為替2022年の注目 インフレ継続、取り残される日銀

~アフターコロナを見据えた金融政策正常化の動き~

バイデン政権が発足し、大規模な財政政策に加え、ワクチン接種による経済活動正常化を見据えた供給問題とともに、エネルギー価格の上昇がインフレ圧力を高める結果となりました。こうした状況にありながらもパウエルFRB議長は「インフレは一時的」との考えを繰り返してきましたが、11月の議会証言でこうした考えを変更する可能性を示唆する中、ドルが対主要通貨で上昇を続け、ドル円は年初1月6日の102円59銭を下値に11月24日には115円52銭まで上昇。年間の値幅は2016年以来の12円93銭までに達するなど円安が進行する1年となりました。12月FOMCでは2022年3月のテーパリング終了や2022年3回の利上げが示されたものの、既に市場は織り込んでいたほか、資産残高を徐々に減らす量的引締め(QT)について言及がなかったことから、一旦材料出尽くしとなり、113円台半ばを中心にした底堅い値動きとなっています。

~日米の金融政策の方向性の違いを背景に想定以上に円安が加速する可能性~

FRBによる2022年3月のテーパリング終了が近づき、利上げが意識される状況になれば、低金利の円で調達した資金で高金利通貨買いに動く『円キャリートレード』が再燃し、円安が加速する可能性もあるかもしれません。日本や欧州の投資家が、自国の国債よりも高い利回りの米債への資金流入を続ければ、米長期金利の押し下げ圧力が掛かることで株式市場の堅調地合いは継続するとの楽観的な見方も聞かれます。さらに2022年3月のFRBによるテーパリング終了や利上げに向けた動きの一方、大規模な緩和政策を続ける日銀の金融政策を背景に『円キャリートレード』が意識されることになれば思わぬ円安につながりかねません。日米金利差があらためて意識され、115円台が下値支持線となれば、120円台の回復を目指す円安の加速に備える必要があるかもしれません。

~2022年の注目 インフレ継続、取り残される日銀~

FRBが2021年11月から開始したテーパリングは、2022年6月の完了時期を2022年3月に前倒しする意向を示したほか、2022年、2023年それぞれ年3回の利上げが想定されるなど、FRBの金融政策は大きくタカ派に舵を切りました。また、英中銀政策委員会では、労働市場の力強さを踏まえ、インフレ抑制には資金調達コストの上昇が適切であるとの判断に基づき、政策金利を 0.25%に引き上げることを決定しました。ECBも2022年3月に緊急買い入れプログラムの終了を決定、その後の従来型の資産買い入れも徐々に減少させる意向を発表しました。岸田首相の掲げる新たな資本主義で、成長と分配の好循環を目指すとしたことは、日本の賃金上昇が先進各国に大きく遅れていることを象徴しています。賃金上昇圧力が高まらない状況下、インフレの上昇は見込みにくいとされることも円の実質実効レートの低下の一因とされます。各国中銀が金融政策の正常化に舵を切る中、取り残される日銀の黒田総裁は円安を容認する姿勢を示していることもあり、2022年中には120円を上抜け125円を目指す円安が加速する可能性もあるかもしれません。

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