決算発表で好決算・株価上昇に期待したい銘柄は?

決算発表で好決算・株価上昇に期待したい銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本 奈緒実

2022/10/14

決算発表で好決算・株価上昇に期待したい銘柄は?

10月の東京株式市場は荒っぽい展開となっています。世界的にインフレ・金利上昇の進行に加え、景気・企業業績の悪化が警戒されるスタグフレーションの到来が懸念されていることが大きな要因です。さらに、米国では雇用統計や消費者物価指数等、重要指標の発表が続き、投資家にとってはリスクを取りにくい状況が続きました。

そうした中、10/14(金)の米国市場では、シティやJPモルガン・チェース他大手銀行の決算発表が予定されており、ここからいよいよ2022年7~9月期の決算発表が本格化していきます。国内でも10/3(月)のあみやき亭(2753)、10/13(木)のホギメディカル(3593)等一部の銘柄ですでに同四半期の決算発表がスタートしています。発表社数ベースでは10/31(月)に最初のヤマ場を迎え、11月第2週(11/7~11/11)には連日3桁の数の企業が決算発表を実施する予定です。投資家にとっては気を緩める暇のない季節が到来することになりましょう。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では、好決算さらには業績予想上方修正が期待できるような銘柄を抽出すべくスクリーニングを行ってみました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証上場銘柄
(2)時価総額1,000億円以上(10/12時点)
(3)3月決算銘柄
(4)3名以上のアナリストが業績予想を公表
(5)日銀短観(2022年9月)で「最近」の業況判断指数が、前回調査の「先行き」に対して上振れし、かつプラスの数字の業種
(6)2023/3期・上半期の市場予想営業利益が前年同期比10%超、または黒字転換
(7)2023/3期・第1四半期の営業利益が前年同期比10%超、または黒字転換
(8)今年度市場予想EPS(1株利益)が4週前比で上昇、または横ばい
(9)今年度・来年度通期の市場予想営業利益(10/12現在)が9/30比で横ばいまたは増加

下の図表は、上記の条件をすべて満たした銘柄を、決算発表予定日の早い順に並べたものです。

なお、(5)について、「最近」(2022年9月調査)の業況判断指数が、前回調査の「先行き」に対して上振れし、かつプラスの数字になっている業種は、石油・石炭製品、鉄鋼、建設、不動産、物品賃貸、卸売、運輸・郵便、情報サービス、対事業所サービス等となっています。短観上の業種と東証33業種は一致していないため、業務内容を吟味して判断しました。

インフレ・金利上昇の加速や、半導体市場の変調など、上場企業を取り巻く環境は激しく変化しているとみられ、これまで順調だった業種が悪くなり、逆に悪かった業種が改善するなど、予想外の変化が起こる可能性は大きいと考えられます。そこで、9月時点における業況判断を織り込んだ「日銀短観」は、いつにも増して、重要なヒントを与えてくれていると思います。

ちなみに、企業によっては、公表する業績数字に営業利益がない場合もあり、その場合は、スクリーニング条件を満たすことができないため、除外しております。ご容赦ください。

図表 決算発表で好決算・株価上昇に期待したい銘柄は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄(決算発表予定日) 株価(10/13) 22/4~9期
予想営業増益率
23/3通期
予想営業増益率
24/3通期
予想営業増益率
4684 4684 4684 4684 オービック(10/25) 20,690 15.5% 14.2% 12.1%
9007 9007 9007 9007 小田急電鉄(10/28) 1,860 421.8% 311.7% 55.7%
2175 2175 2175 2175 エス・エム・エス(10/28) 3,125 19.4% 17.7% 21.1%
6436 6436 6436 6436 アマノ(10/28) 2,538 26.3% 27.0% 14.5%
9202 9202 9202 9202 ANAホールディングス(10/31) 2,823 黒字転換 黒字転換 101.4%
9020 9020 9020 9020 東日本旅客鉄道(10/31) 7,830 黒字転換 黒字転換 102.9%
9009 9009 9009 9009 京成電鉄(10/31) 3,965 黒字転換 黒字転換 64.9%
7366 7366 7366 7366 LITALICO(10/31) 2,811 55.4% 39.6% 24.7%
3635 3635 3635 3635 コーエーテクモホールディングス(10/31) 2,184 25.2% 10.0% 16.9%
9042 9042 9042 9042 阪急阪神ホールディングス(10/31) 4,385 347.6% 78.4% 28.3%
9021 9021 9021 9021 西日本旅客鉄道(11/1) 5,780 黒字転換 黒字転換 127.2%
9142 9142 9142 9142 九州旅客鉄道(11/1) 3,125 黒字転換 719.8% 43.2%
7518 7518 7518 7518 ネットワンシステムズ(11/2) 2,812 52.1% 26.7% 15.1%
9001 9001 9001 9001 東武鉄道(11/2) 3,455 267.3% 97.2% 19.0%
9008 9008 9008 9008 京王電鉄(11/4)   5,220 黒字転換 2568.9% 55.8%
8136 8136 8136 8136 サンリオ(11/4) 3,695 935.8% 164.7% 38.1%
7004 7004 7004 7004 日立造船(11/7) 799 黒字転換 33.8% 10.4%
3774 3774 3774 3774 インターネットイニシアティブ(11/7) 2,192 15.3% 19.0% 14.7%
9048 9048 9048 9048 名古屋鉄道(11/8) 2,223 黒字転換 616.2% 52.1%
9616 9616 9616 9616 共立メンテナンス(11/9) 6,110 黒字転換 205.6% 186.2%
8876 8876 8876 8876 リログループ(11/10) 2,197 36.7% 22.3% 17.2%
9006 9006 9006 9006 京浜急行電鉄(11/11) 1,468 黒字転換 211.7% 103.8%
  • ※Bloomberg、会社データ等、SBI証券WebサイトをもとにSBI証券が作成。

抽出銘柄のご紹介

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

LITALICO(7366)~障害福祉領域で就労や学びの支援サービスを行う。景況感に影響されにくい業容

★週足チャート(過去2年)

  • ※上記はLITALICO(7366)の新規上場日(2021年4月1日)以降のデータです。
  • ※データは2022/10/14(週足) 10:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「障害のない社会をつくる」をビジネスを通して取り組む

「障害のない社会をつくる」というビジョンのもと、障害のある方向けに就労や学びを支援するサービスを提供しています。

社名の「LITALICO」は、日本語の“利他”と“利己”を組み合わせた造語が由来です。一見して相反しているように思える2つの言葉をどちらも実現させるため、社会課題をビジネスの手法を通じて解決に取り組んでいます。

セグメントは主に3つに分かれています。
(以下データは、2023/3期第1四半期時点のもの)

まず、1つ目の「LITALICOワークス事業」(売上高構成比:41%)では、精神障害や発達障害を中心とした障害のある方向けに就労支援サービスを行っています。就職するための訓練や就職活動支援、就職後の定着支援等を実施しています。創業来から成長の勢いは衰えておらず、拠点数109、累計就職者数12,000人超、12期連続で増収を達成しています。

また、近年行われた制度改正は同事業の成長期待を大きくした側面もありそうです。2018/4に障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。2021/3には30年以上ぶりに、障害者の法定雇用率が従来の1.6%から2.3%までに引き上げられました。このように障害者雇用における社会的要請が年々強まる中、2021年時点の法定雇用率達成企業の割合は47%と半数割れの状態です。よって、サービスの拡大余地は依然として大きいと考えられています。

次に2つ目の「LITALICOジュニア事業」(売上高構成比:32%)は、障害福祉サービス受給者証を発行された発達障害児(未就学児~高校生)を中心とした学習支援サービスです。同事業も、拠点数117、6期連続増収と目下成長中です。

最後に3つ目の「LITALICOプラットフォーム事業」(売上高構成比:14%)は、児童福祉事業者や障害福祉事業者等の顧客に、DX支援のSaaS事業を行っています。2020/3期より開始されたこの新しい事業は、ここもと当社が成長加速に注力している最中です。企業買収や採用加速等、積極的先行投資が行われ、契約事業所数も順調に推移しています。

当社の事業内容は、景況感に左右されづらいものがほとんどであることがわかります。よって、現在懸念されている世界的な景気見通し悪化の影響も少ないとみられます。


■従来事業の成長継続、かつ成長加速フェーズの事業の出現で業績拡大か

前項にてご紹介した前2事業、「LITALICOワークス事業」と「LITALICOジュニア事業」では収益のほとんどを神奈川、東京都、大阪等の国民保険団体連合会合から得ています。そのため、顧客当人の自己負担金は10%です。ただし、所得水準に応じて自己負担が免除される顧客(保護者)もいるため、LITALICOワークスの実績では9割以上の顧客が自己負担なくサービスを利用しています。よって、社会保障制度が安定的な収益源として下支えている面があります。同2事業は強いニーズのもと店舗数と比例して売上げも増加傾向です。今期も両事業ともに、新しく15拠点の出店を計画しています。

一方、障害福祉サービスの報酬は3年に1度定期的な見直しが行われており、制度改定には注意する必要がありそうです。その点、3つ目に事業をご紹介した「LITALICOプラットフォーム事業」は収益源となる主な顧客が、事業者や企業、学校法人、一般企業等であるため収益源の分散というリスクヘッジの一助を果たしているといえるでしょう。当社は同事業を成長加速フェーズにあるとし、今期売上高は前年同期の1.8倍の33億円を見込んでいます。

以上より、主要3事業の収益構造をみると成長性もありつつ安定的であると見受けられます。世の中の向きを考えるとニーズが高まっている領域で積極的に事業展開を進めているといえそうです。

第1四半期時点での今期売上高は56億円(前年同期比22%増)、経常利益が6億円(同89.3%増)と増収増益の好決算でした。ただ、単純計算で通期予想の進捗率を若干下回っています。2022/10/31(月)に予定されている中間決算にて、通期業績見通しに対して順調な進捗を示せれば、高い成長見通しと相成って株価反発が期待できそうです。

共立メンテナンス(9616)~学生・社員寮の管理運営、およびホテル事業が中心

★週足チャート(過去2年)

  • ※データは2022/10/14(週足) 10:00 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■ホテル事業で新型コロナの影響。不動産流動化で資金回収

当社は1979年、受託給食業務を目的として東京都葛飾区に設立され、その後学生寮事業、ビジネス・リゾートホテル事業へと業容を拡大してきました。1994年に株式を店頭登録し、1999年に東証2部に上場。2001年に東証1部に指定替えされ、現在に至っています。

売上構成比(2022/3期)は寮が27.0%、ホテルが36.1%、ディベロップメントが23.7%となっています。

「寮」事業は、創業直後からの事業であり、学生寮や社員寮を展開しています。2023/3期初の物件数は514棟、定員客数は43,444室あり、学生、社会人の他、留学生等の住居に供されています。損益は比較的安定しており、営業利益は21/3期49億円、22/3期45億円と推移しています。

一方、ホテル事業ではビジネスホテルとリゾートホテルを展開しています。前者では「寮」事業のノウハウを生かし、我が家のようなくつろぎや快適性を備えているのが強みで「ドーミーイン」のブランドで内外に展開しています。新型コロナウイルスの影響を強く受けた分野であり、営業損益は21/3期に131億円赤字、22/3期に94億円赤字と、赤字が続いています。

なお、ホテルについては2022/3期に不動産の流動化をはかり、9物件の流動化を実行し、373億円の資金回収を行っています。最終的に「ディベロップメント」で営業利益86億円を確保しました。2022/3期は、これらにより、売上高1,737億円(前期比43.2%増)、営業利益14.3億円(前期は90.5億円の赤字)と、営業利益の黒字転換を実現しています。


■業績改善は来期にかけてが「本番」?

2023/3期第1四半期は売上高392億円(前期比32.4%増)、営業利益10.7億円(前期は40.5億円の赤字)と、業績改善傾向が続いています。3年ぶりに行動制限のないGWの恩恵で、ホテル事業の営業損益が、前年同期の49億赤字から当四半期に1.0億円の黒字になったことが貢献しました。

上半期は営業損益は前年同期の56億円赤字から31億円黒字に改善するというのが市場予想です。通期では営業利益が43億円に改善するというのが市場予想です。さらに2024/3期の場予想営業利益が125億円となっています。

2022/10より、訪日外国人の上限が撤廃された他、個人旅行の解禁、全国旅行支援の実施等により、下期は事業環境が大きく好転が見込まれます。政府は新型コロナの感染第7波でも行動規制を強めなかったことから、今後も経済再開は続くとみられ、上記の業績改善傾向は可能であると考えられます。

好業績が期待できることに加え「インバウンド関連銘柄」というテーマ性も兼ね備えており、その分株価は追い風を受けるとみられます。

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