再選「トランプ大統領」で注目!!ビットコインと関連銘柄
投資情報部 榮 聡
2024/12/25
ビットコインなど暗号資産に支援的と目されているトランプ氏が大統領に再選されたことで、ビットコインは一時10万ドルの大台に到達、市場の注目を集めています。ビットコインの上昇、取引活発化が恩恵となる関連銘柄をご紹介いたします。
図表1 注目銘柄
(1)2024年に上昇した経緯と今後の見通し
ビットコインなど暗号資産に支援的と目されているトランプ氏が大統領に再選されたことで、ビットコインは一時10万ドルの大台に到達、市場の注目を集めています。2024年にビットコインが大幅な上昇となってきた経緯と、最近の動きについて確認します。
〇ビットコインに関するイベント(図表2)
A. 2024年1月11日 ビットコインの現物ETFをSECが承認
ビットコインの現物を組み入れたETFの誕生によって、ビットコイン用に新たな口座を開くことなく、他の資産と同様に証券口座からビットコインへの投資ができるようになりました。世界的な資産運用大手のブラックロック、フィデリティがETFを設定して資金流入が拡大する契機になりました。
B. 2024年4月20日 半減期の到来
ビットコインの半減期は、ビットコインのマイニング報酬が半分になる現象のことです。ビットコインのマイニング報酬は、ビットコインの取引を確認し、新たなブロックをブロックチェーンに追加する作業を行う人々に対する報酬のことで、約4年(21万ブロックごと)に起きる、ビットコインのインフレ(価値下落)を防止するための仕組みです。過去の経験から、半減期の後1年程度は価格が上昇しやすい傾向があります。
C. 2024年7月27日 トランプ氏が「Bitcoin 2024」カンファレンスで基調講演
トランプ氏は同イベントで政治資金として2,100万ドルを調達しました。ビットコインに支援的な政策が期待できるとの期待が高まりました。
D. 2024年11月4日 トランプ氏が大統領選挙で勝利
暗号資産に支援的と目されるトランプ氏が大統領選挙で圧勝しました。
E. 2024年11月21日 SECのゲンスラー委員長が辞任表明
ビットコインの規制に前向きであった、ゲンスラー委員長が来年1月20日に辞任すると発表されました。後任には、12月4日にビットコインの推進派とされるポール・アトキンス氏が指名されたことがポジティブになると期待されました。
〇直近の値動き
11月5日にトランプ氏が大統領選挙に勝利して、「トランプトレード」の中心的資産と目されたことから、価格上昇の勢いが強まり、大統領選挙前の7万ドル割れから12月16日(月)~18日(水)にかけて10万ドル台の大台を付けました。
しかし、12月18日(水)に発表された12月FOMCでの経済予測で、2025年の利下げ回数が9月時点の4回から2回に低下したことを受けて米10年国債利回りが上昇、株式とともにビットコインも反落しました。
楽観的なシナリオで買い上げてきた後であるため、当面は金利動向に神経質な展開となることが想定されます。ただ、トランプ政権下でビットコインの利用促進などの政策が出てくることに対する期待は根強いとみられ、来年1月20日(月)の大統領就任式に向けて、戻りを試す展開が想定できそうです。
図表2 ビットコイン価格の年初来の動きと主要イベント
(2)ビットコインの基本的性質と上値余地
ビットコインは、本来何の価値もないはずのデジタルデータに価格を付けて取引しています。「その価値の源泉はどこにあるのか」「他の金融資産との関係は?」「どれくらいまで上昇する可能性があるのか」、ビットコインについて基本に戻って確認しておきましょう。
〇ビットコインの特長
ビットコインには、以下のような他の金融資産にない特徴があることが、価値の源泉になっていると考えられます。ただし、現在のところ、この特長が十分に生かされているとは言えず、そういう意味では今後の展開次第で評価の余地はありそうです。
・発行主体がなく、特定の国家や銀行に依存しない。
・インターネットのデジタルサービスとの相性が良い。
・銀行を通じた海外送金に比べて手数料が安い。
・取引の管理者がいない(利用者が取引を監視する仕組みがある)。
・発行量の上限(2100万BTC)が決まっており、発行のタイミングも開示されている。
〇ビットコイン価格と米10年国債利回り、金価格
株式や債券のようにキャッシュフローを生まず、金利が付かない資産だという類似点から、金価格とプラスの相関が高く、米10年国債利回りとの相関は低いと、一般的には言えそうです。実際に2020年から2024年にかけての動きを検証すると、以下のようになります。
・ビットコイン価格と米10国債利回り(図表3)
2022年11月から2023年10月にかけて米10年国債利回りが上昇した局面でビットコイン価格が大きく下落して、明確な逆相関の関係が目立ちます。
一方、金利が上昇しているときにビットコインが上昇している局面もあり、一概に逆相関の関係とは言えないようです。ただ、やはり、金利が付かない資産のため、金利が上昇する局面では不利になりやすいと言えそうです。
・ビットコイン価格と金価格(図表4)
2020年9月から2022年3月にかけての1年半強は、はっきりとした逆相関でした。それ以外では順相関の関係が基本的なようです。
2020年~2022年というと新型コロナ感染の影響を受けた時期で特殊な市場環境です。このため、基本的には順相関になりやすいと考えられます。
〇ビットコインの上値の可能性
・広く決済に使われるようになるなら・・・
2021年4月に掲載した筆者のレポート「社会的受容が広がるビットコイン、新規上場のコインベース、日米の暗号資産関連銘柄」では、暗号資産が「広く決済に使われるようになるなら、世界の富の2~3%程度が暗号資産で保有される可能性があるのではないか」とのシナリオを提示しました。
2022年の世界の富は454兆ドル(クレディスイスの「Global Wealth Report 2023」)、暗号資産の時価総額は3.3兆ドル(12月23日)で、0.7%を占める計算です。
まだ上昇の余地は大きいと考えられます。ただし、現在のところ、ビットコインなど暗号資産が活発に決済に使われているとは言い難く、そういう意味では2~3%を占めるのはまだ早いと考えられます。
トランプ政権下でビットコインの決済での利用が広がるような政策が打ち出されるか注目されます。
・金(ゴールド)との比較では・・・
金の時価総額は12月23日時点で17.5兆ドルと推定され、3.3兆ドルの暗号資産の5倍以上大きくなっています。
金融市場における商品性格が似ている点も多いことから、金融関係者にはいずれは金に匹敵する大きさになるのではないかとの意見もあり、注目されます。
図表3 ビットコイン価格と米10年国債利回り
図表4 ビットコイン価格と金価格
(3)注目銘柄をご紹介
ビットコインの価格上昇や取引活発化が恩恵になると考えられる関連銘柄をご紹介いたします。
〇マイクロストラテジー A(MSTR) ・・・ビットコインを大量保有
ビジネス・インテリジェンス(BI)ベンダーとしてソフトウェア事業を行いながら、世界最大のビットコイン保有会社でもある会社です。自らを「世界初のビットコイン開発会社」と称しています。法定通貨に対するインフレヘッジの一環として、2020年からビットコインの購入をスタート。ソフトウェア事業や転換社債の発行等で得た資金を、ビットコインの調達に充てています。
2024年7-9月期は、売上(=ソフトウェア事業)が1.16億ドル、1株当たりの損失(GAAP)が-1.72ドルといずれも市場予想を下振れました。同社は暗号資産の新たな会計ルールを適用せず、保有ビットコインの評価について、減損費用を計上したことが影響した模様です。11月10日時点のビットコインの保有量は約27.5万BTCまで増加しました。また、ビットコインの追加購入ため、25年から27年の3年間で、420億ドル(日本円で約6.6兆円)の資金調達計画を発表しました。
〇コインベース グローバル A(COIN) ・・・暗号資産の取引所運営
世界的大手の暗号資産取引所を運営する企業です。2021年NASDAQ市場で暗号資産交換業を行う会社として初の上場を果たしました。同社取引所は、100カ国以上で展開、8割以上の取引が米国外で行われています(2023年末時点)。部門別売上高構成比は、暗号資産の交換手数料が49%、ステーキング(特定の暗号資産をブロックチェーンネットワークに預けて得られる報酬)やUSDC(サークル社と共同で発行したステーブルコイン)の⾦利収入等を含むサブスクリプション・サービスが45%、その他が6%です(2023年12月期)。
2024年7-9月期決算は、売上が12.1億ドルで前年同期比79%増の一方、前四半期比では16%減と低調に推移しました。調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)は4.5億ドルで前年同期比2.5倍、前四半期では25%減でしたが、7四半期連続の黒字を達成しています。取引量の低下により取引手数料が前四半期比27%減、サブスクリプション・サービスが同7%減でした。10-12月期については価格の上昇を受けて取引の活発化が見込まれ、コンセンサス予想で売上は16.5億ドルへの増加が予想されています。
〇ブロック インク(SQ) ・・・ビットコインの交換、決済
Twitter(現在の「X」)を創業したジャック・ドーシー氏が創業した決済サービス会社で、スマホ・カード決済システムのSquareと、モバイル決済&個人間決済のCash Appが事業の柱です。2021年にスクエアからブロックに社名を変更しました。2022年にBNPL(後払い決済)の豪アフターペイを買収しています。Cash Appの事業の一つとして、ビットコインの交換、保護預かりやビットコインによる決済などを手掛けています。2023年12月期の売上構成比で、ビットコイン関連は43%を占めています。
2024年7-9月期業績は、売上が前年同期比8%増、EPSは同2.6倍で、市場予想に対して売上は4%下回り、EPSは予想並みでした。売上はSquare事業、Cash App事業とも予想を下回って低調だったものの、Cash Appのサブスクリプションが伸びたことで利益率は大きく改善しました。
〇マラ ホールディングス(MARA) ・・・暗号資産のマイニング
ビットコインマイニングの大⼿で、従業員数は60人です(2023年末)。2010年の設立当初は、ウラン等の鉱物の調査事業を手掛ける企業でした。その後、不動産投資事業、IPライセンス事業と業態転換を次々と続け、2017年のGlobal Bit Ventures, Inc.(GBV)との合併契約締結を契機にマイニング事業に参入。2018年にGBVとの合併は解消するも、米国を中心にマイニング施設を11拠点まで拡大。経営戦略に、長期投資としてビットコインの生産・保有を行うことを掲げています。
2024年7-9月期決算は、売上が131百万ドル(前年同期比35%増)と予想を下振れましたが、1株損益は-0.34ドル(前年同期は-0.07ドル)とほぼ予想通りでした。暗号資産価格の上昇や、最大ハッシュレートが36.9EH/s(同93%増)となった一方、半減期の影響で生産量が2,070BTC(同3,490BTC)まで減少したことが重しとなりました。会社側は、生産量を左右するハッシュレート(最大)に関し、50EH/sまでの到達計画を12月中旬から下旬までに達成見通しで、10月末時点で40EH/sを超えたと述べています。
〇クリーンスパーク(CLSK) ・・・暗号資産のマイニング
ネバタ州ヘンダーソンに本社を置くビットコインのマイニング(採掘)が主業の会社です。以前は「Stratean Inc.(ストラテアン)」と
いう名称で、再生エネルギー事業も手掛けていました(2022年に撤退)。2020年、ATL Data Centers LLC(ALT)の買収を契機に、マイニング事業に参入。低炭素エネルギー源(クリーンエネルギー)を活用し、環境への影響を最小限に抑えることを目指しています。
2024年9月期は売上が3.79億ドルで前年同期比2.3倍となって収益の基調は改善していますが、1.97億ドルの減損損失を計上したことから純利益は1.46億ドルの赤字が続きました。7-9月期の売上は0.89億ドルで前年同期比70%となるも市場予想を6%下回り、1株損失は-0.25ドルへ前年同期の-0.44ドルから縮小したものの市場予想の-0.16ドルを下振れて、業績の不振が目立ちました。
図表5 注目銘柄の投資指標
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