第8回 TV討論会はハリス氏勝利で(もしハリ)決定か!?

第8回 TV討論会はハリス氏勝利で(もしハリ)決定か!?

小次郎講師

2024/9/27

TV討論会はハリス氏「勝利」、トランプ氏は2度目の銃撃暗殺未遂事件勃発!

9月10日(火)、ペンシルベニア州フィラデルフィアで、米国大統領選の候補者であるカマラ・ハリス副大統領(民主党)とドナルド・トランプ前大統領(共和党)によるTV討論会が開催されました。初めのテーマは経済政策。ハリス氏は中間層と労働者を引き上げるための計画を持っているのは私だけだとしたうえで、高騰する住居費への対応や、子供がいる家庭への6,000ドルの減税、中小企業への5万ドルの税額控除など、自身の経済政策を述べました。また、トランプ氏が提唱する減税策は、富裕層や大企業を優遇するものだと批判しました。これに対し、トランプ氏は、中国に対して関税引き上げが自身の政権下で行われた際にインフレは起きなかったと強調し、インフレは国を崩壊させるものでおそらく米国史上最悪だとバイデン政権とハリス氏の経済政策を批判しました。

人工妊娠中絶については、トランプ氏は反対しているのではなく、各州の判断に委ねるのがすべての人の望みだとの立場を崩しませんでした。また、体外受精を擁護する発言もしていました。ハリス氏もこれまでのとおり、連邦議会が「ロー対ウェイド判決」の保護を復活させる法案を可決した際には、「誇りを持って署名することを誓う」と述べました。これに対し、トランプ氏は、「上院と下院で勢力が拮抗している中では、大統領が当該法案に署名する機会はあり得ない」と指摘しました。

移民問題については、トランプ氏が「何百万人もの犯罪者やテロリスト、麻薬の売人たちが現政権下で入国している」とし、ハリス氏の責任を追及しました。世界情勢では双方一歩も譲らず激しい論戦となりました。気候変動においても両者は対立しました。ハリス氏はクリーンエネルギー政策を強調し、トランプ氏はクリーンエネルギー政策を否定し石油産業の発展を主張。まさにかみ合わない批判の応酬となりました。

討論会全体を通して、両者は互いの主張を「うそだ」と批判し合う場面が多々あり、激しい応酬合戦となりました。今回の討論会において米主要メディアは、ハリス氏勝利と見る論調が優勢となりました。米国の大統領選挙まで50日を切ってきましたが、今回の討論会は態度を決めかねている層や無党派層をハリス氏が取り込めたと見る向きが多いようです。また、若年層に影響力がある歌手のテイラー・スウィフト氏がハリス氏支持を表明したことも追い風になったようです。

一方で、9月15日にはトランプ氏がゴルフ場で暗殺未遂とみられる事件が発生しました。銃撃による負傷者は出ませんでしたが、これで2回目の暗殺未遂事件が大統領選挙にどう影響するのかも注目されます。

現在の大統領選の支持率推移

前回、8月12日時点では、トランプ氏が47.1%、ハリス氏が47.5%と0.4ポイント差でハリスが優勢という展開でしたが、その後じりじりとリードを広げ、9月18日時点ではトランプ氏が47.4%、ハリス氏が49.4%とその差は2%に広がってきました。

8月23日には、アメリカ大統領選に無所属候補として出馬していたロバート・F・ケネディ氏は撤退を発表し、共和党のドナルド・トランプ候補を支持すると表明しました。ケネディ氏は、民主党が「戦争と検閲と汚職と大手製薬会社と大手IT企業と大手金融」の政党になってしまったと批判しました。ただ、分散されるとした無党派層がトランプ氏に流れるのではといった見方もあったようですが、支持率には大きな変化は起きていません。

やはり、TV討論会において、ハリス氏勝利といった報道を受けて、ハリス氏が大統領選を優位に進めている流れが継続しています。

(RealClearPoliticsより9月18日時点)

激戦区の州ごとの支持率推移

では、ここからは激戦が予想されている州での戦況を見ていきましょう。

激戦が予想されている州は、ウィスコンシン州・ジョージア州・アリゾナ州・ネバダ州・ミシガン州・ペンシルベニア州・ノースカロライナ州の7つの州です。
8月12日時点では、7つの州のうちトランプ氏が5つの州で優勢でしたが、ハリス氏が追い上げてきて、現在は7つの州のうち4つの州でハリス氏優勢と逆転してきました。トランプ氏が優勢なのは3つの州となっています。とはいえ、全体的に僅差で大接戦となっています。ノースカロライナ州ではトランプ氏が0.4ポイント差、ネバダ州とペンシルベニア州ではハリス氏がそれぞれ0.5ポイント、0.6ポイントの差をつけており、いつ逆転してもおかしくない僅差での戦いとなっています。
今後の展開に注目が集まりますが、選挙戦はますます激しさを増しています。

今後のスケジュール

9月18日(水) トランプ氏、有罪となった口止め料裁判、量刑の審理→11月26日に延期
10月1日(火) 副大統領候補のTV討論会(ニューヨーク)
11月5日(火) 大統領選、投開票日
2025年1月20日(月) 大統領就任式

*日程未定 大統領選手続き妨害
*日程未定 機密文書不正保管
*日程未定 ジョージア州選挙結果巡り州政府に圧力

(赤字はトランプ氏が抱える裁判)

現状のマーケット分析

S&P500 日足

米国の株式市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が、米連邦公開市場委員会(FOMC)において、ダブル利下げ(0.5%幅の利下げ)を決定したことを好感し、史上最高値圏で堅調に推移しています。この利下げは4年半ぶりで、米国市場はFRBの金融引き締め政策から大きく舵を切ってきました。会合後に公表された委員らの政策金利見通しでは、2024年末時点の水準が4.4%と前回6月の予想(5.1%)から切り下がりました。今回の9月に0.5%幅を引き下げたため、年内残り2回の会合であわせて0.5%分、利下げする見通しとなっています。継続的に利下げを行うことで、雇用や景気の急速な悪化を防げるとの見方を誘いました。また、米大統領選の真っ只中であるため、FRBは思い切った政策を遂行することは難しいとの見方もあったようですが、パウエルFRB議長は「インフレ率が持続的に目標の2%に向かっていく確信が深まった」とし、米経済は良好との見方を示しました。また、大幅利下げを決めたことについては経済や雇用が堅調に維持し、後手に回らないという決意の表れであると説明しました。株式市場がこの大きなイベントを通過し、本格的な上昇トレンドを形成していくのかが注目されます。

ゴールド 日足

FRBによる利下げ観測からゴールドは史上最高値を更新し、順調に上昇していました。そして、FRBが実際に利下げを実施したことで、ドル安の流れが続きそうです。欧州やカナダに次いで、米国も政策金利を引き下げてきたことから、ゴールドは上昇しやすくなってきました。加えて、地政学的リスクも継続しています。中東レバノンの各地で「ポケットベル」や「無線機」を使った爆発事件が相次いで発生し、多数の死者が出ています。レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イスラエルによる犯行だとして報復を示唆しています。もし、これが中東情勢のさらなる悪化につながるようであれば、ゴールドは逆Cカーブ(角度が鋭い上昇)となって火柱を建てて上昇する懸念も出てきました。ドルの動きと中東情勢には引き続き注意が必要です。

米10年債利回り 日足

米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待により、米国の長期金利が低下していました。9月18日のFOMCでダブル利下げが行われると、「噂で売られて事実で買い戻される」動きが見られ、一時的に反発しました。ただし、大きな流れは変わっておらず、年内あと2回の利下げ観測があることから、基調は戻り売りの展開が想定されます。ただし、短期移動平均線が中期移動平均線や長期移動平均線に対してゴールデンクロスしてくれば、流れが変わりますので、短期移動平均線と中期・長期の移動平均線の関係を見ていきましょう。

米ドル円 日足

FRBの利下げ観測により、一時的に1ドル140円を割り込む円高ドル安となりました。しかし、FOMCでダブル利下げが発表された直後、円高に振れたもののその後は「知ったら仕舞い」のような動きでドル高円安の動きとなりました。160円台からの円高局面が終わったという形ではありませんが、ダブル利下げは本来円高に推移してもおかしくない要因でありながらも、サプライズ要素が少なく織り込み済みだったこともあり、むしろ、円安ドル高に動きました。米国は年内2回の利下げ余地があるという事ですので、基本は円高ドル安基調になると思われますが、先読みして動くのがマーケットですので、決めつけずに価格の推移を見ていくようにしましょう。

まとめ

TV討論会でハリス氏が優勢であったことを受け、大統領選はハリス氏が優位に進めていきそうな状況になってきました。トランプ氏が初めに暗殺未遂で耳に負傷したときは、支持率が一気に上昇しましたが、今回の未遂事件では支持率はたいして変化していません。大統領選まで50日を切ってきた中で、副大統領候補によるTV討論会の行方や、ハリス氏とトランプ氏の選挙の進め方が非常に重要になってきます。ハリス氏が支持率において優位に戦っていたとしても、一つの出来事でガラッと戦況が変わるのが選挙です。世界情勢の不安定さが影響する可能性も考えられます。また、ハリス氏は現職の副大統領としての裁量も意識されます。何が起きるかわからないのが選挙であるという認識をもって戦況を見守っていきましょう。

著者プロフィール

小次郎講師

岡山県出身。チャート分析の第一人者として、投資セミナー、書籍などを通じて個人投資家向けの投資教育活動を精力的に展開している。
40年以上の投資キャリアを持つ。

【出演】
・ラジオNIKKEI「小次郎講師のチャートラボラトリー」レギュラー番組

【受賞暦】
・みんなの株式「コラムアワード2013、2014」2年連続大賞受賞
・パンローリング社「ブルベア大賞2016」大賞受賞、
「ブルベア大賞2015、2019」準大賞受賞、「ブルベア大賞2017、2018」特別賞受賞

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。