アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~ネットフリックス、テスラなど先週の好決算銘柄~
投資情報部 榮 聡
2022/07/25
先週は企業業績が懸念されたほど悪くないとの見方が広がって、力強い反発となりました。ただ、週末にかけてはネット広告やITハードウェア分野で懸念される決算も出て、再び警戒感が高まっているとみられます。今週の株価材料として、4-6月期決算発表、米国の4-6月期GDP、FOMC(米連邦公開市場委員会)、などが注目されます。
今回は先週までに発表された4-6月期決算で好調と考えられるものから、ネットフリックス(NFLX)、シティグループ(C)、テスラ(TSLA)、ダナハー(DHR)、ハリバートン(HAL)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
6/16(木)安値から下値を切り上げ、さらにダブルボトムを形成、先週は直近の高値も超えて、短期的なチャートの形はかなり改善しました。一方、一目均衡表の「雲」に差し掛かり、上値抵抗を受けやすい水準でもあります。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 6.8% | 5.3% | -12.8% |
素材 | 4.1% | -1.9% | -12.1% |
資本財・サービス | 4.1% | 1.8% | -8.1% |
情報技術 | 3.6% | 2.9% | -5.7% |
エネルギー | 3.5% | -0.8% | -3.2% |
不動産 | 3.0% | 1.0% | -13.9% |
金融 | 2.9% | 1.0% | -9.6% |
S&P500 | 2.5% | 1.3% | -7.8% |
生活必需品 | 0.4% | 0.3% | -8.4% |
ヘルスケア | -0.3% | 0.4% | -3.5% |
公益事業 | -0.5% | 0.6% | -5.8% |
コミュニケーションサービス | -1.2% | -4.2% | -10.4% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ネットフリックス | 16.6% |
テスラ | 13.4% |
ゴールドマン・サックス・グループ | 10.2% |
エヌビディア | 9.9% |
ペイパル・ホールディングス | 9.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ベライゾン・コミュニケーションズ | -12.9% |
AT&T | -10.5% |
IBM | -8.3% |
メルク | -5.1% |
オールステート | -5.1% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.5%、NYダウは2.0%、ナスダック指数は3.3%の上昇でした。
経済指標は引き続き景気減速を示唆するものが多かったものの[1]、企業業績が懸念されたほど悪くないとの見方が広がったとみえ[2]、力強い反発となりました。
7/18(月)の下落は、「アップルは来年、一部の部門で採用と支出のペースを落とす計画」と報じられたことが嫌気されました。7/19(火)の大幅な上昇は、ロシア・ドイツ間の天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」が定期点検の後に供給再開見通しとなって、欧州経済に対する懸念の後退が効いたとみられます。7/22(金)の反落は、前日引け後に発表されたスナップ、シーゲートテクノロジーの失望決算が主因です。
[1]6月中古住宅販売件数、6月住宅着工件数、7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、7/16(土)に終わる週の新規失業保険申請件数、7月S&Pグローバル米国サービスPMIなどが市場予想を下回る悪化となりました。
[2]週初にはゴールドマンサックス、バンクオブアメリカの決算が好感され、ネットフリックスの好悪入り混じる決算に対して、契約者数純増のプラス転換に注目して、株価が非常にポジティブに反応したことも市場センチメントを改善させたとみられます。また、テスラの株価上昇も市場を勇気づけたとみられます。
業種指数では、景気敏感な業種が買われ、ディフェンシブが売られました。個別銘柄では、通信サービスの2社が揃って下落したことが目立っています。AT&T(T)の4-6月期の決算は好調だったものの、通年のフリーキャッシュフローの見通しを従来の約160億ドルから約140億ドルに引き下げたことが嫌気されました。インフレが低所得者層の消費に深刻な影響を与え、支払いの遅れが発生しているのが一因で、ベライゾン コミュニケーションズ(VZ)も連れ安となっています。
今週の米国株式市場
今週はGAFAMなど主力企業の決算次第となりそうです。企業業績には先週一旦安心感が広がりましたが、週末にかけては懸念されるものも出て、再び警戒感が高まっているとみられます。
今週の株価材料として、4-6月期決算発表、米国の4-6月期GDP、FOMC(米連邦公開市場委員会)、などが注目されます。
今週はS&P500指数採用銘柄の3分の1が決算を発表するピーク週です。特にGAFAM(アルファベット、アップル、メタプラットフォームズ、アマゾンドットコム、マイクロソフト)の決算が相場の趨勢を決めるとみられます。そのほか、コカ・コーラ、ビザ、インテル、ファイザー、アッヴィ、アルトリアグループ、P&G、エクソンモービルなどの主要企業も発表します。
なお、7/22(金)の相場下落に影響を与えたスナップとシーゲートテクノロジーは、それぞれネット広告を収入とするメタプラットフォームズとアルファベット、ハードウェア機器のアップルやIT投資に対する警戒感を高めたと考えられますので、決算内容をチェックしておきましょう。
SNSのスナップA(SNAP)は、4-6月期の売上が市場予想の前年同期比16%増に対して同13%増にとどまり、事業環境の不透明感を理由に7-9月期の売上ガイダンスを出さなかったことから、7/22(金)に株価が39.1%の下落となっています。
SNSとして同業のメタプラットフォームズの決算に対する警戒を高めたとみられます。アルファベットについては、ネット広告としては同じですが、検索連動型が主力のため懸念の度合いは相対的に小さいと考えられます。
また、ストレージ機器大手のシーゲイト テクノロジー(STX)は4-6月期の売上・EPSが市場予想を下回り、7-9月期の売上ガイダンス中央値を25億ドルとし、市場予想の30億ドルを大きく下回りました。同社は減産するとしているため、市場全体の動きと必ずしも連動しているわけではありませんが、警戒を高める要因となりました。7/22(金)の同社株価は8.1%の下落となっています。
7/28(木)に発表される米国の4-6月期実質GDPは、前期比年率0.5%増が予想されています。予想値近辺でプラスの値であれば、市場に安心感が広がりそうです。アトランタ連銀の「GDPNow」では7/19(火)時点で前期比年率1.6%減の予想となっており、1-3月期に続いて2四半期連続でマイナス成長となる可能性もあるとみられているためです。
7月のFOMCでは、一時1%ポイントの利上げが予想されていましたが、現在は0.75%ポイントの利上げがコンセンサスとなっています。米国の政策金利は3月に0.25%ポイント、5月に0.50%ポイント、6月に0.75%ポイントと急激に引き上げてきました。7月が0.75%ポイントであれば、上限金利は2.50%になります。市場は今後の引き上げペースに関するガイダンスに注目しているとみられます。
経済指標では、7/26(火)に米国の7月コンファレンスボード消費者信頼感指数(前月の98.7から96.9に悪化の予想)、米国の6月新築住宅販売件数(前月比5.0%減の予想)、7/27(水)に米国の6月耐久財受注(前月比0.3%減の予想)、7/29(金)にユーロ圏の4-6月期実質GDP(速報値)(前年比3.4%増の予想、1-3月期は同5.4%増)、米国の6月個人消費支出物価指数(前年比6.7%増の予想、前月は同6.3%増、前月比0.9%増の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
7/21(木)までに4-6月期決算を発表したS&P500指数採用銘柄について、好決算と考えられる銘柄を図表3に抽出しました。
これら銘柄から、ネットフリックス(NFLX)、シティグループ(C)、テスラ(TSLA)、ダナハー(DHR)、ハリバートン(HAL)を選んでご紹介いたします。
図表3 先々週、先週の好決算銘柄(7/21(木)までに決算を発表したS&P500指数採用銘柄対象)
銘柄(コード) | 事前予想比サプライズ | 前年同期比成長率 | 株価騰落率 (5日) (%) |
||
売上増加率 (%) |
EPS増加率 (%) |
売上増加率 (%) |
EPS増加率 (%) |
||
ネットフリックス(NFLX) | -0.9 | 18.7 | 8.6 | 16.5 | 28.1 |
シティグループ(C) | 6.6 | 28.9 | 12.4 | -23.2 | 19.1 |
ゴールドマン サックス(GS) | 11.2 | 16.3 | -22.9 | -48.5 | 16.0 |
テスラ(TSLA) | 0.3 | 24.0 | 41.6 | 56.6 | 14.0 |
ダナハー(DHR) | 5.9 | 17.7 | 7.4 | 12.2 | 12.6 |
アボット ラボラトリーズ(ABT) | 9.1 | 28.1 | 10.1 | 22.2 | 4.7 |
ハリバートン(HAL) | 7.6 | 9.2 | 36.9 | 88.5 | 2.9 |
注:データは7/21(木)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/22) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 220.44ドル | 20.8 | 【契約者純増がプラスに転じる見通し】 ・7-9月期ガイダンスは売上・EPS・契約者純増とも市場予想を下回りましたが、契約者数純増が1-3月期、4-6月期の減少から7-9月期は増加に転じるとの見通しに市場は反応、株価は大きく反発しました。契約者純増は4-6月期の97万人減(ガイダンスは200万人減)から7-9月期は100万人増のガイダンスです。 ・7-9月期の業績ガイダンスは、売上が前年同期比5%増に鈍化、EPSは前年同期比33%減です。従来から同社の株価は業績動向よりも契約者純増に反応する傾向がありましたが、今回は減少が続くかもしれないという恐怖から、底入れしそうだとの安心感へ極端に動いたようです。予想PERは決算発表前には20倍を割り込んでいたことも株価上昇が大きくなった要因でしょう。 | |
買付 | シティグループ(C) | 51.91ドル | 7.3 | 【債券関連ビジネスが好調】 ・4-6月期決算は、債券関連の市場取引および引受が市場予想を大きく上回って、売上・EPSとも市場予想を上回りました。グローバルに拠点を築いて、海外事業の比率が他の大手銀行よりも高いことが今回の決算では優位に働きました。 ・4-6月期の純金利収入は金利上昇を受けて前年同期比14%増、非金利収入も投資銀行業務の減少をカバーして同5%増としました。部門別の営業収入は機関投資家グループが同20%と好調で、パーソナルバンキング&ウェルスマネジメントも同6%増と堅調でした。前年同期比EPSが前年同期比では減益となっているのは、前年同期にはパンデミックで積み増した貸倒引当金の戻し入れにより信用コストがマイナスとなっていたことの反動です。利益の基調は増益でした。 | |
買付 | テスラ(TSLA) | 816.73ドル | 66.1 | 【営業費用の抑制で予想以上の利益】 ・4-6月期の売上は7月初に販売台数が公表されているため市場予想並みながら、営業費用が市場予想を11%下回ったことで、EPSが市場予想を大きく上回りました。マスクCEOは最近、経済の先行きを警戒しているとし、特定分野で人員の削減を計画していると発言していましたが、営業費用は既に抑制されていたようです。 ・4-6月期の売上は前年同期比42%増、EPSは同57%増でした。営業費用は同13%に抑えられました。粗利率も25.0%と前年同期の24.1%から改善しており、原材料高による利益率悪化の圧力をかわしています。売上は上海工場がロックダウンで2ヵ月閉鎖された影響で1-3月期からは13%の減少でした。 | |
買付 | ダナハー(DHR) | 273.84ドル | 26.5 | 【主力事業が堅調に推移】 ・産業機器メーカーで、医療機器、検査機器など世界級ブラントを幅広く保有します。企業買収を重ね、20社以上の事業会社を束ねています。4-6月期は新型コロナの検査機器がマイナスとなったものの、主力事業が堅調に推移して市場予想を上回る決算となりました。 ・4-6月期決算は、売上が前年同期比8%増、調整後EPSが同12%増となりました。部門別売上は、ライフサイエンスが前年同期比6%増、診断が同10%増、環境および応用ソリューションが同7%増といずれも堅調な伸びを示しました。7-9月期、2022年12月期ともコア事業の基調売上は一桁台後半の成長を見込んでいます。 | |
買付 | ハリバートン(HAL) | 27.46ドル | 14.1 | 【北米でのシェールオイル開発需要が増加】 ・石油・天然ガスの開発支援でシュルンベルジェに次ぐ全米2位の会社。原油価格上昇を受けて石油開発需要が増加、業績は大きく回復しつつあります。シェールオイルの開発需要の増加で主力の北米の売上が市場予想を10%上回りました。 ・4-6月期の売上は前年同期比37%増、減損損失など442百万ドルの一時費用を除いた調整後EPSは同88%増でした。売上で48%を占める北米が前年同期比55%増となってけん引、1-3月期との比較でも26%増となりました。中東が同26%増、南米が42%増、欧州・アジアが同6%増です。CEOは、「海外市場の拡大は複数年続く見通しであり、最新の技術ポートフォリオを備える当社は、この恩恵を受けるポジションにある」と先行きに対する自信を示しました。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2022年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
25(月) | ・ドイツIFO企業景況感(7月) ・シカゴ連銀全米活動指数(6月) |
|
26(火) | ・S&Pコアロジック住宅価格指数(5月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感指数(7月) ・米新築住宅販売件数(6月) |
マイクロソフト、アルファベット、コカ・コーラ、3M、ビザ マクドナルド、ゼネラルモーターズ、ムーディーズ レイセオンテクノロジーズ、テキサスインスツルメンツ |
27(水) | ・中国工業部門利益(6月) ・米耐久財受注(6月) ・米中古住宅販売成約(6月) |
メタプラットフォームズ、ボーイング ブリティッシュアメリカンタバコ、クアルコム、アンテロリソーシズ ヒルトンワールドワイド、サービスナウ、TEコネクティビティ |
28(木) | ・FOMC政策金利 ・ユーロ圏景況感(7月) ・米実質GDP(4-6月期) ・米新規失業保険申請件数(7月23日に終わる週) |
アップル、アマゾンドットコム、インテル、ファイザー アルトリアグループ、メルク、ブラジル石油公社 マスターカード、サザン |
29(金) | ・日本鉱工業生産(6月) ・ユーロ圏消費者物価指数(6月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期) ・米個人所得・個人支出(6月) ・米個人消費支出物価指数(6月) ・米ミシガン大学消費者マインド(7月、確報値) |
アッヴィ、P&G、エクソンモービル、シェブロン サウスウェスタンエナジー |
1(月) | ・財新中国製造業PMI(7月) ・ISM製造業景気指数(7月) |
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2(火) | ・米求人労働異動調査(6月) ・米自動車販売台数(6月、3日までに発表) |
アドバンストマイクロデバイセズ、ペイパルホールディングス オキシデンタルペトロリアム、キャタピラー、スターバックス |
3(水) | ・米製造業受注(6月) ・ISM非製造業景気指数(7月) |
ワーナーブラザースディスカバリー、モデルナ キャロンペトロリアム、アルベマール |
4(木) | ・米チャレンジャー人員削減数(7月) ・米貿易統計(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月30日に終わる週) |
アリババグループ、ビヨンドミート、ロイヤルティファーマ バージンギャランティック、ブロック ユーロナブ、イーライリリー、サウスウェスタンエナジー |
5(金) | ・米雇用統計(7月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
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