大幅増益、株価急動意の中小型株

大幅増益、株価急動意の中小型株

投資情報部 鈴木 英之/栗本奈緒実

2022/08/17

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東証マザーズ指数は上昇基調が続く

8/9(火)~16(火)の東証マザーズ指数は2.7%上昇しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンス(+3.1%)に対しては劣後しましたが、TOPIXのパフォーマンス(+2.3%)に対しては上回っています。

米国では、8/10(水)に7月CPI(消費者物価指数)、8/11(木)に同PPI(生産者物価指数)が発表され、どちらも物価上昇率の鈍化を示す内容になりました。これを受け、市場ではFRB(米連邦制度準備制度理事会)が急速な利上げを続けるとの見方が後退し、株価上昇につながりました。

東証マザーズ含め、日本株の上昇はこうした株式市場全般における「リスクオン」の流れに乗った形になっています。決算発表の進捗に従い、リスクが取りやすくなっていったという側面もありそうです。

時価総額上位銘柄では、前週同様、通信設備のシェアリング事業を手掛けるJTOWER(4485)の上昇が目立ちました。8/8(月)に発表された今年度第1四半期決算で純利益が前年同期比2.5倍弱の1.3億円と黒字が確保されたことが好感されました。結局8/9(火)~15(月)に4営業日続伸となり、その間の値上がり率は15.8%に達しました。
この他、メドレー(4480)は8/12(金)発表の決算で上半期に単純計算で前年同期比51.8%増の営業増益が示され、8/15(月)・8/16(火)と続伸しました。同様にAppier Group(4180)も8/12(金)の決算発表で第1四半期の営業赤字縮小を発表し、それが好感されて、翌日以降の株価上昇につながりました。

個別には、イーディーピー(7794)の上昇が目立ちました。8/12(金)に2023/3期・第1四半期決算を発表するとともに、通期業績予想の上方修正も発表され、8/15(月)にストップ高し、8/16(火)も大幅高しました。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

  • ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※2022/3/31終値を1として指数化。 期間:2022/3/31~2022/8/16

図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き

コード 銘柄名 株価(8/16) 週間 年初来
4194 ビジョナル 8,060 5.4% -17.0%
5032 ANYCOLOR 6,470 3.9%
4485 JTOWER 8,660 15.8% -10.3%
4478 フリー 3,095 -10.3% -51.3%
4565 そーせいグループ 1,637 -1.3% -14.0%
4480 メドレー 3,770 18.4% 58.9%
4180 Appier Group 1,180 26.6% -11.5%
4071 プラスアルファ・コンサルティング 2,596 0.5% -18.4%
3479 ティーケーピー 2,453 -0.9% 78.0%
7779 CYBERDYNE 451 27.0% 27.4%
【ご参考】 日経平均株価 28,868.91 3.1% 0.3%
  TOPIX 1,981.96 2.3% -0.5%
  東証マザーズ指数 750.21 2.7% -24.1%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位10銘柄について、8/16時点での各種騰落率を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/8/9~2022/8/16の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と8/16時点の株価比較。
  • ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※ANYCOLOR(5032)は2022/6/8に新規上場をした為、年初来の数値なし。

図表3 8/9(火)~8/16(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄

コード 銘柄名 株価(8/16) 週間 年初来
7794 イーディーピー 16,210 50.8%
6081 アライドアーキテクツ 1,052 41.6% 23.0%
9246 プロジェクトカンパニー 6,180 40.0% 64.4%
6069 トレンダーズ 1,897 33.2% 132.5%
6034 MRT 1,918 32.9% 36.3%
4435 カオナビ 3,515 32.8% 18.0%
4371 コアコンセプト・テクノロジー 9,530 32.4% 169.2%
4442 バルテス 2,161 30.1% 58.9%
7779 CYBERDYNE 451 27.0% 27.4%
4417 グローバルセキュリティエキス 5,840 27.0% 73.8%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄(前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/8/9~2022/8/16の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と8/16時点の株価比較。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

大幅増益、株価急動意の中小型株

上場企業の決算発表は、8/15(月)までで、おおむね一巡しました。今後は、発表された業績数値をベースに、銘柄間比較が本格化するため、銘柄ごとに明暗が分かれてくる可能性が大きそうです。

そこで、「新興株ウィークリー」では、決算発表がほぼ終了した今、東証スタンダード、またはグロース市場構成銘柄のうち、好業績銘柄として選別され、株価上昇が期待される銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。

(1)東証スタンダード、またはグロース市場に上場
(2)時価総額100億円以上1,000億円未満(8/16現在)
(3)3月決算銘柄
(4)8/15(月)までに2022/4~6期の決算発表を実施済み
(5)8/8(月)まで20営業日の1営業日当たりの平均出来高が2万株超
(6)2023/3期・第1四半期(2022/4~6期)の営業増益率が前年同期比で50%超
(7)同四半期の営業増益率が通期会社予想営業増益率を上回っていること
(8)同四半期営業利益の通期会社予想営業利益に対する進捗率が25%超

図表4の銘柄は、これらの条件をすべて満たしています。また、直近四半期(2022/4~6期)の営業増益率(前年同期比)が大きい順に並べています。

図表4 大幅増益、株価急動意の中小型株

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄名 株価
(8/16)
2022/4~6期営業増益率 進捗率 会社予想通期営業増益率
6565 6565 6565 6565 ABホテル 1,470 1266.7% 41.0% 25.1%
6319 6319 6319 6319 シンニッタン 218 284.9% 28.4% 33.7%
4435 4435 4435 4435 カオナビ 3,515 265.3% 51.9% 20.6%
4080 4080 4080 4080 田中化学研究所 1,350 243.6% - -
6777 6777 6777 6777 santec 2,061 192.3% 41.2% 27.9%
9308 9308 9308 9308 乾汽船 2,063 146.9% 44.0% -0.4%
7480 7480 7480 7480 スズデン 2,102 111.8% 35.1% -11.5%
4031 4031 4031 4031 片倉コープアグリ 1,222 110.7% 38.9% 24.6%
7908 7908 7908 7908 KIMOTO 250 96.7% 27.1% 43.8%
8920 8920 8920 8920 東祥 1,188 84.1% 28.4% -55.4%
3793 3793 3793 3793 ドリコム 775 62.1% 40.9% 25.7%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
  • ※2022/4~6期営業増益率は前年同期比。
  • ※ABホテル(6565)は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を2023/3期・第1四半期から適用しているため、2022/3期・第1四半期からの増減率は、決算短信に記載されていません。図表4の各種増益率は、SBI証券が単純計算したものです。
  • ※田中化学研究所(4080)の今期会社予想営業損益は6億円の赤字になっていますので、今期予想営業増益率は「-」で表示されています。また、同社の第1四半期営業利益は11.6億円であり、すでに会社予想営業損益を上回っているため、(8)の条件を満たしているものとして取り扱いますが、表記は「-」としています。
  • ※カオナビ(4435)の2023/3期会社予想営業利益は1.2~3.0億円のレンジで示されており、ここでは中間値の2.1億円を基準に各種比率を計算しています。
  • ※カオナビ(4435)、ドリコム(3793)は、日証金より貸株注意喚起銘柄に指定されています。(2022/8/17現在)

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

ABホテル(6565)~事業環境は回復途上でも、一足早く「最高益(第1四半期)」更新

★週足チャート(過去3年)

  • ※データは2022/8/17(週足) 9:30 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■愛知県を中心にホテル事業。東祥(8920)の子会社

愛知県を中心に、各地でホテル事業を展開しています。1979年に東和建設として創設され、99年に東祥に商号を変更。当社はその後の2014年に、新設会社分割により設立されました。現在も東祥は52.77%を保有する親会社です。

駅前などビジネスで利用ができる場所を中心に、多店舗展開を行っています。原則、支配人や副支配人を直接雇用するのではなく、業務委託契約の形とし、コスト管理を行っています。

左図にもある通り、当社は2020/3期まで順調に売上高を拡大させてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2021/3期には売上高が急減、営業利益も0.4億円まで縮小してしまいました。

株価は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が懸念される中、2020/3/23に753円の安値を付けています。

■第1四半期の営業利益は、すでに中間期会社計画を超過

2023/3期の会社予想業績は売上高70億円(前期比10.3%増)、営業利益12億円(同25.1%増)と増収・増益を見込んでいます。そうした中、7/29(金)に発表された第1四半期決算では、売上高が18.8億円(前年同期比35.2%)、営業利益4.92億円(単純計算で同13.6倍)となりました。

第1四半期の営業利益進捗率は、中間期の会社予想に対し104%、同通期に対して41%に達しており、至極順調なスタートになったといえそうです。第1四半期としては、営業利益、経常利益、純利益が過去最高益更新となりました。

訪日外国人の回復は遅れているものの、宿泊事業の延べ宿泊数は回復傾向にあるようです。そうした中、感染症拡大防止対策の強化、インターネット広告の強化、長期宿泊者用プランの販売等の営業努力により、既存店の宿泊稼働率の低下を抑えることができたことが業績改善に寄与した形です。

事業環境は回復途上でも、一足早く「最高益(第1四半期)」を更新できたことは高く評価できそうです。新型コロナウイルスの感染については、全国の実効再生産数が1を割ってきており、感染拡大ピークアウトも期待できるようになってきました。事業環境のさらなる改善(経済再開の本格化)、および高い進捗率から業績予想の上方修正に期待もでき、株価の上昇に期待したいところです。

カオナビ(4435)~第1四半期時点での営業利益進捗率、50%超え※

★週足チャート(過去3年)

  • ※データは2022/8/17(週足) 9:30 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■顔写真付き人材情報管理サービス

『カオナビ』という企業向けの人材情報管理サービスを展開しています。

同サービスでは、従業員のスキルや経験等のデータをクラウド上で一元管理することで、組織の「見える化」を実現可能にします。また、大きな特徴としては従業員の顔写真と個人データを結び付けながらの利用が可能な点が挙げられます。

システムの利便性やサービスの手厚さが好評を博し、タレントマネジメントシステムにおいて7年連続シェアNo.1です。
(タレントマネジメントシステム=企業が、従業員の基本情報や能力等の情報を一元的にデータ化し、管理・共有できるシステム)

利用企業数は現在2,500社を超え、前年同期比でも22%増と、順調に拡大を続けています。(2023/3月期第1四半期時点)
なお、上記の利用企業数は同社が想定するターゲット領域のまだ1%未満に過ぎず、今後の拡大余地を感じさせられます。

料金体系は「登録人数」×「利用機能」に応じたものとなっており、ストック収益をメインとしています。売上高は上場来一貫して右肩上がりです。


■第1四半期時点で営業利益進捗率が50%超!(※)

株価は、2020/10に上場来高値7,330円をつけた後、営業赤字が嫌気され下降線をたどっていました。

上昇基調へ切り替え始めたのは、5/12(木)に前期決算発表が実施されてからです。2022/3期の営業利益が事前の会社予想を上振れ、今期に当たる2023/3期も営業黒字が継続される見通しであることが提示されたことから、5/13(金)の当社株価は22%上昇し、その流れが続いています。

そのような中で、8/10(水)に今期第1四半期決算が発表され、営業利益は前年同期比265%増となる1.09億円が示されました。この数字は通期業績予想※の50%超もの進捗率にあたります。好調であった直近決算は、5月から上昇へと切り替え始めていた株価の推移を後押しする形となりました。

通期業績の上昇修正に関しては、マーケティング投資の計画を理由に行われませんでした。
ただ、今後の四半期ごとの決算発表でも着実に利益を示し続けることができれば、業績の上方修正や株価の上昇基調継続にも期待ができると考えます。

※図表4と同じく、2023/3期会社予想営業利益は1.2~3.0億円のレンジで示されており、ここでは中間値の2.1億円を基準に各種比率を計算。

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