どうなる?最高値圏で迎える米国の7-9月期決算発表

どうなる?最高値圏で迎える米国の7-9月期決算発表

投資情報部 榮 聡

2025/10/15

(1)好調が見込まれる7-9月期決算

今週から7-9月期決算の発表が始まります。4-6月期決算は市場予想を上回る好調となり、株式市場上昇の重要な要因となりました。株式市場が最高値圏にある中で迎える7-9月期が、どのような内容になると予想されているのか、FactSet社が集計して公表している資料(10/10(金)時点)に基づいて確認しておきましょう。

7-9月期EPSは前年同期比8.0%増と堅調予想

S&P500指数採用銘柄の7-9月期EPSは前年同期比8.0%増と堅調な予想です。

4-6月期実績の同10.7%増からはやや減速の形ですが、米国の企業決算は事前予想を上回って着地するのが通例です。過去10年の平均では、四半期末時点の予想から5.7%ポイント上回って着地しています。

このため、結果的には4-6月期の実績を上回る増益率で着地する可能性が高いと期待されます。

EPSの修正動向も好調

米国の企業アナリストは、決算発表が近づくと自身の業績予想を保守的に見直して、結果的にS&P500指数採用銘柄の予想EPSは下方修正されるのが典型的な動きです。四半期末から決算が始まるまでに、過去5年の平均では1.4%ポイント、過去10年の平均では3.2%ポイントの下方修正となっています。

しかし、今回の決算では四半期末の9/30(火)から0.1%ポイントの上方修正が行われています。アナリストは自身の業績予想に対して通常よりも自信をもって決算発表に臨んでいることがうかがえます。

10-12月期以降も好調持続見通し

S&P500指数採用銘柄のEPSは10-12月期以降も前年同期比で増加が見込まれています。10-12月期は前年同期比7.4%増、2026年1-3月期は同11.7%増、同4-6月期は同12.7%増の予想です。2025年通年では前年比10.9%増、2026年通年では同13.8%増の予想です。

足元で雇用市場の減速がはっきりとして、個人消費も先行きは減速してくると考えられる中でも、このような好調な企業業績が予想されているのは、特筆すべき点と言えるでしょう。AIの利用の広がりを背景としたAIデータセンターへの投資など、足元の景気動向にあまり左右されない要因が押し上げているためと考えられます。

S&P500指数の予想PER(今後12ヵ月の予想EPSを基準にした値)は22.8倍と、過去10年平均の18.6倍を大きく上回っています。市場ではPERの水準が高い位置にあることが意識されていますが、それでも株価の上昇基調が続いているのは、このように好調な企業業績見通しが大きな要因になっていると考えられます。

図表2  S&P500指数の四半期EPSの推移

(2)業種別には「情報技術」の好調が目立つ

業種別の業績予想もみてみましょう。

〇「情報技術」の好調が目立つ

業種別のEPS増加率をみると、「情報技術」の好調が目立っています。

7-9月期予想は前年同期比20.9%増、10-12月期予想は同18.6%増で、いずれも11業種でトップの増益率です。売上もそれぞれ同14.2%増、同13.5%増と突出して高く、売上の増加を伴っていることから、利益の増加モメンタムは安定していると考えられます。

AIデータセンター投資の急拡大で恩恵を受けているエヌビディアなどAI半導体が好調を支えています。産業レベルでは「半導体・半導体製造装置」の増益率が前年同期比45%増で突出して高く、「電子機器・部品」の同22%増がこれに続きます。

2026年通期の増益率も前年比21.3%増が予想されて、11業種でトップの予想です。米国株式市場では、AI関連銘柄を中心としたテクノロジー株に対する物色が相場をけん引していますが、これを裏付ける好調と言えそうです。

〇ほかに好調な業種は?

「情報技術」以外で市場平均を上回る増益率が予想されているのは、「公益事業」の前年同期比17.1%増、「素材」の同13.7%増、「金融」の同13.2%増、「資本財・サービス」の同9.8%増です。

「公益事業」はNRG エナジー(NRG)ビストラ(VST)など一部企業の大幅な増益が全体を押し上げています。「素材」は「コンテナー&パッケージング」がけん引しています。

「金融」はクレジットカード関連など「消費者金融」の増益率が高くなっています。今週決算発表を迎える「銀行」は前年同期比9%増、投資銀行大手を含む「キャピタル・マーケッツ」は同15%増といずれも堅調な増益が予想されています。

〇不振な業種は?

一方、不振なのは、減益が予想されている「エネルギー」と「生活必需品」です。

「エネルギー」は原油価格が前年同期比で下落となっていること、「生活必需品」はトランプ関税による原材料費の上昇がマイナスに効いているとみられます。

図表3 7-9月期の業種別予想EPS増加率

(3)企業業績の拡大をけん引する銘柄群

今四半期決算(7-9月期、8-10月期決算の銘柄を含みます)の市場予想について、S&P100指数採用銘柄を対象にEPS増益率が高い15銘柄を図表4に掲載しています。

これら銘柄から以下の点を考慮して、5銘柄をピックアップして簡単にご紹介いたします。

(1)EPSの増加率だけでなく、売上の増加率も高い

(2)前四半期から業績拡大モメンタムが大きく減速していない

(3)通期予想EPSの修正率(過去3ヵ月)が下方修正でない

イーライ リリィ(LLY)

肥満治療薬の需要が拡大していることから、業績の急拡大が続いています。昨年に極端な供給不足に陥ったことが業績のかく乱要因となったこと、また、医薬品に対する関税の影響が懸念されて株価は停滞感が強くなっていますが、業績は順調に拡大しているため、引き続き注目できそうです。

パランティア テクノロジーズ A(PLTR)

ビッグデータを扱いやすくするソフトウェアを提供する企業です。企業がAIを自社業務に導入するときには、AIモデルを自社のデータで「訓練」することが多く、AI関連の売上が急増しています。株価はここ数ヵ月にわたってアナリストの目標株価平均値を上回って推移していますが、上昇基調を維持しています。

エヌビディア(NVDA)

需要が急拡大しているAI半導体の市場で8割以上のシェアを確保していることから、業績の拡大が続いています。半導体のハードウェアだけでなく、AI関連のソフトウェア群も提供できることが強みとなって、急拡大する市場でも高シェアの確保が続いています。

ブロードコム(AVGO)

通信用半導体とインフラソフトウェアを併営する企業です。足元の業績拡大をけん引しているのは、複数のIT大手に供給しているカスタムAI半導体(特定顧客向けAI半導体)です。2026年10月期のAI関連売上は前年比50~60%増に引き上げられる可能性があると述べられています。10/13(月)にはオープンAI向けにAI半導体の供給を2026年後半に始めると発表しています。

ネットフリックス(NFLX)

広告付プランの導入や共有アカウント対策によって新規加入者数が順調に増加しており、さらに今年はプラン料金の値上げを行ったこともあって売上は10%台半ばの増加を達成しています。下半期は「ストレンジャーシングス」など人気シリーズの投入が見込まれており、また、ライブイベントへの展開も注目を集めています。

図表4 今四半期決算の利益拡大をけん引すると期待されている銘柄群(S&P100指数採用銘柄対象)

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