「波乱」で買い場か?~中小型好業績+好配当+低PBR銘柄

「波乱」で買い場か?~中小型好業績+好配当+低PBR銘柄

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/03/15

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米金融不安が波及し、波乱

3/7(火)~3/14(火)の東京株式市場では、日経平均株価が3.7%、東証グロース市場指数が3.4%それぞれ下落しました。3/9(木)まで6営業日続伸した後、3/14(火)までは3営業日続落となりました。3営業日続落で、6営業日続伸していた間の上昇分は打ち消された形です。

米国では3/9(木)以降、シルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行と、金融機関の経営不安・破綻に関するニュースが続き、株価が大きく下落し、それが日本にも波及しました。この間、市場で米国の金融引き締め観測が急速に後退し、米10年国債利回りが急低下したことは追い風ですが、それ以上に市場のリスク許容度が後退したことが響きました。

今回の問題は、取引先が一部の業種や新興ベンチャー企業に偏っているという、上記の破綻金融機関の特異性も影響しており、日本の金融システムに影響を与える可能性は、本質的には小さいと思われます。ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)の急速な金融引き締めが影響したことは間違いないとみられ、今後はグローバルな金融引き締めペースが減速する可能性が大きく、グロース市場にも買い場が訪れる可能性は大きいとみられます。

3/7(火)~3/14(火)の東証グロース市場時価総額上位銘柄では、そーせい(4565)の値上がりが目立ちました。3/8(水)の取引終了後に東証プライム市場への指定替えを発表し、3/9(木)には大幅高となりました。その後は、市場マインドの悪化を受けて反落しましたが、3/15(水)以降、プライム市場銘柄となっており、指数への組み入れや知名度向上を狙った投資家の参入も期待されそうです。

時価総額100億円超の幅広い銘柄の中では、自動翻訳等を手掛けるメタリアル(6182)の上昇が目立ちました。3/8(水)に子会社のロゼッタが他社と共同で、ChatGPT等によるAI関連製品群を企業のビジネスソリューションとして活用するためのプラットフォームを開発し、提供を開始すると発表。AI関連株が人気化している折、有望材料視されました。また、入札情報サイトを展開するうるる(3979)の上昇も目立ちました。2023/3期上半期は営業赤字でしたが、2/14(火)発表の第3四半期累計営業損益は黒字転換を確保。以降は、積極的なIR活動を展開している場面が目立ち、市場で認知度が向上した可能性があります。

図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き

図表3 3/7(火)~14(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

「波乱」で買い場か?~中小型好業績+好配当+低PBR銘柄

株式市場でバリュー銘柄が、投資家の関心を集めています。

東証はTOPIXバリュー指数について、構成銘柄をPBRが低い銘柄としています。したがって、我が国ではPBRの低い銘柄をバリュー株と表現していいと思います。ただ、一般的には、成長力には乏しいものの、PERやPBRが低かったり、配当利回りが高い銘柄が、バリュー株と考えられています。

2023年は、米国でインフレ、金利上昇懸念が強まりました。金利上昇局面ではグロース株よりもバリュー株が優位と考えられており、もともと、バリュー株が注目されやすい投資環境であったとみられます。ただ、米国で金融機関の破綻が相次ぎ、長期金利の上昇が一服したことから、バリュー株優位の動きも、短期的には一服しているように見受けられます。

しかし、こうした投資環境こそが、バリュー株の買い場になっている可能性もありそうです。米金融機関への不安が一巡すれば、再びインフレ・金利上昇にスポットが当たる可能性もありそうです。東証がPBR1倍割れの銘柄に、評価不足を改善すべく対策を求めていることで、バリュー株への投資がテーマ性を帯びてきたことも追い風になりそうです。

今回の「新興株ウィークリー」では、中小型のバリュー株を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。

(1)東証グロース市場、またはスタンダード市場に上場

(2)時価総額100億円超1,000億円未満

(3)PBR(時価総額/直近四半期末純資産)0.8倍未満

(4)予想PER(今期会社予想純利益ベース)20倍未満

(5)予想配当利回り(今期会社予想1株配当ベース)2%超

(6)過去20営業日(3/13時点)の1営業日当たり平均出来高が2万株超

(7)直近の四半期累計(直近が本決算の場合は通期)営業利益が前年同期比10%超の増益

(8)上記の営業増益率が通期予想営業増益率を上回っていること

(9)流動比率(直近四半期流動資産/同流動比率)が200%超

(10)総資産に占める長短借入金の比率が20%未満

図表4の銘柄は上記(1)~(10)の条件をすべて満たし、(3)のPBRが低い順に並べたものです。「割安感」については、東京株式市場におけるバリュー銘柄がPBRの低い銘柄重視であることを考慮し、「解散価値」である1倍を相当下回ることを重視しました。結果的には、全銘柄が東証スタンダード市場となっています。

(4)の予想PERについては、東証スタンダード市場平均が14.5倍であり、掲載した銘柄の8社が同水準を下回っています。また、(5)予想配当利回りについて、東証スタンダード市場平均は2.2%であり、9銘柄が同水準を上回っており、全体としても好配当利回りであるとみられます。

(7)~(10)を満たしていることから、ある程度好業績で財務体質も比較的良好であることを示しています。したがって、PBRやPER等が低い理由として、業績・財務があげられることは少ないとみられ、その分、市場の評価不足である可能性は強いとみられます。

図表4 「波乱」で買い場か?~中小型好業績+好配当+低PBR銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価(3/14) PBR(倍) 予想PER(倍) 予想配当利回り
2009 2009 2009 2009 鳥越製粉 591 0.46 14.7 2.37%
5816 5816 5816 5816 オーナンバ 800 0.47 5.9 3.00%
5951 5951 5951 5951 ダイニチ工業 669 0.48 11.6 3.29%
5184 5184 5184 5184 ニチリン 2,245 0.61 7.0 4.63%
6677 6677 6677 6677 エスケーエレクトロニクス 1,546 0.63 7.0 2.13%
4992 4992 4992 4992 北興化学工業 799 0.63 6.3 3.00%
9368 9368 9368 9368 キムラユニティー 1,000 0.67 9.4 4.20%
7551 7551 7551 7551 ウェッズ 676 0.67 7.0 4.44%
6882 6882 6882 6882 三社電機製作所 926 0.68 16.3 2.70%
6566 6566 6566 6566 要興業 766 0.71 11.5 2.61%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとに、SBI証券が作成。
  • ※株価、時価総額は3/14時点。20日間平均出来高は3/13まで20営業日の平均出来高
  • ※PBR=時価総額(Bloombergデータ)/純資産(直近四半期末)。
  • ※予想PER=時価総額(Bloombergデータ)/会社予想純利益
  • ※予想配当利回りの計算で使用される予想1株配当は会社予想ベース。


以下、図表4に掲載した銘柄の一部について、コメントします。

■エスケーエレクトロニクス(6677)~ 大型フォトマスクで高シェア。第1四半期で早くも予想を上方修正。

★日足チャート(6ヵ月)

※データは2023/3/15(日足) 9:45時点。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移

※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■大型フォトマスクで高シェア

大型フォトマスクを設計、製造、販売しています。フォトマスクに描画された微細なパターン線が転写され、液晶パネルや有機ELが製造されます。海外を中心に大手パネルメーカーが取引先で、大型フォトマスクの分野では高いシェアを誇ります。

2023.9期は好調なスタート。2/13(月)に発表された第1四半期は売上高74.8億円(前年同期比49.9%増)、営業利益13.8億円(同234.7%増)を確保。これを受け、会社側は、通期の予想営業利益を28億円から43億円(前期比12.6%増)に上方修正しました。

株価は2/13(月)1,157円から3/10(金)には一時1,729円まで上昇しましたが、米金融不安を受けて、そこからは下げています。

■好業績・好財務も低PBR・低PER

液晶パネルはITに加え、車載やVRデバイス等新しい市場が拡大。さらに、5G対応スマホ向けに有機ELパネルが伸びていることも好感されます。

今年度第1四半期末の純資産281億円に対し、3/14(火)現在の時価総額は175億円でPBRは0.6倍台にとどまります。また、上方修正後の会社予想純利益25億円に対する予想PERも7.0倍程度にとどまっており、低PBR、低PERです。

一方、第1四半期末の流動比率は305%を超え、長短借入金が総資産に占める比率は5.8%と小さく財務は堅固にみえます。

低PBR、低PERにとどまっている理由は、株式の流動性とIR(情報開示)にあるかもしれません。割安感は強いとみられます。

■北興化学工業(4992)~ファインケミカル事業が高収益。農薬事業の強化が課題か。

★日足チャート(6ヵ月)

※データは2023/3/15(日足) 9:40時点。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移

※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■農薬・ファインケミカルを手掛ける化学メーカー

農薬とファインケミカル製品の製造・販売を事業の柱とする化学メーカーです。

農薬事業では、JA(農協)を通じ、日本全国で殺虫剤や除草剤などの農薬製品を販売。海外展開もしており、人口増が進むアジアを中心に製品を輸出しています。近年では海外への販売割合が増加傾向です。

ファインケミカル事業では、固有の技術でつくられた高付加価値の精密化学製品を展開しています。企業向けに販売しており、PCやテレビ、医薬品など多様な製品に同社製品が用いられています。

■ファインケミカル事業は好調、農薬事業は軟調

同社の主事業での売上高構成比は、農薬事業が55%、ファインケミカル事業が41%となっています(22.11期)。一方で、利益のほとんどはファインケミカル事業で得たものです。営業利益の構成比は農薬事業が1.5%のみであるのに対し、ファインケミカル事業が98%を占めています(同)。

22.11期は売上高448億円(前期比11%増)、経常利益59億円(同65%増)と増収増益を達成。経常利益は中計の25.11期の目標値を上回った形です。ファインケミカル事業で原材料高騰を反映した販売価格改定が奏功したことや、中国子会社の好調などが寄与しました。

今期(23.11期)は、競争激化等から厳しい状態が続くと会社は予想しています。会社予想の売上高は470億円(前期比5%増)、経常利益53億円(同10%減)と減益見通しです。

株価は年初来からの割安株選好の流れで上昇基調でした。しかしその後、米銀行の健全性を巡り市場心理が悪化したのを背景に、他の多くの株式同様、3/10(金)から3/14(火)までの3営業日で急落しました。

同社のPBRが1倍を大きく割れている要因には、農薬事業の低迷が続いていることも考えられます。同事業は、赤字となる時期も足元でありました(20.11期-21.11期)。ファインケミカル事業の営業利益率が24.8%と高いだけに、農薬事業の立て直し、または「選択と集中」が課題になるかもしれません。

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