第3回 「もしトラ」から「ほぼトラ」となるか!?

第3回 「もしトラ」から「ほぼトラ」となるか!?

小次郎講師

2024/04/23

スーパーチューズデー後の流れ

3月5日のスーパーチューズデーでの戦いはトランプ氏の圧勝で幕を閉じました。
その後、もしトランプ氏がアメリカ大統領に返り咲いたらどうなるのかという言葉、いわゆる「もしトラ」の議論が活発になり、さらには、ほぼトランプ氏が勝つのではないかという「ほぼトラ」という言葉も浮上し注目を集めています。

3月25日に予定されていた「不倫口止め料の初公判」は、ニューヨーク州の裁判所によって延期され、4月15日に初公判が行われます。トランプ氏は12日に公判に出廷し、「私は証言する。絶対にだ!」と述べ、法廷で自らの「潔白」の主張をする意向を示しました。

RCP(RealClearPolitics)によると、トランプ氏とバイデン氏の支持率はトランプ氏がやや優勢となっていますが、世論調査では、もしトランプ氏が現在抱えている裁判で有罪判決を受けたとして、大統領選挙が行われた場合には誰に投票するかという問いに対してはバイデン氏がトランプ氏を上回りました。つまり、米大統領選挙はどこでどう転ぶかが全く読めない状況であるといっても過言ではありません。(出所:ジェトロ)

バイデン氏の不安要因は何といっても高齢であるという点ですが、米国民が納得のいく政策や政治活動を推し進めることで支持率の回復を図っています。ひとつは4月8日に発表された大学などの学費ローンの返済を一部免除する案は、特に若者の関心を集め支持を拡大する狙いが見られます。一方、野党・共和党からはすでに反発の声が上がっており、これが大統領選の争点のひとつになりそうです。

また、4月10日に行われた日米首脳会談は、大統領選挙での戦略の一環としてバイデン大統領にとって重要なものでした。日本の岸田首相は9年ぶりの「国賓待遇」としてホワイトハウスに招待され、バイデン大統領としては日米の強固な関係を米国内でアピールすることができました。

これらの要素が重なり合ってか、トランプ氏とバイデン氏の支持率に微妙な変化が出てきました。それでは、それぞれの支持率がどうなっているのかを見ていきましょう。

現在の大統領選の支持率推移

スーパーチューズデーの3月5日時点では、トランプ氏が47.5%、バイデン氏が45.5%と、2ポイント差でトランプ氏が優勢となっていました。(RealClearPoliticsより3月5日時点)しかし、4月12日時点ではトランプ氏が45.5%、バイデン氏が45.3%と、僅差になっています。これは大統領選がますます激しくなっていることを示唆しています。

(RealClearPoliticsより3月5日時点)

やはり、「もしトラ」や「ほぼトラ」という言葉が出てくる中、米国民も現実路線を意識し始めているのかもしれません。

さまざまなことが争点になる大統領選では、大きく分けて外交問題と内政問題に分かれます。内政問題では、先ほど記載した学費ローン問題、それから、人工中絶規制の問題や移民問題に加えて、トランプ氏の提唱する「キャリア官僚大量解雇」が波紋を広げています。これは、通称“Schedule(区分)F”という2020年10月にトランプ氏が出した大統領令です。連邦政府職員に、雇用継続を保証しない「F」という区分を新たに設け、この区分に分類された職員は、「働きが悪い」と判断すれば解雇できるとする内容となっています。結果的には2020年の大統領選でバイデン氏が当選し、この大統領令を無効にしたため、実際の運用はありませんでした。しかし、トランプ氏はこの大統領令を復活させると宣言しています。これが復活すれば、アメリカの政治と行政のあり方が根幹から揺らぎます。現状は大統領が指名するのは閣僚や次官など約4000名です。それが、“Schedule(区分)F”が復活すると、さらに中堅幹部を含め約5万人の解雇や指名が可能になるのです。その対策として、4月4日、バイデン政権下の人事管理庁(OPM)が新しい規則を発表しました。これは、連邦政府のキャリア公務員は、職位の区分が移されることによって職を失うことはないと規定したほか、不本意な異動の結果、職を奪われた場合には不服申し立てができることとし、政権の意向で官僚を大量に解雇することを難しくするというものです。

4月の段階では、トランプ氏とバイデン氏は激しい選挙戦を展開し、支持率は非常に拮抗していることが明らかです。

激戦区の州ごとの支持率推移

では、ここからは激戦が予想されている州における戦いがどう繰り広げられているかを見ていきましょう。

激戦が予想されている州では、ウィスコンシン州・ジョージア州・アリゾナ州・ネバダ州・ミシガン州・ペンシルベニア州・ノースカロライナ州の7つの州が挙げられます。そのうちミシガン州ではトランプ氏が2.8ポイントの差をつけてリードし、ネバダ州は3.2ポイント、ジョージア州は3.8ポイント、ノースカロライナ州は4.0ポイント、アリゾナ州は4.5ポイントとなっており、それなりの差が開いています。

僅差の州では、ウィスコンシン州が0.6ポイントでトランプ氏、ペンシルベニア州ではバイデン氏0.1ポイントの僅差で争われています。

今後のスケジュール

4月15日(月) 不倫口止め料の初公判
5月20日(月) トランプ氏の機密文書事件の初公判(延期の可能性)

7月15日(月)~18日(木) 共和党大会(党の候補者決定)
8月5日(月) 20年大統領選の開票干渉裁判(予定)
8月19日(月)~22日(木) 民主党大会(党の候補者が決定)
(日付未定) 大統領候補者テレビ討論会
(日付未定) 副大統領候補者テレビ討論会
11月5日(火) 大統領選、投開票日
2025年1月20日(月) 大統領就任式

*日程未定 大統領選介入事件裁判

(赤字はトランプ氏が抱える裁判)

現状のマーケット分析

NYダウ 日足

イランが報復攻撃としてイスラエルにミサイル攻撃を行ったことにより、株式市場は安定上昇局面から利益確定売りが出てきています。まだ暴落といった下げではありませんが、昨年の秋から続いていた超安定上昇局面から調整局面へ移行してきたことがうかがえます。このまま、中東情勢が悪化し更なる下落につながるのか、押し目買い局面になるのかを見ていきましょう。まずは、トランプ氏の裁判の行方が注目されますが、外交・内政面でも思わぬところから問題が浮上することが懸念され、その時にバイデン政権がどう対処するかによっても支持率が変動していきますので目を離すことができない展開が続きそうです。

ゴールド 日足

中東ではイスラエルとハマスの問題に加え、イランが絡んできました。イスラエルの船舶の拿捕や、イランからイスラエルへの報復ミサイル攻撃など、一触即発の展開となっています。この地政学リスクにゴールドが敏感に反応して上昇が続いています。史上最高値圏で推移しているゴールドの上昇が続くとなれば、株式市場にとっては非常に大きな重石となり、株式市場の売り材料となります。バイデン政権はイスラエル支持を続けながらも、イランへの報復に対しては支持をしておらず、イスラエルとの関係も今後の大統領選挙の争点の一つになりそうです。

【原油 日足】

イスラエルとハマスの問題などからじりじりと上昇していた原油ですが、イランとイスラエルの関係悪化で上昇に拍車がかかってきました。中東情勢が悪化すれば原油市場も高騰しますので、ゴールドと合わせて今後の展開を見守っていきましょう。

まとめ

スーパーチューズデー後の大統領選挙は、バイデン氏がじりじりとトランプ氏に肉薄する動きを見せています。圧倒的な支持を得ているトランプ氏ではありますが、無党派層はトランプ氏が抱える裁判のことや、イスラエル・ウクライナなどの外交問題、移民問題など内政の山積した課題によって揺れ動いているようにも見えます。ここから、株式市場が大きく下落するようであれば、バイデン政権にとって逆風となりますので注目してみていきましょう。

著者プロフィール

小次郎講師

岡山県出身。チャート分析の第一人者として、投資セミナー、書籍などを通じて個人投資家向けの投資教育活動を精力的に展開している。
40年以上の投資キャリアを持つ。

【出演】
・ラジオNIKKEI「小次郎講師のチャートラボラトリー」レギュラー番組

【受賞暦】
・みんなの株式「コラムアワード2013、2014」2年連続大賞受賞
・パンローリング社「ブルベア大賞2016」大賞受賞、
「ブルベア大賞2015、2019」準大賞受賞、「ブルベア大賞2017、2018」特別賞受賞

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