“大相場”に発展する可能性が出てきた!?インテル

“大相場”に発展する可能性が出てきた!?インテル

投資情報部 榮 聡

2025/10/01

(1)株式市場の注目が高まるインテル

今回は株価が大幅に上昇している半導体の老舗、インテルを取り上げます。以下にあげるような支援を受けて、ここ数年の苦境から脱して復活につながる可能性に注目が集まっています。

〇米国政府による出資

米国政府は8/22(金)にインテルに89億ドルを出資することを発表、株式の9.9%を保有することになりました。筆頭株主となりますが、経営への口出しは控えると言われています。

インテルにとっては4-6月期まで5四半期連続で純利益の赤字が続いていますので、89億ドルの出資は財務の強化として意義のある支援です。2025年6月末の現金および同等物は96.4億ドルでした。

米政府は製造業を米国に呼び戻そうとしていますが、ハイテク産業であり、かつ、米国に大きな製造設備をもつインテルはその核になる企業と見なされている可能性があり、手厚い支援が期待できそうです。

〇エヌビディアによる投資

9/18(木)にエヌビディアはインテルに50億ドルを出資することで同社と合意したと発表しました。人工知能(AI)に使うデータセンターやパソコン向けの半導体を共同開発します。

業績不振に苦しむインテルに対し、AI向け半導体に強みを持つエヌビディアが実質的な救済に乗り出した形です。ファウンドリー事業にエヌビディア製品の製造を委託できれば、強力な支援になるでしょう。

〇アップル、TSMCにも出資要請?

9/24(水)にはアップルにも出資を要請したとの報道があり、9/25(木)には台湾セミコンダクターにも出資や提携を打診したとの報道がありました。その後続報は見られませんが、水面下でこのような動きがあるとすれば、潜在的に株価の大きな材料と考えられます。

〇株価に動意、大相場につながるか!?

エヌビディアによる出資が明らかとなった9/18(木)に23%上昇した後も直近まで株価の上昇基調が続いて市場の注目が集まっています。

過去10年の株価を確認すると、2020年半ば辺りまでは概ね市場平均並みの値動きとなっていましたが、台湾セミコンダクターに対する技術的な遅れが表面化した2022年に20ドル台まで大幅な株価下落となりました。

2023年には一時業績回復への期待が高まる場面もありましたが、その後業績不振の継続が確認されて大幅に反落、今年8月まで過去1年以上にわたって20ドル前後での底練りを経ています。

悪材料は織り込んで20ドル以下の下値は堅く、ポジティブな話が出ると株価は大きく上昇しやすい状況と考えられます。意外な大相場に発展する可能性に注目できるのではないでしょうか。

図表2  インテルの株価チャート(日足6ヵ月、月足10年)

(2)インテルのこれまで(苦境に陥った理由)

インテルはかつて世界最大の半導体企業として君臨していましたが、現在の時価総額は1,561億ドルに過ぎず、エヌビディアの時価総額4.5兆ドルに対して3.5%まで小さくなってしまいました(9/30(火)時点)。このような苦境に陥った理由を確認してみましょう。

なお、インテルが苦境に陥り始めた頃、2021年1月27日に掲載したレポート「物色が強まる半導体株の注目銘柄と、苦しむインテルのこと」もご参照ください。

AMDとの競争

AMDはインテルの「x86」と呼ばれるCPU(※1)と互換性のあるCPUを製造して競合しています。インテルが自社でCPUを製造するのに対して、AMDはファブレス(製造を自身で行わない)で製造は台湾セミコンダクターに委託しています。

台湾セミコンダクターの微細化技術がインテルに大きく先行したことから、AMDのCPUの競争力が改善して市場シェアを拡大、インテルを苦境に追い込んでいる要因の一つになっています。

台湾セミコンダクターの技術別売上(図表3)によると、3nm(※2)、5nm、7nmといった最先端の微細化技術によるものが7割以上を占めています。インテルの主力製品の微細化は7nm~10nmと言われているため、顕著な格差と言えるでしょう。

※1:「CPU」はCentral Processing Unitの略で中央演算装置とも呼ばれ、パソコンやサーバーなどに組み込まれて、計算の中心的な役割を果たす半導体チップを指します。

※2:「nm」はナノメートルと読み、10億分の1メートルです。ここでは半導体のプロセスのサイズを示します。

〇エヌビディアとの競争

エヌビディアのAI半導体は、インテルのCPUと直接競合しているわけではありません。また、AIデータセンターの建設が増加することで、CPUの需要はAIコンピュータほどでなくても増加すると期待されます。

しかし、データセンターにおいてAI計算の重要性が急速に高まる中で、エヌビディアのGPUを中心としたAIコンピュータの重要性が高まり、相対的にインテルが提供するCPUの占める地位が低下しています。

現状では高成長が見込まれるAI半導体市場拡大への参加は限定的ですが、エヌビディアの協力でこの状況を変えられるか注目です。

〇ファウンドリー事業の苦境

インテルが半導体の微細化で台湾セミコンダクターに遅れたのは、台湾セミコンダクターがファウンドリー(半導体の受託製造)として半導体の製造に特化して生産技術を磨いたからでした。

インテルは同社もファウンドリー事業を立ち上げて生産技術を磨く必要があると判断して、2021年に生産技術に精通したゲルシンガー氏をCEOに据えて、ファウンドリー事業を立ち上げました。しかし、このファウンドリー事業に十分な顧客を獲得することができず、会社全体の利益を圧迫する要因になっています(図表4)。

図表3 TSMCの技術力 技術別売上構成比 (2025年4-6月期)

図表4 インテルの部門別営業利益

(3) インテルは復活なるか?

インテルが復活できるかどうか、以下の3段階にわけて考えられるでしょう。

〇第1段階 

米政府、エヌビディアの出資によって当面の事業継続に心配はなくなりました。同社は2022年から2024年に利益が大幅に低下、フリーキャッシュフローのマイナスが続いて、先行きに懸念が高まっていましたが、これは払拭されました。

ただし、回復がこの段階にとどまるようなら、現在の株価は割高と言えるでしょう。

〇第2段階

ファウンドリー事業の立て直しができるかどうか。

まず、出資したエヌビディア製品の製造を受託できるかがポイントになるでしょう。エヌビディアは台湾セミコンダクターが生産しているような最先端のAI半導体以外にもさまざまな半導体製品を提供していますので、最先端品以外では製造委託の可能性はあると考えられます。エヌビディアはこれに向けてインテル製造設備の調査を行っていると報じられています。

ファウンドリー事業の大きな赤字を解消できる見通しが立つなら、株価は中期的に回復していくと期待されます。第2段階に到達できるか、数ヵ月から1年くらいのタイムスパンで見極めることになるでしょう。

〇第3段階

今後2~3年中に台湾セミコンダクターに技術的に追いつくことができるか。

現在は半導体の微細化技術で大きな格差がついていますが、ASMLのEUV露光装置など微細化のキーになる製造装置自体は同等のものが使えるはずですので、追いつける可能性が皆無とは言えないでしょう。

この段階まで到達すると同社の株価は2000年につけた75.69ドルの最高値の更新も期待されるでしょう。

〇米国の証券アナリストの評価

エヌビディアによる出資後に目標株価を40ドル台に引き上げたアナリストが2名いますが、大半のアナリストは静観の構えでアナリストの目標株価平均値は26.05ドル(9/29(月)時点)にとどまっています。投資判断は、買い5名、ホールド39名、売り7名と圧倒的にホールドの判断が多くなっています。

現在は上記の第1段階から第2段階に移行できるか見極めているところですので、企業アナリストが業績見通しや目標株価を目立って引き上げられないのはやむを得ないところだと思われます。

しかし、さまざまな支援を受けてファウンドリー事業に新規顧客からの重要な受注が入ると株価は急速に上昇すると考えられますので、先々週からの急騰がある程度沈静化したところで買いポジションを取ることも考えられると思います。

図表5 インテルの業績推移

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