積立投資に適していると考えられる海外ETF5選

投資情報部 榮 聡
2025/05/28
米国株式市場は「相互関税」による急落から大きく回復しましたが、夏場にかけてはファンダメンタルズの悪化を受けて調整含みとなる可能性がありそうです。しかし、深刻な相場下落につながる可能性は低いとみられることから、積立投資を始めるタイミングとして良いのではないでしょうか。そこで今回は積立投資に適していると考えられる海外ETFを5銘柄選んでご紹介いたします。
図表1 注目銘柄

(1)積立投資を始めるタイミングとしては良い!?
〇米国株式市場の見通し
米国株式市場は、関税の影響が景気減速、物価上昇という形で表面化すると考えられることから、夏場にかけて調整局面を迎えるとみています。
既に企業業績では、S&P500指数採用銘柄の2025年予想EPSが年初来4.7%の下方修正となっています。ここまで堅調であった個人消費も消費者信頼感指数の低下を考えると(5月は大きく改善しましたが)、これから停滞する可能性が高いと思われます。また、消費者物価指数は4月まで低下基調となりましたが、さすがに5月、6月には上昇する可能性が高そうです。
一方、持続的で深刻な下落トレンドに転じる可能性は低いとみられます。米国の関税は景気にネガティブな影響を及ぼすのは間違いないと考えられますが、米国経済がリセッションに陥るほどではないとみられます。また、関税による物価上昇も一回限
りのインパクトになると考えられるためです。
このため、米国市場は当面調整含みとなる可能性が高いものの、4月初めの安値を下回ることはなく、年末にかけては回復を模索する動きと想定できそうです。
〇積立投資を始めるには良いタイミング!?
上記のような相場見通しを前提にすると、積立投資を始めるタイミングとして良いのではないでしょうか。年初来の相場変動性の高さを見た後では、全力でリスク資産に投資するような環境ではないでしょうが、調整局面でリスクを抑えて仕込むことができそうです。
積立投資の良いところは、その仕組みに「時間分散」が組み込まれていることです。投資における「時間分散」は、良い投資タイミングを判断するのは誰にとっても難しいので、買うとき、売るときとも何回かに分けて行うほうがリスクを抑えることができるという考え方です。
長期的に成長する資産を選ぶことができれば、投資リスクを抑えて資産の大きな成長を享受することが期待されます。
〇海外ETFの利用が良いのではないか
さらに、関税の影響がこれから出てくること、また、トランプ大統領の行動に関する予測可能性が低いことを考えると、積立投資の対象銘柄として個別銘柄を選ぶのは通常よりも高いリスクを伴うと考えられます。そのような環境では、幅広い銘柄に分散された海外ETFを利用することが考えられます。
(2)積立投資で使われる海外ETF、人気上位銘柄
当社のお客さまが積立投資にどのような商品を利用されているか、年初来の海外ETFの購入金額上位銘柄の情報を共有いたします。ご自身の投資のご参考になれば幸いです。
〇人気の投資分野
上位20銘柄のうち、15銘柄が米国の資産に投資するETFで、米国が圧倒的な人気です。最近の市場では「米国売り」が話題になることがありますが、これを見る限りそのような動きは限定的と言えそうです。
米国資産の中でも人気が高いのが、S&P500指数など幅広い米国株に投資するものです。単純にS&P500指数への連動を目指すものに加え、S&P500指数に投資しながら、オプションなどを使ってリスクを抑えたり、利回り向上を目指すものもあります。
また、米国の高配当株および増配株に投資するものが上位10銘柄のうち4銘柄を占めて、配当に着目するファンドの根強い人気がうかがえます。
米国の強みである情報技術に比重をかけて投資する、インベスコ QQQ トラストシリーズ1 ETF(QQQ)、バンガード 米国情報技術セクター ETF(VGT)も見られますが、意外に多くないと言えるかもしれません。
〇米国株以外でランクインしているETF
唯一、米国以外のカントリーファンドでランクインしているのが、インド株に投資するウィズダムツリー インド株収益ファンド(EPI)です。同ファンドは、企業の利益額を基準に組み入れ比率を決めるという保守的な投資戦略をとるものです。
米国資産以外で複数入っている「金」のETFも人気で、3つがライクインしています。年初来25%の上昇とパフォーマンスも良好です。
「金」については必ずしも長期的に成長する資産とは言えないと思いますが、地政学リスクの上昇、関税による経済・物価の不透明感などが安全資産としての需要を押し上げてきたと思われます。
当面は、不安定な株式相場が想定されるため、価格の上昇は期待できそうです。一方、米国株式市場が関税の影響を乗り越えて上昇基調に戻ると利食いが嵩む可能性には注意が必要とみられます。
〇積立投資に向かないETF
一般的に「ブルベア」のETFは長期の積立投資に向かないと考えられます。
図表2の18番目にDirexionデイリー半導体株ブル3倍ETF(SOXL)があるほか、20位以下に、Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF(SPXL)、プロシェア ウルトラプロ QQQ ETF(TQQQ)などもランクインしています。
しかし、通常「ブルベア」は短期的な値動きを増幅することで大きなリターンを得るために使われ、長期投資には向きません。その理由として、短期的には原資産の値動きの2倍や3倍に追随することができても、中長期では売買コストが嵩んで原資産の2倍や3倍といった水準から乖離していくことがあります。
例えば、図表3はファイラデルフィア半導体株指数とブルベアでない半導体株ETF(ヴァンエック 半導体 ETF(SMH))とブルの半導体株ETF(Direxionデイリー半導体株ブル3倍ETF(SOXL))の値動きの比較です。半導体株指数が上昇する局面ではブルETFは大きくアウトパフォームしますが、長期の累積では下方に乖離していることが確認できます。
図表2 当社顧客の積立投資での購入額上位銘柄(2025年年初来)

図表3 フィラデルフィア半導体株指数、半導体株ETF、半導体株ブル3倍ETFの比較

(3)積立投資に適していると考えられる海外ETF5選
図表2に抽出された銘柄から、積立投資に適していると考えられる海外ETFを5つ選んでご紹介いたします。
時価総額が大きい米国株からなる代表的な株価指数であるS&P500への連動を目指すETFです。当社のお客さまによる積立投資額が最も大きいETFです。純資産額は5,000億ドルを超える大きなファンドで、分配利回りは1.3%で(2025年5月23日基準)、経費率は0.03%と非常に低くなっています。
先進国や新興国市場を含む約47ヵ国の約8,000銘柄に投資するETFです。4月末の地域別構成比は北米が65%、欧州が15%、新興国が10%、太平洋が10%となっています。組み入れ上位銘柄は、アップル3.6%、マイクロソフト3.4%、エヌビディア2.9%、アマゾン2.0%、フェイスブック1.4%などで上位10銘柄は全て米国株によって占められています。
米国の大型株のうち、市場平均を上回る配当利回りの履歴がある銘柄が組み入れられています。4月末の組み入れ上位銘柄は、ブロードコム、JPモルガンチェース、エクソンモービル、ウォルマート、プロクター&ギャンブルとなっています。分配利回りは2.9%です(2025年5月23日基準)。
インベスコ社が提供するナスダック100指数への連動を目指すETFです。主にテクノロジー株に投資するファンドとして高い人気があります。ポートフォリオの組み入れ上位は、アップル8.9%、マイクロソフト8.2%、エヌビディア7.4%、アマゾン5.4%、ブロードコム4.1%などとなっており、米国の代表的なテクノロジー株に投資できます。
時価総額でなく企業利益に着目してポートフォリオの組み入れ比率を決める投資戦略で運用されています。このような投資戦略の結果、時価総額を基準に組成された「MSCIインド指数」に比べて、小型株の比率が高く、PERやPBRなどの株価バリュエーションが低く、配当利回りが高いポートフォリオとなっています。成長が期待されるインド経済にベットするファンドとして、リスクを抑えた投資ができると考えられます。
図表4 取り上げたETFの指数化チャート

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