米国大統領選挙と米国株式市場 バイデン大統領VSトランプ前大統領

米国大統領選挙と米国株式市場 バイデン大統領VSトランプ前大統領

投資情報部 齊木良

2024/03/01

米国大統領選挙と米国株式市場

今年の米国株式市場は11月5日の大統領選挙がワイルドカードとして、今後意識されてくる展開が想定されます。過去2000年以降の6回における大統領選挙年のS&P500指数のパフォーマンスを見ると、2000年と2008年を除く4回において株高の傾向になっており、この点は株式市場でもフェイバーに受け止められると思われます。また、過去5回のセクター別の平均パフォーマンスでは、一般消費財・サービスやコミュニケーション・サービス、情報技術がアウトパフォームしました。なお、今後の米国株式市場の方向性については夏ごろまでは堅調な推移で、夏以降は大統領選挙を控えた調整局面、その後、政策を見ながら持ち直す展開と考えています。

大統領選挙年のS&P500指数のパフォーマンス(2000年以降)

過去5回の米大統領選挙年のS&P500指数セクター別のパフォーマンス

今回の大統領選挙ではバイデン大統領とトランプ前大統領の一騎打ちになる可能性が高いと思われます。バイデン大統領は81歳という高齢がネックと見られますが、足元の米国経済は好調で株も史上最高値圏で推移しており、このまま米国経済と株が堅調に推移するのであれば現職のバイデン大統領にポジティブ材料になる可能性があります。一方、共和党党員集会・予備選において連勝中で人気の高いトランプ前大統領は、大統領選挙の勝利観測でバイデン大統領に比べてやや優勢の状況にあります。ただし、大統領選挙までまだ数カ月ありますので優勢状況は流動的と思われます。従って、大統領選挙までの米国経済と株の動向が注視されてくると思われます。なお、バイデン大統領とトランプ前大統領が発表した過去の主な政策・改革を振り返ると、バイデン大統領は、①インフラ投資雇用法、②インフレ抑制法、③CHIPS法(半導体支援策)等で公共投資や民間投資が拡大しています。トランプ前大統領は、①トランプ減税(個人所得税率と法人税率の引き下げ)、②対中関税強化、③インフラ投資計画等を発表しました。トランプ陣営は政権奪取後のプランとして、①中国の最恵国待遇を撤回し、貿易乱用国に罰則を科す、②バイ・アメリカン及びハイヤー・アメリカン(米国の雇用と労働者を守る)、③不法移民対策で国境を閉鎖、④EV支援策を終了させ、米国の自動車労働者の雇用を奪うあらゆる規制の廃止、⑤外国製品に対する関税の引き上げ等を発表しています。これらのプランからトランプ政権になった際は、米国一極集中と対中関税強化が懸念されます。

2024年米大統選挙の勝利観測(バイデン大統領、トランプ前大統領)

また、バイデン政権とトランプ前政権において、米国株式市場で物色されたセクターとしては、バイデン政権時(2024年2月21日まで)がエネルギーや情報技術(半導体やテクノロジー・ハード・機器等)、資本財・サービスが好パフォーマンスでした。トランプ前政権時は情報技術や一般消費財・サービス、ヘルスケア等が好パフォーマンスでした。今後、新政権誕生で注目されそうなセクターとしては、情報技術やインフラ関連等が挙げられると思われます。この観点で下記の5銘柄を紹介いたします。

当コンテンツはBloombergデータ、各社資料、各種報道を基にSBI証券が作成

個別銘柄(1)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)

カリフォルニア州に本社がある半導体企業です。サーバー・マイクロプロセッサー(CPU)やグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)等を手掛けています。2023年12月期の売上高比率はデータセンターが29%、クライアント21%、ゲーミング27%等です。1月30日発表の10-12月期決算は売上高が市場予想を上回り、EPSは一致しました。1-3月期の売上高見通しは市場予想を下回りました。なお、会社側は昨年12月にAI向け新半導体を発表し、データセンターAIアクセラレーターの市場規模が2027年まで年率70%で成長して4000億ドル強になるとの強気の見方をしています。絶対王者的な存在であるエヌビディア(NVDA)を追い上げることができるかどうか注視されます。

個別銘柄(2)アリスタ ネットワークス(ANET)

カリフォルニア州に本社があり、大規模データセンター向けクラウドネットワーキングを提供しています(スイッチとルーティング・プラットフォーム)。顧客数は9000社を超え、売上高比率はマイクロソフト18%、メタ プラットフォームズ A21%です(2023年12月期)。高速データセンタースイッチ市場において、ハイテク大手のシスコ システムズからシェアを奪う形で成長しています。2月12日発表の10-12月期決算は売上高とEPSともに市場予想を上回りました。2023年までの5年間の売上高とEPSの平均成長率は約22%、約28%です。過去10年で株価はテンバガー以上を達成しており(約19倍、2014年6月新規上場)、史上最高値圏で推移しています。

個別銘柄(3)アーム ホールディングス ADR(ARM)

英国に本社があり、ソフトバンクグループ傘下の半導体設計会社です。 ビジネスモデルはライセンスとロイヤルティー(使用料)で、半導体企業にライセンスを供与した際のライセンス収入、チップ1枚当たりのロイヤルティー収入で構成されます。同社は半導体業界において重要なポジションを占めており、モバイル向けの市場シェアはほぼ100%です。また、クラウド向けは約10%、自動車向けは約41%、産業IoT及び組込向けは約65%、ネットワーキング機器向けは約26%です(2022年12月末)。顧客にはアップルやエヌビディア、アマゾン ドットコム、アルファベット A、アドバンスト マイクロ デバイシズ等が名を連ねています。2月7日発表の1-3月期見通しは売上高、EPSいずれも市場予想を上回り、会社側は24/3期の売上高とEPS見通しを上方修正しました。AIブームは初期段階との見方を示しました。

個別銘柄(4)ユナイテッド レンタルズ(URI)

コネチカット州に本社がある世界最大の建設機械レンタル会社です。米国とカナダがメインで、2023年の北米市場における推計市場シェアは15%です。産業及び非建設(エネルギーや化学会社等)、民間非住宅建設、住宅建設の3つが主なエンドマーケットで、特に産業及び非建設と民間非住宅建設向けのウェイトが大きいです。2023年12月期の売上高比率は一般レンタルが75%、スペシャリティ(トレンチシールド、スライドレール、発電機等)が25%です。2023年までの5年間の売上高とEPSの平均成長率は約12%、約20%です。1月24日発表の10-12月期決算はエンドマーケットにおける需要好調等を背景に売上高とEPSともに市場予想を上回りました。2024年12月期について会社側は増収増益を見込んでいます(利益は調整後EBITDAベース)。

個別銘柄(5)バルカン マテリアルズ(VMC)

アラバマ州に本社がある米国最大の建設用骨材会社です(砕石、砂、砂利)。アスファルト混合物と生コンクリートも手掛けています。同社製品は道路や橋、鉄道、空港、病院、学校、工場等の建設に使用されています。2023年12月期の売上高比率(控除前)は建設用骨材が71%、アスファルト14%、コンクリート15%です。2月16日発表の10-12月期決算は売上高は市場予想をやや下回りましたが、EPSは上回りました。セグメントの粗利益は販売価格上昇を背景に、骨材が前年比30%増、アスファルト同2.1倍、コンクリート同2.5倍となりました。株価は史上最高値圏で推移しています。

著者プロフィール

齊木 良(さいき りょう)

SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアナリスト(外国株担当)
(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト)

名古屋大学経済学部卒業。東海東京証券において主に外国株プロモーション、外国株トレーディングに従事。機関投資家向けの日本株トレーディングにも携わる。米国の証券会社へのトレーニー、コロンビア大学ビジネススクール客員研究員等を経て2022年4月よりSBI証券投資情報部に所属。ファンダメンタルズとトレーディングの両面から米国株を分析する。また米国での経験を活かした「旬の話題」も提供します。

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