投資情報部 齊木 良

レポート作成日:2025/12/04

お知らせ

米国株式市場のポイントや注目銘柄として個別株5銘柄をご紹介いたします。コンテンツは毎月1回の更新予定ですので、ぜひご参考になさってください。12月のコンテンツのテーマは「金関連」です。

11月の米国株式市場は一部のAI関連株に対するバリュエーションの過熱感やAIバブル懸念のほか、ビットコインが下落を強めたことからリスクセンチメントが悪化する場面も見られて、月間ベースではナスダックが8カ月ぶり反落となりました。一方、セクターローテーションや利下げ観測再燃を主な背景としてNYダウとS&P500指数が7カ月続伸となり、NYダウは終値ベースで一時史上最高値を更新しました。

恐怖指数で知られるVIX指数は12/3時点で16.08と注目ラインである20を引き続き下回っており、ボラティリティは総じてフェイバーです。S&P500の11業種における月間ベースのセクターパフォーマンスではヘルスケアやコミュニケーション・サービス、素材などが上げて、情報技術や一般消費財・サービスなどが下げました。

なお、12月に入り、ビットコインが急変動を強めるなど、米国株を取り巻く環境に不透明要因も見られています。

12月の米国株は次の5点がポイントになると考えていて、特に①と②が最も重要と思われます。

FOMC(9-10日開催予定)

AI関連企業のオラクル、ブロードコム決算発表(各10日、11日発表予定)

③雇用統計(16日発表予定)

CPI(18日発表予定)

⑤年末商戦

11月のマーケットは利下げ観測の高安に大きく左右される展開でした。11月雇用統計発表が12月FOMC前に間に合わないため、金融政策決定にやや不透明感を残すものの、12月FOMCにおける利下げ確率はおよそ9割と利下げが確実視されています。併せて発表される金融当局者の経済・政策金利見通しも注目されると考えられます。市場予想では2026年に関して少なくとも2回の利下げが見込まれていますが、金融当局者がどの程度の利下げを見込んでいるか大きな関心を集めそうです。利下げサイクルの長期化は米株市場にとってポジティブ材料と考えられます。

一方、AIバブル懸念に関しては、AI投資リスクのバロメーターとして一部で見られているオラクルの決算発表が重要視されそうです。信用リスクを見る同社CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は一時2009年以来の高水準となり、同社株は25年9月高値から一時約4割下落しました。9月発表の25年6-8月期決算では受注指標の残存履行義務が前年比4.6倍の4,550億ドルまで拡大しました。今回発表される決算でどの程度受注を積み増すことができたのかという点と設備投資動向が注視されそうです。また、ブロードコム決算発表ではAI売上高とその見通しが注目されます。この2社の決算発表で成長を伴った実績が確認できれば、AI関連株の再評価につながる可能性があります。なお、S&P500情報技術セクターの12カ月先予想PERは約28倍で、ITバブル時と比較してバブルというほどバリュエーションに割高感は見られないと考えています。

今回のコンテンツのテーマは「金関連」です。利下げ期待、ETF需要、中央銀行による需要などを背景に、金価格の中長期的な先高観は強いと思われ、市場の一部では金価格が26年に5,000ドルに到達するとの見方があります。NY金先物価格は一時4,000ドルを下回る場面もありましたが、足元では4,200ドル台まで回復しています。月間ベースでは4カ月続伸し、年間ベースでは1979年以来の好パフォーマンスで推移しています。今回は金関連の個別株とETFをご紹介します。下記個別株3銘柄の市場予想PERはS&P500指数に比べて、バリュエーションに割安感があると考えられます。

当コンテンツはBloombergデータ、各社資料、各種報道、当社Webサイトを基にSBI証券が作成

SBI証券 アナリスト注目銘柄

今回の5銘柄の選定ポイントは次の3点です。

1.金関連

2. 時価総額が100億ドル以上(12/3時点、ETFは資産が100億ドル以上)

3.アナリストの投資判断で買いが過半数(ETFは無し)

  1. 1アングロゴールド アシャンテ(AU)

    コロラド州にグループ本社があり、米国を始め、南米(アルゼンチンやブラジル)やアフリカ(タンザニアなど)、豪州で探鉱などの事業展開を行っているグローバルな産金企業です。生産量で世界トップクラスに位置し、特にアフリカで強みを持っています。2024年12月期の売上高比率は金が約98%を占めており、地域別ではアフリカのゲイタ鉱山やキバリ鉱山、豪州のトロピカーナ鉱山などがメインです。米国ネバダ州におけるプロジェクトが今後の業績拡大要因として位置づけられます。25年7-9月期は金価格上昇や生産量拡大、コストの伸び抑制でフリーキャッシュフローが前年比2.4倍、調整後EBITDAが同2.1倍と好調でした。同社は配当支払い方針としてフリーキャッシュフローの50%を目標にしており、市場予想配当利回りは25年12月期で3.1%、26年12月期で4.7%と好配当銘柄である点も魅力です。なお、市場予想PERはそれぞれ約14倍、約10倍です。

    1.グローバルな産金企業

    2. 時価総額は422億ドル

    3.買いが11人、中立1人、売り2人

  2. 2バリック マイニング(B)

    カナダのオンタリオ州トロントに本社がある産金・産銅企業です。2024年12月期の売上高比率は金91%、銅7%、その他2%です。金鉱山は米国、アルゼンチン、ドミニカ共和国、マリ、パプアニューギニアなどにあり、銅鉱山はザンビアやチリ、サウジアラビアにあります。ドミニカ共和国プエブロ・ビエホ鉱山における拡張プロジェクトやザンビアにおける産銅プロジェクトなどが今後の業績拡大要因として位置づけられます。アクティビストとして有名な米エリオット・インベストメント・マネジメントが同社株を取得したと報じられています。12/1に同社は北米金資産のIPO検討を模索することを明らかにし、26年2月に進捗状況をアップデートする見通しです。なお、市場予想PERは25年12月期が約18倍、26年12月期が約12倍です。

    1.産金世界大手

    2. 時価総額は683億ドル

    3.買いが18人、中立4人、売り1人

  3. 3ニューモント(NEM)

    コロラド州に本社があり、生産量で世界トップクラスの産金大手です。米国を始め、カナダやメキシコ、ドミニカ共和国、ペルー、アルゼンチン、チリ、豪州などで事業展開しています。2024年12月期の売上高比率は金が84%、銅7%、銀4%などです。ドミニカ共和国プエブロ・ビエホ鉱山や北米のネバダ・ゴールド・マインは合弁事業です。豪州のタナミ金鉱山や世界最大級のカディア金・銅鉱山におけるプロジェクトが今後の業績拡大要因として位置づけられます。25年7-9月期のフリーキャッシュフローは前年比2.1倍のおよそ16億ドルで7-9月期として過去最高と好調で、4四半期連続で10億ドルを超えています。なお、市場予想PERは25年12月期が約14倍、26年12月期が約11倍です。

    1.産金世界大手

    2.時価総額は978億ドル

    3.買いが18人、中立4人、売り1人

  4. 4SPDR ゴールド シェア(GLD)

    世界最大級の金ETFです。投資目的は経費差引後の金地金の価格動向を反映させることです。設定は2004年11月で、経費率は0.4%です。同ETFへの年初来の資金フローは201億ドルで、投資家の関心を集めていると考えられます。

    1.世界最大級の金ETF

    2.資産は1,416億ドル

    3.無し

  5. 5SPDRゴールド ミニシェアーズ トラスト(GLDM)

    代表的な金ETFです。投資目的は経費差引後の金地金の価格動向を反映させることです。設定は2018年6月で、経費率は0.1%です。同ETFへの年初来の資金フローは73億ドルで、投資家の関心を集めていると考えられます。

    1. 代表的な金ETF

    2.資産は240億ドル

    3.無し

著者プロフィール

齊木 良 (さいき りょう)

シニア・マーケットアナリスト(米国株担当)
(日本証券アナリスト協会 認定アナリスト) 

名古屋大学経済学部卒業。東海東京証券において主に外国株プロモーション、外国株トレーディングに従事。機関投資家向けの日本株トレーディングにも携わる。米国の証券会社へのトレーニー、コロンビア大学ビジネススクール客員研究員等を経て2022年4月よりSBI証券投資情報部に所属。ファンダメンタルズとトレーディングの両面から米国株を分析する。初心者向けやETFなど幅広いコンテンツも作成している。各種メディアでマーケットや個別銘柄に関するコメントも行う。毎週3Km泳ぐことをルーティンとしているほか、プロ野球やバレーボール等のスポーツ観戦のため野球場やドーム、アリーナによく通っている。

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