米国のIPO市場が好調!!注目銘柄をご紹介

投資情報部 榮 聡
2025/06/11
コアウィーブ、サークルインターネットなどの株価が大幅に上昇して、米国のIPO市場に対する関心が高まっています。年初来のIPO銘柄の動向を振り返り、今後の見通しについても考えてみます。
図表1 注目銘柄

(1)米国のIPO市場が好調!!
〇米国のIPO市場が好調!!
米国のIPO市場が好調です。年初来の新規上場13銘柄(当社取り扱い銘柄)の平均では、公募価格から初値にかけての上昇率は22.3%、公募価格から6/10(火)終値にかけての上昇率は53.9%に達しています。
3/28(金)に上場したコアウィーブ(CRWV)が公募価格から3.9倍に上昇、6/5(木)に上場したサークル インターネット グループ(CRCL)が4営業日で公募価格から3.4倍に上昇するなど、最近のテクノロジー株物色の流れにも乗って大幅に上昇しているのが目立ちます。
2月までに上場した8銘柄については、5銘柄が公募価格を割り込んで推移しており、上場したタイミングも影響を与えているとみられますが、市場の買い気は基本的に非常に強いことがうかがわれます。
〇IPO市場の好調は下期も続くのか!?
米国株式市場全般については、関税の影響による経済指標の悪化、物価上昇率の上昇がこれから顕在化すると見ているため、調整含みと想定しています。このため、IPO市場もこの影響を受ける可能性があり、停滞感が出る可能性がありそうです。
ただし、先々週、先週に発表されたエヌビディアやブロードコムの決算では、AI半導体の需要が非常に強いことが示唆されました。エヌビディアは米国による対中規制で中国向け売上80億ドルを喪失する前提でも、5-7月期の売上ガイダンス中央値は前年同期比50%増としました。「推論」(AIが予測や結論を導き出すプロセス)向けの計算需要が急拡大していることが背景にあります。
AI利用の拡大はテクノロジー株物色の機運をさらに強める可能性があり、相場全般が軟調となる中でもテクノロジー関連の銘柄には強い需要が維持される可能性が高そうです。
〇「IPOバブル崩壊」からの回復途上
IPO市場が基本的に好調となっている背景には、図表2のIPOによる資金調達額の推移にみる通り、2020年から2021年の「IPOバブル」およびその崩壊の記憶が市場に残っていることがあると考えられます。
2020年、2021年に新規上場した注目銘柄の多くがその後に大幅な株価下落となったことから、IPOに対する市場の警戒を高めました。IPOによる資金調達額は2022年、2023年と極端な不振に陥った後、2024年から徐々に回復しつつあります。
2025年は6月初めまでで2024年の6割近くに達していることから、2024年の調達額を超えてくると見込まれます。このような「IPOバブル崩壊」からの回復過程が続いていることから、上場を目指す企業には上場のハードルを高め、投資家側からはIPOに手放しで飛びつかないといった効果が生じているとみられます。
内容の良い会社であれば、上場後も株価が上昇するケースが増えると期待できそうです。
図表2 米国のIPOによる資金調達額推移

(2)年初来のIPO銘柄パフォーマンス一覧
図表3は年初来のIPO銘柄(当社取り扱い銘柄)一覧です。
銘柄数は必ずしも多いとは言えませんが、IT、エネルギー、バイオテクノロジー、食品など幅広い業種の銘柄から構成されています。
テクノロジー関連で時価総額が大きい、コアウィーブ(CRWV)とサークル インターネット グループ(CRCL)の株価が公募価格の2.5倍と大幅な上昇となっているのが目立ちます。一方、エネルギー、建材などオールドエコノミーの銘柄は公募価格を割り込んでいます。
今週には、さらにモバイルバンキングサービスのチャイムファイナンシャル(Chime Financial)(CHYM)、宇宙関連のテクノロジー企業ボイジャーテクノロジーズ(Voyager Technologies)(VOYG)が新規上場の予定です。
第3節では、時価総額が大きい銘柄で、上場来の株価パフォーマンスが良い銘柄を中心にご紹介いたします。
図表3 年初来の米国IPO銘柄一覧(当社取り扱い銘柄)

(3)注目銘柄
【事業概要】
人工知能(AI)向けクラウドサービスを手がけます。NVIDIA製GPUアクセラレーターを活用し、AIモデルのトレーニングや推論処理を支援する事業を行っています。2024年時点で32ヵ所のデータセンターを運営しており、前年の10ヵ所から大幅に拡大しました。2025年の設備投資額は200~230億ドルを計画しています。
2024年12月期の純利益は赤字であるものの、調整後営業利益は3.2億ドルの黒字となっています。1-3月期決算は、売上が981百万ドルで前年同期比5.2倍、調整後EBITDAは606百万ドルで同5.8倍でした。2025年12月期の業績ガイダンスは、売上が49~51億ドル、調整後営業利益は8.0~8.3億ドルです。
【注目ポイント】
一般企業がAIを導入するときにこれをサポートする、高い成長が期待される市場の企業です。エヌビディアと戦略的提携を締結し、エヌビディアが出資していることも注目されています。
ただし、現在値(6月10日終値)の154.90ドルはアナリスト目標株価の72.61ドルの倍以上で、株価は投機的に上昇している可能性には注意が必要でしょう。
【証券会社のカバー状況(6/10)】20社がカバーしており、投資判断は買い7社/中立11社/売り2社の内訳。アナリスト目標株価平均は72.61ドル。
【事業概要】
2013年創業で、米ドル建てのステーブルコイン(※)USDCとユーロ建てのステーブルコインEURCの発行者です。USDCは発行額が最も大きくかつ広く利用されているステーブルコインの一つです。2025年3月末時点で約600億ドルが流通しており、累計で25兆ドルのオンチェーン取引(ブロックチェーンネットワーク上で記録・検証される取引)の実績があります。主な収益源はUSDCの裏付けとなる準備金の運用による利息収入です。
※ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨のような特定の資産に価値を連動させた暗号資産(仮想通貨)・電子決済手段です。
【注目ポイント】
暗号資産取引所コインベースや大手資産運用会社ブラックロックとの提携を通じてステーブルコイン業界で強いポジションを築けています。世の中のデジタル化で、これと相性の良いデジタル通貨の利用拡大が期待されます。また、低い取引手数料での決済を可能にして、従来の決済プラットフォームからシェアを奪う可能性もあります。
【証券会社のカバー状況(6/10)】上場から日が浅く、まだBloombergに情報が掲載されていません。
【事業概要】
サイバーセキュリティ企業。リアルタイムでアクセスを管理、保護するサービスを世界中の顧客に提供します。統合プラットフォーム「Atlas」上に構築されたサービスとしてのソフトウェア(SaaS)ベースのクラウドソリューション「Identity Security Cloud」や、顧客ホスト型のIDセキュリティソリューション「IdentityIQ」など、幅広い導入オプションで顧客の各種ニーズに対応するソリューションを提供します。
【注目ポイント】
同社が属するアイデンティティガバナンス業界において、ガートナーなどの調査会社から業界ポジションが強い企業との高い評価を獲得しています。2026年1月期に営業利益段階で黒字転換の見通しです。
【証券会社のカバー状況(6/10)】15社がカバーしており、投資判断は買い10社/中立5社/売り0社の内訳。アナリスト目標株価平均は25.70ドル。
【事業概要】
2006年の創業イスラエルのネット証券です。暗号資産、株式、通貨、コモディティなどの取引を差金決済取引 (CFD) 取引形態で提供します。「Copy Trader」「Smart Portfolios」など他のトレーダーの投資行動を真似ることができるサービスも提供しているのが特徴です。ソーシャル・インベスティングのパイオニアで世界75ヵ国で登録者数4,000万人超の投資コミュニティを擁します。
【注目ポイント】
これまで欧州中心に事業展開してきた会社ですが、米国市場の上場を契機に米国事業の拡大につながる可能性が注目されます。
【証券会社のカバー状況(6/10)】15社がカバーしており、投資判断は買い8社/中立7社/売り0社の内訳。アナリスト目標株価平均は75.27ドル。
【事業概要】
ミサイル防衛、宇宙プログラム、極超音速技術、ロケット打ち上げ機市場向けのミッションクリティカルシステムの設計、テスト、製造、販売を行います。「Payload Protection & Deployment Systems(ペイロード保護・展開システム)」「Aerodynamic Interstage Systems(空力中段間システム)」「Propulsion System(推進システム)」などに注力しています。
【注目ポイント】
政府のほか民間企業による宇宙開発が活発化する中、その恩恵を受ける企業として注目できるでしょう。
【証券会社のカバー状況(6/10)】5社がカバーしており、投資判断は買い5社/中立0社/売り0社の内訳。アナリスト目標株価平均は49.25ドル。
図表4 注目銘柄の投資指標

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