AIアプリ開発の恩恵を受けるスノーフレークとモンゴDB

AIアプリ開発の恩恵を受けるスノーフレークとモンゴDB

投資情報部 榮 聡

2025/09/17

(1)データ管理ソフトウェア企業が揃って好決算

今回は5-7月期決算の好調が目立っていたデータ管理ソフトウェアのモンゴDBとスノーフレークを取り上げます。

〇データ管理ソフトウェア企業が揃って好決算

S&P500指数に採用されているデータ管理ソフトウェア専業の2社、スノーフレークとモンゴDBの5-7月期決算が揃って好調でした。

図表2の通り、前年同期比では大幅な増収増益で、市場予想との比較でも大幅に上回りました。さらに、前四半期の2-4月期から増収率が加速しています。

そして注目したいのは両社とも業績好調の要因として、AIのアプリ開発による需要増加をあげていることです。AIが好調の背景になっているのなら、今後も業績好調は続くのではないかと期待されます。

〇想起されるシナリオ

AI関連で需要が急増したソフトウェア銘柄として、まず思い浮かぶのはパランティアテクノロジーです。同社はビッグデータを取り扱うためのソフトウェアプラットフォームを提供しています。

企業がAIモデルを「訓練」するには大量のデータが必要になりますが、このビッグデータを取り扱うためのユニークなソフトウェアを提供しているのがパランティアです。同社の株価は2023年末の17.17ドルから9/12(金)終値の171.43ドルまで10倍に上昇してAI関連の代表的なソフトウェア銘柄となりました。

一方、AIモデルの「訓練」が終わって使えるような状態になると、これを核としたAIアプリの開発が始まります。この時に活躍するのがデータ管理ソフトウェアと考えられ、この需要の波が同分野に到来していると考えられます。

データ管理ソフトウェアを提供する会社は多数あるため、強力な競合企業が見当たらなかったパランティアのケースとは異なります。このためパランティアほどの株価の上昇になるのは難しいと思われますが、業界全体として好調が継続して株価の上昇も期待できそうです。

図表2 スノーフレークとモンゴDBの四半期決算概要

図表3 スノーフレーク、 モンゴDB、S&P500指数の株価比較

(2)AI向けデータ管理ソフトウェアの市場

需要が拡大しているAI向けを含むデータ管理ソフトウェアの市場の競合状況を確認しておきます。

〇なぜモンゴDBとスノーフレークが伸びているのか

データ管理ソフトウェアというと、一般的に最も有名なのはオラクルです。同社はデータベースソフトウェアで世界最大で、大企業の多くが同社の製品をデータの管理に使用しています。しかし、オラクルのソフトウェア部門の売上は6-8月期に前年同期比2%減となって伸びていません。

その中で、スノーフレークやモンゴDBの売上が大きく伸びているのは、データを扱う上での柔軟性が高いからだと言われています。オラクルのデータベースソフトウェアは、システムで間違いが起きないようにデータをしっかりとフォーマットした上で使われます。

一方、スノーフレークやモンゴDBは、データのフォーマットが完全に一致しなくても稼働するなど、オラクルのデータベースソフトウェアよりも柔軟性があります。両社のソフトウェアを利用することでアプリ開発のスピードが上がり、アプリの改変への対応もしやすいようです。

3社のデータ管理ソフトウェアが得意とする場面を、図表4に簡単にまとめました。モンゴDBは「新しいアプリを素早く作るとき」、スノーフレークは「大規模なデータの分析が必要なとき」、オラクルは「厳密性が重要で変更が少ない会社の基幹システム」が得意です。

〇ガートナーの「Magic Quadrant」から競合状況を探る

ソフトウェア企業の評価を行うときには、IT調査会社ガートナーの「Magic Quadrant」(定性評価を用いて市場での立ち位置や競争力を評価する指標)が株式市場でもよく参考にされます。

スノーフレークとモンゴDBは「Magic Quadrant」では、クラウド・データベース・マネジメント・システムズ(Cloud Database Management Systems)という分野に分類されています。

2024年のレポートでは業界で優位なポジションを築いている「リーダー」枠の会社として9社がプロットされ、両社以外にはアマゾン・ウェブ・サービス、グーグル、オラクル、マイクロソフト、Databricks(未上場企業)、IBM、アリババ・クラウドなどのIT大手が名を連ねています。この顔ぶれを見るだけでも競争が厳しい市場だろうことがうかがえます。

AIアプリの開発段階では、厳密にフォーマットされていなくても利用できる強みによって人気を博して競争を有利に進めているようです。ただ、競合企業も同じような方向で対応してくると考えられます。

このため、株式投資を行う際には、常に競合状況に目を配っておく必要があると考えられます。

図表4 スノーフレーク、モンゴDB、オラクルのデータベースソフトウェアの比較

(3)スノーフレークとモンゴDBのご紹介

スノーフレイク インク(SNOW)

【AI関連の需要が売上を押し上げる】

・クラウドベースのデータ分析プラットフォーム(データウェアハウス)を展開している会社です。高速かつ高並列処理に対応したSaaSベースのデータウェアハウスソリューションを提供、アマゾン・ウェブ・サービス、マイクロソフト・アジュール、グーグル・クラウド・プラットフォームの各クラウドプラットフォーム上で稼働します。AI関連需要を取り込むために「AI Data Cloud」を提供しています。12,000社以上の顧客企業を擁し、Fobes Global 2000のうち751社を顧客としています(5-7月期末)。

・5-7月期の売上は前年同期比32%増、調整後EPSは同94%増で、市場予想に対してそれぞれ、5%、31%上回りました。8-10月期および2026年1月通期の売上ガイダンスとも市場予想を上回りました。

モンゴDB(MDB)

【AIアプリを開発する企業に人気】

・データ管理ソフトウェアの会社で、主力製品は開発者向けデータプラットフォームの「Atlas」です。同社のデータ管理ソフトウェアはフォーマットが異なるデータに対しても機能することが特長で、スピードと状況変化への対応が重要な局面で優位性を発揮すると言われています。5万社以上の顧客企業を擁します。同社は年初来5000社以上の新規顧客を獲得して、その多くがAIアプリを構築している企業だとコメントしています。

・5-7月期売上はAI関連需要の好調を背景に前年同期比24%増、調整後EPSは同43%増で、市場予想に対してそれぞれ、7%、53%上回りました。8-10月期の売上ガイダンスも市場予想を上回り、通期の売上、調整後EPSを上方修正しています。

図表5 スノーフレークとモンゴDBの業績推移

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