第7回 米大統領選は大混戦!ハリス氏猛追で逆転する可能性は!?
小次郎講師
2024/8/23
トランプ氏襲撃事件にバイデン氏撤退、目まぐるしい大統領選の行方
7月13日(土)、米ペンシルベニア州バトラーでトランプ前大統領が選挙集会中に銃撃される事件が発生しました。トランプ氏は壇上で身を伏せ、警護担当に抱えられ降壇し、険しい表情で右耳に手を当てていましたが、降壇の際に起き上がり拳を突き上げ何度も「Fight(ファイト)。」と声を上げていました。その雄姿が全世界に流れ世界のリーダーとしての力強い姿を見せたことで、大統領選は「確トラ」で進むと思われました。さらに、バイデン大統領が7月21日(日)に大統領選への出馬を断念し、選挙戦から撤退する考えを表明したことで、トランプ氏圧勝か、といった展開になりました。
バイデン氏が支持する副大統領のカマラ・ハリス氏は正式に大統領選への立候補を表明し、8月6日(火)には民主党がハリス氏を大統領候補に正式に指名しました。ハリス氏は8月19〜22日に中西部イリノイ州シカゴで開催される党全国大会で、指名受諾演説を行います。これにより、大統領選の構図が激変し、共和党はドナルド・トランプ氏(78歳)と副大統領候補のJ・D・バンズ上院議員(40歳)、民主党はハリス氏(59歳)と副大統領候補のティム・ウォルツ・ミネソタ州知事(60歳)の戦いとなり、約3カ月の異例の短期決戦となります。
ここで、トランプ氏とハリス氏の政策の違いを確認しておきましょう。主な政策として、経済政策、医療政策、気候変動・エネルギー、移民問題、外交政策の違いを下記の図にまとめてみました。
政策の内容を見ていると、どちらが勝利するかによって全く違うアメリカとなるくらい、掲げている政策には違いがあります。どちらが勝利しても全く違うアメリカになるような違いがあります。
いずれにせよ、民主党の大統領候補がバイデン氏からハリス氏になったことで、大統領選は混戦の様相となっています。
現在の大統領選の支持率推移
大統領選の支持率は、7月8日時点では、トランプ氏47.5%、バイデン氏44.1%と、3.4ポイントの差となっていました。7月22日にハリス氏が民主党候補となってからは、ハリス氏が猛追し8月に入ってからはハリス氏が支持率で逆転しました。8月12日時点では、トランプ氏が47.1%、ハリス氏が47.5%と0.4ポイント差でハリス氏が優勢になっています。
様々な調査が行われていますが、いずれもハリス氏が優勢になりつつあります。また、7月に全米自動車労働組合(UAW)がハリス氏を支持することを決定したことも、ハリス氏にとって追い風となっているようです。
とはいえ、ハリス氏の支持率が高まったのは、彼女自身の支持が強まったというよりも、多くの人が高齢のバイデン大統領に不安を抱いてきたことの表れとも取れます。そういった点からも、ハリス氏の支持率がトランプ氏の支持率を上回ったとしても、現時点ではなお追い風参考値でしかないといった声もあるようです。今後の、ハリス氏自身の持つ強みを最大限生かして、大統領候補者としての資質をアピールできるかが注目されます。
(RealClearPoliticsより8月12日時点)
激戦区の州ごとの支持率推移
ここからは激戦が予想されている州での戦況を見ていきましょう。
激戦が予想されている州は、ウィスコンシン州・ジョージア州・アリゾナ州・ネバダ州・ミシガン州・ペンシルベニア州・ノースカロライナ州の7つの州です。8月12日時点では、7つの州のうち、トランプ氏が5つの州で、ハリス氏は2つの州で優勢となっています。ハリス氏はミシガン州で2.4ポイント差、ウィスコンシン州でも0.8ポイント差でリードしています。トランプ氏優勢の5つの州のうち、特に激戦なのは、ジョージア州が0.6ポイント差、ペンシルベニア州では0.8ポイント差でトランプ氏がリードしています。
バイデン氏との対決では、トランプ氏が圧勝でしたが、ハリス氏が候補になってから激戦州での競り合いがさらに激戦となっており、本来の戦いになってきているようです。
今後のスケジュール
8月19日~22日 民主党大会(党の候補者が決定)
9月10日(火) 大統領候補者テレビ討論会(トランプVSハリスは第1回)
9月18日(水) トランプ氏、有罪となった口止め料裁判、量刑の審理
11月5日(火) 大統領選、投開票日
2025年1月20日 大統領就任式
*日程未定 大統領選手続き妨害
*日程未定 機密文書不正保管
*日程未定 ジョージア州選挙結果巡り州政府に圧力
(赤字はトランプ氏が抱える裁判)
現状のマーケット分析
S&P500 日足
米国の株式市場は米雇用統計ショックを受けて、一時大幅下落となりました。8月2日に発表された米雇用統計では、失業率がパンデミック後で最も高くなったことや、民間就業者の伸びが過去16カ月で最低にとどまるなど、冴えない内容となりS&P500も失速しました。マーケットの反応は、これまでの利下げ期待から景気減速への懸念にシフトしてきています。今までは、インフレが収まり利下げ期待が高まると株式市場は上昇し、利下げ期待が後退すると株式市場は下降するという逆の動きが見られました。つまり、経済指標が良くないほうが株式市場にとっては上昇しやすいという特殊な状況が続いていました。しかし今は、景気減速がソフトランディング(軟着陸)となるか、ハードランディングとなるかが注目される段階です。ただし、雇用統計ショック以降の株式市場は一先ず底打ちして反発していますので、一先ずショックの影響は落ち着いてきたといえる動きになっています。
マーケットはサマーバケーション(夏休み)で、流動性が低下しやすい時期に入っています。この時期は、マーケットの動きが極端に小さくなるか、流動性の低下による乱高下が起こりやすいので注意が必要です。マーケットが本格的に動き出すのは、8月22日から24日に開催される「ジャクソンホール・シンポジウム」からとなるでしょう。このシンポジウム参加者の発言でマーケットが急変することがありますので発言内容に注目していきましょう。
ゴールド 日足
イスラエルとイランの緊張が高まっています。緊張の背景には、7月31日にハマスの最高幹部ハニヤ氏が、訪問先のイランの首都で殺害されたことによります。ハニヤ氏の拠点はカタールでしたが、30日に行われたイラン新大統領の宣誓式に出席していた時に殺害されました。イランとしては新大統領の宣誓式という重要な日にイランの首都で攻撃されたということで、報復を表明しています。ハマスの軍事部門も声明で、殺害は「戦いを新たな次元に引き上げ多大な影響を及ぼす」としています。イランの最高指導者ハメネイ師は、イスラエルが「厳しい処罰」を下す根拠を与えたとし、イランの首都で起きた殺害への報復はイランの義務と述べています。戦争が拡大し中東全域に混乱が拡大される懸念が出てきており、ゴールドは史上最高値更新を続けています。一方、中東戦争という状態になれば株式市場は大きく下落する懸念が出てきますので、今後も中東情勢には注意を払う必要があります。
米10年債利回り 日足
米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待から米国の長期金利が低下しています。8月13日時点のFEDウォッチによると、9月の利下げ観測は、シングル利下げが50.5%、ダブル利下げが49.5%となっており、マーケットはダブル利下げも織り込み始めています。12月の政策金利で一番高い予想は4.25~4.50%となっており、年内あと3回で1%(シングル利下げ4回分)となっています。利下げ期待から米10年債利回りは低下しており、日米の金利差が縮小。これが米ドル円の円高要因となっています。ただ、今までは利下げ期待が高まると米10年債利回りが低下し株式市場が上昇、利上げ期待が後退すると米10年債利回りが上昇し株式市場が下降といった動きでしたが、雇用統計ショック以降は、景気後退懸念が高まると、米10年債利回りが下降し株式市場も下降し、景気後退懸念が後退すると、米10年債利回りが上昇し株式市場も上昇するという動きに変わっています。マーケットの着目点がインフレから景気後退へと移っているため、今後の動向に注意が必要です。
米ドル円 日足
日本政府や日銀の為替介入、CPIショック、米雇用統計ショックなどから、162円辺りから141円台まで一気に20円ほどの円高が進行しました。この強烈な円高によって、日本の株式市場は世界の株価よりも大幅に下落しました。雇用統計ショック以降は、円高が一服しています。
ここ最近の値動きの特徴としては、株式市場と米10年債利回り、米ドル円の動きが似通っているという事です。雇用統計ショックまでは、株安、利回り安、ドル安円高となっていましたが、底打ちしてからは株高、利回り高、ドル高円安となっています。値動きとしては非常に相関の高い状態となっています。このような相関の高い時期は、マーケットの変化が分かりやすいという特徴があります。なぜなら、上昇から下降に移行するのであれば、それらのマーケットが一斉に変化するからです。ひとつのマーケットだけを見るのではなく、マーケット全体の推移を確認することが重要です。
まとめ
ハリス氏が劇的に支持率を回復し、トランプ氏に対して優勢になりつつあります。ただし、この支持率の回復は、ハリス氏自身の支持が強まったというよりも高齢のバイデン大統領に不安を抱いてきた支持者がひとまず戻ってきただけとの見方もあるようです。今後はハリス氏自身の持つ強みを最大限生かして、大統領候補者としての資質をアピールできるかが焦点となります。また、来月9月10日のテレビ討論会は特に注目で、二人がどういった討論をするのかで流れが大きく変わる可能性が高く、明暗がはっきりしそうです。
著者プロフィール
小次郎講師
岡山県出身。チャート分析の第一人者として、投資セミナー、書籍などを通じて個人投資家向けの投資教育活動を精力的に展開している。
40年以上の投資キャリアを持つ。
【出演】
・ラジオNIKKEI「小次郎講師のチャートラボラトリー」レギュラー番組
【受賞暦】
・みんなの株式「コラムアワード2013、2014」2年連続大賞受賞
・パンローリング社「ブルベア大賞2016」大賞受賞、
「ブルベア大賞2015、2019」準大賞受賞、「ブルベア大賞2017、2018」特別賞受賞
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