K-宇宙:予算1兆ウォンキター!

LS証券リサーチセンター
2026/5/28
宇宙航空庁発足後、政策支援が構造的に強化
韓国宇宙航空庁(KASA)は2024年5月に発足し、2026年を起点として予算1兆ウォン時代へ本格的に突入することで、韓国宇宙産業の質的・量的成長を牽引していく見通しです。2026年の6大重点分野への予算配分は、宇宙輸送2,662億ウォン、衛星基盤の通信・航法・観測2,362億ウォン、宇宙探査968億ウォン、未来航空511億ウォン、民間産業エコシステム1,738億ウォン、人材・外交2,559億ウォンとなっています。R&D 53事業・計9,495億ウォンのうち、ヌリ号高度化1,253億ウォン、次世代打ち上げロケット1,204億ウォン、韓国型衛星測位システム(KPS)1,063億ウォンが中核事業です。
KASA発足により国家宇宙政策の基盤が整備される中、韓国政府主導の宇宙産業向けファンド「ニュー・スペースファンド」は民間主導の宇宙産業を支える資金源として注目されています。政府は2027年までに約2,000億ウォン規模のファンドを組成し、ロケットや衛星など有望企業へ重点投資することで、民間参入障壁を引き下げています。こうした政策支援と資本供給の組み合わせは、韓国企業のグローバル競争力向上につながると期待されます。
KASAは「2045年までに宇宙航空5大強国入り、世界市場シェア10%」という目標を掲げており、その実現には長期的に年間2〜3兆ウォン規模まで予算を拡大する必要があるとの立場を維持しています。一方で、最近ではNASA出身の中核人材の退職など人材流出問題も発生しており、これを解決するための定住環境改善や組織安定化が、今後の予算執行効率を左右する主要変数になると判断されます。
図1 韓国の宇宙予算、5年間で2倍に増加
資料:韓国宇宙航空庁、LS証券リサーチセンター
表1 2026年の6大重点投資分野
| 分野 | 予算(億ウォン) | 主な内容 |
|---|---|---|
| 宇宙輸送能力強化 | 2,662 | ヌリ号7回目打ち上げ準備(2028年目標)、次世代ロケットおよび軌道輸送船開発 |
| 衛星基盤イノベーション | 2,362 | 10cm級超高解像度衛星、6G低軌道衛星通信、韓国型衛星測位システム(KPS) |
| 挑戦的宇宙探査 | 968 | 月探査第2段階(月着陸船)事業本格化、宇宙無人製造プラットフォーム実証 |
| 民間産業エコシステム | 1,738 | ニュー・スペースファンド、宇宙技術商用化およびスタートアップ支援 |
| 未来航空技術 | 511 | 電動航空機(AAV)推進システム、成層圏ドローン実証など |
| 人材育成・外交 | 2,549 | 専門人材育成、NASAなどとの国際協力基盤強化 |
資料:韓国宇宙航空庁、LS証券リサーチセンター
関連銘柄
ハンファエアロスペースは、韓国唯一の中大型ロケットエンジン製造企業であり、ヌリ号75トン級液体エンジン6基の組立を総括しています。2025年7月には韓国航空宇宙研究院(KARI)からヌリ号開発の全周期技術移転を受け、名実ともに民間主導ロケット企業へ転換しました。2026年第3四半期にはヌリ号5回目打ち上げを控えており、全羅南道・順天に4基同時製造が可能な6万㎡規模のスペースハブロケット製造センターを建設し、将来的な量産体制を構築中です。また、次世代ロケット事業の総括主管企業に選定され、約9,505億ウォンを確保しました。宇宙航空庁がメタンベースの再使用型ロケットへ開発戦略を転換したことを受け、2030年の性能実証衛星打ち上げ、2035年の再使用型ロケット最終着陸を目標に開発を本格化する予定です。
中長期的にハンファエアロスペースは、ロケットから衛星製造・サービスまでを網羅する宇宙バリューチェーンの最上流を担う構造です。子会社のハンファシステム(衛星製造・SAR搭載体)およびセトレックアイ(超高解像度光学衛星)と連携することで、「ロケット運用→衛星量産→映像データサービス」へと続く垂直統合が完成します。2032年には月着陸船推進システム開発(1,033億ウォン契約締結)まで事業領域を拡大する予定です。再使用型ロケット商用化後、1回当たり打ち上げ費用が従来の使い捨てエンジン比で半分以下に低減されれば、価格競争力を武器にグローバル打ち上げサービス市場へ進出するシナリオも浮上しています。ただし、現時点で宇宙事業の売上寄与は限定的であり、先行投資負担が大きい構造であるため、業績寄与の本格化は2030年前後になる見通しです。
図2 ハンファエアロスペースが製作・組立を総括したヌリ号4回目打ち上げ(2025年11月)
資料:ニュース1、LS証券リサーチセンター
韓国航空宇宙(KAI)は、1990年代の多目的実用衛星「アリラン1号」共同開発を皮切りに、アリラン後続衛星、チョンリアン静止軌道複合衛星、タヌリ月探査機、425軍事偵察衛星、次世代中型衛星2〜5号に至るまで、韓国衛星開発史上で最も幅広い実績を保有する企業です。2025年11月には、民間企業が総括主管した初の中型衛星である次世代中型衛星3号を、ヌリ号4回目打ち上げを通じて軌道投入に成功させ、衛星とロケットを同時に網羅するシステム統合能力を証明しました。泗川本社には、2020年竣工の宇宙センター(設計・製造・組立・試験・量産ワンストップ)に加え、2023年には民間初・最大規模となる4トン級熱真空チャンバーを構築し、超小型衛星最大8基の同時試験が可能な宇宙環境試験インフラを独自確保しています。
中核受注ドライバーは、2026年中に事業者選定が予定されている多省庁共同の超小型SAR衛星事業(総額1兆4,223億ウォン、40機量産)です。KAIはLIGネクスワンとコンソーシアムを組み、ハンファシステム・セトレックアイ連合と二強構図を形成しています。KAIは30年以上の衛星本体開発実績と、泗川宇宙センターを基盤とした量産能力を強みとしていますが、チョンリアン5号や電子戦システム開発事業などでの相次ぐ受注失敗は競争力懸念要因です。受注に成功した場合、大量量産実績を通じたグローバル衛星輸出拡大や、再使用型ロケット開発推進の足掛かりとなる可能性があります。ただし現時点では、宇宙事業の業績寄与は限定的であり、航空・防衛本業中心の収益構造が維持されています。
図3 政府主導から民間主導へ、KAIが初めて主導した韓国ニュー・スペースの出発点「次世代中型衛星2号」(2026年5月打ち上げ)
資料:韓国航空宇宙、LS証券リサーチセンター
現代ロテムは、1994年に韓国初の液体推進科学ロケット(KSR-Ⅲ)エンジン開発へ参加したことを皮切りに、ヌリ号推進供給系試験設備および推進機関システム試験設備構築を担当するなど、ロケットインフラ分野で継続的な実績を有しています。2006年には韓国初となるメタンエンジン燃焼試験に成功した実績を背景に、2025年には大韓航空とコンソーシアムを組み、国防技術振興研究所による再使用型ロケット向け35トン級メタンエンジン開発課題を受注しました。また、国防科学研究所主管の極超音速飛行体「HyCore」開発事業も受注し、推進技術高度化を進めています。忠清南道・瑞山に宇宙航空センターを建設中であり、2026年3月の株主総会では、今後3年間で宇宙航空分野へ1兆8,000億ウォン以上を投資する中長期計画を正式発表し、航空宇宙推進システムを新規事業として宣言しました。
ただし現時点で現代ロテムの宇宙事業は、K2戦車や自走砲など地上兵器体系中心の主力事業とは異なり、まだ業績寄与がほぼない初期投資段階にあります。メタンエンジン開発の完成目標時期は2030年前後であり、短期的な受注モメンタムは明確ではなく、収益化までには相当な時間を要すると見込まれます。ハンファエアロスペースがロケット事業で圧倒的先行ポジションを確立している中、現代ロテムはメタンエンジン・極超音速推進系など次世代技術のニッチ参入を狙う挑戦者ポジションです。投資家視点では、宇宙事業は現在のバリュエーションへ大きく織り込まれているというより、中長期オプション価値に近い性格を持つため、本業であるK2輸出拡大およびポーランド向け納品スケジュールが、依然として業績の主要変数である点に留意する必要があります。
図4 現代ロテムが開発中の再使用型ロケット用メタンエンジン
資料:現代ロテム、LS証券リサーチセンター
▶ LIGディフェンス&エアロスペース(銘柄コード:079550)
LIGディフェンス&エアロスペースは、2006年からSAR(合成開口レーダー)基盤技術の確保に着手し、多目的実用衛星5・6号、韓国型衛星測位システム(KPS)航法搭載体、ANASIS軍事衛星通信システム、超小型衛星システム地上管制システムなど、衛星システム全分野にわたる実績を積み重ねてきた防衛産業専門企業です。2025年には、韓国民間企業として初めて静止軌道級衛星の本体と搭載体を同時受注する成果を達成し、チョンリアン衛星5号のシステム・本体(約3,208億ウォン)および気象搭載体(約2,746億ウォン)をともに受注、2031年打ち上げを目標に開発へ着手しました。また、2025年10月には大田本社に衛星・レーザーシステム組立棟を竣工し、衛星システム総合・試験インフラを大幅に強化することで、宇宙事業を独立して遂行できる基盤を構築しました。
独自の衛星能力確保においても意味のある進展が見られており、メッシュ素材の網状アンテナを適用した超高解像度SAR衛星「LIG SAT」を独自開発中で、2027年初の試験打ち上げを目標としています。受注競争の面では、韓国航空宇宙とコンソーシアムを構成し、多省庁共同の超小型SAR衛星事業(総額1兆4,223億ウォン、40機量産)の受注を狙っています。SAR搭載体技術力が競争の主要変数として作用する見通しです。社名変更が象徴するように、防衛産業専門企業から宇宙・航空能力までを網羅する総合防衛宇宙企業への転換を加速しており、チョンリアン5号受注によって確保した静止軌道級衛星のヘリテージは、今後の韓国内外衛星受注競争において有意な差別化要因として機能すると期待されます。
図5 LIGディフェンス&エアロスペースの衛星製品群
資料:LIGディフェンス&エアロスペース、LS証券リサーチセンター
当レポートに関してご留意いただきたい事項
・当資料に示す意見等は、特に断りのない限り当資料作成日現在の LS SECURITIESの見解です。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
・本資料は当社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
免責事項・注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなさるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製または販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。