AI投資の恩恵を受けるコネクタのアンフェノールとTEコネクティビティ

AI投資の恩恵を受けるコネクタのアンフェノールとTEコネクティビティ

投資情報部 榮 聡

2025/08/06

(1)株価上昇が目立つコネクタのアンフェノールとTEコネクティビティ

今回は4-6月期の決算で好調が目立っているコネクタ業界の2社、アンフェノールとTEコネクティビティをご紹介いたします。AIデータセンターへの投資拡大の恩恵を受けているうえ、市場シェアの構造が収益の安定に貢献しているとみられ、注目に値するとみられます。

S&P500指数に3社しかない電子部品銘柄

日本の株式市場では、電子部品の会社は大きな存在を発揮していますが、米国株式市場ではニッチであまり目立たない業界です。

大きく見れば半導体も電子部品と言えますが、これを別とするとS&P500指数に採用されている電子部品株はコネクタのアンフェノールとTEコネクティビティ、光ファイバーのコーニングの3社に限られています。図表2の通り3社とも株価が市場平均を大きく上回って上昇して、市場の注目を集めています。

そして3社のうち2社がコネクタの会社です。電子部品の中でコネクタは一般的にはマイナーな存在ですが、ここから2社が採用されているのは、同業界に時価総額が大きくなる特別な背景があるためと考えられます。

なお、コーニングの4-6月期の好決算を受けて株価が上昇していますが、業績を牽引しているのは、AI投資拡大を背景とする光コネクタの伸びです。コーニングについては、2024年9月4日掲載の「株価大幅上昇のフジクラは北米DC向けが好調!!米国の類似銘柄を探る」、2025年2月19日掲載の「データセンター投資拡大から恩恵を受ける『周辺』銘柄」もご参照ください。

〇コネクタは特異な市場構造

世界のコネクタ業界では、非上場企業で部門売上を開示していないものもあるため、正確な市場シェアを計測することは難しくなっています。しかし、TEコネクティビティとアンフェノールの2社が圧倒的に大きい業界の巨人であることは間違いなさそうです。

日本のコネクタ大手である日本航空電子、ヒロセ電機も世界の売上トップ10に入っているとされますが、米国2社との売上格差は非常に大きくなっています(図表3)。

コネクタは市場シェアが小さい会社に細分化された業界で、元々大手だったTEコネクティビティとアンフェノールの2社が積極的に企業買収を行い、現在のような形になったとされています。例えば、2024年初以降の買収企業件数(Bloombergによる集計)は、アンフェノールが5件、TEコネクティビティが3件に上ります。

このような市場構造が米国2社の利益率を安定的に高く保つことができ、栄枯盛衰の激しい電子部品業界で安定的に利益を拡大できる背景になっている可能性があり、注目に値するとみられます。

〇電子部品のコネクタとは?

コネクタとは、電気回路や電子機器において、電気信号や電力を伝送するために、ケーブルや機器を接続したり、切り離したりする部品のことです。

身近なものでは、パソコンやスマホを周辺の機器と接続する場合に、接続部分に使われている部品がコネクタです。また、スマホの内部でも、バッテリー、カメラ、液晶、アンテナなどの部品同士を接続するために使われています。

日本航空電子工業のウェブサイトに掲載されているコネクタの説明によると、「コネクタは、スマートフォンやパソコンなど、身近なところから、人工衛星に至るまで世の中のありとあらゆるエレクトロニクス関連機器に、幅広く使用されています。それら機器の設計仕様は、とても複雑であり、目的に合せてきめ細かく対応するため、コネクタには極めて多種多様な品種があります。JAE(日本航空電子工業)製コネクタだけでも約3万品種を超えています。」とあります。

コネクタは製品の種類が非常に多いことが、前段でみたように小規模の会社が多く成立する背景と考えられます。

図表2 米国の電子部品3社の株価

図表3  米国2社の規模が圧倒的に大きいコネクタ市場(前期実績)

(2)アンフェノールはデータセンター、TEコネクティビティは自動車にベットする

コネクタ大手2社の違いを分野別売上構成比によって見てみましょう。

〇アンフェノールはデータセンター、TEコネクティビティは自動車にベット

図表4の通り、2社とも幅広い産業向けに製品を供給していますが、重点を置く分野が異なっています。売上構成比が最大となっている分野は、アンフェノールが「ITデータコム」で構成比は36%、TEコネクティビティが「自動車」で構成比は40%となっています。

いま注目されているAIデータセンター投資の恩恵を受けているのは、アンフェノールの「ITデータコム」、TEコネクティビティの「デジタルネットワーク」で、それぞれ売上構成比は36%と13%のため、アンフェノールの恩恵が大きく、今後の成長も高いと期待されます。

TEコネクティビティは、自動車内装の電化進展や電気自動車(EV)の普及拡大から恩恵を受けるために、自動車関連売上の比率を高めてきました。しかし、昨年にEVに対する市場の成長期待が低下して、4-6月期の売上伸び率も3%にとどまっています。このような要因もあって、AIデータセンター投資の恩恵の受け方が相対的に小さくなっています。

〇このような違いを織り込んで株価は形成されている

このような両社の成長期待の違いは両社株価の予想PERにもはっきりと表れています。

AIデータセンター投資拡大の恩恵が大きいアンフェノールの今期予想PERは35.6倍、その恩恵が相対的に小さいTEコネクティビティの予想PERは23.4倍です(8/5(火)時点)。

株式市場では成長分野の売上構成比の違いを織り込んで株価が形成されているとみられ、そういう意味で株式の投資魅力という点では、優劣つけがたいということかもしれません。

図表4 コネクター大手2社の分野別売上構成比と伸び率(2025年4-6月期)

(3)注目銘柄をご紹介

アンフェノール A(APH)

1932年創業、米国のコネチカット州に本拠を置くコネクタ大手。航空宇宙や産業機器向けのコネクタに強みを持ちます。同業の買収に積極的で、2024年にカーライルのワイヤ事業、2025年にコムスコープのネットワーク、アンテナシステム両事業を取得しました。8月4日には、コムスコープのブロードバンド接続部門を105億ドルで買収する意向と伝えられました。実現すれば、ネットワーク事業の強化につながると期待されます。

4-6月期決算は、売上が前年同期比57%増、調整後EPSが同84%増で、それぞれ市場予想を12%、21%上回って好調でした。高い売上の伸びには買収効果が含まれますが、オーガニックの売上成長も同41%増と非常に高くなっていますデータセンターでの強い需要が売上をけん引しています。

TE コネクティビティ(TEL)

アイルランド籍のコネクタ大手。2007年に複合企業のタイコからTyco Electronicsとして分社化後、TEコネクティビティに社名変更をしました。自動車向けの売上構成比が高いのが特徴です。アンフェノール同様、同業の企業買収に積極的で、2025年2月には電力網市場での地位強化を目指してリチャーズ・マニュファクチャリングを買収しています。

4-6月期決算は、売上が前年同期比14%増(オーガニック成長は9%)、調整後EPSが同19%増で、それぞれ市場予想を5%、9%上回って好調でした。売上構成比が大きい自動車向けは関税の影響が懸念されていましたが、市場予想を3%上回って堅調でした。デジタルデータネットワーク向けが市場予想を13%上回って好調でした。

図表5 アンフェノールとTEコネクティビティの業績推移

免責事項・注意事項

・レポートおよびコラムの配信は、状況により遅延や中止、または中断させていただくことがございます。あらかじめご了承ください。

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。

・ご紹介するブルベアETFはお客さまの想定以上に値上がり、あるいは値下がりする可能性があり、予想と逆方向に相場が動いた場合には大きな損失を被るリスクがあります。

・レバレッジ型・インバース型 ETF等(ETN含む)は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。レバレッジ指標の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率のレバレッジ倍(又はマイナスのレバレッジ倍)とは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。上記の理由から、一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品といえます。投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。レバレッジ型・インバース型 ETF等に係る商品の特性とリスクについてはこちらのリーフレットをあわせてご確認ください。