中級- 利益を伸ばしてパフォーマンス向上

中級- 利益を伸ばしてパフォーマンス向上

すぐに売ってしまう「売りタイミングあるある」

■利食い千人力

「含み益があると思って喜んでいても、利益を確定しなければいつなくなってしまうか分からない。利益を確定してこそ、心に余裕が生まれ、次の投資につながる」というのが「利食い千人力」という投資格言が意味するところです。確かに確定しなければ使えるお金ではありません。しかし、実際の投資では、少しの利益ですぐに売ってしまい、大きな利益を取り逃がすことの方が問題となる場合があります。

■利食いは早すぎるのに、損切りはできない?

図表1は投資初心者に多く見られる「売りタイミングあるある」のイメージ図です。この例では、まず50万円で株式投資を始めたとします。時点A1のように10万円の含み益(+20%)になっていたとすると、多くの投資初心者は「売却して利益を確定したい!」と思うようになります。逆に時点B1のように10万円の含み損(-20%)になっていた場合は、売ろうとは思わず、「なんとかなる」と楽観的な見通しになって保有を継続することになるでしょう。

これは不思議なことではなく、行動経済学でも研究が進んでいる人間の脳の作りによるものと考えられています。一説には、太古の狩猟採集生活当時の刷り込みで、利益(=食べ物)があればすぐに獲得したくなり、損失は食料の不足を連想するため、現実を認めないような行動になるという考え方もあります。こうして多くの投資初心者は、自然な感情に従って、少しの利益で売却する一方、同額の損失でも抱えたままにしてしまいます。

さらに株価が上昇して時点A2までなんとか保有できていた投資初心者がいたとしても、20万円(+40%)もの利益になると、どうしても売却して確定したいという感情が止められない場合が多くなります。逆に、株価が大きく下落して時点B2の20万円の含み損(-40%)になると、正反対の反応となり、損失を実現することへの心理的な抵抗が大きくなって、含み損を抱え続けることになります。

■そして含み損銘柄が残る

こうして、上がる株を早期に売り払い、手元には含み損を抱えた銘柄だらけになってしまうのが、「売りタイミングあるある」です。

これには二つの大きな問題があります。まず、多くの場合、個別株のパフォーマンスはロングテール(すそ野が広く、大きく上がる銘柄が全体のパフォーマンスを左右する)と考えられています。このため、大きく上がる銘柄の利益を得られないと、市場全体のパフォーマンス(概ねTOPIXや日経平均株価などの株価指数)を下回ってしまう可能性があります。さらに、大きく下がる銘柄を多く抱えることで、全体の投資パフォーマンスが悪化するだけでなく、投資がストレスになってしまいます。

図表1 利食いは早すぎるのに、損切はできない「売りタイミングあるある」

利益を伸ばす手法例1:ゴールデンクロスとデッドクロス

■投資候補の選び方と売買判断の考え方

利益を伸ばす投資を目指すなら、まず魅力的な投資候補を選んで、その中から上昇トレンドにある銘柄を選ぶことで失敗を減らせる一助となる場合があります。逆にいくら割安だと思っても、市場のテーマから外れていたり、業績見通しが芳しくなかったりすると、なかなか株価も上がらず、思ったような投資パフォーマンスが得られないこともあります。

そこでまず、PER(株価収益率)やPEGレシオ(PER÷1株当たり利益の成長率)でスクリーニングし、注目が集まりそうな投資テーマに沿った銘柄を選ぶことから始めます。

■ゴールデンクロスとデッドクロス

上昇トレンドにあるうちは投資を継続し、下降トレンドに転じたら売却するという投資判断に利用できる手法として、様々なトレンド系のテクニカル分析があります。また、テクニカル分析では、投資期間に応じて、日計り取引に用いる分足(ふんあし)や数日から10日程度の投資期間に用いられることが多い日足(ひあし)、数週間から数カ月の投資期間に用いられることが多い週足(しゅうあし)、半年程度から年単位の投資判断に用いられることが多い月足(つきあし)を使い分けることが一般的です。

ここでは、数週間から数カ月程度の投資期間を想定して、週足で考えることとします。トレンド系のテクニカル分析で、広く知られているものに、移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスがあります。図表2は、最近データセンター関連で注目を集めることが多かったA社株の値動きを、13週移動平均線(概ね3カ月)と26週移動平均線(概ね半年)と併せて見たものです。このとき、短期の移動平均線(13週)が長期の移動平均線(26週)を下から上に抜けたときを、上昇トレンド入りという意味の「ゴールデンクロス」、逆に短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に抜けたときを下降トレンド入りという意味で「デッドクロス」といいます。

①時点がゴールデンクロスで、これ以降であれば一般に上昇転換のシグナルとして参考にされます。②の期間は上昇トレンドが継続しているので、この手法を用いた場合には、銘柄Aのように大きく上昇する銘柄を途中で売ってしまうことなく、利益を伸ばすことができたと考えられます※。

※過去の値動きを例示したものであり、将来の運用成果等を保証するものではありません。

■シグナルが遅めなときもある

図表3は、グローバルにIT企業への投資を行っていることで知られる銘柄Bの値動き(週足)と移動平均線です。この場合も時点③のゴールデンクロス以降の④~⑤の期間が買いタイミングとされます。ただし⑤は既に株価が高値から下がっているのに、デッドクロスが出る時点⑥までは保有することになります。すべての局面に有効なテクニカル分析はないのですが、ゴールデンクロスとデッドクロスを使った場合は、少しシグナルが遅めになる傾向があることに注意が必要です。とはいえ、時点⑥でも時点③と比べると、上昇トレンドに乗ることで利益を上乗せできており、「魚の頭と尻尾は人にくれてやれ」という投資が実践できています。

なお、購入時にはゴールデンクロスを投資判断に用いる一方、売却タイミングに関しては、直近の高値から一定程度下がったら(個別株の週足での投資の場合は例えば7%~10%など)手仕舞うというトレーリングストップを用いるというバリエーションも可能です。

図表2 銘柄A(週足)ゴールデンクロスとデッドクロス

図表3 銘柄B(週足)ゴールデンクロスとデッドクロス

利益を伸ばす手法例2:パラボリック

■視覚的で解釈が分かりやすいシグナル

移動平均線でゴールデンクロスやデッドクロスを見極める際の難点は、二つの移動平均線が交差しかかったと思っても接近しただけであったり、交差する角度が小さすぎてその後の値動きが予想しにくかったりするという点です。このため、シグナルを間違って解釈してしまう、または後で見るとシグナルになっていないという、いわゆるダマシに悩むことが多くなります。

そこで、筆者が個人的によく利用しているのがパラボリックというテクニカル分析です。パラボリックでは、チャート上にSAR(Stop and Reverse)と呼ばれるドット(チャートソフトによって〇などのマークで表示されます)を表示し、SARが株価を下から支えているように見えるときは「買いシグナル」、SARが株価を上から押さえつけるような位置にあるときは「売りシグナル」を示唆するとされています。SARの位置が株価の上から下に入れ替わったら「買い転換」、下から上に入れ替わったら「売り転換」とされます。

パラボリックは視覚的にトレンドを見ることができるため、(株価が確定した後なら)解釈が分かりやすく、迷うことが少ない点で使い勝手が良いテクニカル分析といえます。

■週足パラボリックで利益を伸ばす

図表4は銘柄Aの週足の値動きとパラボリックです。図中の時点4(2026年1月30日の終値)では株価は13,530円でしたが、買いシグナルが継続したまま2026年4月10日の終値では約3.4倍の45,800円にまで急騰(図中の期間5)しています※。パラボリックを用いずに保有していた場合、途中で利益を確定したいという感情に逆らって持ち続けることは難しいと思わせるような急激な株価上昇でした。

※過去の値動きを例示したものであり、将来の運用成果等を保証するものではありません。

なお、一般的な傾向として、パラボリックは移動平均線のゴールデンクロスやデッドクロスよりも早いタイミングで売買シグナルが出ることがあり、その意味でも利益を伸ばす手法として使いやすい面があります。ただし、シグナルが分かりやすいと言っても、トレンドがはっきりしない相場状況では有効に機能しないことがあるので、トレンドの強弱には注意を払う必要があります。

■まとめ

個別株は玉石混交で、一部の銘柄が大きく上昇する傾向があります。このため、大きく上昇する銘柄にしっかり追随して利益を伸ばすことができるかどうかが、全体のパフォーマンスを左右することが多くなります。

・個別株のパフォーマンスは玉石混交で、一部の銘柄が大きく上昇することが多い

・感情に任せていると、利益を伸ばすことは難しい

・数週間~数カ月の投資期間前提なら週足(しゅうあし)を見る

・ゴールデンクロス/デッドクロス、パラボリックを用いて利益を伸ばす工夫も一案

図表4 銘柄A(週足)パラボリック

図表5 ドイマサの投資レシピ 利益を伸ばしてパフォーマンス向上

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