見直される香港市場で注目のBYD

見直される香港市場で注目のBYD

投資情報部 榮 聡

2025/04/02

前回の当レポートでは、香港株式市場の見直しが進んでいることをご報告しました。今回は同レポートで取り上げた4つの個別銘柄から、足もとの業績が安定しているとみられるEV(電気自動車)のBYDを選んでご紹介いたします。

図表1 言及銘柄

(1)ガソリン車並みの超急速充電プラットフォーム

今回は香港株式市場に上場する中国のEVメーカーBYD(01211)を取り上げます。第1節では市場で注目を集める超急速充電プラットフォーム、第2節では自動車市場でのポジション、第3節では企業概要と業績動向についてご報告いたします。

BYDの超急速充電プラットフォーム

3/17(月)にBYDが5分間の充電で約400kmの走行ができる超急速充電システム「スーパーeプラットフォーム」の開発を発表しました。充電に時間がかかることがEV普及の重大な足かせになっているため、ガソリン車並みの航続距離を短時間で充電できる充電性能がEV市場の可能性を広げるのではと注目を集めています。

競合するテスラ(TSLA)の専用充電器「スーパーチャージャー」は、約320kmの走行を可能にするのに15分間の充電が必要となるため、性能は「スーパーeプラットフォーム」のほうが大きく上回ります。

「スーパーeプラットフォーム」を採用する「Han(漢) L」と「Tang(唐) L」を4月中に予約販売を開始、充電ステーションを中国全土4,000カ所建設していく方針を表明しており、動きは非常に早くなっています。このプラットフォームをテコに業績を拡大していく可能性に注目できそうです。

〇参入障壁の程度は?

「スーパーeプラットフォーム」は、革新的な電池部材を開発したというようなものではなく、従来ある技術で充電電圧を1,000Vに高めることで実現したものです。このため、参入障壁が非常に高いとは言えないでしょう。

しかし、高い電圧に耐えられる蓄電池、電子部品(パワー半導体)、高い電圧をサポートするための蓄電装置(配電網への負担を軽減するために必要とされる)などがセットになってプラットフォームを実現しています。

蓄電池を内製して、電子部品の製造も手掛ける同社ならではの強みを生かしているため、プラットフォーム全体として、ある程度の参入障壁が期待できそうです。

図表2 BYDの株価チャート(5年、月足)

(2)BYDの自動車メーカーとしてのポジション

BYDの自動車メーカーとしてのポジションを確認しておきます。

〇バッテリーEVでテスラに匹敵、新エネルギー車()全体ではフォードに匹敵

バッテリーEVでは、2024年にテスラの179万台に迫る176万台を販売して、2025年にはテスラを抜いて世界トップになる可能性が高いとみられています。

また、プラグインハイブリッド車を含む自動車販売台数は2024年に427万台に達し、世界第7位フォードモーター(F)の447万台に迫って、自動車メーカーとして世界大手の一角を占めるに至っています。

世界の自動車大手は、トランプ関税への対応を迫られていますが、同社への影響は限定的とみられる点も注目できるでしょう。米国での販売は従来からある関税が障壁となって、乗用車の販売はなく電気バスなど商用車のみとなっています。

※新エネルギー車(NEV)とは、バッテリー電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)などの電気で駆動する自動車を指します。

〇中国でトップシェアを確保

BYDは上記の自動車の大半を中国で販売しています。2024年の中国新エネルギー車販売でBYDは2024年に32%を占めて強固なポジションを確保、テスラの6%を大幅に上回っています。

2024年の中国自動車販売は3,144万台で前年比4.5%増と控えめな伸びとなっていますが、このうち1,287万台(全体の41%に相当)を占める新エネルギー車は同35.5%増となっており、BYDにとっての事業環境は良好です。

同社の主力車種は、購入しやすい価格で幅広い顧客のニーズに応えるコンパクトセダンの「Qin(秦)」、コンパクトクロスオーバーSUV(スポーツ用多目的車)の「Song(宋)」などです。

〇海外展開にも積極的

2023年にBYDは海外進出を加速させ、同社の新エネルギー車は日本、ドイツ、オーストラリア、ブラジル、UAEなど50以上の国と地域に参入しました。

現地生産にも積極的で、ブラジル、ハンガリー、タイ、ウズベキスタンなどにEV工場を展開しています。欧州で2ヵ所目の工場建設を計画しているとされます。

一方、計画していたメキシコへの進出は、トランプ大統領の返り咲きをきっかけに昨年に凍結されています。トランプ関税がはっきりすれば動き出す可能性があるでしょう。

〇強さの背景

同社の強さは、EVで最も重要な部品である電池を祖業として、自社開発のリン酸鉄リチウム系バッテリーを擁していることと考えられます。

競争の激しい中国のEV市場でも、同業を上回る販売台数とバッテリーを内製していることにより、相対的に安定した利益率を確保できていると考えられます。

また、AIでは「ディープシーク」を自社システムに統合する方針を明らかにして、自動運転技術の向上を目指します。

図表3 BYDの新エネルギー車販売台数とテスラのEV販売台数

(3)企業概要と業績動向

〇企業概要

中国最大の新エネルギー⾞メーカー。1995年にスマホ電池メーカーから事業をスタートし、2003年に自動車産業へ参入。バッテリーEVやプラグインハイブリッドEVの新エネルギー車でパイオニア的な存在です。車載用半導体も手掛けており、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)では中国最大手です。

2024年12月期の部門別売上構成比は、スマホ部品などが20.5%、自動車および関連事業が79.5%、地域別売上構成比は、中国が71.5%、中国以外が28.5%です。

〇業績動向

2024年12月期は、売上が前年比29%増、EPSが同34%増と好調でした。自動車および関連事業は新エネルギー車市場の拡大を受けて同28%増となり、スマホ部品などは製品分野の拡張や市場シェアの拡大、アンドロイド端末の回復を受けて同35%増と好調でした。

2025年12月期について会社は、自動車の海外展開を強化する方針です。市場コンセンサスでは、売上が前年比23%増、EPSは同32%増と高成長が持続する予想です。

〇香港株式市場でのポジション

BYDの時価総額は1.18兆香港ドルで香港市場で10位、香港市場を代表する銘柄の一つと言えます。また、中国の大手テクノロジー株を総称する「セブンタイタンズ」の一角を占めます。

中国の自動車メーカーは、海外企業との合弁企業が上場していないケースも多く、上場企業としてはBYDが圧倒的に大きいです。自動車メーカーで時価総額2位の理想汽車(02015)の時価総額は2,120億香港ドルで、BYDの5分の1に満たないレベルです。

図表4 BYDの業績表

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