「海軍再軍備スーパーサイクル」が始まる!?恩恵を受ける米国企業は?

「海軍再軍備スーパーサイクル」が始まる!?恩恵を受ける米国企業は?

投資情報部 榮 聡

2026/07/22

(1)世界的な「海軍再軍備スーパーサイクル」が始まる!?

米国では海軍力を強化する必要があるとの認識が広がっているようです。Bloombergのリサーチ部門BI(ビジネスインテリジェンス)も、「海軍造船 2027年見通し」(Naval Shipbuilding 2027 Outlook)を7/9(木)に公表しており、投資テーマとして注目できそうです。

大きな投資テーマではありませんが、AI相場が不安定になる中でもAIに代わる大きな投資テーマが見当たらず、「幕間つなぎ」的な相場があるかもしれないという想定でご紹介いたします。

〇世界的な「海軍再軍備スーパーサイクル」

BIは世界の海軍造船市場は2025年の約1,200億ドルから2035年には約2,200億ドルへ拡大すると予測しています。

この背景には、中東における米国とイランの紛争において海軍力の重要性が再認識されたこと、中国の急速な海軍拡張やロシアの北極圏進出に対抗する動き、NATO(北大西洋条約機構)各国の国防費増額などがあるとしています。

このような海軍造船市場の拡大をリードするのが米国となる見込みです。

米国海軍の戦闘艦艇(Battle force ships)は1980年代には600隻近くの規模を誇っていましたが、ポスト冷戦の予算削減や米国内の商用造船能力の低下を受けて直近20年間は300隻を下回る横ばい圏で推移してきました。しかし、このような流れが変わりつつあるようです。

〇米海軍の造船計画

「米海軍 造船計画(US Navy Shipbuilding Plan)」(2026年5月)によれば、戦闘艦艇は27年度に一時的に288隻まで減少した後、31年度に299隻まで増やし、補助艦艇、無人艦艇を含む総艦艇数を現在の395から450に引き上げる計画を公表しています(図表2)。

中国の戦闘艦艇数は2024年時点で400隻以上に達していると見られます。排水量では依然として米海軍が圧倒的な世界トップを維持しているものの、艦艇数で年々差が開いていくのは好ましくないと考えられています。

台湾有事の可能性が意識される中で、海軍力の強化は急務と考えられており、上記の海軍による造船計画は実現する可能性が高まっているようです。

また、このような動きは、民間でも共有されつつあります。7/15(水)には、JPモルガンチェースがフィラデルフィアの造船能力を支援するために24百万ドルのローンおよび供与を発表しました。同発表に伴う演説の中でダイモンCEOは、今後造船産業に30万人の雇用が発生する見込みだと発言しています。

〇トランプ政権の国防予算

トランプ政権が発表した2027会計年度(2026年10月~2027年9月)の国防予算額は1兆5,040億ドルで、このうち4.4%に当たる658億ドルを造船事業に向けることを提案しています。これは前年比で50%増に相当する額です。

この予算額は7月から8月にかけて上下院で審議・採決の予定です。その過程で海軍力強化に対する国の本気度がうかがわれることになりそうです。

図表2 米海軍の艦艇整備計画

(2)米海軍に製品・技術を提供する企業群

〇米海軍の強化は、米国だけでは対応できない

米国の造船能力はその国力に比べて非常に小さく、対中国で200倍以上の差がついているとされます。現在残っている主な造船所は、軍艦(空母、潜水艦、駆逐艦)の建造・修理に特化したものが数ヵ所(バージニア州、コネチカット州、メイン州、ミシシッピ州など)に限られています。

このため、これから海軍力を強化するとしても、国内企業だけでは賄えず、欧州やアジアの同盟国企業の協力が不可欠と言われています。この観点から、英国のBAE Systems、イタリアのFincantieri、スペインのNavantia、ドイツのThyssenkrupp Marine Systems、韓国のHD現代重工業(329180) ハンファ オーシャン(042660)などが恩恵を受けると見込まれています。

米海軍に製品・技術を提供する主な米国企業は、以下の通りです。

〇戦闘艦艇、潜水艦

艦艇の建造では、ハンチントン インゴール インダストリーズ(HII)ゼネラル ダイナミックス(GD)が主な供給企業です。

ハンチントン インゴール インダストリーズは駆逐艦や強襲揚陸艦などに強く、ゼネラル ダイナミックスは潜水艦や艦隊給油艦などに強みがあります。

〇海軍のレーダー、ソナー調達

海軍のレーダー調達ではRTX(RTX)が強く、2025年7月に536百万ドルの海軍契約を獲得しています。

ソナー(音波で物体を検知する装置)では、ノースロップ グラマン(NOC)が最先端技術を提供しています。

〇無人水上艇・無人潜水艦

7月中旬に米軍が無人水上艇でイランの港湾を攻撃する映像が公開されていましたが、この分野は今後強化される見通しです。

無人水上艇では、レイドス ホールディングス(LDOS)ハンチントン インゴール インダストリーズ(HII)などが製品・技術を提供しています。

無人潜水艇では、ボーイング(BA)ノースロップ グラマン(NOC)などが製品・技術を提供しています。

(3)注目銘柄をご紹介

第2節で取り上げた銘柄から、特に海軍との関係が深い企業を以下にご紹介いたします。

ハンチントン インゴール インダストリーズ(HII)

米国最大の軍用船建造メーカー。2つの造船所のうち、ニューポート・ニューズが原子力空母・潜水艦、インガルスがそれ以外を担当します。売上の約8割が米海軍向けです。

造船事業の営業利益率が2024年から2025年にかけて5.2%から5.9%に改善して2026年2月にかけて株価が大幅に上昇しました。しかし、2026年の利益率ガイダンスを5.5~6.5%として、さらなる大きな改善が見込まれていなかったことから株価は反落しています。中期の売上成長率見通しを約6%、フリーキャッシュフローを5~6億ドルとしています。

ゼネラル ダイナミックス(GD)

防衛大手。前身は潜水艦メーカーです。戦車、原子力潜水艦、航空機、ITシステムにも展開しています。2025年12月期のマリン・システムの売上構成比は32%を占めます。

マリン・システムとビジネスジェットの事業が業績拡大をけん引すると期待されます。マリン・システムは米政府の方針により今後10年に年率5~6%(アップサイドの期待もあります)の売上成長が見込まれています。また、ビジネスジェットは、大型のガルフストリームG700/800(最大19席)の増産と生産性効率改善によって利益拡大が期待されます。

BWXテクノロジーズ(BWXT)

米国海軍の原子力潜水艦や空母向け原子炉の設計・製造を独占的に手がける原子力技術のリーディングカンパニーです。事業は大きく「政府関連事業」と「商業事業」の2つに分かれ、2025年12月期の売上構成比は、それぞれ73%と27%です。

成長率が一桁台前半にとどまっている海軍向け事業に加え、10%台の成長率が期待できる商業用原子力、医療用ラジオアイソトープ、政府向け特殊材料などの事業を強化して成長見通しを引き上げようとしています。

カーチス ライト(CW)

航空機や防衛分野向けの部品・機器メーカー。航空機用駆動部品、防衛向け電子機器、軍艦用推進装置、原子炉冷却ポンプなどを手掛けます。軍関係など米国政府向け売上が約半分、民間航空機向けが約1割を占めます。

民間航空機の生産率が上昇しつつあること、海軍向け造船や電子機器の優先順位が上がっていることなどから恩恵を受けると期待されます。また、データセンター向けに原子力発電の重要性が高まる中、原子炉のメンテナンスや運転期間延長に関わる同社は恩恵が期待されます。

図表3 注目銘柄の投資指標

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