年度前半上昇し、後半も活躍期待の銘柄は?
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2022/09/28
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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米長期金利上昇を考慮すれば、相対的には底堅い?
9/20(火)~9/27(火)の東証マザーズ指数は3.7%下落しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンスは-4.0%、およびTOPIXのパフォーマンスは-3.8%であり、株式市場全般が軟調に推移する中、わずかではありますが、東証マザーズ指数のパフォーマンスが優位となりました。
米10年国債利回りは、9/19(月)に3.49%でしたが、現地時間9/21(水)に結果発表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)を経て、FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派的姿勢がさらに鮮明となり、9/26(月)には3.89%と12年5ヵ月ぶりの高水準まで上昇しました。
こうなると、本質的に、金利上昇に弱いグロース銘柄、その構成比率の高い東証マザーズ指数は下落しやすくなります。もっとも、グローバルな株式市場も総じて下げており、東証マザーズ指数のパフォーマンスは相対的に底堅かったと言えるかもしれません。
こうした中、時価総額上位銘柄の中では、クラウドで会計システムを提供するフリー(4478)が9/14(水)以降8営業日続落となり、年初来安値を更新するなど弱さが目立ちました。企業間での請求書を電子化するインボイス制度の開始(2023/10)をにらみ法人向けサービスを強化し、先行投資がかさんでおり、業績低迷が続いていることが嫌気されているようです。
個別には、がん領域の新薬を開発するキャンバス(4575)の上昇が目立ちました。小野薬品工業(4528)のがん免疫薬である「オプジーボ」との併用療法で治験を進めている「CBP501」について、治験の一部が好調で第3相試験に進む可能性が大きくなったことを発表(9/20)し、9/21(水)および9/22(木)に連日でストップ高となりました。
図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移
図表2 主な東証グロース指数構成銘柄の値動き
図表3 9/20(火)~9/27(火)で株価上昇が大きかった東証グロース指数構成銘柄
年度前半上昇し、後半も活躍期待の銘柄は?
図表1でも明らかなとおり、前年度末(2022/3/31)を起点とする騰落率(9/27時点)では、日経平均株価が-4.5%、東証マザーズ指数が-11.3%となり、2022年度前半トータルでは、グロース銘柄に厳しい半年となりました。米国で10年国債利回りが3月末2.33%から、9/27時点では3.94%まで上昇したことに象徴されるように、世界的にインフレ・金利上昇が懸念される状況が強い逆風となりました。
そうした中、年度前半はどんな銘柄が活躍したのでしょうか。それらの銘柄のうち、年度後半も当面は活躍が期待できる銘柄はあるでしょうか。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、年度前半における東証グロース市場上場銘柄の値上がり率上位のうち、年度後半も上昇が期待できそうな銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)東証グロース市場に上場
(2)時価総額100億円超
(3)株価上昇率(3/31~9/27)が50%超※1
(4)今期会社予想営業増益率が20%超
(5)9/26(月)まで過去20営業日の平均出来高が2万株超
(6)過去3ヵ月チャート(6/30~9/27)および6ヵ月(4/1~9/27)を期間とする分析で前向きな評価の銘柄※2
※1 2022/3/31以降に新規上場をした銘柄は、初値形成日の終値を用いて計算
※2 2022/9/27時点で、当社チャートツールを用いた分析によるもの
図表4の銘柄は、上記のすべてを満たしており、(3)の株価上昇率が大きい順に並べています。
図表4 今年度上半期に活躍し、下半期も当面は活躍が期待できそうな銘柄は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価(9/27) | 上昇率 | 今期予想 営業増益率 |
チャート形状 (過去3ヵ月) |
9229 | 9229 | 9229 | 9229 | サンウェルズ | 6,190 | 121.1% | 169.2% | 上昇? |
4395 | 4395 | 4395 | 4395 | アクリート | 2,799 | 94.6% | 96.8% | 上昇? |
5032 | 5032 | 5032 | 5032 | ANYCOLOR | 10,310 | 87.1% | 43.4% | まだ上昇? |
4260 | 4260 | 4260 | 4260 | ハイブリッドテクノロジーズ | 1,062 | 74.1% | 122.7% | まだ上昇? |
3793 | 3793 | 3793 | 3793 | ドリコム | 897 | 62.8% | 25.7% | 上昇? |
9556 | 9556 | 9556 | 9556 | INTLOOP | 4,165 | 54.0% | 50.4% | まだ上昇? |
- ※当社Webサイト、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※2022/3/31以降に新規上場をしたサンウェルズ、ANYCOLOR、INTLOOPは初値形成日の終値を用いて計算。
- ※サンウェルズ(9月中間期末・会社予想1株配当金は13円)、およびハイブリッドテクノロジーズ)(同0円)は9/28(水)が中間期末配当の権利付最終日になっています。9/29(木)は権利落ち日になっていますのでご注意ください。
- ※2022/9/28時点で、ANYCOLORおよびINTLOOPは信用取引の「日々公表銘柄」に、ドリコムは同「注意喚起銘柄」になっています。
- ※SBI証券チャート分析ツールにおいて、「上昇?」は「一見して、上昇が継続していると思われる状態」を、「まだ上昇?」は「一見して緩やかに上昇していると思われる状態」を示しています。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
サンウェルズ(9229)~パーキンソン病専用の介護施設を運営
★日足チャート(3ヶ月)
- ※データは2022/9/28(日足) 9:40 時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■パーキンソン病に特化した介護施設を運営
パーキンソン病患者専用の介護施設を展開する会社です。
パーキンソン病とは脳内の神経伝達物質が不足することで、身体の動きがコントロールできなくなる原因不明の難病です。症状が段階を追って徐々に進行してゆく点が特徴です。厚生労働省の調査によると、2020年度末時点で患者数は約14.2万人と推定されており、高齢化の進展に伴い患者数も増加傾向にあります。
同社は元々、利用者を特定の疾病患者に限らない一般的な介護サービスや施設の運営をしていました。数々の利用者と接する中でパーキンソン病患者の症状が他疾病と比べ、リハビリと専門医の治療がより効果的である点に着目しました。そうして、2018年にパーキンソン病に特化した介護施設「PDハウス」が開設されました。同施設が世間のニーズと合致したことで、施設数及び業績が右肩上がりとなりました。結果として、同社事業にとっての大きな成長ドライバーとなり、今年2022/6に新規上場するに至ります。
■上場後、株価は3.2倍。施設数の拡大、勢い止まらず
同社が新規上場を果たした2022/6/27から当レポート執筆時点である9/27までで、東証グロース市場指数は+0.5%とほぼ変わらない水準での推移です。これに対し、同社株価は公開価格1,940円に対し9/27終値は約3.2倍となる6,190円と圧倒的な好パフォーマンスを見せています。グロース銘柄にとって大きな向かい風である米国債利回りの急騰が年初来から続く状況下で、同社株は目を引く存在といえるでしょう。
業績に関しても、直近の決算発表(2023/3期第1四半期)では「PDハウス」の開設順調を理由として、売上・利益ともに前年同期比で事前会社予想を上振れする形で増収増益となりました。同社事業に関しては、施設開設コストが先行投資として多くかかる傾向にあります。そのためか、通期の業績見通しに関しては慎重気味で、据え置きでした。一方で、コストを吸収しつつも、今期は通期ベースで前期比2.7倍の営業利益増を見込んでいます。出店加速により、今期の売上高に占める営業利益の割合を示す売上高営業利益率は10.2%と前期の2倍弱まで増えると通期ベースで予想しています。
景気の善し悪しに左右されづらい介護事業で、同業他社が容易に参入しづらい特定の疾病に特化したことが功を奏し、「PDハウス」の新規施設開設の勢いが続いています。前期(2022/3期)末時点での「PDハウス」の施設数は12ですが、今期(2023/3期)は新たに8施設がオープン予定です。さらに、来期(2024/3期)にも新規9施設分が既に契約済みとなっています(2023/3期第1四半期末時点)。そして、中期計画では2030年までに全国で100施設の開設を目指しています。
介護事業の特徴として、日本の手厚い社会保障制度が安定的な収益源として下支えている点があります。当社の主な収入源も介護保険、健康保険及び障害福祉サービスによる保険報酬等の社会保障であり、サービス利用者の自己負担金が占める割合は1~3割程度です。パーキンソン病患者は医療保険や傷害保険のサービス対象者であるため、介護保険のみサービス対象となる利用者を受け入れている一般的な介護事業者に比べて、月額単価は約2~3倍となる仕組みです。ただ、社会保障制度については、各制度3年または6年ごと等、定期的な見直しが行われているので制度改定には注意する必要がありそうです。
※2022/9/28(水)は権利付き最終日で、9/29(木)は権利落ち日になります。
アクリート(4395)~日本におけるSMSサービスのパイオニア
★日足チャート(6ヵ月)
- ※データは2022/9/28(日足) 10:00 時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■SMS配信サービスでトップクラス
当社は、インディゴのSMS(ショートメッセージ)配信サービス事業を会社分割する形で成立した同サービスのパイオニア的存在です。
SMSとは携帯電話の番号を使い、テキストによるメッセージを送受信するサービスです。個人同士のやり取りにとどまらず、近年は企業による以下のような活用(例)も増えています。
・アプリや会員への登録時にSMSを利用。より高いセキュリティを求められる場合はワンタイムパスワードを発行。
・顧客サポート業務において、特定URLやパスワード等、口頭で伝えにくい情報を円滑にやりとり。
・料金滞納等への連絡・請求。
・レストランやホテル、チケット等への予約で活用。
・ネットバンキングへのアクセスを「ワンタイムURL」や「ワンタイムパスワード」の利用でより、セキュアに
当社は、これらに使われるSMSサービスを大量に、かつ安心して提供できるプラットフォームを提供しています。
■M&Aにも積極的。業績拡大傾向が継続
当社の業績は2014年の会社設立以来、拡大を続けています。2021/12期までの7期、売上高は年平均56.5%増(各年度の増加率の単純平均)、経常利益は同77.5%増(同上)のペースで拡大してきました。
M&Aに対しても積極的な姿勢をとっています。前期は国際網を主体としたSMS配信サービス会社、およびメール配信サービス会社を子会社化し、今期はベトナムのSMS配信サービス会社を子会社化しています。これらを受けて当社は、前期(2021/12期)から連結決算を行っており、売上や利益の規模がその分拡大しています。
こうした中、新型コロナウイルスの感染拡大等により、社会・経済活動のあり方が大きく変容し、高い到達率・開封率をもつSMSサービスの有用性を、企業が再認識する動きが強まっています。SMS配信市場の成長率は、会社資料によると、2021年度~2025年度に年平均41.5%増のペースで成長すると予想されています。
2022/12期は売上高57.26億円(前期比102.1%増)、営業利益9.17億円(同96.8%増)が会社予想です。営業利益は当初計画の6.48億円から上方修正(8/12)された形になります。それでも、上半期の営業利益は5.74億円で、修正後通期計画に対する進捗率は62.6%と順調な推移となっています。
会社側は8/18(木)に中期計画を発表し、2021/12期→2025/12期において売上高は28.33億円→170億円、営業利益は4.65億円→30億円という野心的な予想となっています。
株価はこの発表を受け翌日より上昇し、9/15(木)には3,190円の最高値水準まで上昇しました。これにより、過去最高値となっていますが、その後はやや下げた水準です。9/22(木)には発行済み株式数の4.75%に相当する28万株の自社株買い実施とその終了を発表しました。
ハイブリッドテクノロジーズ(4260)~ベトナムの人材と連携しシステムを開発
★日足チャート(6ヵ月)
- ※データは2022/9/28(日足) 11:30 時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■日本とベトナムで連携し、システム開発
当社は、企業のウェブやアプリなどのシステム開発を行っている企業です。
日本で顧客とコミュニケーションを取り、企画、提案、要件定義を行ってシステム開発を受注。ベトナムにおいて教育された人材が実装工程(プログラミング、テスト)や品質管理を行っています。日本とベトナムのエンジニアが連携し、ソフトウェア開発の上流や下流を一気通貫で行うことができます。
ベトナムで実装工程を行うことには以下のメリットがあると、会社側では考えているようです。
(1)エンジニアリソースの豊富さと優秀さ・・・ベトナムは国策としてIT人材輩出を掲げており、科学的リテラシー調査(OECD・2015年)で79ヵ国中8位に入るなど、優秀なエンジニアが多いとみられます。
(2)エンジニア単価のコストメリットが高いとみられます。
(3)勤勉で向上心旺盛な国民性があると考えられます。
(4)日本語の学習人口は世界で第6位(2018年)に達します。
(5)日本との時差が2時間と少なく、迅速な対応が可能です。
(6)ネットを含め安定した社会インフラ環境を有しています。
当社の代表者であるチャン・バン・ミン氏自身がベトナム人であり、日本およびベトナムにおいて人的ネットワークを有していることも、リソースの確保に有利であるとみられます。ホーチミン、ハノイ、ダナンというベトナム3大都市にオフィスを構えていることに加え、有名大学5校と連携していることも強みになっています。
■ストックサービスが売上げの89%で、安定成長が可能
収益モデルで見ると、当社売上高の89%、売上総利益の90%(前期時点)がストックサービスによるもので、業績の安定成長が期待される構造となっています。
業績的には新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、四半期(3ヵ月)ベースでは、2020/7~9期が売上高のボトムとなりましたが、それ以降はおおむね順調に利益が回復しています。
2022/9期・第3四半期累計では売上高17.08億円(前年同期比43.0%増)、営業利益2.46億円(前年同期比176.8%増)と大幅増収・増益を達成。既存案件のプロジェクト規模が拡大し、ストックサービスが前年同期比57%も増加しました。通期の会社予想売上高は22.7億円(前期比33.6%増)、営業利益2.48億円(同122.5%増)と見込まれていますが、営業利益の進捗率は99%に達しており、上方修正される可能性も膨らんでいます。
システム開発企業の課題としては一般的に、難しくなりつつある人材確保が指摘されますが、当社は人口が増加傾向のベトナムと太いパイプを持っていることで、こうした課題の克服が可能とみられます。
スタートアップ企業から上場企業に至るまで様々な企業のデジタル化支援を実施し、ヤフージャパンやNTTドコモ等も取引先企業に名を連ねています。当社は大企業へのアプローチも強めつつあり、さらなる成長が可能とみられます。
9/26(月)には、当社と「ベトナム国家サイバーセキュリティセンター」の協力覚書の締結も発表しています。株式市場では新たに、サイバーセキュリティ関連としての評価もされる可能性が出てきました。
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