最終回 クライマックスを迎え最終決戦へ!
小次郎講師
2024/11/1
クライマックスを迎え最終決戦へ!
2024年の米国大統領選は、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領による大接戦が繰り広げられ、まさに最終決戦のクライマックスを迎えています。支持率は拮抗し、どちらが勝利してもおかしくない状況です。勝利の女神は果たしてどちらに微笑むのでしょうか。
現時点で支持率の推移は僅差であり、票差がさらに縮まれば再集計が行われる可能性もあります。この場合、投開票日当日に結果が出ず、年内に決まらない事態も想定されています。ここまでの選挙戦では、経済政策、気候変動、移民問題、そして米国内の分断が主な争点となり、候補者たちは激戦州での支持固めに奔走しています。
経済界も選挙に大きな影響を及ぼしています。米紙によると、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がハリス氏を支援する非営利団体に5,000万ドル(約75億5,000万円)を献金したと報じられました。ゲイツ氏は自身が設立した慈善財団の中立性を守るため、これまで特定政党への献金を控えてきましたが、トランプ氏の再選が世界の保健政策に与える影響を懸念し、この決断に至ったといわれています。一方、トランプ氏を支持するイーロン・マスク氏は、激戦州の有権者1人に毎日100万ドル(約1億5,000万円)を配ると発表しました。この行為がペンシルベニア州の法律に違反するとして、フィラデルフィアの地方検事が訴えを起こし、米司法省も連邦法違反の可能性を指摘しています。
今回の選挙では「分断」と「団結」が重要なテーマとなっており、国民の価値観や信念が二極化するなかで、どちらの候補が「全てのアメリカ人のためのリーダー」として支持を集めるかが問われています。特に、若年層や少数派の投票行動が結果を左右すると見られ、SNSやオンラインキャンペーンも有権者に大きな影響を与えています。投票日が迫る中、全世界が「アメリカの未来」に注目しており、この選挙が国内外の政策に多大な影響を及ぼすことは間違いありません。果たして、アメリカは「分断」から「団結」への一歩を踏み出せるのでしょうか。その行方に、世界が注目しています。
現在の大統領選の支持率推移
前回、10月19日時点では、トランプ氏48.1%、ハリス氏が49.3%とその差は1.2%となっていました。今回10月28日時点では、トランプ氏48.6%、ハリス氏が48.4%とトランプ氏が0.2%優勢となっており、最終局面になってトランプ氏が逆転してきました。
上記の数字は、Real Clear Politics (RCP)の全国平均のデータですが、激戦7州でも、トランプ氏48.4%、ハリス氏47.5%とトランプ氏が0.9%優勢となっています。また、大統領選の賭け市場ではトランプ氏61.8%、ハリス氏36.9%となっており、なんと24.9ポイントの差をつけてトランプ氏が大きな差をつけて優位になっています。トランプ氏がこのまま走り切るのか、残り一週間でハリス氏が逆転するのでしょうか。全国平均から見る優劣は拮抗ですが、激戦州や賭け市場ではトランプ氏が優勢となっています。とはいえ、その市場の動向は思惑が優先されますし、激戦州は投票率の動向や若者や少数派の動向でガラッと流れが変わりますので、結果が出るまでは油断ができません。
(RealClearPoliticsより10月28日時点)
(RealClearPoliticsより10月28日時点)
(RealClearPoliticsより10月28日時点)
激戦区の州ごとの支持率推移
では、ここからは激戦が予想されている州(スイング・ステート)での戦況を見ていきましょう。
激戦が予想されている州は、ウィスコンシン州・ジョージア州・アリゾナ州・ネバダ州・ミシガン州・ペンシルベニア州・ノースカロライナ州の7つの州です。10月19日時点では、7つの州でトランプ氏が優勢となっていましたが、10月28日時点でもトランプ氏が7州とも優勢となっています。
では、その中で激戦になっているウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州の3つの州をみていきます。
ウィスコンシン州はトランプ氏48.1%、ハリス氏47.8%となっており、ポイント差は0.3ポイント、ペンシルベニア州はトランプ氏48.1%、ハリス氏47.6%となっており、ポイント差は0.5ポイントとなっています。ミシガン州は大接戦でトランプ氏47.9%、ハリス氏47.8%となっており、ポイント差が僅か0.1%となっています。
激戦7州と呼ばれるこれらの州では、接戦が続いていますが、この戦いをこのままトランプ氏が勝つのか、ここからハリス氏が追い上げをみせるのか大注目となっています。
(RealClearPoliticsより10月28日時点)
(RealClearPoliticsより10月28日時点)
(RealClearPoliticsより10月28日時点)
今後のスケジュール
11月5日(火) 大統領選、投開票日
11月26日(火) トランプ氏、有罪となった口止め料裁判、量刑の審理
2025年1月20日 大統領就任式
*日程未定 大統領選手続き妨害
*日程未定 機密文書不正保管
*日程未定 ジョージア州選挙結果巡り州政府に圧力
(赤字はトランプ氏が抱える裁判)
現状のマーケット分析
S&P500 日足
米国の株式市場は押し目をつけながら順調に推移しています。景気後退の懸念が後退し、景気は堅調に推移しています。さらに、労働市場も安定しており、物価上昇も抑えられているため、理想的な展開が続いています。景気が堅調に推移している分、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内の利下げ幅は現状では2回の0.5%となっており、9月にダブル利下げを行った当初に比べ、トーンダウンしてきています。次回の11月7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は大統領選後の会合となります。大統領選直後でどういった政策を決定するのか注目していきましょう。懸念材料としては、中東情勢の不安定さが続いています。イスラエルは26日、「イランの軍事目標に対する正確な攻撃を実施している」と発表し、10月1日にイランがイスラエルに行った180発を超える大規模なミサイル攻撃への対抗措置に踏み切りました。今後のイランの対応次第では、株式市場の売り材料に繋がりますので引き続き中東情勢には注視が必要です。
ゴールド 日足
中国やロシアの中央銀行など、BRICSによる買いが続く中、中東情勢懸念の高まりも重なり史上最高値を更新しながら好調を維持しています。米国の大統領選も佳境に入っており、世界情勢に対する懸念が続く中、安全資産とされるゴールドに資金が集まっています。イスラエル軍は26日、イランによる今月1日のミサイル攻撃の報復として、イランに対して「精密攻撃」を加えたと発表しました。しかし、攻撃は軍事施設を標的とする限定的および短期的なものと見なされ、情勢悪化への過度の警戒感が後退しました。イランとイスラエル問題、イスラエルとハマス問題が長期化しそうな中、ゴールドが売られる要因は少ない状況です。ゴールドは、青天井(相場が天井知らずに上昇し続ける状況)のような動きとなっていますが、相場はどこかで天井を打つということも理解してみていきましょう。
WTI原油 日足
中東情勢をはじめとする地政学的リスクの高まりが続いています。地政学的リスクが高まるとゴールドが買われる一方で、中東情勢の懸念が高まると石油が上昇する傾向があります。26日には、イスラエル軍はイランによる今月1日のミサイル攻撃への報復として、イランを攻撃しました。重点目標は弾道ミサイルの製造拠点やエネルギー関連施設の防空システムなどで、このニュースを受けて石油価格が上昇しました。しかし、イスラエルは米国の強い要請を受けて、核開発や石油関連施設への直接攻撃は見送ったとされ、産油国イランからのエネルギー供給が混乱するとの懸念は和らいでいます。チャートの形状だけを見ると、中東情勢懸念を感じさせない動きになっていますが、中東情勢は一触触発の状況が続いていますので、引き続きニュースには敏感になっておきましょう。
日経225 日足
衆議院議員選挙の投開票が終わり、与党の過半数割れが決定しました。これにより、政局の混乱が懸念され、28日(月曜日)の取引開始は軟調なスタートでしたが、懸念が少ないとの見方が広がり、株価は大幅に上昇しました。8月の雇用統計ショックからは未だ不安定な展開が続いていますが、高値と安値が切り上げている動きからは、それほど懸念を抱くほどの状況ではなさそうです。11月5日の米大統領選で、トランプ氏が勝つか、ハリス氏が勝つかにより日本株への影響は変わりますが、市場関係者の間では、楽観的に捉えている見方も見受けられます。S&P500と比較すればよく分かりますが、米国は安定上昇が続いており、日本株は不安定な状況が続いていますので、気を引き締めて対応していくことが必要となりそうです。
米ドル円 日足
27日に投開票された衆議院議員選挙の結果を受けて、日本の政局が不安定になるとの懸念から円売りが継続しています。米長期金利の上昇に伴うドル高と、日本の政局の不安定化による円安の要素が重なり、米ドル円が一番上昇しやすい環境となっています。今後、日銀金融政策決定会合、米雇用統計、米大統領選、FOMC(米連邦公開市場委員会)と大きなイベントが立て続けに控えており、為替が乱高下する可能性や、為替が一方通行で大きく動く可能性があり、今年一番の重要局面を迎えております。それぞれのイベントの結果によっては方向性が急変することも得ますので、慎重な対応が必要となります。
まとめ
米国の大統領選はクライマックスを迎えています。大統領選を前後して、日銀金融政策決定会合、雇用統計、FOMCとイベントが続きます。こういった大きなイベント前には相場のボラティリティが低くなり、イベントが終わるとボラティリティが高くなる傾向があります。上がるか下がるかを予想することは難しいわけですが、ボラティリティが高いか低いかは初心者でも読みやすいところです。ボラティリティが高くなってきたときには、上下どちらに動き出したかを確認し、その動き出した方向に素直に追随することが重要です。
米国の大統領選は、世界のリーダーを決める選挙だといっても過言ではありません。中東情勢懸念、ロシアとウクライナの戦争など、世界が大混乱する懸念がある中での大統領選がいよいよ投開票を迎えます。注目していきましょう。
著者プロフィール
小次郎講師
岡山県出身。チャート分析の第一人者として、投資セミナー、書籍などを通じて個人投資家向けの投資教育活動を精力的に展開している。
40年以上の投資キャリアを持つ。
【出演】
・ラジオNIKKEI「小次郎講師のチャートラボラトリー」レギュラー番組
【受賞暦】
・みんなの株式「コラムアワード2013、2014」2年連続大賞受賞
・パンローリング社「ブルベア大賞2016」大賞受賞、
「ブルベア大賞2015、2019」準大賞受賞、「ブルベア大賞2017、2018」特別賞受賞
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