「ディープシーク」で見直しの香港株!香港株への分散も考えるべき?

投資情報部 榮 聡
2025/03/19
「ディープシーク」の登場で中国のテクノロジーに対する見直しが進み、香港株は年初来、2024年初来とも主要市場でトップパフォーマーに躍り出ました。どのような銘柄が相場上昇をけん引しているのか、足もとのファンダメンタルズはどうか、注目できる銘柄は何か、についてご報告いたします。
図表1 注目銘柄

(1)意外に好調な香港株のパフォーマンス
今回は意外にパフォーマンスが良好となっている香港株を取り上げます。
〇香港株が好パフォーマンス
米国市場が調整する中、「ディープシーク」がきっかけとなって見直されている香港株は、年初来19%上昇、2024年初来42%上昇して、それぞれ4%下落、18%上昇のS&P500指数を大きく上回っています(3/14(金)時点)。
2024初来の上昇率では、日本のTOPIX、インドのSENSEXも上回って、図2に取り上げた主要市場の中でトップのパフォーマンスとなっています。これまで長らく中国経済の下振れが懸念されてきましたので、意外な結果と言えるかもしれません。
好パフォーマンスの要因としては、(1)「ディープシーク」が中国のテクノロジー銘柄全般に見直しを促した、(2)中国政府による景気対策への期待、(3)トランプ大統領との貿易戦争は2018年に経験済みである、といったことがあげられるでしょう。
〇ディープシーク・ウェークアップ
これら3点の中でも特に影響が大きいのが「ディープシーク」とみられます。米国市場では“ディープシーク・ショック”と言われましたが、中国市場では逆に“ディープシーク・ウェークアップ(覚醒)”となりました。
「ディープシーク」は、2023年に梁文鋒(リャンウェンフォン)氏が創業した中国杭州市のAI研究所が提供する対話型AIです。昨年11月に市場投入された最新モデルの「ディープシーク-R1」は、1/27(月)にiPhoneのアプリダウンロード数でトップを獲得したことから、急速に株式市場で注目を集めました。
オープンAIの「ChatGPT」に匹敵する対話能力をもち、かつ、6百万ドルで開発されたとの主張が衝撃をもって迎えられました。これまで世界で一強とみられていた米国AI産業の価格競争力、市場リーダーシップに疑問が生じる一方、中国のテクノロジーに対する再評価につながりました。
〇どんな銘柄の株価が上昇しているのか?
当社が取り扱っている時価総額500億HKドル以上の銘柄について、「ディープシーク」が市場の注目を集めた1/27(月)から3/4(金)までの株価上昇上位銘柄を図表3に抽出しました。
ネット関連、半導体関連、EV関連など、AI関連に限らず、幅広いテクノロジー銘柄が大幅な上昇となっています。「ディープシーク」によって中国のテクノロジー企業に対する見直し機運が広がったことがうかがわれます。
なお、香港市場の時価総額上位10銘柄のうち5銘柄を占める中国工商銀行(01938)など銀行株の上昇率は6~14%でした。19%上昇したハンセン指数を下回りますが、全く買われていないというわけではないようです。
図表2 2024年からだと、意外にも香港株がトップパフォーマー(3/14(金)時点)

図表3 「ディープシーク」以降、どんな銘柄が上昇した?(時価総額500億HKドル以上、当社取り扱い銘柄)

(2)香港株のファンダメンタルズを確認
香港株への投資を検討するに際して、経済と株式バリュエーションの状況を確認しておきましょう。
〇中国経済の状況・・・安定しつつある
まず、中国経済の現状を鉱工業生産と小売売上高の月次統計で確認しておきましょう。
中国の鉱工業生産と小売売上高は、図表4の通り新型コロナによる下ぶれとその後の反動増・反動減で激しい上下を繰り返した後、2024年からは比較的落ち着いた動きとなっています。
鉱工業生産は概ね前年比5%増を超えた水準で安定しているように見えます。小売売上高は2024年前半に伸び率の低下が目立ちましたが、その後2024年半ばから2025年初めにかけて底離れの動きとなっており、さほど心配のない動きと言えそうです。
〇全人代では5%前後の成長目標・・・経済下支えの姿勢
3/11(火)に閉幕した中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)では、「5%前後」の経済成長目標が維持され、個人消費を中心とした内需の拡大や、AI(人工知能)をはじめとする先端技術の独自開発強化などが承認されました。
「5%前後」というのは市中エコノミストの予想平均が4.5%程度への減速を見込む中ではやや強気な目標と言えそうですが、経済の下振れの兆しがあるときは景気刺激策で支えるという意思の表れとも考えられます。当面の下振れリスクを抑える要素として歓迎できるでしょう。
〇香港株のバリュエーション・・・引き続き割安感がある
ハンセン指数の予想PERは、2023年後半から2024年にかけて10倍を割り込んでいたことを例外とすると、長期的には概ね10~14倍のレンジで推移しており、レンジの中心は12倍程度と考えて良さそうです。
年初来の株価上昇によって予想PERは3/14(金)時点で11.5倍まで上昇してきましたが、依然として割安感が残っていると言えそうです。国際比較でも、米国S&P500の22.6倍、日本TOPIXの14.3倍、インドSENSEXの19.9倍と比べて低さが目立っています。
ハンセン指数採用銘柄のEPSについては、2025年は前年比5.9%増、2026年は同8.3%増と堅調の予想です。経済対策によって経済の下振れが避けられるなら、予想PERは過去平均の12倍程度へ回復、さらに経済の改善が進むなら、それ以上に上昇していく期待もあるでしょう。
図表4 中国の鉱工業生産と小売売上高

図表5 香港ハンセン指数のバリュエーション(週次ベース、最後のデータは3/14(金))

(3)香港株式市場に投資するための注目銘柄をご紹介
香港株式市場に投資する手段として、代表的なETFと図表3に抽出された銘柄から4銘柄を選んでご紹介いたします。
ブラックロック社が提供する中国株のETFで、香港証券取引所で取引されている中国の大型および中型株式で構成される指数と同等の投資成果を目指しています。3/18(火)の純資産額は82.3億ドルです。
組み入れ上位銘柄は、アリババグループ(09988)が9.0%、テンセント(00700)が8.6%、美団W(03690) が8.0%などとなっています。
中国のネット通販大手。CtoCの「タオバオ」やBtoCの「Tモール」が主力です。クラウドサービス、生鮮スーパー、ネット出前、動画サイトなども手掛けます。クラウドサービスでは、アジア最大手です。AIでは自社開発モデルの「Qwen(通義千問)」を擁し、「ディープシーク」の台頭に対抗して、AI関連のツールやアプリを次々に投入しています。
2025年3月期業績は売上が前年比6%増、EPSは同25%増、2026年3月期業績は売上が前年比6%増、EPSは同15%増が予想されています。売上の伸びに比べてEPSの伸び率が高いのは、クラウドサービスの利益拡大やローカルサービスの赤字縮小が見込まれているためです。
インターネットサービス大手で、対話アプリ「微信(WeChat)やポータルサイト「QQ.com」を基盤にゲームやスマホ決済、動画配信などに展開しています。オンラインゲームの配信で世界最大手です。AIでは、自社開発の大規模言語モデル「混元」を擁し、次世代AIアシスタントアプリ「元宝」を投入しています。
2024年12月期の決算を3/19(水)に発表予定で、2024年12月期は大幅な利益改善の見込みです。2025年12月期の利益成長は鈍化するものの、規制環境の落ち着きとコスト削減によって中期的に10%以上のキャッシュフロー成長が期待されます。
企業向けにクラウド・サービスとERP(統合基幹業務パッケージ)の開発・販売を手掛ける会社です。大企業向けPaaS(Platform as a Service)とSaaS(Software as a Service)、中小企業向けおよび小企業向けのSaaS(Software as a Service)などを展開します。クラウドサービスのAI化を推進中で、業務管理アプリCosmicの運用を開始しました。AI開発ではバイドゥ、マイクロソフト、アマゾンのAWSなどとの協力を強化しています。
2025年12月期の業績は、売上が75.3億元、純利益が1.8億元の予想で、2019年12月期以来の黒字となる見込みです。2026年12月期は売上が前年比17%増、純利益は同2.5倍と伸びる予想です。
電池を祖業に2003年に自動車事業に参入、電気自動車とプラグインハイブリッド車を生産します。自社開発のリン酸鉄リチウム系バッテリーを擁します。競争の激しい中国のEV市場でも、同業を上回る販売台数とバッテリーを内製していることにより、相対的に安定した利益率を確保できると期待されます。AIでは「ディープシーク」を自社システムに統合する方針を明らかにして、自動運転技術の向上を目指します。
海外のEV市場に展開し、現地生産にも積極的です。2025年12月期は、売上が前年比25%増、EPSは同30%増と高成長が持続する予想です。2024年12月期決算は、3/24(月)に発表予定です。3/17(月)に5分間の充電で400キロの走行が可能になるというEV向けの新たな急速充電技術を公表して、3/18(火)の株価は上場来高値に面合わせとなりました。
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