足元株価堅調で9月相場も活躍期待の銘柄は?

足元株価堅調で9月相場も活躍期待の銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2022/08/31

信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

東証マザーズ指数は相対的に堅調。直近に新規上場の銘柄が選好される

8/23(火)~8/30(火)の東証マザーズ指数は1.0%上昇しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンス(-0.9%)、およびTOPIXのパフォーマンス(-0.2%)に対してアウトパフォームしました。

米10年国債利回りは8/16(火)2.81%から8/23(火)3.04%まで上昇しました。その後は8/29(月)に3.10%まで上昇しました。米長期金利の上昇が続いていることは逆風ですが、上昇ピッチそのものは鈍化しており、東証マザーズ指数の上昇に寄与した可能性がありそうです。

時価総額上位銘柄の中では、ANYCOLOR(5032)の上昇が目立ちました。特に新規の材料が出たわけではないとみられますが、ネックラインである7/28(木)高値を上回り、株価上昇に弾みが付きやすくなっているようです。直近に新規上場した銘柄が選好されている流れも追い風になりました。

同じく時価総額上位のM&A総合研究所(9552)も強い動きになっています。同社も6/28(火)に新規上場の直近上場銘柄で、現在の物色の流れが味方した面があります。7/29(金)に業績予想を大幅に上方修正して以降、流れが大きく変わりました。足元は値動きが荒くなっており、信用取引の規制銘柄になっています。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き

  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位10銘柄について、8/30時点での各種騰落率を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/8/23~2022/8/30の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と8/30時点の株価比較。
  • ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※ANYCOLOR(5032)は2022/6/8、M&A総合研究所(9552)は2022/6/28に新規上場をした為、年初来の数値なし。

図表3 8/23(火)~8/30(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄

  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
  • ※東証マザーズ指数構成銘柄(前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
  • ※新規上場銘柄は東証マザーズ指数への組み入れ後に掲載開始となります。
  • ※「週間」は2022/8/23~2022/8/30の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と8/30時点の株価比較。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※サンウェルズ(9229)は2022/6/27、M&A総合研究所(9552)は2022/6/28に新規上場をした為、年初来の数値なし。

足元株価堅調で9月相場も活躍期待の銘柄は?

8月相場も、本レポートの掲載日である8/31(水)で終わります。米国株の波乱を受け、日経平均株価、東証マザーズ指数ともに途中、値を消す場面がありましたが、両指数ともに月末は前月末に対し、ほぼ値を保つ形で迎えることができました。

一般的にグロース銘柄は金利上昇に弱いとされます。その意味で8月は、グロース銘柄に逆風が吹いていたとみられます。世界的に金利の指標的存在である米10年国債利回りは、8/1(月)の2.57%をボトムに8/29(月)現在では再び3.1%台まで上昇しています。

事実、グロース銘柄が多い米ナスダック指数は、8/29(月)現在、前月末比で下げています。ただ、NYダウも同様の動きでした。日本のグロース銘柄の堅調は、東京株式市場全般の堅調に支えられていたと言えそうです。

9月はどのようなグロース銘柄が人気化するでしょうか。8月の堅調な相場で下げているようでは、悪材料を抱えている可能性があり、9月の上昇も見込みにくいかもしれません。そこで、9月に活躍期待の銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。

(1)東証マザーズ指数構成銘柄。
(2)時価総額100億円超。
(3)直近株価(8/30終値)が7月末終値に対して10%超上昇。
(4)直近決算発表が四半期決算の場合、以下の(a)または(b)のいずれかを満たしていること。
 (a)同四半期累計営業利益の通期会社計画に対する進捗率が以下の数字を超えていること。  
   ・直近決算発表が第1四半期の場合、進捗率25%超。
   ・同第2四半期の場合、進捗率50%超。
   ・同第3四半期の場合、進捗率75%超。
 (b)同四半期累計営業利益の前年同期比増益率が、通期会社予想営業増益率を上回っていること。黒字転換はすべてに優勢。
(5)直近決算発表が本決算の場合、今期会社予想営業利益が、前期比で10%超の増益予想。
(6)SBI証券チャート分析ツールで、「1ヵ月チャート」の評価(8/30現在)がポジティブ。
(7)信用取引で売買規制が行われていないこと。

図表4の銘柄は、上記(1)~(7)をすべて満たしています。掲載の順番は、(3)の株価上昇率が高い順になっています。

図表 足元株価堅調で9月相場も活躍期待の銘柄は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名(新規上場日) 株価(8/30) 騰落率 チャート
7061 7061 7061 7061 日本ホスピスホールディングス 2,216 41.0% まだ上昇?
4395 4395 4395 4395 アクリート 2,670 38.2% 上昇?
4442 4442 4442 4442 バルテス 2,283 39.2% 上昇?
6030 6030 6030 6030 アドベンチャー 10,660 29.8% 強含み?
4579 4579 4579 4579 ラクオリア創薬 1,068 32.7% 上昇?
6069 6069 6069 6069 トレンダーズ 1,958 25.5% 上昇基調?
5032 5032 5032 5032 ANYCOLOR 7,390 20.4% 強含み?
4268 4268 4268 4268 エッジテクノロジー 1,101 20.6% 上昇?
3793 3793 3793 3793 ドリコム 835 12.7% まだ上昇?
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
  • ※※ドリコム(3793)は、日証金より貸株注意喚起銘柄に指定されています。(2022/8/30現在)
  • ※「チャート」はSBI証券チャート分析ツールを用い、過去1ヵ月のチャート(8/2~8/30)を対象に分析されたものです。各々のコメントは以下の通りです。  「まだ上昇?」・・・一見して、緩やかに上昇していると思われる状態。  「上昇?」・・・一見して、上昇が継続していると思われる状態  「強含み?」・・・一見して、直近高値を抜けつつあると思われる状態  「上昇基調?」・・・一見して、もみ合いながら、ゆっくりと上昇していると思われる状態

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

アクリート(4395)~日本におけるSMSサービスのパイオニア

★日足チャート(過去3ヵ月)

  • ※データは2022/8/31(日足) 10:10 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
  • ※2020/12期までは単独業績を、2021/12期以降は連結業績を示しています。

■SMS配信サービスでトップクラス

当社は、インディゴのSMS(ショートメッセージ)配信サービス事業を会社分割する形で成立した同サービスのパイオニア的存在です。

SMSとは携帯電話の番号を使い、テキストによるメッセージを送受信するサービスです。個人同士のやり取りにとどまらず、近年は企業による以下のような活用(例)も増えています。

・アプリや会員への登録時にSMSを利用。より高いセキュリティを求められる場合はワンタイムパスワードを発行。
・顧客サポート業務において、特定URLやパスワード等、口頭で伝えにくい情報を円滑にやりとり。
・料金滞納等への連絡・請求。
・レストランやホテル、チケット等への予約で活用。
・ネットバンキングへのアクセスを「ワンタイムURL」や「ワンタイムパスワード」の利用でより、セキュアに。

当社は、これらに使われるSMSサービスを大量に、かつ安心して提供できるプラットフォームを提供しています。

■M&Aにも積極的。業績拡大傾向が継続

当社の業績は2014年の会社設立以来、拡大を続けています。2021/12期までの7期、売上高は年平均56.5%増(各年度の増加率の単純平均)、経常利益は同77.5%増(同上)のペースで拡大してきました。

M&Aに対しても積極的な姿勢をとっています。前期は国際網を主体としたSMS配信サービス会社、およびメール配信サービス会社を子会社化し、今期はベトナムのSMS配信サービス会社を子会社化しています。これらを受けて当社は、前期(2021/12期)から連結決算を行っており、売上や利益の規模がその分拡大しています。

こうした中、新型コロナウイルスの感染拡大等により、社会・経済活動のあり方が大きく変容し、高い到達率・開封率をもつSMSサービスの有用性を、企業が再認識する動きが強まっています。SMS配信市場の成長率は、会社資料によると、2021年度~2025年度に年平均41.5%増のペースで成長すると予想されています。

2022/12期は売上高57.26億円(前期比102.1%増)、営業利益9.17億円(同96.8%増)が会社予想です。営業利益は当初計画の6.48億円から上方修正(8/12)された形になります。それでも、上半期の営業利益は5.74億円で、修正後通期計画に対する進捗率は62.6%と順調な推移となっています。

会社側は8/18(木)に中期計画を発表し、2021/12期→2025/12期において売上高は28.33億円→170億円、営業利益は4.65億円→30億円という野心的な予想となっています。株価はこの発表を受けて翌日より上昇し、8/25(木)には2,868円まで上昇しました。2021/9/9に付けた高値2,607円をクリアし、過去最高値となっています。8/30(火)終値2,670円は高値から6.9%下げた水準です。

アドベンチャー(6030)~「skyticket」を運営。インターネット旅行会社

★日足チャート(過去3ヵ月)

  • ※データは2022/8/31(日足) 12:30 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
  • ※当社は2022/6期に2つの連結子会社を売却しました。これを受け、2022/6期および比較対象となる2021/6期については、売却子会社の売上高および利益が非継続事業として除外されています。 グラフの2021/6期までは子会社売却以前の数字となっています。

■「skyticket」を運営。インターネット旅行会社

OTA(Online Travel Agent)=インターネット上のみでサービスを展開する旅行会社です。「skyticket」という格安航空券予約サイトの運営で有名です。

現在の主な収益源は航空券予約ですが、ツアーやレンタカー、ホテル等に成長余地を見込みながらサービス範囲の拡大をしており、最終的には総合予約プラットフォームを目指しています。

収益構造は主に成果報酬型で、予約成約に対して航空会社やレンタカー会社等のクライアントから手数料を受け取る仕組みです。

日本含む東南アジア市場を中心としたグローバルマーケットをターゲット市場としており、国内OTAで最多の言語対応をしています。なお、東南アジアには市場を寡占している同業他社が存在せず、旅行事業が大きく成長中の米国と比較するとオンライン比率が依然として低水準があることから事業成長ポテンシャルは十分にあるとしています。

新型コロナ拡大以降、業績は悪化しましたがOTA業界にとっては旅行人数の少人数化や対面型店舗の閉鎖が追い風となった側面もあります。「skyticket」のアプリは本年7/29(金)に累計1,800万ダウンロードを達成しています。

■コロナ前を上回る大幅増益が続く

同社の業績で着目したい点は、2021/6期にはコロナ前である2019/6期比で大幅増益となり、前期(2022/6期)は前々期からさらに弾みをつけての増益を達成していることです。経済再開銘柄として注目される企業ではコロナ前と比べ“どこまで回復したか”に注目が集まることが多いですが、当社の場合は“どれだけ成長性を示せるのか”が注目点となっています。

2022/8/12(金)に発表された前期決算(2022/6期)は、営業利益が前期比2.37倍にあたる20.2億円となりました。売却子会社の収益が「非継続事業」となり、その分営業利益が0.5億円減りましたが、旅行関連事業の好調がそれを上回りました。この数字は新型コロナ織り込み前の2019/6期の営業利益である5.4億円と比較すると3.7倍にあたります。

また、今期(2023/6期)の業績見通しに関しても、会社側は営業利益を前期比1.37倍にあたる28億円と大幅増益を示し、その後の8/23(火)には日本の出入国時規制緩和の検討入りが報じられ株価は大幅高しました。

8/30(火)時点の株価は10,660円であり、2018/9につけた上場来高値11,790円、および2021/11につけた直近高値11,420円と、ほぼ同水準に位置しています。今後は、後述の2つの株価を上抜けられるかどうかが更なる株価上昇への鍵となりそうです。

なお、2022/6期第4四半期の決算説明会は9/1(木)に開催予定です。

ANYCOLOR(5032)~Vチューバーグループを運営。今後の急成長にも期待

★日足チャート(過去3ヵ月)

  • ※データは2022/8/31(日足) 9:30 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■VTuber(バーチャルユーチューバー)グループ「にじさんじ」を運営

当社は、VTuber(バーチャルユーチューバー)グループ「にじさんじ」を運営している企業です。

VTuberは、現実の人間の動きをデジタル化し、アニメキャラクターに置き換える「モーションキャプチャー」の技術を使い、アニメキャラクターに扮し、ライブ配信等を行っている人を指します。

VTuberは現実の人間が背景にあるため、普通のアニメキャラクターと異なり、人間らしい表現をし、ライブストリーミングでコミュニケーションをとることができます。現実の容姿や活動を切り離して活動でき、現実の人間がライブを行う時に生じるプライバシーの侵害リスク等を排除できます。また、アニメキャラクター同様の表現が可能で、IP(知的財産)として様々に活用することができます。

当社は、VTuberが動画視聴者から「投げ銭」を得たり、ライブ・イベントで収入を得たり、アイドル活動や音楽を販売したり、グッズを販売したり、企業の販促活動に協力したり等の活動をサポートし、配信者と収益を分け合うビジネスモデルになっています。

VTuber市場は拡大傾向を続けています。2020/4期・第1四半期に79人だったVTuber数は2022/4期・第4四半期末には162人まで拡大し、同期間のYouTube再生時間は4,200万時間から1億7,600万時間に伸びています。

当社の売上高は2019/4期の8.6億円から2022/4期には141億円と急拡大しました。同期間に、営業利益は0.46億円から41.9億円へと、こちらも急拡大しています


■当社が関係する市場の規模は大きく、成長余地は大きそう

会社側計画では2023/4期の売上高は190~210億円(中心金額での前期比増加率は41.2%増)、営業利益は55.1~65.1億円(同43.4%増)と引き続き高い成長が見込まれています。
当社が関わりをもつ市場(以下、会社資料より)としては、国内アニメ市場(配信、ライブ、グッズ販売等・2020年)1.2兆円、動画広告市場4,205億円(同年)、国内音楽市場1.4兆円(2019年)、海外アニメ市場1.2兆円(2020年)等があります。
VTuberビジネスは、その一部を置き換えることができたに過ぎず、当社の成長余地は大きいと考えることができそうです。

潜在的な成長余地を実現するためには、魅力的なVTuberの獲得が重要であると考えられます。また、単なる数的拡大にとどまらず、当社はVTuberの育成にも注力する方針で、VTuber養成所の開校も実現しています。

ちなみに、当社のVTuberは「にじさんじ」に所属していますが、今後はそのブランド力を高めるべく、プロモーション活動も積極化させる方針です。また、配信内容についても、これまではVTuberに一任してきた形ですが、今後は会社側で練りこんだコンテンツ等の提供も計画されているようです。

株価は、公開価格1,530円に対し、3.1倍の4,810円で初値(6/9)を付けた後、6/16(木)には9,200円まで上昇しました。しかし、その後は下落基調となりました。足元は、7/28(木)の6,930円の戻り高値を上回り、再び株価に勢いが付きやすい水準(8/30終値は7,390円)で、次の上値節目は6/22(水)高値水準8,200円、過去最高値9,200円(6/16)等となっています。

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※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

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