第2回 3月5日、スーパーチューズデーを終えて
「トランプ氏圧勝で、共和党候補確実に!」
小次郎講師
2024/03/13
スーパーチューズデーまでの振り返り
3月4日のスーパーチューズデーまでの戦いを振り返ってみましょう。
1月15日、アイオワ州からスタートした米大統領選挙に向けた野党、共和党の候補者選びでは、ここまではトランプ前大統領が圧倒的に有利な戦いを繰り広げています。各州の人口に応じて「代議員」の数が割り振られていますが、トランプ前大統領が273名、ヘイリー元国連大使が43名の獲得となっています。
トランプ氏は、2月23日のサウスカロライナ州における選挙集会で、自らが勝利して2期目の政権を発足させた場合、1期目で実現させたものの2025年末に期限切れとなる「トランプ減税」をそのまま延長あるいは恒久化するのでなく、減税規模を拡大する構想を発言しました。「追加減税を行い、今まで見たことがないような全く新しいトランプ経済ブームを起こすため、誰もが最大級の減税を受けることになる」と述べました。
『トランプ減税』とは2017年12月に成立した大型減税で、連邦法人税の35%から21%への税率引き下げや海外子会社からの配当課税廃止、所得税の最高税率の39.6%から37%への引き下げや概算控除倍増などを主な内容とします。レーガン政権による1986年の大型減税以来の抜本的な税制改革です。トランプ氏自ら発言することで、ウォール街を味方につけ、選挙戦を有利に進めようとしており、また結果も伴っています。
一方、ヘイリー氏は首都ワシントンで勝利をおさめました。ただ、共和党内でのトランプ氏の優位は変わりませんが、一連の候補者選びでヘイリー氏が勝利するのは初めてとなりました。
アメリカ大統領選挙で返り咲きを目指すトランプ氏の立候補資格を巡り、連邦最高裁判所はトランプ氏に西部コロラド州の予備選挙に立候補する資格がないとした州の裁判所の判断を覆し、立候補を認める判断を示しました。二ューヨーク・タイムズ紙によると、全米の少なくとも36の州で同様の訴えや申し立てが裁判所や州務長官などに対して行われており、今回の最高裁の判断はこうした州にとっても今後の対応の指針になるとみられています。トランプ氏はSNSに「アメリカのためには大きな勝利だ」と投稿しました。
スーパーチューズデーの結果
11月の米大統領選に向けた共和党候補選びが3月5日に行われました。
15州の予備選が集中する序盤戦最大のヤマ場「スーパーチューズデー」では、トランプ氏が14州を制してヘイリー氏に圧勝しました。1月に始まった予備選の累計の戦績は23勝2敗となりました。
米紙によると、日本時間3月6日21時時点でトランプ氏が獲得した代議員は995人で、ヘイリー氏は89人にとどまりました。この結果を受けて、ヘイリー氏は選挙戦から撤退する方針を固めたとアメリカの複数のメディアが伝えました。ヘイリー氏が撤退することにより、共和党から立候補していたトランプ氏以外の主要候補がすべて撤退することになり、トランプ氏が党の指名を獲得することが確実な情勢となりました。
結果の数字だけを見れば、トランプ氏は圧勝しましたが、一方で課題も露呈しました。
11月の本選の勝敗を左右するのが無党派層の支持であり、出口調査によると、ノースカロライナの投票者の34%が無党派層であり、そのうちトランプ氏の支持は54%で、40%のヘイリー氏に差を詰められました。また、スーパーチューズデー前の予備選では東部ニューハンプシャー州、南部サウスカロライナ州で無党派の支持がヘイリー氏を下回っていました。
共和党の指名獲得と大統領選の本選での勝利とは事情が全く異なるため、今後も無党派層や共和党穏健派への支持向上ができるかどうか課題となります。
また、今後はトランプ氏が抱える裁判での判決の結果も注目されます。米メディアが5日の米共和党予備選で実施した出口調査によれば、トランプ氏に有罪判決が下れば大統領に不適格との回答が3割に達しました。11月の本選でカギを握る穏健派の票を取りこぼすリスクが浮かび上がりました。
現在の大統領選の支持率推移
3月5日時点でも、トランプ氏が47.5%、バイデン氏が45.5%となっており、2%差でトランプ氏が優勢継続となっています。(RealClearPoliticsより3月5日時点)
スーパーチューズデー後のスケジュール
3月25日(月)(予定)不倫口止め料の初公判
5月20日(月) トランプ氏の機密文書事件の初公判
7月15日~18日 共和党大会(党の候補者が決定)
8月19日~22日 民主党大会(党の候補者が決定)
大統領候補者テレビ討論会
副大統領候補者テレビ討論会
11月5日(火) 大統領選、投開票日
2025年1月20日 大統領就任式
*日程未定 2020年大統領選介入事件に関するイベント
現状のマーケット分析
NYダウ 日足
スーパーチューズデーを迎えチャートには陰線が出現しました。直接的な材料はアップル株の下落であり、中国での販売不振がその要因でした。また、「もしトラ」となれば米国は中国に対して再度関税をかけてくる可能性があり、それがさらなるアップル製品の不振につながるといった思惑もあったかもしれません。昨年11月より4カ月ほどの上昇が続いていますが、そろそろまとまった調整も懸念されるところではないでしょうか。
ゴールド 日足
ここ数日、連日で清算値ベースにおいてゴールドは史上最高値を更新しています。ゴールドの上昇には、地政学的リスクやドル安などの要因がありますが、今回のスーパーチューズデーの結果から世界は「もしトラ」リスクに反応しているとも受け止められるような上昇となっています。この上昇は穏やかなものではなく、逆Cカーブのような形をしています。したがって「もしトラ」を懸念して上昇しているのであれば、株式市場にとっては売り材料となりますので、ゴールドの動きも注意が必要です。
まとめ
今回のスーパーチューズデーの結果は予想通りの結果となりトランプ氏の圧勝となりました。ただ、ゴールドの上昇などを考えると、手放しで株高が継続するといは断言しづらいマーケット状況です。4か月ほど株高が続いていますが、どんな市場でも利益確定売りは出てきます。そのときに、上昇期間が長いほど調整幅も大きくなる傾向があります。株式市場とゴールドの動向を注意深くみていきましょう。
著者プロフィール
小次郎講師
岡山県出身。チャート分析の第一人者として、投資セミナー、書籍などを通じて個人投資家向けの投資教育活動を精力的に展開している。
40年以上の投資キャリアを持つ。
【出演】
・ラジオNIKKEI「小次郎講師のチャートラボラトリー」レギュラー番組
【受賞暦】
・みんなの株式「コラムアワード2013、2014」2年連続大賞受賞
・パンローリング社「ブルベア大賞2016」大賞受賞、
「ブルベア大賞2015、2019」準大賞受賞、「ブルベア大賞2017、2018」特別賞受賞
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