2024年からのNISA制度の改正 新旧比較~新しいNISAの使い方 40代から60代の現預金をお持ちの方へ~

川上 雅人

2022/12/29

2022年12月16日に公表された与党税制改正大綱によると2024年1月から少額投資非課税制度(NISA)は大幅拡充となる予定です。
NISA制度の改正ポイントは、
①制度の恒久化と非課税期間の無期限化      ⇒「ずっと」
②投資上限額の引き上げと生涯非課税限度額の設定 ⇒「多く」
③生涯非課税限度額内での売却時の再利用     ⇒「使いやすく」

といえます。

NISA制度の新旧比較は以下となります。

2024年からのNISA制度の改正 新旧比較

現行NISA 新しいNISA
つみたてNISA 一般NISA つみたて投資枠 成長投資枠
投資可能期間 2023年末で終了
(投資済の非課税期間は2024年以降継続)
2024年1月から
制度恒久化
非課税期間 最大20年 最大5年 無期限
年間投資上限額 40万円 120万円 120万円 240万円
生涯非課税限度額 800万円 600万円 1,800万円
(うち成長投資枠 1,200万円)
対象年齢 18歳以上 18歳以上 18歳以上
対象商品 一定の要件を備えた
投資信託等
上場株式・
投資信託等
一定の要件を備えた
投資信託等
上場株式・投資信託等(一部対象除外あり)
投資方法 積立 一括・積立 積立 一括・積立
両制度の併用 不可 可能
売却枠の再利用 不可 可能
(年間投資上限額の再利用は不可)

※税制改正大綱等をもとにSBI証券作成

選択肢が大きく広がった2024年からの新しいNISAは、これまで活用されなかった方も始めるチャンスだと思います。「ずっと、多く、使いやすく」に変更となる制度といえます。
運用期間が比較的短いとお考えの方でも遅くはないといえますし、退職金を一部活用することも有効だと考えます。人生100年時代といわれる中での有効な非課税制度になりそうです。

今回は、預貯金をある程度お持ちの40代から60代の方を想定して、新しいNISAの使い方をご紹介します。

【ケース1】15年間の長期・積立・分散投資

つみたて投資枠の年間120万円をフルに使って、生涯非課税限度額1,800万円に達するまで15年間積み立てるという方法です。年間の120万円は月10万円ずつ積み立てます。
例えば、月10万円×12ヵ月×15年をバランスファンドで年率3.5%(日本の年金基金と同等、2001年度以降の累積収益)で運用できた場合の積立シミュレーション(15年後のイメージ)は以下となります。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

シミュレーションでは積立元本(1,800万円)に投資収益(560万円)が加わり、2,360万円になるという計算です。NISA口座での投資収益は非課税のため、仮に売却しても税金(課税口座では20.315%)がかかりません。
運用においては、グラフのように毎年安定した収益は期待できません。運用では良い時と悪い時がありますが、長期でみれば年率平均3.5%の収益は、日本の株式・債券、海外の株式・債券といった4資産分散では、過去の実績からは十分に達成可能といえます。また、一度に一括で投資をせずに、定期的にコツコツを積み立てることが収益を安定化させるポイントです。
今回はつみたて投資枠での年間投資上限額と生涯非課税限度額の満額、最短の15年でご紹介しましたが、ご自身のペースで投資額と期間は設定できます。また、一時的な支出のために売却した場合でも、その分(売却分は取得価額で管理)はあらためて非課税枠が使えます(売却枠の再利用)

【ご参考】2,000万円の資産を運用しながら毎月10万円ずつ取り崩した場合のシミュレーション

運用しながら取り崩す効果とは?

2,000万円の資産を毎月10万円ずつ単純に取り崩していくと、200ヵ月、17年足らずで資産が尽きてしまいます。一方で、仮に毎年5%の利回りで運用することができたとすると、同様に毎月10万円ずつ取り崩した場合でも、およそ36年間資産を保つことが可能です。そして、同じ期間、単純に取り崩しを続ければ、2,000万円以上の赤字になってしまいます。

このように、資産の取り崩しを行いながらでも、資産運用を続けることで、より資産を長持ちさせる効果に期待することができます。

イメージ

※上記はシミュレーションであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、運用にかかる手数料、税金等の諸費用は考慮しておりません。

上記は積立投資で増やした後の2,000万円から運用した場合のシミュレーションになりますが、新しいNISAを活用してお金に働いてもらい、お持ちの現預金の寿命を延ばすことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

【ケース2】高配当株で配当生活+積立投資

年間240万円の成長投資枠をフルに使って、将来の配当利回りが高い株式(高配当株)に分散投資し(例えば、1銘柄30万円で8銘柄程度)、5年間で生涯非課税限度額(成長投資枠分)の1,200万円にするという方法です。
NISA口座では売却益だけでなく配当金(投資信託では分配金)が非課税のため、配当金は税金がかからずに受け取ることができます。仮に年平均4%の配当利回りの株式に投資すれば、1,200万円の投資資金から年間48万円の配当金を生み出すことができます。高配当株は将来にわたって約束されたものではないため、新制度による売却枠の再利用も使って、年1回程度、チェックして見直すことをおすすめします。定期的に情報発信しているSBI証券の投資情報メディアもご参考にしてみてください。
また、高配当株をご自身で選ぶのは面倒だという方は、投資信託やETF(上場投資信託)を活用するという選択肢もあります。

【ご参考】NISA活用も!高配当利回り11(イレブン)銘柄(2022年11月時点での一例)
https://go.sbisec.co.jp/media/report/dom_senryaku/dom_senryaku_221125.html

生涯非課税限度額の成長投資枠1,200万円の上限に達しても、別途600万円のつみたて投資枠があります。こちらも活用して、投資信託で積み立て投資し、現預金の寿命を延ばしてみるのも有効です。つみたて投資枠の投資資金の一部は、高配当株の配当金から充当するという方法もあります。

これまでの現行NISAでは、①期限が決められている、②非課税枠が小さい、③売却枠の再利用ができない、といったデメリットがありました。
新しいNISAではこれらがすべてできるようになります。面倒だった非課税期間終了時のロールオーバー手続きも不要となります。

今回ご紹介したケースはあくまでも一例です。「跳ねる」卯年の2023年は、2024年からの「跳ねる」新しいNISAの使い方を想像してみてはいかがでしょうか。
そして、まだNISAを活用していない方は2023年の非課税枠は新しいNISAとは別枠ですので、まずはNISA口座を開設して始めてみることをおすすめします。

ファンドアナリスト 川上 雅人

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NISA移管詳細


NISA・つみたてNISAのご注意事項

• 配当金等は口座開設をした金融機関等経由で交付されないものは非課税となりません
NISAの口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

• リスク及び手数料について
SBI証券の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。

• 同一年において1人1口座(1金融機関)しか開設できません
NISA・つみたてNISAの口座開設は、金融機関を変更した場合を除き、1人につき1口座に限られ、複数の金融機関にはお申し込みいただけません。金融機関の変更により、複数の金融機関でNISA・つみたてNISAの口座を開設されたことになる場合でも、各年において1つの口座でしかお取引いただけません。また、NISA・つみたてNISAの口座内に保有されている商品を他の年分の勘定又は金融機関に移管することもできません。なお、金融機関を変更される年分の勘定にて、既に金融商品をお買付されていた場合、その年分について金融機関を変更することはできません。

• NISA・つみたてNISAで購入できる商品はSBI証券が指定する商品に限られます
SBI証券における取扱商品は、NISA・つみたてNISAで異なります。NISAは国内株式(現物株式、ETF、REIT、ETN、単元未満株(S株)を含む)、公募株式投資信託、外国株式(米国、香港、韓国、ロシア、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、海外ETFを含む)、つみたてNISAは公募株式投資信託となります。※取扱商品は今後変更の可能性があります。

• 非課税投資枠が設定され、売却するとその非課税投資枠の再利用はできません
NISAの非課税投資枠は年間120万円、つみたてNISAの非課税投資枠は年間40万円までとなります。NISA・つみたてNISAの非課税投資枠は途中売却が可能ですが、売却部分の枠の再利用はできません。また、投資を行わなかった未使用枠の翌年以降への繰越しはできません。
投資信託における分配金のうち特別分配金(元本払戻金)は、従来より非課税でありNISA・つみたてNISAにおいては制度上のメリットは享受できません。

• 損失は税務上ないものとされます
NISA・つみたてNISAの口座で発生した損失は税務上ないものとされ、一般口座や特定口座での譲渡益・配当金等と損益通算はできず、繰越控除もできません。

• NISA とつみたてNISA はいずれかの選択制です
NISA・つみたてNISAは選択制であり、同一年に両方の適用を受けることはできず、原則として変更は各年においてお申し込みいただく必要があります。

• つみたてNISAでは積立による定期・継続的な買付しかできません
つみたてNISAでのお取引は積立契約に基づく定期かつ継続的な方法による買付に限られます。

• つみたてNISAではロールオーバーができません
つみたてNISAはNISAと異なり、ロールオーバーにより口座内に保有されている商品を異なる年分の勘定に移管することはできません。

• つみたてNISAでは信託報酬等の概算値が原則として年1回通知されます
つみたてNISAで買付した投資信託の信託報酬等の概算値を原則として年1回通知いたします。

• つみたてNISAでは基準経過日における氏名・住所の確認が求められます
つみたてNISAでは口座を設定してから10年経過日、および以後5年を経過するごとに氏名・住所等の確認が必要となります。当社がお客さまの氏名・住所等が確認できない場合にはお取引ができなくなる場合もございますのでご注意ください。

• 米国人・グリーンカード(米国永住権)保有者・米国居住者は、当社では投資信託のお買付はできません。そのため、つみたてNISAでのお買付もできません。詳しくはこちら

• ジュニアNISAのご注意事項