中級- 相場激変に惑わされない投資対象国の選び方

中級- 相場激変に惑わされない投資対象国の選び方

15年後の世界

■一寸先は闇だが、15年先なら概ね分かっていることもある?

武力衝突、天災、選挙、中央銀行の金融政策などで株式、商品、為替相場は大きく動きます。その意味では、「一寸先は闇」であり、1週間先の株価をぴたりと当てることはできません。

一方で、将来の人口構成については、大きな戦争、パンデミック、大規模な移民などが発生しない限り、15年後の15歳の人口は比較的精度高く推計しやすいといえます。同様に60年後の60歳の人口も推計上は大きくは変わりにくいと見込まれます。このうち、15歳以上65歳未満の人口は生産活動(財・サービスを生み出す活動)の中核をなす人口層と考えられていることから、「生産年齢人口」とも呼ばれます。株式投資は、幅広い銘柄に投資すればするほど、経済発展と密接に関連してきます。その意味で、どこの国に投資するか、あるいは特定の国の企業に投資する際にはどういった点に気を付けるべきかという観点から、人口動態は投資判断に極めて重要といえます。

■追い風か逆風か、それが重要

生産年齢人口の増減を見れば、投資対象として追い風が吹いている国なのか、向かい風の国なのかを判断するヒントになります。生産年齢人口は名前の通り労働力の源泉であることに加えて、消費の中核でもあります。働いて得たお金で家に住み、衣服を購入し、家財を揃え、趣味を持ち、外食や旅行にも行くからです。この結果、一般論で言えば、生産年齢人口が増加すれば、市場規模が拡大し、企業の成長や株価の上昇につながり、結果として国が豊かになりやすいといえます。加えて、生産年齢人口は、主要な納税者でもあるので、国家財政の観点からも重要です。

逆に生産年齢人口が減少し始めると、すべてが逆回転となるのでデフレ圧力が働きやすく、株価には向かい風となります。

■生産年齢人口増加率、一人当たりGDP、名目GDPで考える

図表1は日本の個人投資家の観点からみて、外国株やETF・投資信託を通じて投資対象として考えることが多い15か国を、2025年から2050年までの生産年齢人口増加率(縦軸、中位推計ベース)、2024年の一人当たりのGDP(横軸)、2024年の米ドル換算の名目GDP(バブルの大きさ)でプロットしたものです。一人当たりGDPはその国の豊かさ、名目GDPではその国の経済規模を見ることができます。 これらを特徴から以下の4グループに分けて考えます。

グループA:生産年齢人口増の豊かな国

グループB:生産年齢人口増の途上国

グループC:生産年齢人口減の豊かな国

グループD:生産年齢人口減の途上国

■目先の株価変動に悩まされない投資対象国を探す

投資対象として考えた場合、長期間にわたって投資しやすいと考えられるのは、名目GDPが大きく(市場規模が大きい)、生産年齢人口が増えていて(経済成長に追い風)、一人当たりGDPが高い豊かな国(サービスを創造・消費する基盤がある)国々です。具体的には、グループAに属する米国やイギリスがこれに該当します。

今後の経済成長からのメリットを期待できるのが、名目GDPが大きく(市場規模が大きい)、生産年齢人口が増えていて(経済成長に追い風)、一人当たりGDPが低く成長余地が大きな国々です。グループBに属するこれらの国々では、製造業からサービス業までキャッチアップの過程での急成長の可能性があるといえます。具体的には、インド、メキシコ、インドネシアがこれに該当します。

グループCに属する日本は、長期間のデフレと円安で、すっかり一人当たりのGDPと名目GDPが小さくなりましたが、依然として豊かな国といえます。日本を投資対象と考えた場合の大きな懸念は、今後2050年にかけて生産年齢人口が減り、市場が縮小する可能性が高いことです。同様に「生産年齢人口が減っている豊かな国」のグループCにはフランス、ドイツ、韓国などが属しています。

さらに問題なのが、豊かになる前に高齢化が進み、生産年齢人口が減少し始めたグループDの国々です。中国、ブラジル、タイに加えて、ベトナムももうすぐここに入ってしまうと予想されています。中国の場合は国内の貧富の差が大きいことに加えて、沿海部と内陸部の経済格差が大きいので、まだ国内市場の成長余地が残っているともいえますが、国全体への株価指数投資には慎重なスタンスが求められます。

図表1 15か国の生産年齢人口増加率(2025年~2050年)、一人当たりのGDP、名目GDP

米国の人口動態に注意

■インドは20年、ベトナムは10年?

図表2は、米国、中国、インド、日本、ベトナムの生産年齢人口増加率の年ごとの予測値を比較したものです。これをみると、インドは2048年までの20年超にわたって生産年齢人口が増加する予測となっています。このため、今後20年間は追い風の経済環境が見込まれます。一方、中国プラス1の対象として製造設備の移転が進んでいるといわれるベトナムは、2038年には生産年齢人口が減少に転じてしまう予測となっています。

日本は2039年まで、中国は2038年まで生産年齢人口の減少が加速するため、要警戒ともいえる状況です。米国は生産年齢人口の増加が続く予測なので、投資信託やETFを通してS&P500指数に連動する投資成果をめざす方が多いことと整合的な結果になっています。

■米国は移民急減に要警戒

米国の生産年齢人口増加率に関しては、トランプ政権成立後の変化を考慮する必要があります。米国国勢調査局推計から計算すると2021年7月から2024年7月にかけての3年で、米国は年平均で227万人もの移民の純流入があり、これが米国の人口増加に寄与していました。米国の総人口を3.42億人(2026年3月2日時点、米国国勢調査局ホームページでの推計)とすると移民による総人口増加分は0.67%にのぼります。仮に、トランプ政権の移民制限策が続き、その後の政権でも移民が抑制された場合、米国でも生産年齢人口が減少に転じることも想定されます。この場合、米国が普通の高齢化した豊かな国となり、経済成長の鈍化につながるおそれがあります。米国は国内市場が巨大であるため、自国市場に依存している小売、外食、食品加工、医療保険等の産業は特にマイナスの影響を受ける公算が大きいと考えられます。

※純国際移民数(人口増加寄与)で2021年7月~2022年7月は170万人、2022年7月~2023年7月は230万人、 2023年7月~2024年7月は280万人だったので、単純平均すると227万人となります。

図表2 5か国の生産年齢人口増加率(2025年~2050年)の推移

国ごとの投資アプローチ

■29か国でみるなら

図表3は生産年齢人口増減率の分析対象を29か国に広げたものです。また、米国への移民が仮にゼロになったらどこに移るかも書き入れています。これから以下のことが分かります。

・移民ゼロなら米国の投資対象国としての魅力が大きく落ちる可能性がある

・イギリス、オーストラリア、サウジアラビアは生産年齢人口が増えている豊かな国として残る

・インド、メキシコ、インドネシアは成長期待で投資対象候補となりやすい

・アフリカには人口動態が追い風の国が多いが、経済規模が小さくまだ投資しにくい

・中国、ブラジル、トルコへの投資は生産年齢人口減少の影響に注意

■人口動態で投資対象国を選ぶ際の注意点

人口動態は確度が高い推測材料ですが、あくまで推計なので、戦争、大きな政策転換、パンデミックなどの原因で大きな変化が生じる可能性があります。また、潜在的な成長力があっても、政治体制、宗教、文化的な背景などが制約となって、経済成長につながらないこともあります。このため、少なくとも数年おきに投資している国の状況を確認する必要があります。

また、生産年齢人口が減少しているからといって、投資機会がないわけではありません。その国の株価水準が国際比較で割安なら投資対象とされますし、輸出や海外子会社の売上が多い企業などからは高成長企業も出てきます。加えて、豊かな国であれば、寿命が延びて65歳ではなく75歳程度まで生産と消費を活発に行うようになることも考えられます。また、フィジカルAIの実用化で生産力としての生産年齢人口の意味合いが薄れる可能性も残ります。ただし、この場合においてもAIやロボットは電力や部品は消費しても、趣味や娯楽はないので消費者としてはあまり期待できません。なお、人口動態が悪化している国で補助金漬けの企業は、財政が悪化して補助金がなくなる可能性もあるので注意が必要です。

まとめ

・米国の人口動態における優位性は移民減少が続けば後退

・豊かな国ならイギリス、オーストラリア、サウジアラビアに追い風続く

・順当に経済規模と人口動態でみるなら、インド、メキシコ、インドネシア

・人口動態が向かい風となる国では、グローバル企業を中心とした個別株の選別がより重要になる

次回も、「一つ覚えればすぐ使える」投資レシピをお届けします。

図表3 29か国の生産年齢人口増加率(2025年~2050年)、一人当たりのGDP、名目GDP

図表4 ドイマサの投資レシピ 人口動態からみた投資レシピ

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