AI相場の中心に返り咲き!?来期7割増収の見通しを示したエヌビディア

投資情報部 榮 聡
2026/09/09
エヌビディア、AMD、ブロードコムは、直近の四半期決算で来期のAI半導体売上が大幅な増加になる見通しを示しました。同市場で依然として大きな市場シェアを維持するエヌビディアがAI相場の中心銘柄に返り咲く可能性に注目できそうです。
図表1 注目銘柄
| 銘柄 | 株価(9/8) | 52週高値 | 52週安値 | 最低購入金額 (9/8) |
| エヌビディア(NVDA) | 225.73ドル | 236.54ドル | 164.27ドル | 34,537円 |
| ブロードコム(AVGO) | 368.56ドル | 495.00ドル | 289.96ドル | 56,390円 |
| アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) | 505.74ドル | 584.73ドル | 149.22ドル | 77,378円 |
注:最低購入金額は、1株当たりの購入金額を1ドル=153円で円換算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
(1)エヌビディアに関する懸念材料を検討
AI関連銘柄の相場では今年に入ってから半導体メモリーなど周辺銘柄の活躍が目立ち、ここ1年以上エヌビディアの影は薄かったと言えるでしょう。
しかし、第1節でエヌビディアに関する懸念材料を検討し、第2節でAI相場に関する懸念材料を検討した結果、エヌビディアは再びAI相場の中心銘柄に返り咲くことが期待できると考えられます。
〇AI半導体市場の競争激化の懸念に対して
AI半導体市場に参入する企業が増えており、競争激化が懸念されています。
エヌビディアのAI半導体の市場シェアは、かつては9割、あるいは8割以上と言われていましたが、最近では7割以上とされることも多く、市場シェアが低下していることは間違いないと思われます。
ただ、AI半導体市場全体の動向は、企業間の取引が多いこともあって、確かな実態を掴みづらくなっています。そこで米国の大手企業100社を対象に、「どこのAI半導体を使っているか」を時系列で追跡した、信頼性の高い調査を見てみましょう。
これによると、エヌビディアは2026年1月時点でも6割近いシェアを確保しており、過去2年に顕著な低下にはなっていないことが確認できます。いまのところ、深刻な懸念材料ではないと判断できそうです。
なお、市場全体の推定よりもシェアが低くなるのは、大手企業はAIに関するリソースが豊富なため、エヌビディア以外のAI半導体でも対応できる場面が多いからだと考えられます。
〇投資リスクを取りすぎているとの懸念に対して
エヌビディアはAI投資に対してリスクを取りすぎているとの懸念があります。
図表3は2026年に入ってからの主要な債務保証案件、投資案件を並べたものです。モルガン・スタンレー社の試算(2026年8月時点)では、簿外偶発債務は最大約1,700億ドル(約27兆円)に達すると推定されています。
典型的な懸念として、「エヌビディアが顧客に資金を融資(または債務保証)し、その資金で顧客がエヌビディアのGPUを買う」という構図が、かつての1990年代末のITバブル崩壊を招いた「ベンダーファイナンス」に類似していると警戒されています。AI需要が急減速した場合、「顧客の業績悪化➡GPUの価値急落➡エヌビディアの債務保証発動」が同時に起き、巨額の損失が一気に現実化するリスクが指摘されています。
このような懸念に対してエヌビディアのクレスCFOは2026年8月の決算会見で、「循環型金融という批判は当たらない」と明確に否定しました。「AIスタートアップの急成長に民間銀行の融資が追いついていないため、当社が信用補完を行うことで80兆円もの民間資本を呼び込むエコシステムの黒子になっている」と説明しました。
また、「当社のGPUは汎用性と耐久性が高いため、万が一顧客が破綻しても別の企業へ即座に転用・再リースが可能であり、財務リスクは限定的である」としています。
〇懸念に対するフアンCEOの反論
さらに、フアンCEOはCNBC(米経済メディア)とのインタビューで、上記のCFOによる反論を補強しています。
同氏はAIデータセンターを運営するコアウィーブが、2020年世代の「A100」(※)について、顧客との間で2029年まで使用する契約を締結したことを取り上げ、AI半導体がすぐに陳腐化してしまうようなものではないと説明しています。
なぜそのようなことが起こるかについて、『エヌビディアのAI半導体を購入した顧客は、ソフトウェア「CUDA」を無料でアップグレードできるため、性能は購入後にどんどん高まっていく。数年前に購入したときよりもAI半導体の価値が高まることが起こり得る』としています。
3~5年で減価償却されて価値が低下していく通常の機械とは状況が異なるとの説明です。AI半導体を担保にして資金調達することに対して懸念の声が聞かれますが、このような事例を見ると、懸念は当たっていないのではないかと考えられます。
もちろん、2020年に購入したAI半導体の価値が高まっているのは、依然としてAI投資が急増しており、AI半導体の需給がタイトな状況が続いていることが重要な背景です。しかし、まだAI投資が急増している中で、市場の懸念は行き過ぎと考えられます。
※エヌビディアAI半導体の代表モデルは、2020年に「A100」、2022年に「H100」「H200」、2024年に「B200」「GB200」、2026年に「Vera Rubin」と投入されてきました。「A100」は3世代前のモデルということになります。
図表2 米国大企業を対象とするAI半導体のシェア調査
図表3 エヌビディアによる債務保証・金融支援と直接投資
(2)AI相場に関する懸念材料を検討
8/26(水)に発表されたエヌビディアの5-7月期決算は、「AI投資の増加が続くかどうか」、「メモリー価格上昇をどう吸収するか」、というAI相場全体の持続に関する2つの懸念を解消したと見ています。
〇AI投資の増加が続くかどうか
「2028年1月期の売上は、前年比約7割増える見通しだ」として、AI投資のピークアウトを心配している市場に安心感を与えました。しかも、このガイダンスは、半導体メモリー不足が供給制約となることを前提としたもので、供給制約がなければ、顧客の需要は前年比倍増の勢いだとコメントしています。
これを聞いて思い出すのは、昨年末に株式市場が「AI過剰投資」を懸念していたことに対して、フアンCEOが「我々には全く違った景色が見えている」として、市場の懸念を否定したことです。
当時ハイパースケーラーが2026年の投資計画について、エヌビディアに相談していたと見られ、それが先の発言につながったと見られます。そのようなことから、同社の市場見通しは、業界の中でも信頼できると考えられます。
また、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)は8/4(火)に「2027年のデータセンター売上は前年比倍増の勢いだ」とし、ブロードコム(AVGO)は9/2(水)にAI半導体の売上は2027年10月期に前年比倍増近く、2028年10月期は同倍増の見通しを示しました。
〇メモリー価格の上昇をサプライチェーン全体で吸収へ
さらに、AI投資の持続性についてリスクとなっているのは、半導体メモリーの品不足で価格が急騰する中、AIサプライチェーンの中でこの価格上昇をいかに吸収できるかということでした。
この懸念はまず、ハイパースケーラーの4-6月期決算で今年の設備投資計画が維持、または引き上げられたことから、一旦和らぎました。しかし、半導体メモリー価格の上昇を誰がどのように負担するかは、不明のままでした。
今回エヌビディアは、メモリー価格の上昇を吸収するために顧客に対して同社製品価格の15%引き上げを要請する一方、粗利率の低下によって同社も一部を負担する見通しを示しました。
エヌビディアの粗利率は5-7月期の75.0%から8-10月期に74.0%、11-1月期に71~72%まで低下する見通しです。2027年2-4月期から製品価格引き上げの効果が出て、2028年1月期には72~73%となる見通しです。
メモリー価格の上昇をAIサプライチェーン全体で円満に吸収するシナリオを示したことで安心感につながると期待されます。
図表4 AI半導体主要各社のデータセンター売上
(3)エヌビディア株の投資判断
〇アナリストの目標株価は44%の上値を示唆
エヌビディアに対するアナリストの投資判断は、買い/中立/売り:78/2/1と圧倒的に「買い」が優勢の判断となっています。目標株価の平均値は325.01ドルで、9/8(火)終値225.73ドルに対して44%の上値を示唆しています。
〇業績成長に対して割安感がある予想PER
エヌビディアの予想PERは、2027年1月期予想EPSの9.38ドルに対して24.1倍、2028年1月期予想EPSの15.86ドルに対して14.2倍となっています。業績成長の高さを勘案すると、割安感が強いと考えられます。
※データはいずれも9/8(火)時点です。
図表5 エヌビディアの業績見通し
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