2四半期以降に高まってゆくことが予想されます。

次回決算発表予定は、2022/8/10(水)です。

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