【特別編】 金価格急変でどうする?

【特別編】 金価格急変でどうする?

足元の金価格 急騰と急落の背景

金価格は2024年初めは1万円台でしたが、2026年1月28日には店頭小売価格(消費税込)が一時的に3万円を超える場面もあったようです。しかし、1月29日夜間に急落し、2月2日につけた安値までの下落率は19%に達しました。その後に急速に値を戻し、2月4日時点では高値からの下落率は7.2%まで下げ幅を縮小する荒い値動きとなっていました。

※各種報道で耳にする金価格は、米ドル建の海外金先物価格、国内金先物価格(円建て)、円建て金小売価格(消費税込)などがありますが、ここではもっともなじみがあると思われる円建て金小売価格(消費税込)を中心に説明しています。

■ドルへの信認低下でドル建て金価格が上昇加速

図表1は金価格と米ドル円レートの値動きです。これを見ると、2024年2月にFRB利下げ観測が強まると、米ドル安圧力が高まり、同時に中東情勢が混沌としたことによって安全資産としての金が買われて、金価格の上昇が加速したことが分かります(金色線が円建て金小売価格、オレンジ線がドル建金価格)。2025年1月にトランプ大統領が就任して矢継ぎ早に政策を打ち出すと、米国への信認が大きく揺らぎ、米ドル代替資産として米ドル建金価格が一段高となりました。さらに2025年8月には米国の金利低下観測が広がって米ドル建金価格が上昇するとともに、円の独歩安が進んだ結果、日本国内の金価格は相乗効果で大幅上昇となっていました。

■1月の急落はドル安トレードの巻き戻し

1月29日深夜(日本時間)のドル建金価格が急落したのは、トランプ大統領が次期FRB議長に「タカ派」とされるケビン・ウォーシュ氏を指名する意向を正式に表明したことに起因していました(図表1赤矢印)。それまでは、次期FRB議長人事でトランプ氏の意向に従う人物が指名され、極端な金融緩和が進められて米ドルの信認が低下する、そのために米ドルに代わる資産として金の需要が高まるという思惑で金買いポジションが積み上げられていました。それが、かつて量的緩和に反対したウォーシュ氏が指名された結果、金を買っていたポジションを手仕舞う動きが広がったというわけです。

■2025年の金需要急増の主因はETF

図表2は2025年のセグメント別の金需要の推移です。これを見るとETF等からの需要(薄紫色のセグメント)が、2025年に急増して全体の需要を押し上げていたことが分かります。なお、ETFからの金需要には他のセグメントにはない特徴があります。それは売り越しになる年もあるということです。ユーロ危機の2010年から2012年にETFは買われて、2013年には大きく売り越し、それが2014年、2015年と続いています。また、コロナ危機の2020年にもETFは大量に金を購入していますが、2021年から2023年には売り越しています。それが2025年に再びETFによる金買いが急増しました。このようにETF需要は資金の出入りが多いため、投資の前提が変われば一気に動きやすく、これが2026年1月の金価格急落の遠因とも言えます。

図表1 金価格と米ドル円レート(2022/1/3-2026/2/4)

図表2 セグメント別金需要の推移(2010-2025)

金価格の今後の見通し

■地政学リスクと米ドルへの信認低下が金価格を押し上げる

図表3はセグメント別の購入量をもとに推計した米ドル換算の金購入額の推移です。過去の局面を振り返ると、地政学リスクと米ドルへの信認低下がいかに金需要を押し上げてきたかが見えてきます。

2011年 ユーロ危機後、中央銀行による金購入額は8倍に急増

2022年 ロシアのウクライナ侵攻後、中国をはじめ新興国の中央銀行が積極的に金を購入

2025年 トランプ大統領就任後に、宝飾品、地金、ETFによる金投資が急増

特筆すべきは、各国の外貨準備戦略の変化です。ユーロ危機では東欧中心に外貨準備としての金が見直され、ロシア制裁後、中国・ロシアをはじめ米ドルに不安を抱いた国が外貨準備として金保有を増やしています。さらに2025年のトランプ大統領就任後もやや購入ペースが落ちたとはいえ、上昇した価格でも中央銀行が金購入を続けています

なお、2022年以降には米ドル建て金価格が上昇し続けているにもかかわらず、宝飾品や金地金・コインへの需要が金額ベースでは増加を続けていることにも注目です。

■長期的な金への逃避は止まらない

短期資金によって価格が乱高下することはあっても、下記のとおり各セグメントでの金需要増加トレンドに変化はないと考えられます。

宝飾品:インドは経済発展、中国は資産防衛のために金宝飾品を選好

中央銀行:米ドル以外の外貨準備としての金シフト

地金とコイン:主要国の通貨価値低下とインフレへの不安で実物の金地金への需要

ETF等:米ドルから金ETFへの資金逃避

人口が膨大で長い歴史を持つ中国とインドは金の大消費国で、両国の購買力が増すとともに金の宝飾品への需要は増加してきました。インドの経済発展はまだまだこれからですし、中国は人民元以外の資産にしておきたいというニーズはさらに増えると想定されます。多くの中央銀行は、現在の世界情勢、とりわけ予測不能な米国の行動から身を守るために、外貨準備としての金を積み上げていくと思われます。さらに、主要国が軍事費を積み上げて積極財政を推し進める中で、長期的にインフレから資産を守りたい投資家は、ますます実物の金を手元に置いておきたいと考えることでしょう。投機的な資金を含むETF等は出入りが多い短期的なかく乱要因となりますが、これも米ドルへの信認低下が続けば、長期的な投資ポートフォリオに金ETFを組み込む投資家が増加していくものと考えられます。

さらに、金埋蔵量が6万4000トン※1と考えられているのに対し、金産出量※2が過去5年平均で3,639トン/年だったので今後17年半で金を掘りつくしてしまうことになります。また、掘りやすい場所は減っているので採掘単価の上昇も予想されます。このような供給制約も長期的な金価格の上昇要因となります。

※1 USGS「Mineral Commodity Summaries 2025」

※2 World Gold Council

■金価格の見通し:5年後には5万5000円も

金は世界のどこでも基本的に同じ価格で取引されます(運賃や税金などの影響を除く)。このため、円建ての金小売価格は次の計算式で概算できます。

円建金価格=米ドル建金価格(グラム換算)×米ドル円相場×(1+消費税率)

11月の米中間選挙後にはトランプ大統領の行動が予想し難いとはいえ、米ドル安政策を一層進める(現状でも円以外の主要通貨に対しては大幅米ドル安)方向では変更がないと予想されます。加えて、日米欧の積極財政が続くことを考えれば、金価格の長期上昇トレンドは継続すると考えられます。米ドル建て金価格は2015年末からの10年間で年率15.1%上昇してきました。短期的な変動があったとしても中長期的にはこのペースでの上昇が続くとすると、5年後の2030年末のドル建金価格は 8,725ドル/ozとなります。米ドル円レートは日米通貨当局の意向にもよりますが、趨勢的な円安傾向に鑑みて180円とするなら、円建金価格=(8,725ドル ÷ 31.1035g) × 180円 × (1+10%) ≒ 55,542円(税込)となり5万5000円を目指す展開が現実味を帯びてきます。

■ドルコスト平均法で中長期投資

短期マネーが入って価格変動が大きくなっているものの、長期的な上昇要因の影響が続くと考えられることから、金への投資は長期投資のスタンスの方が良い結果となりやすいと考えられます。このため、投資タイミングを分散し、定期的に等金額を投資して平均取得単価を下げることが期待できるドルコスト平均法の利用が効果的と考えられます。この観点で中長期での金への投資方法をまとめたのが図表4です。

図表3 セグメント別金購入金額(推計)

図表4 金への長期投資の方法(SBI証券の場合、2026年2月5日時点)

金投資で気を付けるべきポイント

金への投資手段は様々な選択肢があります。図表4は当社で提供している金に投資する商品・サービスの一覧です。これに加えて、レバレッジETF、金先物(堂島)、CFD(店頭、取引所)などがありますが、ここでは長期投資に適したレバレッジがない商品・サービスのみの比較を行っています。

■投資信託

様々な投資信託があり、100円から投資できます。また、NISA成長投資枠が使えることと、クレジットカードでの積立ができることが大きなメリットです。注意点は、金への投資なのでパフォーマンスの差がほとんどないにもかかわらず、銘柄ごとに信託報酬(運用管理費用)が異なることです。また、「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」のファンドがありますが、前述のように金価格はもともと米ドルで決まり、それが円換算されるので為替変動リスクを内包しています。このため、為替ヘッジのコストだけがかかって得られる効果が限定的となってしまうおそれがあるので、為替ヘッジなしを選ぶとよいと思われます。なお、「ゴールド」と名前がついていても、金そのものへの投資ではなく、金鉱山を運営する株式に投資するファンドも多いので注意しましょう(パフォーマンスは金より良い場合も悪い場合もあります)。

■東証上場ETF

東証に上場するETFに金価格に連動する銘柄があります。NISA成長投資枠が利用できること、当社条件を満たせば取引手数料が無料となること、貸株で運用することができることがメリットです。また、定期的な積立投資も可能です。一方、商品設計の違いがパフォーマンスの差となる場合があることに加えて、一部の銘柄の取引が過熱して市場価格が割高になってしまったことがあるので基準価額を確認してから注文を出した方がよいでしょう(図表5)。

■米国上場のETF

米国上場の金ETFではSPDRゴールド ミニシェアーズ トラスト(GLDM)やiシェアーズ ゴールド トラスト(IAU)などの取引ができます。前者は経費率が0.10%と安いことに加えて購入時の取引手数料が無料(2026年2月5日時点)となる対象となっていることがメリットです。米国上場のETFは流動性が高い銘柄が多いので、まとまった金額を取引する際に便利です。

■金・銀・プラチナ取引

SBI証券で金地金そのものに投資するサービスです。積立投資だけでなく、スポット取引もできます。買付時の手数料と売買スプレッドがかかりますが、保管料がかからないことに加えて、売却時に50万円の特別控除があり、50万円までの利益が実質非課税になる点がメリットです。さらに5年を超えて所有すると、課税所得が1/2になることで、長期投資に有利といえます。一方、総合課税なのでその他の所得と合算して課税されます。このため、給与所得が多い場合等は要注意です。なお、SBI証券では「特定保管」なので、投資家が購入した金は分別管理されていますが、同様のサービスを提供している会社ではその会社の信用リスクを負う「消費寄託」という方式になっていることがあるので注意が必要です。

■ドルコスト平均法での積立投資に使うには

ドルコスト平均法で金積立投資を行う場合、5年を超えて投資を行う予定の場合には、金・銀・プラチナ取引が使い勝手がよく、税制上のメリットが得られます。数年以内に売却する可能性がある場合には、投資信託でNISA成長投資枠を使ってクレジットカードで積み立てることが手間がなく、NISAのメリットを活かした投資ができると考えられます。

まとめ

・金価格は短期マネーで急騰・急落したが長期トレンドに変化なし

・外貨準備、ドル代替需要は今後も増加

・5年後の金価格は5万5000円(消費税込)に達する見通しも

・中長期でドルコスト平均法での積立が金投資に適する

・投資信託または金・銀・プラチナ取引で積立投資

図表5 金ETFの値動きの違い

図表6 ドイマサの投資レシピ 金投資への中長期投資

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