大統領選挙で注目が高まるブラジル株市場

大統領選挙で注目が高まるブラジル株市場

投資情報部 榮 聡

2026/09/24

(1)大統領選挙で注目高まるブラジル株

202610月大統領選挙への注目が高まる

ブラジルの大統領選挙は、第1回投票が10/4(日)、第1回投票で過半数の得票者がいない場合の決選投票が10/25(日)に予定されています。

現職の左派ルラ大統領に対して、右派で前ジャイール・ボルソナロ大統領の長男フラビオ・ボルソナロ上院議員が挑戦しており、接戦になるとの見通しから、株式市場の注目を集めています。

決選投票を前提とした直近の世論調査(9/21(月)公表、BTG/Nexus実施)では、ルラ氏が46%、ボルソナロ氏が45%と拮抗しており、ここまで追い上げてきたボルソナロ氏当選への期待が高まっています。

〇株式市場が期待するボルソナロ氏の政策

ボルソナロ氏が大統領選挙に向けて掲げたマニフェストのタイトルは、「ブラジルが停滞を克服するために」です。

主要な項目として、「恐れのないブラジルへ」(治安対策)、「行列のないブラジルへ」(社会の効率化)、「家計にやさしいブラジルへ」(電力料金や燃料に係る税負担の軽減)、「成長するブラジルへ」(米国、アルゼンチンなどとの外交関係の改善)、「逆戻りしないブラジルへ」(財政健全化による高金利環境の改善)など、前向きな内容が並んでいます。

ブラジル経済が現在抱えている問題点を端的に指摘しており、これらの点が改善するならブラジル経済は停滞を克服できるのではないかと思わせる内容です。

基本的に株式市場は、成長重視や規制緩和、親ビジネスの傾向がある右派政権を歓迎しますが、同氏の掲げる政策は正にこれに適合するもので、当選の可能性が高まるにつれて株価は上昇すると期待できるのではないでしょうか。

〇ブラジル株式市場の動向

ブラジル株式の動向を代表的株価指数であるボベスパ指数で見てみましょう。

2025年は米国での利下げなどを背景とした世界的なリスクオン相場に乗って上昇しました。2026年に入ってからは、物価の落ち着きを背景としたブラジルでの利下げ期待に加え、中東情勢の緊張を受けた原油価格の上昇で一段高となりました。

その後、中東情勢の改善期待による原油価格のピークアウトを受けて、4月から調整となりました。

一方、8/16(日)に大統領選挙の主要候補2人が選挙運動を本格始動したことを受けて相場は反発に転じました。その後の原油価格上昇も押し上げ要因になっているとみられます。

図表2 ブラジルのボベスパ指数(週足、2年)

(2)ブラジル株のファンダメンタルズを確認

ブラジル株への投資を検討するに当たり、ファンダメンタルズを確認しておきましょう。

〇経済成長と企業業績は停滞気味

ブラジルのGDP成長率は、2026年2.0%、2027年1.7%、2028年2.0%と予想されています(Bloombergのコンセンサス予想、9/23(水)時点)。2%前後の安定した成長が予想されていますが、新興国の成長率としては比較的低く、実力が発揮できていないのではないかと思われます。

このような経済成長を背景に、企業業績(ボベスパ指数採用企業のEPSベース)は、停滞感が強いものとなっています。図表3の通り、2026年は原油価格が反発した効果で前年比46%増と伸びますが、それ以外の年は停滞気味です。

原油、鉄鉱石など一次産品の産業構成比が高いことに加え、上記のような停滞感を受けてボベスパ指数の予想PERは9.0倍と低くなっています。

ボルソナロ氏が大統領に当選することで、経済成長、企業業績の伸びが高まると期待できるのであれば、改善余地は大きいと言えるでしょう。

〇政策金利は引き下げサイクル

ブラジルの政策金利は、現時点で13.75%と非常に高くなっています。

新型コロナ後のインフレ高進を受けて上昇した後、高止まりしています。一方、最近の物価上昇率が落ち着いていることから、2026年3月から5回連続で利下げされました。世界的に利上げサイクルの国が多いことを考えると、特筆すべき特徴と言えるでしょう。

「高金利環境の改善」を大統領選挙のマニフェストに掲げるボルソナロ氏が大統領になると、利下げが継続される可能性が高まるとの見方があり、株式市場には追い風となる見込みです。

なお、ブラジル中央銀行の金融政策決定会合は年8回開催されます。直近の政策会合は9/15(火)~9/16(水)でした。2026年内には、11/3(火)~11/4(水)と12/8(火)~12/9(水)に予定されています。

〇ボベスパ指数の業種構成

ボベスパ指数の業種ウェートは、金融が27.1%と最大です。これは新興国の株式市場によくある特徴です。

また、「エネルギー」と「素材」の比率が高いのも目立ちます。

ブラジルにはリオデジャネイロ州沖のサントス盆地やカンポス盆地などに海底油田があり、国営企業のペトロブラスなどが採掘を行っています。「エネルギー」はブラジルの代表的な産業です。

また、「素材」の大部分は、鉄鉱石の採掘を行うヴァーレによります。ブラジルの鉄鉱石の世界生産シェアは、オーストラリアに次ぐ2位で、2023年に18%を占めています。

一方、製造業の比率は小さくなっています。比較的よく知られている企業として、航空機のエンブラエル ADR(EMBJ)、ビール会社のアムベブ ADR(ABEV)、鉄鋼会社のゲルダウ ADR(GGB)などがあります。

なお、「その他」には、ヘルスケア2.2%、コミュニケーション・サービス1.4%、不動産1.1%、情報技術0.6%を含みます。

図表3 ボベスパ指数採用銘柄のEPS推移

図表4 ブラジルの政策金利

図表5 ボベスパ指数の業種構成比

(3)注目銘柄

ブラジル株に投資するには、さまざまな投資信託に加え、以下のETFや米国市場に上場している個別のADRも利用できます。

【ブラジル株のETF】

iシェアーズ MSCI ブラジル ETF(EWZ)・・・ブラジルの主要大型株に投資するETF

ヴァンエック ブラジル小型株ETF(BRF)・・・ブラジルの小型株に投資するETF

Direxion デイリー ブラジル ブル2ETF(BRZU)・・・MSCIブラジル株指数を対象とするブル2倍のETF

【ブラジルの個別株式(米国市場に上場するADR)】

ペトロレオ ブラジレイロ ADR(PBR)

ブラジルで石油の採掘を行う会社で、通称で「ペトロブラス」と呼ばれます。南米最大の事業会社で、英国のBPと戦略的提携関係にあります。 政府および関係機関が株式の35%を保有します(2026年8月)。

2026年4-6月期の原油生産量は前年同期比15%増と順調に増加しています。ボルソナロ氏が大統領に当選することで、政府による経営への干渉(例えば、ガソリン価格を引き下げるなど)が減少することが期待されます。

イタウ ウニバンコ ホールディング ADR(ITUB)

ブラジル最大の民営銀行で、南米最大の金融機関です。リテール銀行業務を中心にホールセール業務も提供します。ブラジルのリテール銀行市場で最大シェアを握り、アルゼンチン、チリ、パラグアイなど南米各国にも事業展開しています。

2025年12月期の純利益率は26.6%、株主資本利益率(ROE)は21.6%と収益性が高い銀行です。2026年は前年比5.5~9.5%の増収を見込んでいます。ボルソナロ氏が大統領に当選することで、成長志向の政策による恩恵が期待されます。

ヴァーレ ADR(VALE)

世界最大の鉄鉱石生産企業です。鉄鉱石のほか、ニッケル、銅なども生産します。鉱石の輸送・積み出しのための鉄道や港湾ターミナルも保有します。2019年にダムの決壊事故を起こして約70億ドルの賠償金を支払中ですが、支払額は2025年をピークに減少しています。

主力の鉄鉱石の価格が今年6月以降軟調に推移していることから、2026年下半期の業績は市場予想を下回る可能性が高くなっています。ボルソナロ氏が大統領に当選する場合、環境規制の緩和から恩恵を受けると期待されます。

図表6 個別銘柄の投資指標

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