韓国株は調整一巡!? 反発への転機を探る

投資情報部 榮 聡
2026/10/28
韓国のKOSPI指数は6/15(月)に付けた最高値9,385.59ポイントから約4割下落、調整期間も4ヵ月を超えました。反発への転機を探る局面にあるのではないでしょうか。サムスン電子、SKハイニックスなど半導体メモリー大手を中心に考えてみました。なお、SKハイニックスは10/28(水)、サムスン電子は10/29(木)に7-9月期決算を発表しますので、ご注意ください。
図表1 注目銘柄
| 銘柄 | 株価(10/27) | 52週高値 | 52週安値 | 最低購入金額 (10/27) |
| サムスン電子(005930) | 222,000ウォン | 380,000ウォン | 93,500ウォン | 26,418円 |
| SKハイニックス(000660) | 1,341,000ウォン | 3,002,000ウォン | 501,000ウォン | 159,579円 |
| LG エネルギー(373220) | 382,500ウォン | 527,000ウォン | 290,500ウォン | 45,518円 |
| iシェアーズ MSCI 韓国 ETF(EWY) | 157.46ドル | 220.89ドル | 86.90ドル | 24,879円 |
| KODEX200ETF(069500) | 88,905ウォン | 152,455ウォン | 53,925ウォン | 10,580円 |
注:最低購入金額は、1株当たりの購入金額を、韓国上場銘柄は1ウォン=0.119円、米国上場銘柄は1ドル=158円で円換算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
(1)韓国の半導体株は調整十分!?
韓国のKOSPI指数は、年初から6月までに急騰し、その後急落しましたが、この動きを主導したのは、半導体メモリー大手のサムスン電子とSKハイニックスでした。両社の株価調整はかなり進んだと考えられるため、韓国株式市場が反発をうかがう可能性について考えてみました。
〇エヌビディアの市場見通しを踏まえて
エヌビディアは5-7月期決算で、半導体メモリー不足がAIデータセンター投資のボトルネックになっていることを踏まえて来年に向けたシナリオを提示しました。
メモリー価格の上昇を吸収するために、エヌビディア製品価格の15%引き上げを顧客に要請するとともに、自社の粗利率は72~73%への低下を甘受するというものです。
この見通しの前提となっているのが、「半導体メモリー不足は来年も継続し、価格の上昇も続く」とのシナリオです。AI投資の端から端まで最も深く関わっている同社がこう言うのであれば、半導体メモリーに対する株式市場の見方は悲観的すぎると考えられます。
〇世界半導体売上から見えるもの
半導体株のシクリカル性が警戒されるのは、半導体市場の売上が2年上昇した後、3年目に反落するというパターンがあることです。図表3の世界半導体売上の動向では、そのようなパターンが過去数十年にわたって何回も繰り返されていることが確認できます。
このようなパターンを描く理由の一つは、半導体メモリーの需給の波によって価格が上昇から下落に転じることにあります。2024年、2025年と半導体売上が拡大した後、2026年あるいは2027年に減少に転じるのではないかとの警戒が半導体株の不安定化につながっている可能性があります。
しかし、今回の半導体のサイクルは、AIによる「産業革命」と言えるほどの変化を背景にしているため、通常のサイクルとは違った経路をたどる可能性が高いと思われます。
そして、その参考になるのが、インターネットの普及を背景として、半導体市場の売上が2002年~2007年にかけて6年連続で増加した局面です。株式市場のITバブルは2000年に崩壊しましたが、現実の世界ではインターネットの普及が進む中で半導体の売上が着実に増加しました。
今回のサイクルでは、このような経路をたどる可能性が高いのではないでしょうか。
〇極端に低い株式バリュエーション
韓国株の急上昇とその後の急落の要因となった、サムスン電子とSKハイニックスの株式バリュエーションは、今期予想EPSを基準にそれぞれ4.5倍、3.5倍と極端な低水準に沈んでいます(10/26(月)終値基準)。
今期・来期の業績は急拡大するものの、半導体メモリーの設備投資が完了して需給が緩和した後の中期的な利益水準に確信が持てないために、このようなことになっていると考えられます。
この中期的な利益水準に対して確度がそれなりに高い見通しが出てくるのが2027年半ば頃と考えられ、それまで株価は市場のセンチメントに左右されやすい状況が続くでしょう。
しかし、予想PERが3倍台、4倍台というのはいかにも低く、当面は下落よりも上昇の可能性のほうが高いと考えられます。
図表2 韓国KOSPI指数の一目均衡表(週足、3年)
図表3 世界半導体売上(WSTS)
(2)韓国株式市場の特徴
〇韓国KOSPI指数の予想PERは突出して低い
韓国株式市場の特徴は、指数のPER水準が非常に低いことです。10/26(月)終値時点で、米国のS&P500指数の予想PERは20.8倍、日本のTOPIXの予想PERは16.5倍ですが、KOSPI指数の予想PERは5.4倍と、突出して低くなっています。
PERが非常に低い要因は、半導体メモリー、銀行、自動車など、PERが低く評価される産業の比重が高いことです。図表4は、RISE KOSPI ETFやMSCI Korea Indexの構成比データを基に推定したKOSPI指数の業種ウェイトの目安です。
構成比が60%以上となっている情報技術は、一般的にはPERが低いセクターではありません。しかし、韓国の場合はこの60%の大部分を半導体メモリーのサムスン電子とSKハイニックスが占めるため、指数のPERを押し下げる効果をもっています。
半導体メモリーは、「コモディティ」的な要素が強く、業績の変動性が高かった歴史があるため、PERは低く評価されます。特にメモリー価格の上昇によって業績が急拡大した局面では、PERは低くなります。
ただし、現在の予想PERは、過去のレンジから下振れた状況にあります。図表5はKOSPI指数の予想PERの過去20年間の推移です。8倍から15倍で推移することが多いものの、5倍台というのはなく、下がり過ぎている可能性が指摘できます。
〇「コリア・ディスカウント」からの脱却の試み
KOSPI指数の予想PERが低い理由としては、上記の業種構成以外にも、以下のような「コリア・ディスカウント(韓国株の割安放置)」に関連する要因が挙げられます。
・財閥系企業(チェボル)による複雑な支配構造
・隣接する北朝鮮と軍事的緊張状態にあること
韓国政府は、「コリア・ディスカウント」を解消するために2024年5月から「企業バリューアッププログラム(Korea Value-up Program)」を導入しています。
同政策の内容は、上場企業に自社の企業価値向上計画(バリューアップ・プラン)の策定・公表を促し、優良企業で構成される「Korea Value-up Index」などを活用して投資を誘導する仕組みです。
導入から2年で、公示に参加した企業の時価総額が韓国市場全体の80%を超えるなどの成果を上げています。今後も効果が持続すると期待できるでしょう。
〇MSCIが先進国市場へ昇格させる可能性
MSCI指数における韓国株の現状の位置づけは、新興国市場(エマージング・マーケット)で、MSCI新興国株指数の中で韓国株は約23%の高いウェイトを占めています。
先進国市場への昇格に向けたウォッチリスト入りが長年議論されていますが、MSCI側は為替市場の自由度や外国人投資家へのアクセス、流動性不足などを理由に据え置いています。2026年6月の発表でも、引き続き先進国市場への格上げ候補(ウォッチリスト)には含まれませんでした。
一方、世界のAI投資に大きな影響を与える半導体メモリー大手が時価総額の大きな部分を占めることから、「新興国株指数」の性格にはなじまないという見方もあるでしょう。韓国政府や金融当局は先進国指数(MSCI Developed Markets Index)への昇格を目指しており、今後の動向が注目されます。
図表4 KOSPIの業種別ウェイトの目安
図表5 韓国KOSPI指数の予想PER推移(月次データ)
(3)韓国株に投資するには?
SBI証券では、韓国市場に上場する105銘柄の韓国株の取引ができます。時価総額上位の3銘柄をご紹介いたします。
【来期予想PERは3.0倍まで低下】
世界最大級の総合エレクトロニクスメーカーであり、韓国最大の財閥「サムスングループ」の中核企業です。スマートフォン、半導体メモリー、薄型テレビ、有機ELパネルなどの多岐にわたる分野で世界トップクラスの市場シェアを誇ります。
2026年4-6月期の部門別売上構成比(部門間売上相殺前の各部門売上を正味売上高で除した比率)は、DX(電子機器)25%、DS(電子デバイス)78%、SDC(ディスプレイ)4%、ハーマン(自動車など)2%です。
AI需要によって半導体メモリー部門の売上が急増して、部門売上は前年同期比4.6倍、1-3月期比56%増となって全体をけん引しています。7-9月期の売上と営業利益は概算値が発表済みですが、詳しい内容は10/29(木)に発表の予定です。
10/26(月)終値213,000ウォンの今期予想EPS(46,848ウォン)に対する予想PERは4.5倍、来期予想EPS(71,321ウォン)に対する予想PERは3.0倍まで低下しています。
【来期予想PERは2.7倍まで低下】
韓国に本社を置く世界有数の半導体メモリーメーカーです。サムスン電子、米マイクロン・テクノロジーと共に世界メモリー市場の「ビッグ3」の一角を占めており、近年はAI(人工知能)市場の急拡大を背景に、AI向け次世代メモリーの分野で圧倒的なリーダーシップを発揮しています。
単にメモリーを供給するだけでなく、システム側と共同で設計する「Full-Stack AI Memory Creator」を目指し、HBM4(次世代HBM)の量産や、3Dメモリー、CXL(次世代インターフェース)などの先端技術へ集中投資を行っています。10/28(水)に発表された7-9月期決算は、売上が前年同期比4.3倍、営業利益が同7.3倍となり、それぞれ市場予想を6%、8%上回って好調でした。
10/26(月)終値1,275,000ウォンの今期予想EPS(359,286ウォン)に対する予想PERは3.5倍、来期予想EPS(477,697ウォン)に対する予想PERは2.7倍まで低下しています。
なお、同社は米国市場にADRを上場しています。
【電力貯蔵システムに注力】
LGエナジーソリューション(LG Energy Solution)は電池メーカーです。自動車用バッテリー、小型バッテリー、電力貯蔵システム、その他製品を製造、販売します。韓国のLG化学から2020年に分社化しました。世界各地で事業を展開して、2025年12月期の売上構成比は、国内が58%、海外が42%です。
自動車用バッテリーは同社の主力事業であり、世界トップクラスの自動車メーカー(GM、ホンダ、ステランティス、現代、フォードなど)にEV用バッテリーを供給しています。一方、EVの販売失速から足を引っ張られるのを避けるために、電力貯蔵システムへ注力しています。北米ではEV向けの余剰生産能力を、需要が拡大しつつある電力貯蔵システム向けに転換して事業は安定化しつつあります。
韓国株式に幅広く分散して投資するには、米国市場および韓国市場に上場する、以下のETFがあります。レバレッジをかけたい場合には、Direxion MSCI韓国株 ブル3倍 ETF(KORU)が利用できます。
ブラックロック社が提供する米国市場に上場する韓国株ETFです。正式名称は「iシェアーズ MSCI 韓国キャップト ETF(iShares MSCI South Korea Capped ETF)」で、MSCI韓国25/50インデックスの価格および利回りの実績に概ね対応する投資成果を目指します。
「25/50」は、構成銘柄が指数ウェイトの25%を超えず、かつ、5%以上のウェイトの銘柄が合計で50%を超えないようにするキャッピング方法を指します。サムスン電子、SKハイニックスなどの組入比率を抑える仕組みになっています。
10/23(金)時点の純資産額は262億ドル、分配利回りは1.35%、経費率は0.59%です。
サムスン・アセットマネジメントが運用する韓国の代表的な株価指数である「韓国総合株価指数200(KOSPI200)」への連動を目指す韓国市場に上場する上場投資信託(ETF)です。KODEXはサムスン・アセットマネジメントのETFシリーズのブランド名です。
「KOSPI200」は、韓国取引所に上場する銘柄のうち、時価総額や流動性を考慮して選ばれた代表的な200社で構成される時価総額加重型の株価指数です。
9/30(水)時点の純資産額は25.0兆ウォン(約3兆円)、分配利回りは0.98%、経費率は0.16%です。
図表6 半導体メモリーの市場シェア
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