爆発的成長を遂げる「予測市場」、新たな「資産クラス」になりうるのか?

投資情報部 榮 聡
2026/08/12
爆発的な成長を遂げる「予測市場」は、金融商品として新たな「資産クラス」となりうるのか、市場の注目を集めています。企業価値が急増している未上場の主要プレーヤーに加え、関連の上場企業をご紹介いたします。
| 銘柄 | 株価(8/11) | 52週高値 | 52週安値 | 最低購入金額 (8/11) |
| ロビンフッド マーケッツ A(HOOD) | 94.38ドル | 153.86ドル | 63.52ドル | 15,006円 |
| インタラクティブ ブローカーズ グループ A(IBKR) | 89.78ドル | 97.84ドル | 58.95ドル | 14,275円 |
| チャールズシュワブ(SCHW) | 107.70ドル | 109.32ドル | 83.96ドル | 17,124円 |
| ドラフトキングス A(DKNG) | 25.34ドル | 48.78ドル | 20.46ドル | 4,029円 |
注:最低購入金額は、1株当たりの購入金額を1ドル=159円で円換算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
(1)注目を集める「予測市場」とは
〇予測市場とは何か
予測市場とは、選挙結果や経済指標、気象現象、スポーツイベントなど、将来的に起こるさまざまな出来事の結果を予測し、その予測を取引する市場のことです。参加者は自分の予測が当たれば利益を得られ、外れれば損失を被ります。
例えば、Polymarketという予測市場で実際に掲載されている賭け事例を簡略に示したのが図表2です。
9月15日、16日に開催される次回FOMCで連邦準備制度理事会の政策金利の決定がどうなるかに賭けられます。もし、据え置きを予想する場合には、「変更なし」に対して「はい」のチケットを43¢で購入できます。
「変更なし」が実現したときには、購入したチケットに対して1ドルが支払われて、57¢の儲けになります。「変更なし」以外の結果になった場合は、購入コストの43¢が損失になります。チケットは、結果が発表されるまで価格が変動して、途中で売却することもできます。
このような賭けが、選挙結果、トランプ大統領の言動、イラン情勢、スポーツの試合結果、スター選手の移籍先、暗号資産の値動きなど世の中の幅広い事象に対して設定されています。
〇なぜ今、注目されているのか
まず、予測市場の着実な拡大が株式市場で注目を集めています。
図表3は、予測市場の大手Kalshiの月次取引高の推移です。6月、7月はサッカーワールドカップ開催による特需で急増しましたが、そのような特需がなくとも昨年10月から今年5月にかけての月次の平均増加率は20%を超えています。
このような推移を受けて未上場企業であるKalshiの企業価値は200億ドル以上に達しており、次の成長市場として期待されています。
さらに、米国の予測市場では、未来の出来事を金融商品として売買することによって、その価格を出来事が起こる確率とみなすことができます。「集合知」による高い予測機能を持ち得て、その情報自体に価値があるとして、新たな経済インフラとして注目されています。
また、予測市場を活用することで、従来の金融商品ではカバーしづらく保険が存在しなかった政治・規制変更、特定の財・サービスの価格変動、および個別イベントによる業績変動リスクなどの分野で、新たに経済リスクのヘッジ(損失相殺)が可能になると期待されています。
ここ数年で機関投資家も取引するようになった暗号資産に次ぐ、新たな「資産クラス」として台頭する可能性まで注目されています。
図表2 予測市場の事例(Polymarketのサイトから抜粋、2026年8月4日午後2時)
図表3 Kalshiの月次取引高
(2)「予測市場」のポテンシャル
〇市場のポテンシャル
BloombergのBI(ビジネス・インテリジェンス)のレポートによれば、予測市場の取引額は2025年の510億ドルから2030年には1兆ドル近くに達すると予想されています。これは足もとで急増している取引額が順調に増えていくとするベースケースです。
一方、各企業の事業戦略や行政による市場規制が失敗に終わる場合には、取引額は2,960億ドルに増えると見込まれる2026年から成長できず、2030年時点でも2,000億ドル以下にとどまる可能性もあるとしています。
どちらの経路になるか、今後1~2年の業界動向が非常に重要になると考えられています。なお、2030年に取引額が1兆ドルに達するときのカテゴリー別の構成比は、スポーツが42%、政治が27%、金融・暗号資産が26%、その他が5%と予想されています。
〇市場が大きくなるための適切な規制
現在の予測市場は、インサイダー取引、相場操縦、ボット取引などの深刻な問題を抱えています。特に問題視されているのは、「CEOが決算説明会で特定の単語を言うか」「政治家が特定の発言をするか」といったイベント契約で、容易に操作可能と指摘されています。
このため、今後市場が大きくなるためには、適切な規制が必須と考えられています。
現在、予測市場は「金融商品」なのか、「ギャンブル」なのかという点について、CFTC(米商品先物取引委員会)と州のギャンブル規制当局が管轄を争っています。
州ごとに規制される「ギャンブル」となる場合には市場拡大は限定される一方、CFTCによる連邦レベルでの統一ルールで規制される「金融商品」となる場合には、機関投資家の利用も見込まれ、市場の可能性は大きく広がると考えられます。
BloombergのBI(ビジネス・インテリジェンス)では、CFTCが最終的な監督権を持つ可能性が約60%で優位と分析していますが、最終判断は米最高裁まで持ち込まれる可能性が高いとしています。
〇予測市場の規制に関する注目イベント
行政による規制に関して、以下のような注目イベントが見込まれています。
・2026年11月3日:中間選挙結果で米議会の勢力図が変わり、法律制定の道筋が変化する可能性があります。一般的に民主党は予測市場に懐疑的な傾向があります。
・2026年後半:重要な法廷闘争が最高裁に到達する見込みです。
・2027年前半:最高裁での口頭弁論が行われ、判決が出る可能性があります。
・2027年1-3月期:CFTC(米商品先物取引委員会)がイベント・コントラクトに関するルールを最終決定すると見込まれます。
図表4 「予測市場」の規模(Bloomberg・BIによるベースケース予想)
(3)「予測市場」の主要プレーヤーと関連企業
〇主要プレーヤーは未上場
予測市場を運営している大手のPolymarketとKalshiは上場していませんが、簡単にご紹介いたします。
【Polymarket】
世界最大の予測市場で、日本語の取引サイトもあります。2020年にシェイン・コプラン氏によってニューヨーク市で設立されたブロックチェーン技術を活用した賭けプラットフォームです。
2024年の米大統領選挙において、従来の世論調査を超えるリアルタイムの予測ツールとして世界的な注目を集めました。現在では、政治だけでなく、経済指標、気象、文化、スポーツなど多様なトピックを扱う世界最大級の予測市場へと成長しました。
2025年10月にはインターコンチネンタル取引所(ニューヨーク証券取引所の親会社)からの出資を受け、2026年4月の資金調達ラウンドでは企業価値が約150億ドルと評価されました。
【Kalshi】
2019年にニューヨーク市でタレク・マンスールらが創業した予測市場です。
非合法な賭博ではなく、正規の金融取引所としてCFTC(米商品先物取引委員会)からの認可を目指し、2023年後半にCFTCから正式な承認を獲得、規制された予測市場としての地位を確立しました。
2026年5月の資金調達ラウンドでは、企業価値は220億ドルに達したと報じられました。早ければ、2027年または2028年のIPOを検討しているとされます。
〇上場している関連企業
株式、ETF、暗号資産の取引プラットフォームを運営するフィンテック企業です。取引用アプリを開発し、手数料無料取引で先鞭をつけました。2025年12月期の売上構成比は、トランザクション・ベース収入が59%、金利収入が34%、その他が7%で、トランザクション・ベース収入の内訳は、オプション25%、株式7%、暗号資産20%、その他が7%です。
マーケットメイカーのサスケハナ・インターナショナルと合弁で、米商品先物取引委員会(CFTC)の規制を受けるイベント契約・予測市場のプラットフォーム(および取引所・清算機関)の「Rothera」(ロセラ)を運営しています。
4-6月期決算は、売上が前年同期比32%増、EPSが同48%増と好調でした。イベント・コントラクト収入(予測市場の収入)が、前年同期比10倍以上の156百万ドルに達し、トランザクション・ベース収入の20%を占めました。暗号資産収入の減少を相殺して全体をけん引しました。残高有り口座数が前年同期比7%増の28.4百万に順調に拡大しています。
世界170以上の市場で株式や先物など金融商品の売買仲介業務を行います。売買時に顧客が支払う手数料や注文回送手数料が収益源です。個人投資家のほか機関投資家も顧客とします。
予測市場では、同社の創業者であるトーマス・ペテルフィ氏が設立した予測市場「ForecastEX」を関連会社としています。同市場は、経済、政治、気候変動などに特化し、一般的な予測市場で最も大きいカテゴリーであるスポーツを扱っていないことが特徴です。
5月14日には、ForecastEXのほか、Kalshi、CMEグループの予測市場を対象とする統合取引インターフェースの提供を開始しています。4-6月期決算は、世界的な株式市場の活況を受けて、売上が前年同期比28%増、EPSが同28%増と好調です。
米国の大手ネット証券。証券取引、銀行、資産運用、信託、投資アドバイスなどの幅広い金融サービスを提供しています。3,980万の証券口座、13.1兆ドルの預かり資産を擁します(2026年4-6月期決算リリースより)。
同社はまだ予測市場に参入していませんが、4月の決算説明会でCEOは、「顧客へのサービスが必要と判断すれば、参入する準備はできている。参入する場合には、ギャンブルはやらない。」と発言して、予測市場に前向きな姿勢を表明しています。
顧客が余剰資金を低金利商品から高金利商品に移したことによる収益悪化(同社にとっては資金コストの上昇になりました)の動きが一段落し、成長に舵を切っています。4-6月期決算は、売上が前年同期比21%増、調整後EPSが同42%増と好調でした。
スポーツシミュレーションゲームやオンラインカジノ、スポーツベッティングを手掛ける娯楽・ゲーム会社です。NFLやNBAのシーズンに当たる10-12月期に売上が大きくなります。ウォルトディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNと提携しています。
スポーツベッティングの大手で、Kalshiやロビンフッドなどとの競争が強まっています。4-6月期の決算では、売上・EPSとも市場予想を下回り、会社は認めていませんが、市場では競争激化の影響が表れているのではないかと懸念されています。
一方、予測市場が拡大して規制がはっきりすることで、スポーツベッティングが解禁されていない州(カリフォルニア州、テキサス州など)で事業を拡大できる期待もあります。
図表5 関連銘柄の投資指標
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