「テンバガー」目指す好業績IPO銘柄は?
投資情報部 鈴木 英之/栗本奈緒実
2022/08/24
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米長期金利が上昇し、東証マザーズ指数は反落
8/16(火)~23(火)の東証マザーズ指数は2.3%下落しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンス(-1.4%)、およびTOPIXのパフォーマンス(-0.5%)に対して劣後しました。
米10年国債利回りは8/1(月)2.57%から8/22(月)3.02%まで反転・上昇しました。市場では、6月から7月にかけ、FRB(米連邦準備制度理事会)による急速な政策金利の引き上げを受け、米景気・企業業績の鈍化が予想され、来年以降は金利が下がるとの見方が増えていました。それを受け、米10年国債利回りが低下し、グロース銘柄の多い東証マザーズ指数も追い風を受けてきました。しかし、足元ではFRBメンバーからタカ派的な発言が目立ち、米10年国債利回りが上昇に転じたことで、東証マザーズ指数も下落しました。
6/20(月)~8/17(水)に日経平均株価は12.4%上昇しましたが、東証マザーズ指数は24.8%上昇していました。上昇率が相対的に大きかった分、下落時は逆に東証マザーズ指数の下落率の方が大きくなりました。
グロース銘柄全般が反落気味となったことから、東証マザーズ指数の時価総額上位も総じて下げる銘柄が多くなりました。特に8/9(火)~8/16(火)に18.5%も上昇したメドレー(4480)の下落率(12.5%)が大きくなりました。
時価総額100億円以上の銘柄全体では、掲示板等で不用品の譲り合い等を仲介するジモティー(7082)の値上がりが目立ちました。8/15(月)に発表された同社の今期第2四半期決算(累計)は、営業利益が1.71億円(前年同期比41.4%減)となり、通期会社予想営業利益4.46億円(前期比18.3%増)に対する進捗率は38.3%と出遅れた形になりました。8/16(火)の同社株は107円安で引けています。ただ、2022/1~3月期の営業赤字200万円から、4~6月期は1.71億円の黒字(前年同期比3.8%減)と改善傾向であり、8/17(水)・8/18(木)では計754円高と持ち直しました。
図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2022/3/31終値を1として指数化。 期間:2022/3/31~2022/8/23
図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
- ※東証マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位10銘柄について、8/23時点での各種騰落率を掲載。
- ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
- ※「週間」は2022/8/16~2022/8/23の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と8/23時点の株価比較。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- ※ANYCOLOR(5032)は2022/6/8に新規上場をした為、年初来の数値なし。
図表3 8/16(火)~8/23(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
- ※東証マザーズ指数構成銘柄(前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
- ※「週間」は2022/8/16~2022/8/23の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と8/23時点の株価比較。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
「テンバガー」目指す好業績IPO銘柄は?
間もなく8月相場も終わります。一時に比べれば堅調さを取り戻した中小型株市場ですが、年前半は米金利上昇を背景とするグロース株への逆風があり、低迷した時期もありました。
IPO(新規上場)市場についても、2022年前半は、中小型株市場の低迷を映すように低調でした。年間で123社(プロ・マーケット市場を除く)上場した2021年は、7月までに62社が東証に新規上場しましたが、今年の東証には7月までに40社の新規上場にとどまっています。
しかし、逆風を突いて上場してきた新規上場銘柄はその分、打たれ強さを持っており、今後のグロース市場やスタンダード市場で大いに活躍してくれるかもしれません。そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、6月までに新規上場した銘柄の中から、今後活躍し、成長して「テンバガー」も目指せそうな銘柄を抽出すべく、スクリーニングをしてみました。
(1)2022年1~6月に、東証グロース市場に新規上場。
(2)過去3期、売上高が年10%超の成長。
(過去3期の財務データがない場合は、前会計期で上記条件を満たしていること)
(3)過去2期、営業利益が年10%超の増益。または営業赤字縮小、または黒字転換。
(過去2期の財務データがない場合は、前会計期で上記条件を満たしていること)
(4)直近決算発表が四半期決算の場合、営業利益の通期会社計画に対する進捗率が以下の数字を超えていること。
・直近決算発表が第1四半期の場合、進捗率25%超
・同第2四半期の場合、進捗率50%超
・同第3四半期の場合、進捗率75%超
(5)今期会社予想売上高増加率、および予想営業増益率がともに10%超。
図表4の銘柄は、上記(1)~(5)をすべて満たしています。掲載の順番は、(5)の会社予想営業増益率が高い順になっています。新規上場銘柄が成長し、将来「テンバガー」を目指すには、創業間もない時期から売上高、利益ともに高い成長を続けていることは、非常に重要であると、筆者は考えています。
図表4 「テンバガー」目指す好業績IPO銘柄は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名(新規上場日) | 株価(8/23) | 公開価格 | 初値 | 会社予想通期営業増益率 |
5026 | 5026 | 5026 | 5026 | トリプルアイズ(5/31) | 1,266 | 880 | 2,200 | 188.6% |
9218 | 9218 | 9218 | 9218 | メンタルヘルステクノロジーズ(3/28) | 854 | 630 | 880 | 151.4% |
9219 | 9219 | 9219 | 9219 | ギックス(3/30) | 958 | 1,070 | 1,100 | 110.5% |
7794 | 7794 | 7794 | 7794 | イーディーピー(6/27) | 14,500 | 5,000 | 8,200 | 80.6% |
5032 | 5032 | 5032 | 5032 | ANYCOLOR(6/8) | 6,620 | 1,530 | 4,810 | 43.4% |
7793 | 7793 | 7793 | 7793 | イメージ・マジック(3/3) | 1,140 | 1,740 | 2,800 | 24.5% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※銘柄名横のカッコ内の数値は新規上場日。
- ※ANYCOLOR(5032)の今期会社予想営業利益は「5,510~6,510百万円」と、レンジで示されており、増益率の計算には中間値の6,010百万円を使用。
- ※イーディーピー(7794)は、8/24時点で日々公表銘柄に指定されています。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
イーディーピー(7794)~人工ダイヤモンドの原材料を製造。成長拡大のグローバル企業
★日足チャート(過去3ヵ月)
- ※データは2022/8/24(日足) 9:30 時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■人工ダイヤモンドの大元(種結晶)を製造。産総研発ベンチャー
宝飾用人工ダイヤモンドを合成する際に不可欠な原材料が、売上高の9割超を占める会社です。同様の原材料を半導体基板材料等、工業用素材としての製造も行っており、宝石分野以外への将来的な事業拡大意向も示しています。
当社が製造する人工ダイヤモンドの原材料である種結晶(たねけっしょう)は、天然ダイヤモンドに勝る高純度な人工ダイヤモンドの製造を可能とします。また、当社に匹敵する「低コスト且つ大量」に種結晶の製造が可能な他企業は日本におらず、世界的にも非常に数が少ないとされています。技術力と革新性の高さは産総研発ベンチャーであることから折り紙つきです。加えて、当社代表は28年間、民間企業で製造から販売まで携わった経験があることも経営者として心強い材料と捉えることができます。
世界各国に種結晶の販売を行っており、前期時点は売上高の94%超が海外というグローバル企業です。基本的にドル建て収益を得ているゆえ、グロース市場ではかなり珍しい円安の恩恵が大きく期待できる一面を有しています。
■増収増益で業績見通しを上方修正。生産能力の拡大に注力
過去5年間での売上高成長率は年平均で50%以上、新規上場後に初の決算となった本年度第1四半期の売上高経常利益率は47%と、製造業では驚異の高水準を示しました。この第1四半期決算の発表と同時に会社側は、人工ダイヤモンド市場の拡大や受注増を理由に今期業績見通しの大幅な上方修正を示し、株価は窓を空けての大幅高となりました。
また、当社は通期ベースでも4期連続の経常増益を達成しているのみならず、前期は年間ベースでも経常利益率は驚異の33%に達しました。製造業は人件費や生産場所を要すること等から高コストとなる傾向が強く、経産省の企業活動基本調査によると業界平均での経常利益率は7%にも満たない水準です。前述した当社の経常利益率33%という数値は、当社技術の優位性並びに市場からの高い需要があるという証左になると考えられます。
新規上場で得た資金は、当社の生産能力以上に高まっている市場需要に対応するため、工場や設備の新設に充当されています。計画通り本年10月より新工場の稼働が開始されれば、1ヵ月当たりの売上高は39%増(2022/3現在の月生産能力比)となる見込みです。また、来年度も同新工場に本年より大規模な設備投資がなされる予定で、1ヵ月当たりの売上高もこれまた44%増の見込みとしています。
同じ宝飾品の代表格である真珠は、1世紀以上前に宝飾用の養殖技術が開発されてから、現在流通するそのほとんどが養殖物です。ダイヤモンドもいずれ同じ状況となるだろうと当社代表が新規上場時のインタビューで回答していました。
上述より、当社は製品に対しての市場需要の強さ、当社固有の技術力の高さ等から成長ストーリーを描きやすい企業の一つであると考えられます。今後の決算では、生産能力拡大によりどれだけ売上・利益が変化したのかに着目したいところです。
ANYCOLOR(5032)~Vチューバーグループを運営。今後の急成長にも期待
★日足チャート(過去3ヵ月)
- ※データは2022/8/24(日足) 9:30 時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■VTuber(バーチャルユーチューバー)グループ「にじさんじ」を運営
当社は、VTuber(バーチャルユーチューバー)グループ「にじさんじ」を運営している企業です。
VTuberは、現実の人間の動きをデジタル化し、アニメキャラクターに置き換える「モーションキャプチャー」の技術を使い、アニメキャラクターに扮し、ライブ配信等を行っている人を指します。
VTuberは現実の人間が背景にあるため、普通のアニメキャラクターと異なり、人間らしい表現をし、ライブストリーミングでコミュニケーションをとることができます。現実の容姿や活動を切り離して活動でき、現実の人間がライブを行う時に生じるプライバシーの侵害リスク等を排除できます。また、アニメキャラクター同様の表現が可能で、IP(知的財産)として様々に活用することができます。
当社は、VTuberが動画視聴者から「投げ銭」を得たり、ライブ・イベントで収入を得たり、アイドル活動や音楽を販売したり、グッズを販売したり、企業の販促活動に協力したり等の活動をサポートし、配信者と収益を分け合うビジネスモデルになっています。
VTuber市場は拡大傾向を続けています。2020/4期・第1四半期に79人だったVTuber数は2022/4期・第4四半期末には162人まで拡大し、同期間のYouTube再生時間は4,200万時間から1億7,600万時間に伸びています。
当社の売上高は2019/4期の8.6億円から2022/4期には141億円と急拡大しました。同期間に、営業利益は0.46億円から41.9億円へと、こちらも急拡大しています
■当社が関係する市場の規模は大きく、成長余地は大きそう
会社側計画では2023/4期の売上高は190~210億円(中心金額での前期比増加率は41.2%増)、営業利益は55.1~65.1億円(同43.4%増)と引き続き高い成長が見込まれています。
当社が関わりをもつ市場(以下、会社資料より)としては、国内アニメ市場(配信、ライブ、グッズ販売等・2020年)1.2兆円、動画広告市場4,205億円(同年)、国内音楽市場1.4兆円(2019年)、海外アニメ市場1.2兆円(2020年)等があります。
VTuberビジネスは、その一部を置き換えることができたに過ぎず、当社の成長余地は大きいと考えることができそうです。
潜在的な成長余地を実現するためには、魅力的なVTuberの獲得が重要であると考えられます。また、単なる数的拡大にとどまらず、当社はVTuberの育成にも注力する方針で、VTuber養成所の開校も実現しています。
ちなみに、当社のVTuberは「にじさんじ」に所属していますが、今後はそのブランド力を高めるべく、プロモーション活動も積極化させる方針です。また、配信内容についても、これまではVTuberに一任してきた形ですが、今後は会社側で練りこんだコンテンツ等の提供も計画されているようです。
株価は、公開価格1,530円に対し、3.1倍の4,810円で初値(6/9)を付けた後、6/16(木)には9,200円まで上昇しました。しかし、その後は下落基調となりました。足元は、7/28(木)の6,930円の戻り高値を上回り、再び株価に勢いが付きやすい水準になっています。
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