株価下落も、年度後半に反発が期待できそうな銘柄は?
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2022/10/05
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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米長期金利が低下し、グロース銘柄に追い風
9/27(火)~10/4(火)の東証マザーズ指数は3.3%上昇しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンスは+1.6%、およびTOPIXのパフォーマンスは+1.8%でした。株式市場全般が反発に転じる中、引き続き、東証マザーズ指数のパフォーマンスが優位となりました。
米10年国債利回りは、9/28(水)に一時4%を上回り、2008年以来の高水準となりました。それを受けて、9月末まで、米国株は下落基調で、日本株も冴えない状態のまま月末を迎えました。しかし、ISM製造業景況指数が市場予想を下回り、米10年国債利回りは10/3(月)に3.63%まで低下。金利上昇に弱く、低下に強いグロース銘柄に追い風が吹く展開になりました。
こうした中、東証グロース市場では時価総額上位銘柄が素直に買われる展開になりました。人材サービス大手のビジョナル(4194)は、10/4(火)に2021/12/29以来の1万円大台を回復しました。9/27(火)~10/4(火)の同社株は18.6%も上昇しました。VTuberグループの運営を行うANYCOLOR(5032)も同期間に23.0%上昇し、時価総額がトップのビジョナルに肉薄する場面が見られました。なお、時価総額上位のビジョナルとANYCOLORはグロース市場全体(時価総額100億円以上)でも、値上がり率が上位となりました。
個別には、ビッグデータ分析のALBERT(3906)が9/27(火)終値4,075円に対し、10/4(火)には9,130円まで2.24倍になる大幅高となりました。9/29(木)にアクセンチュアが同社を1株9,180円でTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表したことが要因で、TOB価格へサヤ寄せとなりました。図表3から明らかなように、2022年に新規上場した銘柄の値上がりも目立ちました。
図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移
図表2 主な東証グロース指数構成銘柄の値動き
図表3 9/27(火)~10/4(火)で株価上昇が大きかった東証グロース指数構成銘柄
株価下落も、年度後半に反発が期待できそうな銘柄は?
前週もご説明した通り、前年度末(2022/3/31)を起点とする騰落率(9/30時点)では、日経平均株価が-6.8%、東証マザーズ指数が-12.0%となり、2022年度前半はグロース銘柄に厳しい半年となりました。米国で10年国債利回りが3月末2.33%から、9/30時点では3.82%まで上昇したことに象徴されるように、世界的にインフレ・金利上昇が懸念される状況が強い逆風となりました。
ただ、前項でご説明したように、足元の東証マザーズ指数は、日経平均株価を上回るパフォーマンスをあげています。米長期金利の上昇が一服し、グロース銘柄に追い風が吹き始めています。仮に、東証マザーズ指数の反発が本格化するならば、年度上半期に大きく下げた銘柄が逆に大きく上昇する「リターンリバーサル」の動きが本格化するかもしれません。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、年度前半における東証グロース市場上場銘柄の値下がり率上位のうち、年度後半に反発・上昇が期待できそうな銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)東証グロース市場に上場
(2)株価(3/31~9/30)が12%超下落・・・同期間の東証マザーズ指数の下落率が12%であるため
(3)今期会社予想営業利益が増益予想
(4)10/3(月)まで過去20営業日の平均出来高が2万株超
(5)直近発表された決算が四半期決算の場合、営業利益が前年同期で増益、または今期会社営業利益に対する進捗率が「標準」以上。(第1四半期の場合、「標準」は25%以上を意味しています。)
図表4の銘柄は、上記のすべてを満たしており、(2)の株価下落率が大きい順に並べています。
図表4 株価下落も、年度後半に反発が期待できそうな銘柄は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価(10/4) | 騰落率 (3/31~9/30) |
今期予想 営業増益率 |
4268 | 4268 | 4268 | 4268 | エッジテクノロジー | 850 | -52.2% | 48.2% |
2438 | 2438 | 2438 | 2438 | アスカネット | 930 | -33.3% | 2.3% |
4054 | 4054 | 4054 | 4054 | 日本情報クリエイト | 950 | -29.5% | 69.7% |
7379 | 7379 | 7379 | 7379 | サーキュレーション | 1,886 | -23.2% | 13.3% |
7370 | 7370 | 7370 | 7370 | Enjin | 2,813 | -16.7% | 24.8% |
4482 | 4482 | 4482 | 4482 | ウィルズ | 665 | -16.0% | 11.2% |
- ※当社Webサイト、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※2022/10/5(水)時点で、アスカネットは信用取引の注意喚起銘柄になっています。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
エッジテクノロジー(4268)~AIアルゴリズム事業を展開
★日足チャート(6ヶ月)
- ※データは2022/10/5(日足) 10:45時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■AIアルゴリズムで顧客の課題を解決
当社は「AI(人工知能)アルゴリズム事業」を行っている会社です。
そのうち、「AIソリューション」の提供が売上高の約90.1%(2022/4期)を占める中核事業です。顧客の経営課題を基に業務を分析し、データを利用・活用することによって、何ができるのか、どんな効果を期待できるのかを検証した後、AIアルゴリズム(計算手法)を業務やシステムに組み込み、実装・運用する所までを一気通貫で行っています。
顧客の課題に合わせ、当社社員とフリーランスでチームを組み、業務にあたることが多いのが特徴となっています。専門知識豊富で、実務経験も豊富なフリーランスと、AIプロジェクト管理・推進ノウハウやAIアルゴリズム実装ノウハウを有する社員がチームを編成し、多種多様な顧客ニーズに対応していけるのが当社の強みとなっています。
「AIアルゴリズム事業」ではこの他、充実したAI人材データを生かした「AI教育サービス」や、「GeAIne(ジーン)」と呼ばれる「AIプロダクト」の提供も行っています。
■安定的・継続的な売上高が拡大し収益力が向上傾向
当社は2022/2/17(木)に公開価格350円、それに対する初値694円で新規上場し、3/28(月)には一時1,857円まで上昇しました。その後は5/6(金)に907円まで下落しました。6/10(金)の取引時間中に、本決算を発表し、2023/4期の営業利益は3.11億円(前期比48.2%増)になるとの見通しを示し、株価は一時は1,398円まで上昇しました。
株価はその後再び下がりましたが、夏場以降のグロース市場全般の上昇基調に乗り、9/6(火)には1,211円まで回復。その後9/9(金)取引時間中に、2023/4期・第1四半期の決算発表を行いましたが、業績予想の据え置きもあって、失望売りを招き、9/30(金)には直近安値787円まで下落しました。
2023/4期・第1四半期決算自体は、好調な業績推移を示していると考えられます。売上高は6.51億円で、前年同期の4.44億円(会社が上場前にあたるめ参考数値として示された金額)から46.5%増となりました。同様に営業利益は0.78億円で、前年同期の参考数値から171.3%増加しました。営業利益の通期会社計画(3.11億円)に対する進捗率は25.1%となっており、おおむね順調な進捗と考えられます。
同四半期の売上高営業利益率は12.0%となり、前年同期の参考数値である6.5%から上昇。収益力は着実にアップしていると考えられます。継続的・定期的に売上高が計上される「リカーリング売上」の構成比が「AIソリューション」売上高の90.9%(2023/4・第1四半期)も占めています。
株価は3/31(木)の1,681円から9月末の803円まで52.2%も下げましたが、AI(人工知能)関連株として期待が先行し過ぎたことが要因とみられます。業績が悪化傾向となっている訳ではないことから、グロース市場全般が反発に転じれば、リターン・リバーサルの対象になる可能性もありそうです。
日本情報クリエイト(4054)~不動産業務のDX化支援サービス。創業来28期連続増収
★日足チャート(6ヵ月)
- ※データは2022/10/5(日足) 9:30 時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★通期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■不動産業務のDX化支援サービス
不動産管理会社や仲介会社に対し、業務支援クラウドサービスを提供する会社です。当社はサービスの提供を通し、顧客のDX化(デジタルトランスフォーメーション)を促進しています。そして、提供するサービスは、対象顧客の異なる2つのソリューションサービスに分けられています。
まず、売上高の7割弱(前期)を占める管理ソリューションでは、不動産管理会社向けに「賃貸革命」という管理システムを提供しています。顧客は同システムを利用することで、契約情報の管理や入金・請求管理等の幅広く複雑な業務を網羅的に管理することが可能になります。
売上高の約3割を占める仲介ソリューションでは、不動産仲介業者向けのサービスを展開しています。顧客は同社サービスを利用することで、不動産契約締結までにかかわる一連の手続きを全て非対面で行うことができます。物件探しから入居申し込み、契約時に必須である重要事項説明やWEB内見等といった、従来であれば対面が常識であった業務もオンライン化が可能です。
他にも、これまで紙面・FAX・電話でのやりとりが主流であった物件情報の共有をインターネット上で行えるプラットフォームサービスの提供等を行っています。同ソリューションでは無料で使用できるドアノックツールがいくつか存在し、これらをいかに有償サービスにつなげられるかが肝要であるとされ、会社としても注力しています。
不動産業界DX市場に関して、当社は現在が黎明期にあるとしています。業界でのシェア拡大に注力するため積極的なM&Aや営業所の開設、人員採用等の先行投資を行っています。これらを理由として、販管費は前期比で増加となりました。
(データはすべて、2022/6期末時点)
■創業来28期連続増収。国策も追い風
当社は2020/7/31に新規上場し、2ヵ月半後の10/14に3,720円の上場来高値(2020/11に1対2の株式分割を考慮した修正株価)を付けてから下落基調が続いています。2022/10/4(火)時点の株価は950円で、上場来高値のおよそ4分の1になっています。
業績(※)面から考えると、前期決算(2022/6期)では創業来28期連続で増収を達成。営業利益は前期比では減少となったものの会社予想を上振れています。減益理由としては、上述した先行投資が理由として想起される内容でした。
ただ、先行投資を行ったことで、売上やサービス新規導入数の推移等の実績値が今後の成長可能性を感じさせるような内容でした。また、今期(2023/6期)は売上高42億円(前期比37.5%増)、営業利益8.5億円(同69.7%増)の増収増益を会社予想として示しています。
(※連結決算の発表は2022/6期が初年度であり、業績の比較は便宜上、2021/6期の単独業績と行ったものです。)
「国策に売りなし」という相場格言が有名ですが、本年行われた法改正が当社にとって好材料として期待されます。デジタル改革関連法案が2022/5/18に成立しました。この法改正で不動産取引全体のDX化が加速されると会社は予想しています。法改正に先駆けて、当社は自社開発の電子契約をリリースをしており、早期需要の取り込みを行っています。
中期計画(3カ年計画)では、不動産テック市場が2025年度には2020年度の2倍超にあたる1兆2461億円まで、飛躍的に拡大すると見込んでいます。
次回決算発表は、2023/6期第1四半期が対象で、2022/11/14(月)が予定日です。
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