アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~アルファベット、テスラなど、ここ1ヵ月で株価が下がりにくくなっている成長株~
投資情報部 榮 聡
2022/07/11
先週は経済指標が市場予想を上回るケースが増え、また、タカ派のFOMC議事要旨も想定範囲内と捉えられて、成長株中心に押し目買いが優勢となりました。今週の株価材料として、米国の経済指標、企業決算、バイデン大統領の中東歴訪、などが注目されます。
今回はここ1ヵ月で株価が下がりにくくなっている成長株から、アルファベット A(GOOGL)、テスラ(TSLA)、オラクル(ORCL)、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
5営業日連続で陽線が出ており、押し目買い気運が高まっているようです。上値抵抗となっている「基準線」を上抜ければ、「雲」の下限近くまで行けそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 6.6% | 1.9% | -17.4% |
コミュニケーションサービス | 5.6% | 2.3% | -13.4% |
情報技術 | 4.6% | 1.7% | -10.8% |
S&P500 | 3.0% | 0.0% | -11.6% |
ヘルスケア | 2.0% | 4.5% | -6.6% |
金融 | 2.0% | -0.9% | -14.9% |
生活必需品 | 1.0% | 1.7% | -7.6% |
不動産 | 0.9% | 0.4% | -15.9% |
資本財・サービス | 0.7% | -2.9% | -11.4% |
公益事業 | -0.5% | -1.5% | -8.0% |
素材 | -0.8% | -10.1% | -16.9% |
エネルギー | -1.0% | -19.4% | -7.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
テスラ | 11.7% |
アルファベット | 9.5% |
アマゾン・ドット・コム | 8.8% |
アップル | 7.5% |
バイオジェン | 7.3% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
フィリップ・モリス・インターナショナル | -4.9% |
シュルンベルジェ | -4.0% |
コノコフィリップス | -3.7% |
エクセロン | -2.3% |
ロッキード・マーチン | -2.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.9%、NYダウは0.8%、ナスダック指数は4.6%の上昇でした。
7/5(火)には欧州の株安や原油価格(WTI先物価格)が1バレル100ドル割れとなったことを受けて前日比で一時大きく下落する場面がありました。しかし、5月製造業受注、6月ISM非製造業景気指数、5月求人数などの経済指標が予想を上回り、先々週に大きく悪化した景況感が改善の方向となりました。
さらに7/7(木)には中国で30兆円相当の景気刺激策が検討されていると伝わり、また、サムスン電子の4-6月期業績ガイダンスで売上が市場予想を上回ったことなども後押しとなり、相場の反発につながりました。
注目された7/6(水)のFOMC議事要旨では、0.50%ポイントまたは0.75%ポイントの利上げが検討されてタカ派の内容でしたが、市場予想の範囲内と捉えられたようです。翌日、FRBのウォラー理事は、「市場のリセッション懸念は行き過ぎ」と発言して相場の押し上げ要因になったとみられます。
業種指数では、テスラ、アマゾンが上昇した「一般消費財・サービス」、ネットメディアが上昇した「コミュニケーションサービス」、半導体、ソフトウェアがけん引した「情報技術」の上昇が大きくなっています。
経済指標では、6月雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比37.2万人増と市場予想の同26.8万人増を上回りました。前月の同38.4万人増から鈍化してインフレ懸念の緩和に寄与すると期待されていましたが、実現しませんでした。一方、平均時給は前年比5.1%増と前月の同5.3%増から低下してインフレ懸念の沈静化に寄与したとみられます。
今週の米国株式市場
米国市場は4-6月期の決算を迎えるにあたって企業業績が下方修正される懸念があり、ファンダメンタルズ面からはなかなか底入れを言いにくい状況です。一方、S&P500指数の過去1ヵ月のチャートは下値を切り上げており、今週に6/28(火)の高値3,945.86ポイントを上回って引けるようなら、かなり形が良くなると言えそうです。
7/8(金)に掲載したSBIグローバルウォッチ「米国株底入れを示唆!?3つのテクニカル指標」(YouTubeに遷移します)で指摘した通り、テクニカル的には底入れの可能性を示唆するものがあると考えます。決算発表が本格化する前に市場心理が改善していることが望まれます。
今週の株価材料として、米国の経済指標、企業決算、バイデン大統領の中東歴訪、などが注目されます。
米国の経済指標では、6月の物価指標が注目されます。7/13(水)の6月消費者物価指数では、ヘッドラインの数字は前年比8.8%増と、前月の同8.6%増からインフレ加速が予想されています。一方、食品・エネルギーを除くコア指数は前年比5.7%増と、前月の同6.0%増から低下が見込まれています。7/14(木)の6月生産者物価指数も前年比10.7%増と、前月の同10.8%増からインフレ鎮静化の方向が見込まれています。
また、リセッションが懸念されているため、消費動向も注目です。7/15(金)の6月小売売上高は前月比0.9%増と堅調な数字が予想されています。一方、7月ミシガン大学消費者信頼感指数は、過去最低に落ち込んだ6月の50.0に対して横ばいが見込まれています。
今週から4-6月期決算の発表が始まりますが、景気減速や企業業績の下方修正に対する市場の懸念は強い状況が続いています。企業アナリストはこれまで予想EPSの顕著な下方修正を行ってきませんでしたが、4-6月期の決算発表を受けて業績見通しを下方修正すると見込まれています。Bloomberg集計のS&P500指数の今期予想EPSは、7/8(金)時点で229.32ポイントと、1-3月期決算がほぼ出そろった5月末から0.7%の上方修正となっています。
バイデン大統領の中東歴訪は、原油増産の働きかけが主な目的とみられます。訪問するからには増産が実現するとみられますが、原油価格の抑制に十分な量なのか注目されます。
経済指標では上記のほか、7/13(水)に中国の6月貿易統計(輸出は前年比13.0%増の予想、前月は同16.9%増、輸入は前年比4.0%増の予想、前月は同4.1%増)、7/15(金)に中国の4-6月期実質GDP(前年比1.0%増の予想、1-3月期は同4.8%増)、6月鉱工業生産(前年比3.5%増の予想、前月は同3.3%増)、6月小売売上高(前年比0.3%増の予想、前月は同6.7%減)、などの発表が予定されています。
企業イベントでは、ペプシコ、台湾セミコンダクター、デルタ航空(E)、JPモルガンチェース、モルガンスタンレー、ブラックロック、ユナイテッドヘルスグループ、シティグループ、ウェルズファーゴなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
先週は年初来の下げが25.6%と大きいナスダック指数が4.5%の上昇となるなど、成長株に対する押し目買いの動きが目立ちました。そこで今回は、年初来の株価下落率が大きいものの、最近株価が下げにくくなっているものを抽出してご紹介いたします。
【スクリーニング条件】
(1)年初来で株価が15%以上下落(同期間でS&P500指数は18.1%の下落)
(2)過去1ヵ月の株価下落率が3%以内(同期間でS&P500指数は6.2%の下落)
(3)S&P100指数採用銘柄
抽出された図表3の10銘柄から、アルファベット A(GOOGL)、テスラ(TSLA)、オラクル(ORCL)、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)を選んでご紹介いたします。
図表3 ここ1ヵ月で株価が下がりにくくなっている銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)
コード | 銘柄名 | 株価 (7/7) (ドル) |
予想PER (倍) |
株価騰落 (年初来) (%) |
株価騰落 (1ヵ月) (%) |
アナリスト 目標株価 (%) |
目標株価 乖離率 (%) |
GOOGL | アルファベット | 2,375.66 | 18.0 | -18.0 | 1.4 | 3,118.57 | 31.3 |
TSLA | テスラ | 733.63 | 60.0 | -30.6 | 1.1 | 884.44 | 20.6 |
SBUX | スターバックス | 79.24 | 25.6 | -32.3 | 1.0 | 91.03 | 14.9 |
ORCL | オラクル | 71.83 | 13.7 | -17.6 | 0.6 | 86.30 | 20.2 |
TMO | サーモフィッシャーサイエンティフィック | 553.76 | 25.3 | -17.0 | 0.3 | 659.70 | 19.1 |
BA | ボーイング | 139.97 | 42.5 | -30.5 | 0.2 | 215.91 | 54.3 |
MSFT | マイクロソフト | 268.40 | 26.5 | -20.2 | -0.7 | 358.61 | 33.6 |
DHR | ダナハー | 263.45 | 25.6 | -19.9 | -0.8 | 317.68 | 20.6 |
AAPL | アップル | 146.35 | 23.8 | -17.6 | -1.1 | 182.96 | 25.0 |
SCHW | チャールズ・シュワブ | 64.24 | 15.2 | -23.6 | -2.3 | 88.29 | 37.4 |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/8) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | アルファベット A(GOOGL) | 2387.07ドル | 19.1 | 【ネット検索、YouTubeのエンゲージメント良好】 ・同社の主要売上は広告収入のため、景気減速の影響を受けやすいと考えられます。しかし、ネット検索、YouTubeとも「エンゲージメント」(消費者のアクセス)が良好なことから、SNS各社よりは鈍化の影響が小さいと考えられます。また、クラウド事業は高い売上成長が維持されると見込まれます。 ・予想PERは19倍台まで低下していますが、売上成長率は来期にかけても10%以上が見込まれるため、割安感があると考えられます。 | |
買付 | テスラ(TSLA) | 752.29ドル | 64.9 | 【中国の販売が急回復】 ・7/2(土)に発表された4-6月期の出荷台数は25.5万台で前年同期比27%増となったものの、市場予想の26.1万台を下回りました。これを受けた7/5(火)の株価は、前日比4.9%安まであったものの、終値は同2.6%高まで切り返し、押し目買いの勢いが強いことが示されました。 ・さらに、7/6(水)に発表された6月の中国販売(速報値)が約7万8,000販売で、前月比142%増、前年同月比135%増となりました。同社の中国事業は上海工場のロックダウンの影響もあって、ここ数ヵ月非常に低調な状況でしたが、急回復となっていることが判明しました。これを受けて同社の株価は週間で10.3%の株価上昇となっています。 | |
買付 | オラクル(ORCL) | 71.87ドル | 13.7 | 【3-5月期売上ガイダンスが市場予想を大幅超過】 ・マイクロソフトに次ぐ、世界第2位のソフトウェア企業。法人向けデータベース管理システムでは世界トップ。SaaSなどクラウド関連が収益の柱に成長しています。昨年12月に電子カルテ大手のサーナー社を283億ドルの巨額で買収しました。 ・3-5月期の売上は前年同期比10%増と12-2月期の同7%増から加速し(為替の影響を除いたベース)、買収した電子カルテのサーナーを含む6-8月期の売上ガイダンスは前年同期比20~22%増で市場予想を9%上回りました。3-5月期のクラウド売上(IaaS+SaaS)が同19%増、インフラストラクチャー・クラウド売上が同36%増と伸びて全体をけん引しています。 | |
買付 | マイクロソフト(MSFT) | 267.66ドル | 25.0 | 【堅調な企業のIT投資の恩恵を受ける】 ・同社は6/2(木)に4-6月期の業績ガイダンスを売上で0.9%、調整後EPSで1.5%下方修正しました。ただし、下方修正の要因はドル高による売上の目減りが主だったため、さほどネガティブには捉えられてはいません。成長をけん引している「Azure」およびクラウドサービスは堅調が期待されます。 ・1-3月期決算は、売上が前年同期比18%増、調整後EPSが同14%増で、いずれも市場予想を上回る好決算でした。部門別の売上は、インテリジェントクラウドが前年同期比26%増、プロダクティビティ&ビジネスプロセスが同17%増、モアパーソナルコンピューティングが同11%増で、いずれも市場予想を上回りました。 | |
買付 | アップル(AAPL) | 147.04ドル | 22.6 | 【市場鈍化の影響を受けにくいとみられる】 ・アジアのハードウェア関連メーカーからスマホ市場の鈍化が伝えられているため、同社の売上に対しても警戒感があります。一方、同社の増収は製品の更新サイクルや18億個の稼働デバイスに対するサービスの成長によるところが大きいため、スマホ市場全体の鈍化をそのまま受けるわけではないとの期待もあります。 ・4-6月期の売上増加率は、1-3月期の前年同期比9%増から同1%増への鈍化が予想されています。サプライチェーンの制約から売上に80億ドルの影響が出るとのガイダンスが織り込まれています。4-6月期の決算発表は7/28(木)の予定です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、オラクルが2023年5月期、マイクロソフトが2023年6月期、アップルが2023年9月期、その他は2022年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
11(月) | ・日本機械受注(5月) ・日本工作機械受注(6月) |
|
12(火) | ・ドイツZEW景況感指数(7月) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) |
・アマゾンドットコムのプライムデー(13日まで) ペプシコ |
13(水) | ・米バイデン大統領中東歴訪(16日まで) ・中国貿易統計(6月) ・ユーロ圏鉱工業生産(5月) ・米消費者物価指数(6月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
デルタ航空 |
14(木) | ・米生産者物価指数(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月9日に終わる週) |
台湾セミコンダクター、JPモルガンチェース モルガンスタンレー、ブラックロック |
15(金) | ・G20財務相・中央銀行総裁会議(バリ島) ・中国実質GDP(4-6月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(6月) ・EU27ヵ国新車登録台数(6月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月) ・米小売売上高(6月) ・米鉱工業生産(6月) ・ミシガン大学消費者信頼感指数(7月) |
ユナイテッドヘルスグループ、シティグループ、ウェルズファーゴ |
18(月) | ・米NAHB住宅市場指数(7月) | IBM、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス |
19(火) | ・米住宅着工・建設許可件数(6月) | ジョンソン&ジョンソン、ネットフリックス、ロッキードマーチン ハリバートン |
20(水) | ・米中古住宅販売件数(6月) | テスラ、ASML、アボットラボラトリーズ、ユナイテッドエアラインズ |
21(木) | ・日銀金融政策 ・ECB主要政策金利 ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(7月) ・米新規失業保険申請件数(7月16に終わる週) |
AT&T、フィリップモリスインターナショナル、ダウ テキサスインスツルメンツ、アメリカン航空 |
22(金) | ・auじぶん銀行日本製造業PMI(7月) ・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(7月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(7月) |
インテル、ベライゾンコミュニケーションズ アメリカンエキスプレス、ツイッター(E) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
免責事項・注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。