半導体メモリー不足がAIインフラ投資、AI相場のリスクに!?

半導体メモリー不足がAIインフラ投資、AI相場のリスクに!?

投資情報部 榮 聡

2026/07/08

(1)半導体メモリーがAIインフラ投資のボトルネックに

〇半導体メモリーがAIインフラ投資のボトルネックに

AIインフラの構築にあたって半導体メモリー不足がボトルネックになっていることが、AI相場全体をゆるがす可能性があります。

半導体メモリーの供給不足がどれほどのものか、マイクロンテクノロジーの3-5月期決算資料からうかがえます。それによると、同社の2025年12-2026年2月期から2026年3-5月期にかけてDRAMは60%台、NANDは80%台も価格が上昇しています。

さらに、AIインフラ投資におけるメモリー不足は、それ以外の分野のメモリー需給にも波及しています。アップルが米国政府のブラックリストに載っている中国のメモリーメーカーからの購入を検討しているというニュースがありましたが、半導体メモリー不足がいかに厳しいものかうかがえます。

AIデータセンター投資を行っているハイパースケーラーの株価が5月から6月にかけて弱かったのは、高騰した半導体メモリーを購入せざるを得ないからだと思われます。半導体メモリーの価格上昇は、ハイパースケーラーが投資を続けるのが難しいほどになって、AIサービスのサプライチェーン全体を揺るがす可能性があるとの懸念につながっていると見られます。

〇半導体メモリー需要が急増した背景

AIデータセンターで使われる主な半導体メモリーには、DRAMとフラッシュ(NAND)の2種類があります。

DRAMは、AI半導体のメインメモリーとして使用されます。メインメモリーはAI半導体が作業するときにデータを呼び出して一時的に記憶しておく作業領域です。大規模言語モデルの(LLM)登場で、AIモデルが巨大化したことで必要な作業領域が大きくなり、DRAM需要を拡大しました。

さらに、大量のデータを高速にやりとりするために、DRAMを何層にも重ねて帯域幅を広げたHBM(High Bandwidth Memory)が開発され、使われています。

一方、フラッシュ(NAND)には、[1]ストレージ(記憶装置)と[2]KVキャッシュ用の2つの用途があります。

[1]は従来からある用途で、足もとではストレージに主に使われるHDD(ハードディスクドライブ)の需給がタイトであるため、コストが高いフラッシュメモリーを使ったSSD(ソリッドステートドライブ)にも需要が波及しています。

[2]はLLMが使われるようになって新たに生まれた用途で、需給が非常にタイトになっている主因と見られます。KVキャッシュは、LLMがテキストを生成する際、過去やり取りの中間結果を保存して、それを踏まえたうえで回答することに使われます。

図表2 フラッシュ(NAND)メモリーの価格推移(1テラバイトのTLCフラッシュ)

(2)半導体メモリー不足のインパクトの大きさ

〇半導体メモリーの利益はハイパースケーラーを上回る予想

半導体メモリーの供給不足がAIサプライチェーンにおいて、どれくらいのインパクトをもつのか、興味深い数字があるのでご紹介いたします。

図表3は、半導体メモリー大手5社(サムスン電子、SKハイニクス、マイクロンテクノロジー、サンディスク、キオクシア)の営業利益の合計をハイパースケーラー4社(マイクロソフト、アルファベット、メタ、アマゾン)の営業利益合計と比較したものです。

※サムスン電子については、半導体メモリー部門の営業利益のみ、その他は会社全体の営業利益を使っています。

これを見ると半導体メモリー企業の利益拡大がいかに急激で大きなものであるかうかがえます。2026年4-6月期の市場予想ではハイパースケーラーの利益合計を上回ると見込まれています。

ハイパースケーラーは購入した半導体メモリーを3~6年といった減価償却期間にわたって費用計上していくため、半導体メモリーの利益が増えた分が即座にハイパースケーラーの利益にヒットするわけではありません。

しかし、このような状態をいつまでも続けることは不可能だろうことは容易に想像できるでしょう。

〇半導体メモリー価格の上昇をどのように吸収するのか

このためメモリー価格の上昇によるコスト増をAIサプライチェーンがどのように吸収していくか、いましばらく注視して見ていく必要がありそうです。

まず考えられるのは、AIモデルを提供している企業がAI利用の価格を引き上げる可能性です。AIを利用している企業が業務改善効果が大きいので価格引き上げを受け入れるということであれば、何の問題はありません。

しかし、いまのところ効果がはっきりしていないので、一旦AIサービスの利用を抑制するというユーザー企業が出てくるかもしれません。そうなるとAI相場にはマイナスとなるでしょう。

また、メモリーの需給が改善するまでしばらく投資のペースを落とすといった話がハイパースケーラーから出てきても不思議ではないでしょう。この場合もAI相場にマイナスです。

幸い半導体メモリーの需給逼迫を解消するために、SKハイニクス、サムスン電子、マイクロンとも大規模な設備投資を計画しています。これは市場の懸念を和らげる効果があるでしょう。ただ、生産能力拡大には一定の時間がかかることから、今後数ヵ月は不安定な状況が続く可能性がありそうです。

AI相場は中長期でまだまだ続くとみています。しかし、上記で説明したようなことを背景に「中間反落」的な動きとなる可能性もあるため、当面やや慎重姿勢が必要だと見ています。

図表3 半導体メモリー5社とハイパースケーラー4社の営業利益

(3)以上を踏まえた上での投資戦略

(1)、(2)で半導体メモリー不足がAI相場の調整につながる可能性をご説明してきました。当面はAI関連銘柄には、慎重姿勢で臨むのがよいと考えています。

一方、AI関連銘柄の中で相対的に注目できる分野として、半導体製造装置銘柄を取り上げます。(1)、(2)でご説明したボトルネックを解消するには、半導体メモリー各社の増産投資が必須で、ここから恩恵を受けるのは半導体製造装置だからです。

ただ、AI相場の調整局面では、半導体製造装置銘柄もいっしょに下落するでしょう。AI相場の調整が十分に進んで回復するときに、まず活躍が期待されるのは何かという視点です。

米国に上場する主要な半導体製造装置銘柄を以下にご紹介いたします。

ASML ホールディング NYRS(ASML)

半導体製造装置業界で売上世界トップです。露光装置(回路パターンをウエハ上に転写するための機械)に特化して、最先端の微細化を実現するために不可欠のEUV露光装置市場を独占しています。

2026年1-3月期のシステム売上の構成比は、ロジック49%、メモリー51%で、地域別には韓国が45%まで高まっており、半導体メモリー投資の恩恵を受けていることがうかがえます。

アプライド マテリアルズ(AMAT)

総合的な半導体製造装置メーカーとしては世界最大です。成膜装置、イオン注入装置、エッチング装置などを幅広く扱います。ディスプレイの製造装置も手掛けています。

2026年2-4月期の半導体システム売上は全体の75%を占め、内訳は50%がロジック、ファウンドリー他で、22%がDRAM、3%がフラッシュという構成になっています。

ラムリサーチ(LRCX)

半導体製造装置で世界3位。1980年にデイビッド・ラム氏が創業しました。半導体製造の前工程で用いる成膜装置、エッチング装置、洗浄装置に強く、エッチング装置では世界トップシェアを誇ります。

2026年1-3月期のシステム売上は全体の64%を占め、内訳はメモリーが25%、ファウンドリーが34%、ロジック他が5%という構成になっています。

KLA(KLAC)

半導体検査装置で世界首位級です。半導体のプロセスコントロール(回路のブレ・ズレ・ムラを見つけるための装置)が売上の90%(2026年1-3月期)を占め、同市場では圧倒的トップの58%の市場シェア(2025年データ)を誇ります。

プロセスコントロール売上のうち、62%がファウンドリー&ロジック、38%がメモリー向けです(2026年1-3月期)。

図表4 半導体メモリー4社の資本的支出額

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