相場上昇で増える「株式分割」。次の注目銘柄はコレ!?

相場上昇で増える「株式分割」。次の注目銘柄はコレ!?

投資情報部 榮 聡

2024/11/13

株式市場の上昇を背景に、株価が高くなった銘柄の株式分割が増えています。株価水準が高い銘柄について、業績動向も勘案のうえ、次に分割が期待される注目銘柄をご紹介いたします。

図表1 注目銘柄

(1)株式分割に対する考え方

今回は相場上昇を背景に増えている株式分割に焦点を当てます。第1節で株式分割の考え方を解説、第2節で分割後の株価パフォーマンスを検証、第3節では、これから分割が期待される銘柄を検討します。

〇相場上昇で増えた株式分割

米国株式市場の相場上昇が続いていることから、株式分割を行う銘柄が増えています。

S&P500指数採用銘柄で株式分割を行った銘柄は、2022年の相場下落から回復局面にあった2023年は1銘柄まで減少しましたが、2024年は最高値の更新が数十回も続く上昇基調となったことから、2024年10月末時点で12銘柄に増えています(図表2)。

直近ではトランプ氏が大統領選挙で圧勝したことから「トランプラリー」の再現となり、再び最高値を更新しているため、今後は株式分割を行う銘柄も増えると考えられます。

〇株式分割に関する考え方を解説

株式分割を行うというニュースに際して、どのように考えればよいかについて、解説いたします。

株式分割は分割の前と後で会社の内容は変化しないため、ファンダメンタルズ面(業績動向などの基礎的条件)から見ると、分割を調整した株価に対してニュートラル(上昇要因でも下落要因でもない)というのが基本的な考え方です。

しかし、実際には株式分割のニュースは、市場でポジティブに迎えられることが多いです。その理由として、以下が考えられます。

[1] 株式分割が妥当になるほど株価が上昇してきたことが示唆されるため、業績や業界環境で良いトレンドに乗っている企業であることが多いと考えられます。株式分割の発表は、「ここに投資に良い銘柄がありますよ」という市場へのシグナルになると考えられます。

[2] 発行済株式数が増加することによって流動性が増すため、 売買の際のリスクが低下します。

[3] 株式分割で株価水準が低下すると、個人投資家が買いやすくなるなど需給面でポジティブな効果が期待されます。

しかし、上記のようなプラス要因は市場心理やテクニカルな効果にとどまるため、ファンダメンタルズが悪化した場合には、これを補うことができません。このため、株式分割をする銘柄に注目して投資する場合にも、業績の見通し、業界環境の行方といったファンダメンタルズをチェックする必要があります。

図表2 株式分割を行った銘柄数の推移(S&P500指数採用銘柄対象)

(2)株式分割銘柄のパフォーマンス検証

2024年に株式分割をした銘柄の分割後の株価パフォーマンスをS&P500指数採用銘柄について検証しました。

〇パフォーマンス検証

2倍以上(1株を2株以上に分割するケース)の分割を行った銘柄が11銘柄ありました。

分割実施日から11/8(金)までの株価騰落を見ると11銘柄のうち8銘柄が上昇、同期間でS&P500指数を基準とする相対株価でみても11銘柄のうち7銘柄がアウトパフォームしていることがわかりました。

やはり、株式分割を行った企業の株価は上昇する傾向が強いと言えそうです。一方、株式分割後に悪材料が出た、業界環境が不安定、株式のバリュエーションが高いといったケースでは株価が下落しているものも散見されます。

個別に目立ったケースについて以下で解説いたします。

〇個別に目立った銘柄

エヌビディア(NVDA)

生成AIの登場によって半導体業界のみならず、産業界全体でも同社の役割が大幅に拡大したことから、ダウ平均への組み入れに向けて株式分割の働きかけがあった可能性が考えられます。

ダウ平均は時価総額ウェートではなく単純株価による指数のため、株価が高いと影響が大きくなり過ぎるために、採用に適したほどほどの株価があります。実際に、11/8(金)からインテルに替えて採用されています。

ウォルマート インク(WMT)

11銘柄の中で、株式分割後の株価上昇が最も大きくなっています。株式分割後に発表された2-4月期、5-7月期の決算がいずれも堅調で安定的な株価上昇となっています。8-10月期決算を11/19(火)に発表予定です。

5-7月期の米国ウォルマートの既存店売上は前年同期比4.2%増で、来店客数が同3.6%増、平均購入額が同0.6%増と、伸びを来店客数がけん引していることがポジティブと考えられます。好調な業績を受けて2025年1月期の売上見通しを引き上げました。

チポトレ メキシカン グリル(CMG)

50倍という大幅な分割で市場の注目を集めましたが、分割後の株価は下落、S&P500指数に対しては20%以上のアンダーパフォームとなっています。

メキシコ料理のチェーン店を展開、市場で成長企業と目されています。分割後に特段の悪材料が出たわけではありませんが、予想PERが53倍と高いことが株価上昇のネックになっているとみられます。

スーパー マイクロ コンピューター(SMCI)

エヌビディアのAIコンピュータをAIサーバーとして組み立ててデータセンターに納入している企業です。AIデータセンターへの投資拡大で業界は非常な活況で、業績は伸びていますが、株式分割後に悪材料が出て株価は大幅な下落となっています。

会計が適正でない可能性と内部統制に問題がある可能性が指摘され、2024年6月期の年次報告書を取引所の期限までに提出できていません。

図表3  株価分割銘柄のパフォーマンス検証(S&P500指数採用銘柄対象、2024年実施分)

(3)今後の株式分割銘柄を企業を探る

今後に分割しそうな銘柄を探ってみましょう。

S&P500指数採用銘柄について、株価が高い銘柄を20銘柄選び、以下の条件を満たすものを図表3に抽出しました。

[1] アナリストのBUY判断比率が50%以上(アナリストが概ねポジティブな投資判断をしている)

[2] 年初来の株価騰落率が10%以上(株価動向がまずまず堅調、S&P500指数は年初来26%上昇している)

これら銘柄から、業績動向も勘案して、以下の6銘柄をご紹介いたします。

ブッキング ホールディングス(BKNG)

S&P500指数採用銘柄で、株価が最も高くなっています。旅行関連予約サイトの大手で、世界的な企業買収を繰り返し、傘下には「ブッキングドットコム」「アゴダ」「Priceline.com」「KAYAK」「オープンテーブル」などを収めています。

7-9月期の売上は前年同期比9%増と4-6月期の同7%増から加速の形となり、市場予想を5%ポイントも上回りました。基調はパンデミックによる落ち込みの反動増から徐々に減速しつつあるとみられますが、引き続き堅調となっています。特に欧州市場の好調が想定以上となっているようです。

フェア アイザック コーポレーション(FICO)

信用評価ソリューションの開発会社です。ビッグデータと数学アルゴリズムによる独自の消費者行動予測モデルを構築します。1989年に投入された「FICOスコア」で著名で、世界の大手銀行、損保、小売りなど幅広い業界で採用されています。

7-9月期決算は、売上が前年同期比16%増、調整後EPSは同31%増と伸び、市場予想も上回って好調でした。ソフトウェア収入が前年同期比5%増に対して、スコア収入(同社のシステムを利用する企業からの収入)が同27%増と成長をけん引しています。

サービスナウ(NOW)

企業向け業務管理プラットフォームを提供する会社で、ITのほか、人事、法務、経理などの管理ソフトを擁します。エヌビディアや経営コンサルティング企業と提携し、企業が生成AIを業務に導入しようとするときに最前線で活躍すると期待されています。

7-9月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回る好決算でした。当面の売上に関係の深い流動残存履行義務額は前年同期比26%増で、市場予想を3%上回りました。生成AIの機能を製品に組み込み、製品価格を引き上げられていることが好結果につながっているようです。

コストコ ホールセール(COST)

年会費制の倉庫型量販店を北米軸に世界890店展開しています。陳列・在庫管理費用を抑え、日用品、生鮮食品、衣料、家電、家具などを格安で販売します。2024年8月期の米国売上が72%、海外売上が28%です。

日本には1999年に進出して、2024年9月末時点で35店舗に拡大して人気です。最も最近の株式分割は2000年1月に1株を2株への分割を行っています。既存店売上の伸びは、6-8月期が前年同期比5.4%増、9月が前年比6.7%増、10月が同5.1%増と堅調に推移しています。

イーライ リリィ(LLY)

7-9月期決算では、糖尿病治療薬「マンジャロ」、肥満治療薬「ゼップバウンド」とも売上が市場予想を下回ってネガティブサプライズとなりました。しかし、これまで長らく需給がひっ迫していたことによる市場混乱の一時的な影響とみられ、中長期の成長見通しを変える必要はないとみられます。

通期予想EPSの下方修正が目立ちますが、買収した企業の仕掛研究開発費を一括計上した影響で一時的なものです。肥満治療薬は肥満だけでなく、幅広い成人病の治療薬として適応が広がっていく期待があり、株価の上昇基調継続が期待されます。

ネットフリックス(NFLX)

ネット動画配信サービスの世界最大手。映画・ドラマなどでオリジナル・コンテンツを強化、非英語コンテンツにも注力しています。新型コロナ期の反動で加入者数がマイナスとなって2021年には200ドル割れまでありましたが、株価回復が続いており、最近最高値を更新しました。

共有アカウント対策と広告付きのプランの導入により、新規加入者数が好調な増加となっています。7-9月期決算では通期の営業利益率を前年比+6%ポイントの27%と、従来の26%から引き上げたことがポジティブと捉えられました。

図表4 今後の株式分割が期待される銘柄のスクリーニング

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